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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1184769
審判番号 不服2007-4657  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-15 
確定日 2008-09-18 
事件の表示 平成9年特許願第262698号「包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成11年3月23日出願公開、特開平11-79259号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年9月9日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明は、平成18年12月14日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によりそれぞれ特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおりのものである。
「最内層にヒートシール性樹脂層を有する矩形状の積層体を、対向する両端部の最内層を合わせてヒートシールすることにより合掌貼りされた背シール部と、両端部に端部シール部とを有する形状に製袋された包装袋において、前記背シール部は前記包装袋の横方向における略中央部に上下方向に沿って一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成されており、前記端部シール部は前記包装袋の上下両端部に横方向に沿って一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成されており、前記背シール部のシール巾が前記端部シール部のシール巾より狭く構成されていることを特徴とする包装袋。」

2.引用文献
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-150864号公報(以下、「引用文献」という。)の特許請求の範囲の欄、段落【0006】?【0008】、【0026】、【0030】、【0036】?【0038】には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「【請求項1】 プラスチックフィルムによりその同一面側を互いに当接させて、所定巾のヒートシールにより合掌状に接合する第一接合部を設けて、その内部に加熱処理用の内容物を密封包装させる包装体にあって、前記第一接合部は、包装体の一方の側部へ片寄せさせて設けて、加熱による包装体の内部圧力が上昇したとき、その逃圧を行なう易開封性シールであることを特徴とする加熱処理用包装体。」
(b)「【0006】これらの欠点を解消するために開発され、かつ、袋の適所に設けたノッチからの引裂の際に、その使い勝手から該袋の長手方向に開口されるような合掌袋とした包装体として、図9および図10に示すようなものが提供されている。
【0007】このものは、内圧が一定以上に上昇したとき、その箇所が剥離して圧力を逃すイージーオープンフィルムによりヒートシールされた合掌部50は、袋51の巾方向(単寸方向)の中央部に設けられている。
【0008】そのため、これを電子レンジに入れて加熱調理したときは、その内部圧力の上昇による膨張によりフィルムが緊張され、図10に示すように、ヒートシールされた合掌部50が折れ畳まれた折り癖とおりに、この合掌部50の片が袋51に密着して、その剥離角度が0となり、内部圧力が上昇してもシール部の剥離作用を与えることができず、この合掌部50からの蒸気抜け、すなわち、同図において矢印pに示す逃圧が阻害されて、結局、袋強度の限界点まで上昇した内圧力により、該袋51は破裂してしまう大きな問題点があった。」
(c)「【0026】そして、その第一の例の構成は、図1(a)に示すように、プラスチックフィルム1により、その両端辺1a,1bを該一側面(図においては上面の同一面)を互いに当接させ、所定巾のヒートシールによる第一接合部2を設けて、そのフィルム1を筒状とし、この第一接合部2を一方の側部へ片寄せた状態で、図1(b)に示すように、該筒状の下部をヒートシールによる第二接合部3を設けて合掌状の袋体4を形成した後、その内部に内容物5を充填して、前記筒状の上部をヒートシールによる第三接合部6を形成して密封包装させることで包装体Aが得られる。」
(d)【0030】また、前記した第一接合部2は、易開封性シールであり、例えば、前記した基材にイージーオープンフィルムとなるシーラント層として適当なポリオレフィン系樹脂等を複合したものをプラスチックフィルム1に使用したり、イージーオープンフィルムテープを、第一接合部2を形成する際にその合掌の間に挿入するもので、その長さ方向の全面あるいは一部分に設けるものであって、このうち、一部分に挿入する場合は、図4に示すように、加熱膨張時に、包装体Aにおける略膨張頂上部X、すなわち、包装体Aの略中央部に位置するように設けるものであり、この箇所が、後記する逃圧部7となる。
(e)「【0036】しかし、よりよい逃圧の手段として、第一例において図3(a)および第二例において図7(a)に示すように、第一接合部2において包装体Aの全長Lにおける中間位置の略中央部(L/2の寸法位置)に位置するように、該第一接合部2の巾方向において、その外縁側に半円形や三角,四角形等の非シール部7aを形成する。
【0037】更に、第一例において図3(b)および第二例において図7(b)に示すように、第一接合部2の巾方向において、その外縁側に、三角,四角形や半円形等の切除部7bを形成してある。
【0038】そして、いずれにあっても、これら非シール部7a,切除部7bの分だけ第一接合部2の巾が狭く形成されていることで、加熱時の希望する内部圧力に達したときの、第一接合部2の剥離を容易にして、速やかにこの圧力が抜けるように構成されている。」

上記記載及び各図、さらに通常の技術常識を参酌すれば、引用文献の図9、10に示された加熱処理用包装体は、次の構成を有しているものと認められる。
(1)加熱処理用包装体の袋体51の合掌部50は、矩形状のプラスチックフィルムを、対向する両端部において、内側を合わせて互いに当接させてヒートシールすることにより、合掌貼りされて形成されていること。
(2)図9において、合掌部50の形成方向を袋体51の上下方向とすれば、合掌部50は、袋体51の巾方向、すなわち横方向の中央部に、上下方向に沿って設けられた、イージーオープンフィルムによりヒートシールされた背シール部であり、一定のシール巾を保った状態で、直線帯状に形成されたものであること。
(3)図9において、袋体51の上下両端部に端部シール部が一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成され、袋体51は、背シール部である合掌部50と両端の端部シール部とを有する形状に製袋されていること。

