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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1184918
審判番号 不服2005-19741  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-13 
確定日 2008-09-17 
事件の表示 平成 9年特許願第257561号「機密保持機能を備えた半導体装置、符号処理方法及びそのソフトウエアを記憶した記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月29日出願公開、特開平10-143441〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成9年9月5日(優先日:平成8年9月13日、出願番号:特願平8-265582号)の出願であって、平成17年1月7日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月18日付けで手続補正がなされたものの、同年9月8日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年10月13日付けで審判請求がなされるとともに、同年11月11日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成17年11月11日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月11日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件手続補正
平成17年11月11日付け手続補正(以下、「本件手続補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1,8は、

「 【請求項1】 少なくとも一時的に符号処理プログラムを保持し、前記符号処理プログラムに応じた信号を出力する制御手段と、
前記信号が与えられて前記プログラムに従って論理を変更して、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に符号処理を施す論理が可変な論理手段と、
前記論理手段によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置とを備え、
前記記憶装置を、製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とを用いて構成したことを特徴とする機密保持機能を備えた半導体装置。」

及び

「 【請求項8】 論理が変更可能な論理回路と、前記論理回路を制御する制御装置と、前記論理回路によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置として、製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とが用いられている機密保持機能を備えた半導体装置の符号処理方法であって、
前記制御装置に符号処理プログラムを供給するプログラム供給ステップと、
前記制御装置から前記プログラムに応じた信号を出力させる信号出力ステップと、
前記制御装置から出力された信号を前記論理回路に与えて前記プログラムに従って前記論理回路の論理を変更する論理変更ステップと、
前記論理変更ステップにおいて変更した論理によって、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に前記符号処理を施す符号処理ステップと、
前記符号処理ステップにおいて符号処理が施されたデータを記憶装置に記憶するデータ記憶ステップとを備えたことを特徴とする符号処理方法。」

から、

「 【請求項1】 外部装置と接続するための端子と、
前記端子を介して接続された外部装置から入力される符号処理プログラムを少なくとも一時的に保持し、前記符号処理プログラムに応じた信号を出力する制御手段と、
前記外部装置から前記信号が与えられて前記符号処理プログラムに従って論理を変更して、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に符号処理を施す論理が可変な論理手段と、
前記論理手段によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置とを備え、
前記記憶装置を、製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とを用いて構成し、
前記外部装置から入力される論理上のアドレスを、前記論理手段により前記記憶装置の構造上のアドレスに変換することにより、前記マスクROMに書き込まれている暗号化された内容を読み出すとともに、前記外部装置から入力されるデータを前記論理手段により暗号化して前記不揮発性記憶装置に書き込むようにしたことを特徴とする機密保持機能を備えた半導体装置。」

及び

「 【請求項4】 外部装置と接続するための端子と、前記端子を介して接続された外部装置から入力される符号処理プログラムを少なくとも一時的に保持し、前記符号処理プログラムに応じた信号を出力する制御手段と、前記外部装置から前記信号が与えられて前記符号処理プログラムに従って論理を変更して、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に符号処理を施す論理が可変な論理手段と、前記論理手段によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置が製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とを用いて構成されている記憶装置とを備えた半導体装置の符号処理方法であって、
前記外部装置から入力される論理上のアドレスを、前記論理手段により前記記憶装置の構造上のアドレスに変換することにより、前記マスクROMに書き込まれている暗号化された内容を読み出すとともに、前記外部装置から入力されるデータを前記論理手段により暗号化して前記不揮発性記憶装置に書き込むようにしたことを特徴とする符号処理方法。」

へと補正された。

(2)判断
本件手続補正は、平成17年3月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「補正前の請求項1」という。)に「外部装置と接続するための端子」及び「前記外部装置から入力される論理上のアドレスを、前記論理手段により前記記憶装置の構造上のアドレスに変換することにより、前記マスクROMに書き込まれている暗号化された内容を読み出すとともに、前記外部装置から入力されるデータを前記論理手段により暗号化して前記不揮発性記憶装置に書き込むようにした」という発明特定事項を新たに付加して、本件手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下「補正後の請求項1」という。)とする補正を含むが、この補正は、補正前の請求項1について、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。
また本件手続補正は、「符号処理方法」という方法のカテゴリに属する発明を、特許請求の範囲の請求項4(以下「補正後の請求項4」という。)に記載された発明とする補正を含む。
この補正が、平成17年3月18日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項8(以下「補正前の請求項8」という。)についての補正であるとすれば、この補正は、補正前の請求項8に記載された発明から各ステップを削除すると共に、「前記外部装置から入力される論理上のアドレスを、前記論理手段により前記記憶装置の構造上のアドレスに変換することにより、前記マスクROMに書き込まれている暗号化された内容を読み出すとともに、前記外部装置から入力されるデータを前記論理手段により暗号化して前記不揮発性記憶装置に書き込むようにした」という発明特定事項を新たに付加するものであるから、補正前の請求項8に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。
この補正が、補正前の請求項1についての補正であるとすれば、補正前の請求項1は「半導体装置」という物のカテゴリに属する発明であるのに対して、補正後の請求項4は、上記したように方法のカテゴリに属する発明であるから、この補正は、補正前の請求項1について、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではない。

