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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1184854
審判番号 不服2005-7584  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-27 
確定日 2008-09-19 
事件の表示 特願2000-179710「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月25日出願公開、特開2001-353266〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成12年6月15日の出願であって、平成17年3月18日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年4月27日付けで本件審判請求がされるとともに、同年5月25日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成20年5月13日付けで新たな拒絶の理由を通知したところ、請求人は同年7月7日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成20年7月7日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「乱数抽選により遊技者に有利な状態を発生するか否かを判定する判定機能を有する主制御手段(50)と、この主制御手段(50)とは別個の基板(46)に構成され且つ主制御手段(50)から受ける制御信号に基づいて制御を行う払出し制御手段(70)と、主制御手段(50)と払出し制御手段(70)とに夫々電力を供給する電源手段(79)とを備えた遊技機であって、
前記電源手段(79)は、外部から供給された電源の異常を検出可能な電源監視部(82)と、
その電源監視部(82)にて外部からの給電の異常を検出したときに電源異常信号(VS)を発生する異常信号発生部(83)と、その電源異常信号(VS)を出力する異常信号出力部(84)とを有し、
前記主制御手段(50)と払出し制御手段(70)には、電源手段(79)から電源異常信号(VS)を受信する異常信号受信部と、電源異常信号(VS)の受信を契機として遊技状態に関連する所定の情報を記憶するとともに、その情報を電力供給停止後も記憶保持する為のバックアップ記憶部(39e,46e) とを設け、
前記電源手段(79)の異常信号出力部(84)と、主制御手段(50)と払出し制御手段(70)の異常信号受信部に、信号が逆流するのを防止する逆流防止回路(84a,39f,46f) を夫々設け、
給電再開時にバックアップ記憶部(39e,46e) の記憶情報を消去可能な消去信号(ES)を発生し主制御手段(50)のバックアップ記憶部(39e) と払出し制御手段(70)のバックアップ記憶部(46e) に一斉に出力する消去指令スイッチを前記電源手段(79)に設け、
前記主制御手段(50)と払出し制御手段(70)は、給電再開時に消去信号(ES)を受信したときにはバックアップ記憶部(39e,46e) の記憶情報を一斉に消去して予め設定された初期遊技状態に初期化する初期化手段(S2 ?S4) と、給電再開時に消去信号(ES)を受信しなかったときにはバックアップ記憶部(39e,46e) の記憶情報に基づいて遊技状態を復帰させる復帰手段(S7)とを備えたことを特徴とする遊技機。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
当審における拒絶の理由に引用した特開平6-71028号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?チの記載又は図示がある。
ア.「遊技盤の遊技部内に設けた入賞領域へ入賞した入賞球の種別を検出する入賞種別検出手段と、
上記入賞種別検出手段によって検出された入賞球の種別に応じた賞球排出数を個別に記憶する賞球排出数記憶手段と、
上記賞球排出数記憶手段の記憶内容を保護する記憶保護手段と、
上記賞球排出数記憶手段が記憶する賞球排出数に基づいて、遊技球排出装置より賞球を排出させる排出動作制御手段と、
