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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F |
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管理番号 | 1184779 |
審判番号 | 不服2007-22482 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-08-14 |
確定日 | 2008-09-18 |
事件の表示 | 平成10年特許願第196309号「パンツ型吸収性物品の包装構造」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月25日出願公開、特開2000- 24029〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年7月10日の出願であって、その請求項1ないし請求項5に係る発明は明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明は次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「【請求項1】ウエスト開口部および一対のレッグ開口部が形成されてなるパンツ部と、液保持性の吸収層を有する吸収部とを備えたパンツ型吸収性物品を、包装材にて包装してなるパンツ型吸収性物品の包装構造であって、 二つ折りにされた上記包装材の内部に、少なくとも二つ折りされた上記パンツ型吸収性物品が、該パンツ型吸収性物品の折曲部と該包装材の折曲部とが対向するように挿入されており、且つ該折曲部を除く該パンツ型吸収性物品の周縁部から外方に延出した該包装材同士が互いに封止されることにより、該パンツ型吸収性物品が該包装材で包装されており、 左右両側部が互いに重なるように幅方向中央部側に折り曲げられ、次いでウエスト部および股下部が互いに重ならず両者間に隙間が生じるように長手方向中央部側に折り曲げられている上記パンツ型吸収性物品が、斯かる状態下に長手方向略中央線を上記折曲部として二つ折りされているパンツ型吸収性物品の包装構造。」 2.引用刊行物記載の発明 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成10年4月14日に頒布された「特開平10-95481号公報 」(以下「引用例1」という。)には,次の事項が記載されている。 (a)「【0013】ここで、上記個装構造1において用いられる使い捨ておむつ2は、図2に示すように、腹側部21の左右両側縁と背側部22の左右両側縁とがそれぞれ接合固定されてなる、少なくとも1つのウエスト用開口と1対のレッグホール開口を有し公知の構成のパンツ型の使い捨ておむつであり、各部材の構成材料(トップシート、バックシート、吸収体及び弾性部材などの構成材料)も、通常公知のものを特に制限無く用いることができる。」 (b)「【0016】更に詳述すると、上記包装材3は、図3に示す折曲部31において折り曲げられており、図1に示すように3辺32、33、34がシールされて、密閉された個装袋30を形成している。」 (c)「【0027】また、本形態において、おむつの折り畳み形態は、図1に示す形態に限定されない。例えば、図5に示すように、腹側部21及び背側部22の左右両側で且つ吸収体が存在しない部分である、サイドフラップ部分24をおむつの内方に向けて折り込んで折り畳んでもよい。また、図6に示すように、断面がW形状になるように上下方向に向けて折り畳んでもよい。」 ここで、腹側部21と背側部22はパンツ部を形成し、これを断面がW形状になるように折り畳んだものは、第6図から見て、パンツ型使い捨ておむつのウエスト部および股下部を上下方向中央部側に折り曲げてあり、且つ該パンツ型使い捨ておむつが上下方向略中央線で折り曲げてあるものと認められ、また、使い捨ておむつに使用される吸収体は、一般に液保特性の吸収層を有するので、以上の記載及び第1図ないし第4図及び第6図によれば,引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認めることができる。 「ウエスト用開口および一対のレッグホール開口が形成されてなるパンツ部と、液保持性の吸収層を有する吸収体とを備えたパンツ型使い捨ておむつ2を、包装材3にて包装してなるパンツ型使い捨ておむつの個装構造であって、 二つ折りにされた上記包装材の内部に、上下方向に四つ折りされた上記パンツ型使い捨ておむつが、該パンツ型使い捨ておむつの折曲部と該包装材の折曲部31とが対向するように挿入されており、且つ該包装材の折曲部を除く3辺で、該パンツ型使い捨ておむつの周縁部から外方に延出した該包装材同士が互いにシールされることにより、該パンツ型使い捨ておむつが該包装材で包装されており、該パンツ型使い捨ておむつのウエスト部および股下部が上下方向中央部側に折り曲げられ、且つ該パンツ型使い捨ておむつが上下方向略中央線で折り曲げられているパンツ型使い捨ておむつの個装構造。」 (2)また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成6年2月15日に頒布された「実願平4-42015号(実開平6-11724号)のCD-ROM 」(以下「引用例2」という。)には,次の事項が記載されている。 (a)「【0007】【課題を解決するための手段】 ・・・・。 即ち、本考案は、・・・液保持性の吸収体を有し、実質的に縦長に形成され、股間に装着する吸収性物品において、上記吸収性物品における股間前方に位置する左右両側縁部に、その幅方向外方にそれぞれ延びる一対の固定片を設け、上記一対の固定片の各裏面に第一粘着部を設け、また該吸収性物品における股間後方に位置する防漏材面の中央部に第二粘着部を設け、上記一対の固定片を防漏材側に折り曲げて上記第一粘着部と合わさる上記防漏材面、及び上記吸収性物品を幅方向に四つ折して上記第二粘着部と合わさる上記防漏材面に、上記第一粘着部及び第二粘着部に対して接離自在な剥離面を有していることを特徴とする吸収性物品を提供するものである。 【作用】 本考案の吸収性物品によれば、・・・・。