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審決分類 |
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 H05K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K |
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管理番号 | 1184732 |
審判番号 | 不服2006-7941 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-04-26 |
確定日 | 2008-09-18 |
事件の表示 | 平成11年特許願第157633号「回路基板」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月15日出願公開、特開2000-349400〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成11年6月4日の出願であって、平成17年9月26日付けで拒絶理由が通知されたところ、その指定期間内の平成17年10月7日に意見書が提出されたが、平成18年4月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年4月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に同日に、その明細書の特許請求の範囲について手続補正がなされたものである。 【2】補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年4月26日の手続補正を却下する。 [理由] この手続補正で、明細書の特許請求の範囲についてした補正は、新たに【請求項3】として、回路基板の製造方法の発明を追加するものである。 このような補正は、「請求項の削除」でないことはもとより、「特許請求の範囲の減縮」、「誤記の訂正」又は「明りようでない記載の釈明」のいずれにも該当しないことは明らかである。 したがって、審判請求人が、平成18年4月26日にした手続補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的としたものでなく、同項の規定に違反するものである。 よって、上記手続補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 【3】この出願の発明 平成18年4月26日の手続補正は上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1,2に係る発明は、願書に最初に添付した明細書の、特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものである。 そして、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、 「【請求項1】セラミックス基板(1)の表面に回路(2)、裏面に放熱板(3)が形成されてなる回路基板において、回路又は放熱板とセラミックス基板とが接している回路及び放熱板の周囲底部には、幅(W)1?100μm、長さ(L)100μm以上、L/W≧2である突起状(41)・窪み状(42)等の変形部(4)がないことを特徴とする回路基板。」である。 【4】引用例の記載事項 引用例(特開平9-135057号公報;原審の拒絶理由通知書で提示された引用文献1)の記載事項 段落【0001】の【発明の属する技術分野】に、 (引a)「この発明は例えば半導体電子部品等の電気部品を搭載する回路基板に関するもので、特に高電圧で使用される回路基板に関するものである」と記載され、 段落【0002】の【従来の技術】に、 (引b)「近年、パワートランジスタモジュールやスイッチング電源モジュール用の基板として、アルミナ板や窒化アルミ板上に銅板等の金属板を接合させた回路基板がよく用いられる」と記載され、 段落【0006】に、 (引c)「・・・半導体素子の動作電圧が高くなるにともない、従来の回路基板では問題とはならなかった絶縁耐圧不良や部分放電が新たな問題として回路基板の信頼性を著しく阻害するようになってきた。部分放電とは、回路基板の電界の高い部分において発生する局所的な放電である」と記載され、 段落【0007】に、 (引d)「・・・例えば、1.0mm の窒化アルミニウム基板において、約5kVの低い電圧で部分放電が開始することが実験的に明らかになった。この原因を明らかにするために、電極パターン端部の断面形状を観察したところ、図20の断面図に示したように、電極パターン2端部のセラミック基板1に接する角部2aが極めて鋭角的な形状をしていた。・・・そして、この鋭角部2aでの電界強度が部分放電開始電圧を低くしていることが明らかとなった」と記載され、 段落【0016】の【発明の実施の形態】に、 (引e)「実施の形態1.図1(a)(b)(c)はこの発明の実施の形態1の回路基板を示すもので、・・・図において、1は絶縁基板、例えばこの場合は板厚が1mmの窒化アルミニウム基板、21は絶縁基板1の一面に設けられた導体層の電気回路パターンで、この場合は機器動作中に高電圧となるコレクタ電極、3は絶縁基板1の他面に設けられた導体層の接地電極、4は半導体素子、5は絶縁基板1の一面に設けられた導体層の電気回路パターンで、この場合はエミッタ電極である。接地電極3は放熱ブロック(図示せず)に接合されている。各電極パターン21,3を構成する導体層は銅板で、その厚さは 0.3mmである」と記載され、 段落【0019】に、 (引f)「・・・電極パターン端部の加工は、銅張基板を所定パターンにエッチング後、数値制御加工により鋭角部を削りとる、あるいは電解研磨等によって行っても同様の効果を奏する」と記載され、 段落【0031】の【発明の効果】に、 (引g)「・・・回路基板内の高電界部分の電界集中を抑制でき、絶縁破壊電圧、部分放電開始電圧を高くでき、回路基板の信頼性を向上できる」と記載され、 段落【0036】に、 (引h)「さらに、この発明に係る回路基板の製造方法は、電気回路パターンの導体層における上記基板との接合面の端部がその導体層の最外周端部より内側に入り込んでいる断面構造をなす回路基板を製造する方法において、上記電気回路パターンの導体層の周囲を電解研磨し、上記接合面の端部を除去するようにしたので、容易に鋭角部を除去でき、電気回路パターン断面を緩やかな曲線、R形状に加工できる」と記載されている。 