を備えることを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「遊技機1において実際に遊技に供される遊技盤10には、上記第1?第4一般入賞口11a?11dのほかに、種々の入賞領域と各種の遊技装置が設けてある。例えば、遊技部9の略々中央には特別図柄表示装置32を、遊技部9の下方部に変動入賞装置33を、上記特別図柄表示装置32の適宜下方部には補助変動入賞装置34を、変動入賞装置32の中央部には普通図柄表示装置35を夫々設け、これらの遊技装置を後述する電気的制御装置によって電気的に駆動制御することで、遊技上の興趣を高めるようにしてある。」(段落【0019】)
ウ.「電気的制御装置56は、中央演算装置(CPU98)及び記憶装置(ROM99、RAM100)を主な構成要素とし、CPU98には電源を供給する電源回路101、クロックを供給する分周回路102、音声発生のためのサウンドジェネレータ103等が連絡している。」(段落【0044】)
エ.「CPU98へはバッファゲート105及びローパスフィルタ106を介して、第1特図始動入賞球検出器41、第2特図始動入賞球検出器42、第3特図始動入賞球検出器43、継続入賞球検出器44、大入賞口入賞球検出器45、第1普図始動ゲート通過球検出器46、第2普図始動ゲート通過球検出器47、排出制御装置58等と連絡し、これらの検出器や装置からの信号を受信する。」(段落【0045】)
オ.「遊技機1の電気的制御装置56は、当該遊技店の管理装置とも接続してあり、該管理装置より打止め制御や管理情報要求等の指令信号を受信する。また、第1?第4一般入賞口11a?11dへ入賞した球を夫々検出する第1一般入賞球検出器48、第2一般入賞球検出器49、第3一般入賞球検出器50、第4一般入賞球検出器51よりの検出信号を、夫々電気的制御装置56へ供給するようにしてもよい。」(段落【0046】)
カ.「CPU98からは出力ポート107及びドライバ108を介して信号を発信し、変動入賞装置33の球受扉40の開閉動作を行うための駆動源たる大入賞口ソレノイド109、補助変動入賞装置(普通電動役物)34の球受片を左右に回動させるための駆動源たる普電ソレノイド110、特別図柄表示装置32、普通図柄表示装置35、特別図柄始動入賞記憶LED39…、普図始動ゲート通過記憶LED37…、動作表示ランプ30へ信号を出力して、各種遊技装置等の動作制御を行う。」(段落【0047】)
キ.「排出制御装置58の主要部は、例えばワンチップ・マイクロコンピュータ111より構成するものとしてあり、ワンチップ内にCPU,ROM,RAMが一体的に組み付けられ、電源回路112の供給電源に基づいて動作すると共に、発振器113より入力されるクロックを分周して用いる。また、上記ワンチップ・マイクロコンピュータ111へ停電検出信号を出力する停電検出回路114を設けてあり、上記電源回路112よりワンチップ・マイクロコンピュータ111へ供給される電源電圧を常時監視し、該電源電圧がワンチップ・マイクロコンピュータの動作を賄い得ない程低下した状態(停電状態)を検出することで、停電検出信号を出力するのである。」(段落【0049】)
ク.「遊技機1の電気的制御装置56と排出制御装置58における賞球排出機能についての要部を、図7に示す機能ブロック図に基づいて詳細に説明する。なお、本ブロック図においては、電気的制御装置56の遊技制御に関連した諸機能や排出制御装置の貸球排出機能等に関連した部分を省略してある。」(段落【0051】)
ケ.「遊技盤10の遊技部9内に設けられた各種入賞領域への入賞球を検出する入賞種別検出手段117(図2においては、各入賞領域に設けた第1?第3始動入賞球検出器41?43、継続入賞球検出器44、大入賞口入賞球検出器45等の検出器)より出力される入賞種別検出信号が、電気的制御装置56の第1賞球排出数記憶手段118へ入力されるものとしてある。そして、上記第1賞球排出数記憶手段118は、入賞種別検出手段117より入力された入賞種別検出信号の示す入賞球の種別に応じた賞球排出数を個別に記憶し、当該賞球排出数を賞球排出数送信手段119へ送出するのである。」(段落【0052】)
コ.「一方、遊技機1の入賞球検出手段120(全ての入賞領域へ入賞した球を一括して検出するもので、上記実施例においてはセーフセンサ63に該当する。なお、セーフセンサ63では第1,第2普図始動ゲート36a,36bを通過入賞した球を検出できないので、これらの通過入賞球に対する賞球も行うように設定した場合には、セーフセンサ63と第1,第2普図始動ゲート通過球検出器46,47とで入賞球検出手段として機能する。)より入力される入賞球検出信号は、排出制御装置58の入賞球数記憶手段121へ入力されるものとしてあり、この入賞球数記憶手段121の入賞球記憶に基づいて、排出排出制御装置58の賞球排出数要求手段122が上記賞球排出数送信手段119へ賞球排出数要求を行うのである。」(段落【0054】)