したがって、補正後の請求項1に対する補正、及び、補正後の請求項4に対する補正は、補正前の請求項1、及び、補正前の請求項8について、請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、補正後の請求項1、及び、補正後の請求項4に対する補正は、請求項を削除するものではなく、誤記を訂正するものでもなく、拒絶の理由についてする明りょうでない記載を釈明するものでもないから、特許法第17条の2第4項第1号、第3号、第4号の何れにも該当しない。

(3)むすび
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

III.本願発明
平成17年11月11日付け手続補正は、上記II.のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年3月18日付け手続補正により補正された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】 少なくとも一時的に符号処理プログラムを保持し、前記符号処理プログラムに応じた信号を出力する制御手段と、
前記信号が与えられて前記プログラムに従って論理を変更して、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に符号処理を施す論理が可変な論理手段と、
前記論理手段によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置とを備え、
前記記憶装置を、製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とを用いて構成したことを特徴とする機密保持機能を備えた半導体装置。」

IV.引用発明
引用文献1.特開昭63-70355号公報
引用文献2.特開平8-77035号公報
引用文献3.特開平3-189836号公報

引用文献1は原査定の拒絶の理由に引用された文献であり、引用文献2,3は、当業者の周知技術を示すために当審において新たに引用した文献である。

(1)引用文献1には、図面と共に次の事項が記載されている。

A.「[産業上の利用分野]
この発明は、データ処理技術さらには信号の符号化及び復号化に適用して特に有効な技術に関するもので、例えば、PROM(Programabla ROM)を内蔵するカード用マイクロコンピュータに利用して有効な技術に関する。」(1頁右欄1-6行)

B.「[発明が解決しようとする問題点]
・・・(中略)・・・
また、ソフトウェアによる機密保護においては、ハードウェア的な不正読出し、例えば、マスクROMの内容を外観的に読む、或いは電子顕微鏡により内部バス上の情報を読む、などに対しては効果がなかった。
本発明の目的は、メモリセルの有効な活用や内部情報の機密保護などユーザの多様な仕様要求に即座に応じられる手段を提供することにある。」(2頁左上欄8行-右上欄7行)

C.「[実施例]
第1図は、本発明をEEPROMを内蔵するカード用マイコンに適用した場合の実施例である。
同図において、特に制限されないが、図中二点鎖線10で囲まれた各回路ブロックは単結晶シリコン基板のような一個の半導体チップ上に形成される。
CPU1、RAM2、ROM3、EEPROM4は、アドレスバスAB、データバスDBで結合され、半導体集積回路外とのデータのやりとりは、入出力回路5を介して行なわれる。特に制限はされないが、データ変換回路6およびデータ変換回路7が設けられている。」(2頁左下欄1-13行)

D.「なお、特に制限されないが、チップ外部には図示しない暗号化手段が設けられており、これによって、通常データ(CPU1内部で扱われるデータ)が暗号化されたものが入出力回路5を介してデータバスDB上に供給されるようにされている。チップ内部のデータバスDB上およびRAM2,ROM3上は、すべて暗号化されたデータが扱われるようにされており、第3者からの不正なデータの読み出しが容易に行なわれないようにされている。
また、特に制限されないがCPU1より送出されるコントロール信号CS1のハイレベルがスイッチ(切換え回路)SW1及びEEPROM4に供給されると、データバスDB上のデータがそのままEEPROM4に書き込まれる。・・・(中略)・・・従って、データの保持が短時間でよい場合、大きなメモリ容量を必要とする場合、或いは自己診断のためにすべてのメモリセルを使用する必要がある場合には、コントロール信号CS1をハイレベルにして、データバス上の暗号化データをそのままEEPROM4に書き込むようにすることができ、EEPROMのメモリセルを有効に活用することができる。」(2頁左下欄14行-右下欄19行)

E.「なお、CPU1には、上記データ変換回路6と略同様の構成にされるデータ変換回路7によって、特に制限はされないが暗号化データが通常データに変換されたデータが供給されるようにされている。これはCPU1で暗号化データを扱うことはソフトウェアの負担を大きくしてしまうためである。」(3頁左上欄7-13行)