以上を総合すれば、引用文献には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「矩形状のプラスチックフィルムを、対向する両端部の内側を合わせてヒートシールすることにより合掌貼りされた合掌部(50)と、両端部に端部シール部とを有する形状に製袋された加熱処理用包装体の袋体(51)において、前記合掌部(50)は、袋体(51)の横方向における中央部に上下方向に沿って一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成されており、前記端部シール部は、前記袋体(51)の上下両端部に横方向に沿って一定のシール幅を保った状態で直線帯状に形成されており、前記合掌部(50)は、イージーオープンフィルムによりヒートシールされたものである袋体。」

3.対比
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。
本願明細書を参酌すれば、本願発明の「積層体」もフィルムということができるから、引用発明の「矩形状のプラスチックフィルム」と本願発明の「最内層にヒートシール性樹脂層を有する矩形状の積層体」とは、「矩形状のフィルム」の限りで一致する。
また、引用発明の「合掌部(50)」は、その文言上の意義及び配置等からみて、本願発明の「背シール部」に相当し、同様に「加熱処理用包装体の袋体(51)」は「包装袋」に含まれるものである。
したがって、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は次のとおりとなる。
〈一致点〉
「矩形状のフィルムを、対向する両端部の内側を合わせてヒートシールすることにより合掌貼りされた背シール部と、両端部に端部シール部とを有する形状に製袋された包装袋において、前記背シール部は前記包装袋の横方向における略中央部に上下方向に沿って一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成されており、前記端部シール部は前記包装袋の上下両端部に横方向に沿って一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成された包装袋。」
〈相違点1〉
本願発明においては、矩形状のフィルムが、最内層にヒートシール性樹脂層を有する矩形状の積層体であるのに対し、引用発明においては、矩形状のプラスチックフィルムが、このような積層体であるのか否か明確ではない点。
〈相違点2〉
本願発明においては、背シール部が一定のシール巾を保った状態で、そのシール巾が端部シール部のシール巾より狭く構成されているのに対し、引用発明においては、合掌部(50)は、イージーオープンフィルムによりヒートシールされたものであり、そのシール巾が端部シール部のシール巾より狭くなっているか否か明確ではない点。

4.判断
そこで上記の相違点について検討する。
(1)相違点1について
一般に、包装体を形成する矩形状のフィルムを、最内層にヒートシール性樹脂層を有する積層体で構成することは、例を挙げるまでもなく、本願出願前より広く採用されており、引用文献段落【0041】の「このように構成される本発明実施例における第一の例は、例えば、耐熱性を有する二軸延伸ポリアミドによる基材とシーラント層フィルムとによる複合フィルム1を用いて、慣用の合掌袋用製袋機(図示せず)により、図1(a)に示すように、その両端辺1a,1bをその上面が同一面となるように互いに当接させてヒートシールによる第一接合部2を設け、そのフィルム1を筒状とする。」なる記載をも参酌すれば、引用発明において、矩形状のプラスチックフィルムとして、最内層にヒートシール性樹脂層を有する矩形状の積層体を用いることは、十分に示唆されている程度の事項にすぎず、そうでなくても当業者が適宜採用し得る程度の事項である。

(2)相違点2について
本願発明において、背シール部のシール巾を端部シール部のシール巾より狭く構成したことの技術的意義は、本願明細書の、「この・・・(中略)・・・などの食品が収納された包装袋1を電子レンジに入れて加熱調理すると、まず図3に示すように食品中から発生する蒸気や包装袋内の空気が熱膨張して内部圧力が高まり包装袋はパンパンに膨れた状態になる一方で・・・剥離8および8’が包装袋1の内部側から生じ始める。最終的には包装袋1は端部シール部2,2のシール巾より背シール部3のシール巾が狭いことと、背シール部3の略中央部に内部圧力が集中するためと思われるが、背シール部3の略中央部に生じた剥離8が端部シール部2,2に生じた剥離8’,8’'より先に背シール部3の外端部に達して内部圧力を逃がし、包装袋の破袋が防止される。一方、背シール部3に生じた剥離8が背シール部3の外端部に達するまでの間、包装袋に収納された食品を蒸らすことができるために、より良い食味を得ることができる」(段落【0020】)の記載からみて、シール巾を狭くすることにより、この部位での剥離を容易にすることにあるということができる。

これに対し、引用文献の記載(b)の【0008】には、合掌部(50)の剥離の困難性が示される一方、記載(e)には、図3(a)、図7(a)に対応し、背シール部に対応する第一接合部2に、四角形等の非シール部7aを形成することにより、逃圧部となる第一接合部2にシール巾の狭い箇所を設け、加熱時の希望する内部圧力に達したとき、この部分での第一接合部2の剥離を容易にして、速やかにこの圧力が抜けるようにすることが示されており、背シール部の接着強度を低くすることは、特開平9-142541号公報にみられるように本願出願前より周知の技術である。
そして、一般に、圧力上昇時におけるシールの接着強度が、そのシール幅により適宜調整されるであろうことは、当業者にとって自明の事項と解されるところ、電子レンジで加熱可能な包装体において、一定のシール巾を保った状態で直線帯状に形成されるシール部の一つのシール巾を他のシール巾より狭くして加熱時の内圧による開封を容易にすることも、例えば、実願昭60-136929号(実開昭62-45235号)のマイクロフィルム、実願昭60-136098号(実開昭62-45272号)のマイクロフィルム等にみられるように、本願出願前より周知の技術である。
してみれば、引用発明における合掌部(50)の剥離性を改善するため、上述した周知技術をも踏まえ、そのシール巾を端部シール部より狭くすることは、当業者が容易になし得る事項であり、それによって奏される作用効果も、引用発明及び上述の周知技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものにすぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前より周知の技術を勘案すれば、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-23 
審決日 2008-08-06 
出願番号 特願平9-262698
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 直  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 遠藤 秀明
佐野 健治
発明の名称 包装袋  
代理人 金山 聡  

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