サ.「入賞球種別に応じた賞球排出数が第1賞球排出数記憶手段118に記憶保持され、上記入賞領域を通過した後に入賞球検出手段120によって検出されることで、当該入賞球検出に基づく入賞球検出記憶が入賞球数記憶121に記憶保持されると共に、この入賞球検出記憶に基づいて賞球排出数要求手段122より賞球排出数送信手段119へ賞球排出数要求が為されると、上記第1賞球排出数記憶手段118より賞球排出数送信手段119に供給されていた賞球排出数が、排出制御装置58内の第2賞球排出数記憶手段123へ送信されるのである。」(段落【0055】)
シ.「上記排出制御手段58内には記憶保護手段125を設けてあり、例えば上記排出制御装置のI/Oブロック図(図6)において説明した停電検出手段114が停電状態を検出することで、入賞球数記憶手段121および第2賞球排出数記憶手段123の記憶内容を保護するために、記憶保持に必要な電源供給を行うものとし、電源供給停止から所定時間は第2賞球排出数記憶手段123と入賞球数記憶手段121の記憶内容をバックアップできるようにしてある。」(段落【0063】)
ス.「本発明に係る遊技機1によれば、第2賞球排出数記憶手段123に記憶保持された記憶内容は、記憶保護手段125によって保護されるので、遊技中における不意の停電や故障の際にも、遊技者が不利益を受けることなく、入賞球に応じた賞球を確実に獲得することができる。なお、記憶保護手段125を排出制御手段58のみに設ける場合に限らず、電気的制御装置56にも記憶保護手段125′を設けるものとすれば、第1賞球排出数記憶手段118の記憶内容に対する保護も確実ならしめることができ、賞球排出に関連した記憶のバックアップを一層完全なものとなし得る。また、記憶保護手段125,125′は電源供給の可能なものに限らず、例えば不揮発性のメモリを用いるものとして、各記憶内容を記憶保護手段に移し代えることで、電源供給が停止された後にも、賞球排出動作に関連した記憶内容を保護することが可能となる。」(段落【0064】)
セ.「開店等で当該遊技機1の電源が投入された際には、RAMのクリアやフラグの初期設定等の初期化処理を行い、その後に各処理へ移行する。」(段落【0070】)
ソ.「排出制御装置58の起動に際して、先ず、当該遊技機1に対する電源投入によるものか、停電復帰によるものか(後述する停電割込処理において停電記憶がセットされているか)を判定し、電源投入であれば各種のフラグやタイマを初期化する。一方、停電復帰であれば、停電時の出力状態へ戻す(例えば、第1,第2排出ソレノイド77a,77bをオン状態に復帰させたり、排出数表示器28への表示出力を再開する)停電復帰処理を行って、停電によって中断された際の各処理へ戻る。」(段落【0088】)
タ.【図3】から、符番56の部材と符番58の部材が個別の基板に形成されていることが読み取れる。
チ.【図5】には電気的制御装置(符番56)内に電源回路101が存することが、【図6】には排出制御装置(符番58)内に電源回路112が存することがそれぞれ図示されている。

2.引用例1記載の発明の認定
記載又は図示ア?チを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「それぞれ個別に電源回路を有する電気的制御装置及び排出制御手段を備えた遊技機であって、
電気的制御装置は、特別図柄表示装置、変動入賞装置、補助変動入賞装置及び普通図柄表示装置を電気的に駆動制御するとともに、入賞種別検出手段によって検出された入賞球の種別に応じた賞球排出数を個別に記憶する第1賞球排出数記憶手段、賞球排出数送信手段及び記憶保護手段を有し、
排出制御手段は、賞球排出数要求手段、第2賞球排出数記憶手段、停電検出回路及び記憶保護手段を有し、
排出制御手段から賞球排出数要求があると、電気的制御装置の第1賞球排出数記憶手段より賞球排出数送信手段に供給されていた賞球排出数が第2賞球排出数記憶手段へ送信されるように構成されており、
排出制御手段の停電検出回路が停電状態を検出すると、第2賞球排出数記憶手段の記憶内容を排出制御手段の記憶保護手段に移し代えるとともに、第1賞球排出数記憶手段の記憶内容を電気的制御装置の記憶保護手段に移し代えるように構成し、