F.「第2図に、データ変換回路6の説明図を示す。
データ変換回路6は、メモリ60、デコーダ61、出力バッファ62、スイッチSW2とからなる。
データ変換用メモリ60は、特に制限はされないが例えば、EPROM(Erasoble Programable ROM)のような使用者が自由にプログラムが可能で書き換え可能なメモリであり、その中には変換前のデータと比べてビット数の等しいまたは異なる符号化データが格納される。スイッチSW2は、CPU1より供給されるコントロール信号CS2によって制御される。・・・(中略)・・・一方、スイッチSW2にロウレベルのコントロール信号CS2が供給された場合は、スイッチSW2は、CPU1より送出されるアドレス信号をメモリ60に供給する。従って、メモリ60への符号化データの書込みは、スイッチSW2にロウレベルのコントロール信号CS2を供給して、CPU1より出力されるアドレス信号をメモリ60へ供給してアドレスを指定してから符号化データを与えることで行なうことができる。・・・(中略)・・・メモリ60内の符号化データの書換えを行なえばデータ変換の内容を変更することができる。・・・(中略)・・・
さらに、データ変換回路6内には、図示しないが、第2図に示したものと同様な構成にされ、逆方向にデータを変換する機能を有する回路が内蔵されている。特に制限はされないが、これら2つのデータ変換の内容はいわゆる逆変換であってよい。」(3頁左上欄13行-右上欄2行)

G.「さらに上記した実施例では、チップ上にデータを暗号化するためのデーター変換回路を設けることにより、チップ内のデータバス上のデータを暗号化データにすることができるという作用により、チップ内で扱われるデータの機密保護がハードウェアで行なえるという効果が得られる。また、更にこのデータ変換の内容がソフトウェアによりプログラム可能であり、ユーザによって設定できるという作用により機密保護を強化することができという効果が得られる。これは、暗号化の内容はユーザのみが知っているためである。」(5頁右上欄15行-左下欄5行)

H.「また、データ変換回路はデータバス上に限らず、アドレスバス上に設けてもよい。CPUより送出されるアドレスを一種のデータと考え、このデータ変換回路を使用すれば、メモリのデコーダが順序的であってもCPUのメモリ空間がスクランブルされてメモリに反映され、機密保護上有用である。即ち、マスクROMを外観的に読むことができても、そのデータの順序が分からず、全体的な内容を知ることは困難である。」(5頁左下欄9-17行)

(a)上記A,Cの記載からみて、引用文献1には、一個の半導体チップ上に形成されたマイクロコンピュータの発明が記載されている。上記B、D,Gの記載からみて、マイクロコンピュータは、データバス上のデータ及びRAM,ROM,EEPROM上のデータを暗号化されたものとすることで、データの機密保護をするものである。

(b)上記C,Fの記載から見て、マイクロコンピュータは、コントロール信号及びアドレス信号を出力するCPUを有している。

(c)上記Gの記載からみて、マイクロコンピュータは、データバス上のデータを暗号化データにするためのデータ変換回路であって、データ変換の内容がソフトウェアによりプログラム可能であるデータ変換回路を有している。
ところで、上記Eの記載からみて、CPUには、データ変換回路7によって、暗号化データが通常データに変換されたデータが供給されるようにされており、そのデータ変換回路7は、データ変換回路6と略同様の構成にされる回路である。そして、上記Fの記載からみて、データ変換回路6内には、順方向にデータを変換する回路と共に、第2図に示したものと同様な構成にされ、逆方向にデータを逆変換する回路が内蔵されている。
そうすると、上記したデータバス上のデータを暗号化データにするためのデータ変換回路とは、暗号化データを通常データへ変換してCPUに供給すると回路とは、逆方向に逆変換をする回路であるから、データ変換回路6と略同様の構成にされるデータ変換回路7が内蔵する回路であって、第2図に示したものと同様な構成にされた回路である。
してみれば、データバス上のデータを暗号化データにするためのデータ変換回路は、データ変換の内容がソフトウェアによりプログラム可能であって、第2図に示したものと同様な構成にされた回路であるから、上記Fの記載からみて、データ変換回路6と同様に、コントロール信号及びアドレス信号により制御されてデータ変換の内容を変更する回路である。

(d)上記C,Dの記載からみて、マイクロコンピュータは、その上で暗号化されたデータが扱われるROMを有している。上記B,Hの記載からみて、そのROMはマスクROMである。