【5】当審の判断 [1]引用発明 上記(引a),(引b),(引e)の、「この発明は例えば半導体電子部品等の電気部品を搭載する回路基板に関するもので、特に高電圧で使用される回路基板に関する」,「パワートランジスタモジュール・・・の基板として、アルミナ板や窒化アルミ板上に銅板等の金属板を接合させた回路基板がよく用いられる」,「1は絶縁基板、例えばこの場合は板厚が1mmの窒化アルミニウム基板、21は絶縁基板1の一面に設けられた導体層の電気回路パターンで」という記載から、 (1)「窒化アルミニウム基板の一面に電気回路パターンが設けられた回路基板」の開示がある。 上記(引e)の、「1は絶縁基板、例えばこの場合は板厚が1mmの窒化アルミニウム基板、21は絶縁基板1の一面に設けられた導体層の電気回路パターンで、この場合は機器動作中に高電圧となるコレクタ電極、3は絶縁基板1の他面に設けられた導体層の接地電極、・・・接地電極3は放熱ブロック(図示せず)に接合されている。各電極パターン21,3を構成する導体層は銅板で、その厚さは 0.3mmである」という記載から、 「窒化アルミニウム基板の他面に銅板の接地電極が設けられ」ており、 当該接地電極は放熱ブロックに接合されている。 したがって、接地電極の銅板は「放熱板」の機能を兼ねているので、 (2)「窒化アルミニウム基板の他面に放熱板が設けられ」ていることの開示がある。 上記(引d),(引h)の、「電極パターン2端部のセラミック基板1に接する角部2aが極めて鋭角的な形状をしていた」,「電気回路パターンの導体層の周囲を電解研磨し、上記接合面の端部を除去するようにしたので、容易に鋭角部を除去でき、電気回路パターン断面を緩やかな曲線、R形状に加工できる」という記載から、 (3)「電気回路パターンとセラミック基板とが接している電気回路パターンの周囲の接合面端部を除去するようにしたので、鋭角部を除去でき、電気回路パターン断面を緩やかな曲線、R形状に加工できる」ということの開示がある。 上記(引d),(引f),(引h)の、「電極パターン2端部のセラミック基板1に接する角部2aが極めて鋭角的な形状をしていた。・・・そして、この鋭角部2aでの電界強度が部分放電開始電圧を低くしていることが明らかとなった」,「電極パターン端部の加工は、銅張基板を所定パターンにエッチング後、数値制御加工により鋭角部を削りとる、あるいは電解研磨等によって行っても同様の効果を奏する」,「電気回路パターンの導体層の周囲を電解研磨し、上記接合面の端部を除去するようにした」という記載から、 電気回路パターン端部のセラミック基板に接する部分が鋭角部になっていることにより、部分放電開始電圧が低くなるので、電気回路パターン端部の鋭角部を数値制御加工により削りとる(電解研磨等でも同効を奏する)ことを行っている。したがって、 (4)「電気回路パターン端部の周囲全体すなわち端部全周から鋭角部が除去されている」と認められる。 以上の(1)?(4)の内容から、引用例には、 「窒化アルミニウム基板の一面に電気回路パターン、他面に放熱板が設けられた回路基板において、電気回路パターンと窒化アルミニウム基板とが接している電気回路パターンの周囲の接合面端部には、鋭角部がない回路基板」の発明(以下、「引用発明」という)が開示されていると認められる。 [2]本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、 引用発明の「窒化アルミニウム基板」,「一面」,「電気回路パターン」,「他面」,「設けられた」,「周囲の接合面端部」は、 本願発明の「セラミックス基板」,「表面」,「回路」,「裏面」,「形成されてなる」,「周囲底部」にそれぞれ相当する。 そして、本願発明の「突起状・窪み状等の変形部」も、引用発明の「鋭角部」もともに、当該箇所に電界集中が生じて、結果的に部分放電が発生する原因となる「異形部」といえる。 したがって、本願発明と引用発明とは、 「セラミックス基板の表面に回路、裏面に放熱板が形成されてなる回路基板において、回路とセラミックス基板とが接している回路の周囲底部には、異形部がない回路基板」であることで一致している。 一方、両者は次の点で相違している。 本願発明は、部分放電の原因となる異形部が「幅(W)1?100μm、長さ(L)100μm以上、L/W≧2である突起状・窪み状等の変形部」であるとしているのに対して、引用発明は、「鋭角部」としている点(相違点)で相違する。 [3]相違点の検討 高電圧で使用される回路基板において、その回路と基板との接合部位で、電界集中が生じて部分放電の発生を惹起するような異形部をなくすことは、引用発明の内容から当業者が必然的に発想し得たものといえる。 一方で、本願発明のように、その変形部(異形部)について、その「幅」及び「長さ」並びに「長さと幅の比」を特定した点に、次の[4]段落の「発明の効果」で述べるように、格別な意義は認められない。 したがって、この相違点は、当業者が適宜なものとして容易に想到できたことである。 [4]発明の効果 本願発明において、「変形部」を特定している数値等に関して、例えば、幅が150μmで長さが300μmのとき、L/Wは2となるが、このようなディメンジョンを有する変形部は、「幅(W)1?100μm」という条件を満たさないから回路基板上に存在してもよいことになる。 しかし、前記のような「変形部」が部分放電発生の要因に成り得ないとする十分な根拠はない。 そして、引用発明もその効果として、上記(引g)に「回路基板内の高電界部分の電界集中を抑制でき、絶縁破壊電圧、部分放電開始電圧を高くでき、回路基板の信頼性を向上できる」と記載されている。 したがって、本願発明の効果が引用発明のそれに較べて格別顕著なものとは認められない。 【6】むすび 以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、上記の引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-09 |
結審通知日 | 2008-07-15 |
審決日 | 2008-08-05 |
出願番号 | 特願平11-157633 |
審決分類 |
P
1
8・
571-
Z
(H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千葉 成就 |
特許庁審判長 |
岡 和久 |
特許庁審判官 |
川真田 秀男 粟野 正明 |
発明の名称 | 回路基板 |