排出制御装置の起動に際しては、電源投入によるものか、停電復帰によるものかを判定し、電源投入であれば各種のフラグやタイマを初期化する一方、停電復帰であれば、賞球排出数記憶手段が記憶する賞球排出数に基づいて、遊技球排出装置より賞球を排出させる排出動作制御手段と、を備える遊技機。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1の「電気的制御装置」は、「特別図柄表示装置、変動入賞装置、補助変動入賞装置及び普通図柄表示装置を電気的に駆動制御」するものであり、「変動入賞装置、補助変動入賞装置」を制御するに当たっては、「遊技者に有利な状態を発生するか否かを判定する判定機能」が必要なことは自明である。引用例1には同判定を乱数抽選により行うことの直接記載はないけれども、それは遊技機の技術分野における技術常識といえるから、「電気的制御装置」は本願発明の「乱数抽選により遊技者に有利な状態を発生するか否かを判定する判定機能を有する主制御手段(50)」に相当する。
引用発明1の「排出制御手段」は本願発明の「払出し制御手段(70)」に相当し、引用発明1では、「電気的制御装置の第1賞球排出数記憶手段より賞球排出数送信手段に供給されていた賞球排出数が第2賞球排出数記憶手段へ送信される」のだから、「主制御手段(50)から受ける制御信号に基づいて制御を行う払出し制御手段(70)」であることは、本願発明と引用発明1の一致点である。また引用例1の【図3】にあるように、電気的制御装置と排出制御手段が異なる基板に構成されていることは明らかであるから、「主制御手段(50)とは別個の基板(46)に構成され」との事項も本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の電気的制御装置及び排出制御手段は、それぞれ電源回路を有しており、「主制御手段(50)と払出し制御手段(70)とに夫々電力を供給する」点は別として、「主制御手段と払出し制御手段を動作させるための電力を供給する電源手段」を備えることも本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1の「停電検出回路」と本願発明の「電源監視部(82)」は、外部から供給された電源の異常を検出可能」な点で一致する。この停電検出回路を電源回路の一部と見るか、電源回路とは別の手段と見るかは、認識の問題にすぎず構成上の相違ではないから、「電源手段(79)」が「電源監視部(82)」を有することは、相違点を構成せず、一致点として扱う。
引用発明1において、電気的制御装置及び排出制御手段のそれぞれに設けられた「記憶保護手段」は本願発明の「遊技状態に関連する所定の情報を記憶するとともに、その情報を電力供給停止後も記憶保持する為のバックアップ記憶部(39e,46e)」に相当し、記憶の契機となる現象が「外部からの給電の異常を検出した」ことであることも本願発明と引用発明1の一致点である。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「乱数抽選により遊技者に有利な状態を発生するか否かを判定する判定機能を有する主制御手段と、この主制御手段とは別個の基板に構成され且つ主制御手段から受ける制御信号に基づいて制御を行う払出し制御手段と、主制御手段と払出し制御手段を動作させるための電力を供給する電源手段とを備えた遊技機であって、
前記電源手段は、外部から供給された電源の異常を検出可能な電源監視部を有し、
前記主制御手段と払出し制御手段には、電源監視部にて外部からの給電の異常を検出したことを契機として遊技状態に関連する所定の情報を記憶するとともに、その情報を電力供給停止後も記憶保持する為のバックアップ記憶部とを設けた遊技機。」である点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明の「電源手段」は、「主制御手段(50)と払出し制御手段(70)とに夫々電力を供給する」手段であるのに対し、引用発明1のそれは主制御手段及び払出し制御手段のそれぞれに設けられており、「主制御手段と払出し制御手段とに夫々電力を供給する」とはいえない点。