また、携帯時においては、四つ折りにされコンパクトな形態に維持されている。」(出願当初の明細書) (b)「【0013】次に本考案に係る第2の実施例を図7に基づいて説明する。・・・。 第2の実施例は、図5?図8に示す如く、一対の固定片5を防漏材3側に折り曲げて上記第一粘着部6に接離自在に合わせた生理用ナプキン1をその長手方向両端部11が互いに付合うように表面材2側に折り曲げられた後に、上記第二粘着部7と上記剥離面8とを接離自在に合わせて四つ折りされたものである。 また、図5に示す如く、剥離面8は防漏シート3における前方部のみ形成されている。」(出願当初の明細書) 以上の記載及び第5図ないし第8図によれば、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認めることができる。 「左右両側縁部が幅方向中央部側に折り曲げられ、次いで長手方向両端部が互いに重ならないように、長手方向中央部側に折り曲げられた吸収性物品が、斯かる状態下に長手方向略中央線で折り曲げられる長手方向に四つ折りされる吸収性物品。」 3.対比 そこで、本願発明と引用発明1とを比較すると、引用発明1の「ウエスト用開口」は、本願発明の「ウエスト開口部」に相当し、同じく「レッグホール開口」は「レッグ開口部」に、「吸収体」は「吸収部」に、「パンツ型使い捨ておむつ」は「パンツ型吸収性物品」に、「個装構造」は「包装構造」に、「シールされる」は「封止される」に、「上下方向」は「長手方向」に相当するので、両者は、 「ウエスト開口部および一対のレッグ開口部が形成されてなるパンツ部と、液保持性の吸収層を有する吸収部とを備えたパンツ型吸収性物品を、包装材にて包装してなるパンツ型吸収性物品の包装構造であって、 二つ折りにされた上記包装材の内部に、長手方向に四つ折りされた上記パンツ型吸収性物品が、該パンツ型吸収性物品の折曲部と該包装材の折曲部とが対向するように挿入されており、且つ該折曲部を除く該パンツ型吸収性物品の周縁部から外方に延出した該包装材同士が互いに封止されることにより、該パンツ型吸収性物品が該包装材で包装されており、ウエスト部および股下部が長手方向中央部側に折り曲げられている上記パンツ型吸収性物品が、長手方向略中央線でも二つ折りされているパンツ型吸収性物品の包装構造。」 である点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願発明では、まず、パンツ型吸収性物品の左右両側部を互いに重なるように幅方向中央部側に折り曲げてから、ウエスト部及び股下部を長手方向中央部側に折り曲げ、斯かる状態下に長手方向略中央線で折り曲げるのに対して、引用発明1ではパンツ型吸収性物品の左右両側部を折り曲げてはおらず、また、ウエスト部及び股下部が長手方向中央部側に折り曲げられ、且つ該パンツ型使い捨ておむつが長手方向略中央線で折り曲げられてはいるが、折る順序については明確にしていない点。 [相違点2] 本願発明では、ウエスト部及び股下部が互いに重ならず両者間に隙間が生じるように長手方向中央部側に折り曲げられているのに対して、引用発明1では、ウエスト部および股下部が両者間に隙間が生じるように長手方向中央部側に折り曲げられているかどうかにつき明確にしていない点。 4.当審の判断 [相違点1]について まず、吸収性物品の左右両側部を幅方向中央部側に折り曲げる点は引用例1に別実施例として記載されている(図7)。また、長手方向両端部を互いに重ならないように、長手方向中央部側に折り曲げて、斯かる状態下に長手方向略中央線を折り曲げることでコンパクトに折り畳むことは、前記引用発明2にも示されるように周知である。とすると引用発明1のパンツ型の吸収性物品であっても、まず、左右両側部を折り曲げて、次いでウエスト部および股下部を長手方向中央部側に重ならないように折り曲げて、斯かる状態下に長手方向略中央線を折り曲げる折り畳み方を採用できないとする理由も見当たらないから、相違点1に係る本願発明の構成は、引用発明1及び引用例1の別実施例、並びに引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 また、幅広の吸収性物品の左右両側部を幅方向中央部側に折り曲げて、幅方向に三つ折りにする場合に、左右両側部が互いに重なるように幅方向中央部側に折り曲げることは当業者が適宜なす程度の事項であって(特開平3-21238号公報第1頁右欄第10?14行及び第3?5図参照)、それによる効果も当業者が容易に想到し得たものである。 [相違点2]について 厚手の吸収性物品を四つ折りにする場合に、その長手方向両端部を、互いに重ならず両者間に隙間が生じるように長手方向中央部側に折り曲げることは当業者が適宜なす程度の事項であると認められ(実願平3-56711号(実開平5-130号)のCD-ROM)、このようにしておけば、折り曲げた両端部を内側にして四つ折りにしてもこれらの端部が干渉しないことは当業者が容易に想到し得る程度の事項にすぎない。 そうすると、引用発明1のパンツ型の吸収性物品において、ウエスト部および股下部を両者間に隙間が生じるように長手方向中央部側に折り曲げ、斯かる状態下にこれらが内側になるように長手方向略中央線を折り曲げる折り畳み方をすることも当業者が適宜に選択できた事項というべきである。 よって、相違点2に係る本願発明の構成は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明1及び引用発明2、並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 それゆえ、本願出願は、特許請求の範囲の請求項2ないし請求項5に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-18 |
結審通知日 | 2008-07-22 |
審決日 | 2008-08-05 |
出願番号 | 特願平10-196309 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 米村 耕一、植前 津子 |
特許庁審判長 |
松縄 正登 |
特許庁審判官 |
熊倉 強 佐野 健治 |
発明の名称 | パンツ型吸収性物品の包装構造 |
代理人 | 羽鳥 修 |