(e)上記Cの記載からみて、マイクロコンピュータは、データバス上の暗号化データがそのまま書き込まれるEEPROMを有している。

してみると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

コントロール信号及びアドレス信号を出力するCPUと、
データバス上のデータを暗号化データにするためのデータ変換回路であって、コントロール信号及びアドレス信号により制御されてデータ変換の内容を変更することで、データ変換の内容がソフトウェアによりプログラム可能であるデータ変換回路と、
その上で暗号化されたデータが扱われるマスクROMと、
データバス上の暗号化データがそのまま書き込まれるEEPROMと、
を有し、
データの機密保護をする、一個の半導体チップ上に形成されたマイクロコンピュータ

(2)引用文献2(33段落、図1)、引用文献3(1頁右欄12行-2頁左上欄9行、第7図)にそれぞれ記載されている如く、マイクロコンピュータにおいて、プログラムを保持するRAMを設けることは、本願優先日前に周知の技術である。

V.対比
本願発明と引用発明とを対比する。

引用発明が「データの機密保護をする、一個の半導体チップ上に形成されたマイクロコンピュータ」に係る発明であることは、本願発明が「機密保持機能を備えた半導体装置」に係る発明であることに相当する。

引用発明における「コントロール信号及びアドレス信号を出力するCPU」は、CPUがプログラムにより動作するものであって、コントロール信号及びアドレス信号が、データ変換装置における暗号化すなわち符号処理の内容を変更するための信号であることにより、そのプログラムは符号処理プログラムといえることから、本願発明における「符号処理プログラムに応じた信号を出力する制御手段」に対応する。

引用発明における「データバス上のデータを暗号化データにするためのデータ変換回路であって、コントロール信号及びアドレス信号により制御されてデータ変換の内容を変更することで、データ変換の内容がソフトウェアによりプログラム可能であるデータ変換回路」は、コントロール信号及びアドレス信号がCPUから与えられ、それら信号により制御がなされて、CPUを動作させるプログラムに従い、データ変換の内容すなわち論理を変更するものであって、データバス上のデータを暗号化データにするものであり、暗号化は符号処理の一種であることから、本願発明における「前記信号が与えられて前記プログラムに従って論理を変更して、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に符号処理を施す論理が可変な論理手段」に相当する。

引用発明における「その上で暗号化されたデータが扱われるマスクROM」は、マスクROMが、製造するときに記憶内容が書き込まれるものであることから、本願発明における「製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROM」に相当し、引用発明における「EEPROM」は、本願発明における「内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置」に相当する。
そして、引用発明における「EEPROM」は、「データバス上の暗号化データがそのまま書き込まれる」ものであるところ、「データ変換回路」が「データバス上のデータを暗号化データにするための」ものであることから、データ変換回路により暗号化されたデータバス上の暗号化データが書き込まれるものであるから、引用発明における「マスクROM」及び「EEPROM」を併せたものは、本願発明における「前記論理手段によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置」に相当し、「前記記憶装置を、製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とを用いて構成した」ことにも相当する。

以上で検討したことから、本願発明と引用発明とは、以下に挙げる一致点で一致し、相違点で相違している。

(一致点)
符号処理プログラムに応じた信号を出力する制御手段と、
前記信号が与えられて前記プログラムに従って論理を変更して、少なくともデータまたは前記データに関わるアドレスのいずれか一方に符号処理を施す論理が可変な論理手段と、
前記論理手段によって符号処理されたデータを記憶する記憶装置とを備え、
前記記憶装置を、製造する時に内容が暗号化されて書き込まれたマスクROMと、内容の書き換えが電気的に可能な不揮発性記憶装置とを用いて構成したことを特徴とする機密保持機能を備えた半導体装置。

(相違点)
制御手段が、本願発明では「少なくとも一時的に符号処理プログラムを保持」するものであるのに対して、引用発明では、そのようなことを行うものであるか明らかでない点。

VI.判断
上記相違点について検討する。
上記IV.(2)において述べたように、マイクロコンピュータにおいて、プログラムを保持するRAMを設けることは、本願優先日前に周知の技術である。RAMは、プログラムに限らずデータ一般を一時的に保持するものであるから、そのRAMにより、少なくとも一時的にプログラムが保持されるといえる。
引用発明のマイクロコンピュータにおいて、上記周知技術の如く、プログラムを保持するRAMを設けて、そのRAMに一時的に符号処理プログラムを保持するようにし、CPUとそのRAMとを併せたものを「制御手段」として構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。

また、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

VII.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-14 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-05-08 
出願番号 特願平9-257561
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 克  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 中里 裕正
鈴木 匡明
発明の名称 機密保持機能を備えた半導体装置、符号処理方法及びそのソフトウエアを記憶した記憶媒体  
代理人 松島 鉄男  
代理人 奥山 尚一  
代理人 有原 幸一  

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