〈相違点2〉本願発明の電源手段が「電源異常信号(VS)を発生する異常信号発生部(83)と、その電源異常信号(VS)を出力する異常信号出力部(84)」を有し、同じく「主制御手段(50)と払出し制御手段(70)」に「電源手段(79)から電源異常信号(VS)を受信する異常信号受信部」を設けるとともに、「前記電源手段(79)の異常信号出力部(84)と、主制御手段(50)と払出し制御手段(70)の異常信号受信部に、信号が逆流するのを防止する逆流防止回路(84a,39f,46f) を夫々設け」、「電源異常信号(VS)の受信を契機として遊技状態に関連する所定の情報を記憶する」構成としたのに対し、引用発明1では、「停電状態を検出する」以上、「異常信号発生部」相当の構成が存することは認められるものの、その余の構成を備えない点。
〈相違点3〉本願発明が「給電再開時にバックアップ記憶部(39e,46e) の記憶情報を消去可能な消去信号(ES)を発生し主制御手段(50)のバックアップ記憶部(39e) と払出し制御手段(70)のバックアップ記憶部(46e) に一斉に出力する消去指令スイッチを前記電源手段(79)に設け、前記主制御手段(50)と払出し制御手段(70)は、給電再開時に消去信号(ES)を受信したときにはバックアップ記憶部(39e,46e) の記憶情報を一斉に消去して予め設定された初期遊技状態に初期化する初期化手段(S2 ?S4) と、給電再開時に消去信号(ES)を受信しなかったときにはバックアップ記憶部(39e,46e) の記憶情報に基づいて遊技状態を復帰させる復帰手段(S7)とを備えた」のに対し、引用発明1では「電源投入によるものか、停電復帰によるものかを判定」するものの、「消去指令スイッチ」を備えるとは認めることができず、消去信号(ES)の有無により上記判定をするとも認めることができない点。

4.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
当審における拒絶の理由に引用した特開2000-79194号公報(以下「引用例2」という。)には、「図2は、遊技機における電源系統図であって、電源基板10とその電源を用いて作動する各種基板の構成である。」(段落【0007】)及び「前記電源基板の出力端子(DC電源2)とメモリバックアップ用電源は、ゲームの制御をなすメイン基板20に接続してあり、ゲームの制御をCPU、ROM等を介して行うと共に、停電等に備えてメモリのバックアップを電池を介して行う。又、賞品球の払出制御を行う払出制御基板30は、前記メイン基板20とは独立基板として作成され、前記電源基板10の出力端子(DC電源1)から給電され、前記メイン基板20のCPUからの信号によって遊技球排出装置65を制御し、所定数の賞品球の払出を行う。」(段落【0008】)との各記載があり、これら記載と【図2】によれば、「メイン基板20」(本願発明の「主制御手段(50)」の基板に相当)と「払出制御基板30」(本願発明の「払出し制御手段(70)」の基板に相当)に対して、共通の電源基板(ここに、本願発明の「電源手段(79)」相当手段が形成されているものと認める。)から電力を供給することが、引用例2に記載されている。この技術を引用発明1に適用し、相違点1に係る本願発明の構成に至ることは、当業者であれば何の困難性もなくなしうることである。

(2)相違点2について
相違点1については上記のとおりであるが、主制御手段及び払出し制御手段とは別個に電源手段を設けた場合であっても、停電検出回路(電源監視部)が電源手段に所属すべきことは当然である。また、電源監視部が主制御手段及び払出し制御手段と離れた場所にある以上、電源異常信号を電源手段から主制御手段及び払出し制御手段に送信することも自然な帰結であり、そうである以上、電源手段に「電源異常信号(VS)を発生する異常信号発生部(83)と、その電源異常信号(VS)を出力する異常信号出力部(84)」を、主制御手段及び払出し制御手段に「電源手段(79)から電源異常信号(VS)を受信する異常信号受信部」をそれぞれ設け、「電源異常信号(VS)の受信を契機として遊技状態に関連する所定の情報を記憶する」構成とすることには何の困難性もない。
また、当審における拒絶の理由に引用した特開2000-107415号公報(以下「引用例3」という。)には、「主基板Cと効果音基板Sとの接続は、入力および出力が固定的な2つのバッファ(インバータゲート)16,27を介し行われている。よって、主基板Cと効果音基板Sとの間におけるデータの送受信は、主基板Cから効果音基板Sへの一方向にのみ行われ、効果音基板Sから主基板Cへデータ等の送信を行うことはできない。」(段落【0017】)との記載があり、「入力および出力が固定的な2つのバッファ(インバータゲート)16,27」とは本願発明でいう「逆流防止回路」にほかならない。
上記引用例3記載のものにおいては、逆流防止回路により主基板と効果音基板間の通信を一方向に制限するものであるが、電源回路と主制御手段及び払出し制御手段間の通信の場合にも、電源異常信号は電源回路から主制御手段及び払出し制御手段の一方向のみ送信されるものであり、その逆はないのだから、相違点1に係る本願発明の構成の採用を前提とした場合に、引用例3記載の技術を、電源回路と主制御手段及び払出し制御手段間に採用、すなわち、電源手段の異常信号出力部並びに主制御手段及び払出し制御手段の異常信号受信部に、逆流防止回路を設けることには困難性がない。
以上のとおりであるから、相違点2に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(3)相違点3について
引用発明1では「電源投入であれば各種のフラグやタイマを初期化する」のであるが、この際「バックアップ記憶部の記憶情報を一斉に消去して予め設定された初期遊技状態に初期化する」ことはせいぜい設計事項というべきである。
引用発明1では、「電源投入によるものか、停電復帰によるものかを判定」しているのであるが、この判定手段としては、両者を識別できる手段であれば任意の手段が採用可能なことは明らかである。
停電復帰は遊技場係員の操作なしに行われるのに対し、電源投入は営業開始前に遊技場係員の操作により行われることが多いことを考慮すれば、遊技場係員の操作の有無を「電源投入によるものか、停電復帰によるものかを判定」する資料とすることには何の困難性もない。
その場合、給電再開時に電源投入であることを停電復帰と区別するための操作部材を設け、同部材が操作された場合に、操作された旨の信号をバックアップ記憶部に出力し、同出力に基づいて「バックアップ記憶部の記憶情報を一斉に消去」することに困難性があるとは到底認めることができない。操作部材及び操作された旨の信号が本願発明の「消去指令スイッチ」及び「消去信号(ES)」に相当し、消去すべきバックアップ記憶部が複数あっても、単一操作で消去信号(ES)を出力すれば十分であること、及びその方が簡便であることは当然であるから、操作部材を単一の部材とし、「消去信号(ES)を発生し主制御手段のバックアップ記憶部と払出し制御手段のバックアップ記憶部 に一斉に出力する」構成とすることは設計事項程度である。
そのような構成を採用した場合には、「前記主制御手段と払出し制御手段」が、「給電再開時に消去信号(ES)を受信したときにはバックアップ記憶部の記憶情報を一斉に消去して予め設定された初期遊技状態に初期化」し、「給電再開時に消去信号(ES)を受信しなかったときにはバックアップ記憶部の記憶情報に基づいて遊技状態を復帰させる」こと、すなわち、本願発明でいう「初期化手段」及び「復帰手段」を備えることは当然の帰結である。
残る検討事項は上記操作部材(消去指令スイッチ)を電源手段に設ける点のみである。そこで検討するに、消去指令が必要となるのは営業開始前等の電源投入時であるが、遊技機の電源スイッチは電源手段に所属して設けられることが多いことを考慮すれば、電源スイッチ近傍に上記操作部材(消去指令スイッチ)に設けることが操作上好都合なことは明らかであるから、消去指令スイッチを電源手段に設けることは設計事項というべきである。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することも当業者にとって想到容易である。

(4)本願発明の進歩性の判断
相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1,引用例2,3記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができないから、本願の請求項2に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-24 
結審通知日 2008-07-28 
審決日 2008-08-08 
出願番号 特願2000-179710(P2000-179710)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 英司山崎 仁之  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
森 雅之
発明の名称 遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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