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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G08B
管理番号 1185060
審判番号 不服2006-25656  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-11-14 
確定日 2008-09-26 
事件の表示 特願2001-344304「機械警備システムにおける時刻校正方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月23日出願公開、特開2003-151046〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年11月9日の出願であって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月7日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「機械警備システムのための所定の監視センタによって監視される複数の警備用装置のそれぞれにおける時計装置の時刻校正を行うための機械警備システムにおける時刻校正方法において、
標準時刻データを受信するための受信機を前記複数の警備用装置のうちの少なくとも1つに設けておき、前記受信機によって得られた標準時刻データを配電線を介して前記複数の警備用装置のうち前記受信機を備えていない警備用装置に各時計装置の時刻校正のための情報として送るようにしたことを特徴とする機械警備システムにおける時刻校正方法。」

2.引用例
(1)これに対して、当審における、平成20年4月10日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開平11-183670号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ビルオートメーションやホームオートメーションなどに用いる監視装置に関し、特に標準電波を受信して自動的に内蔵時計の時刻を修正する機能を有する電波時計付き監視装置に関する。
【0002】
【従来の技術】標準電波は郵政省通信総合研究所の管理の下でNNT名崎無線送信所から24時間送信されている。標準電波は、周波数の標準として一般に利用できるように、きわめて正確な搬送周波数(誤差は±1×10-11 以内)で発射されている電波であり、この電波には時刻と時間を示す報時信号を重ねたり、標準音声信号周波数の変調を行ったり、電波警報を乗せたりすることもある。我が国では、JJYの局符号で、国際的に共通な5、10MHzの周波数と、我が国独自の8MHzの周波数とで休み無く送信されているとともに、JG2ASの局符号で40KHzの周波数によっても送信されており、各種の測定や研究に大いに利用されている。上述のような標準電波からは、これを受信し、適切な手段で増幅、検波、デコードすることで、正確な日本標準時を得ることができる。
【0003】一方、情報化の発達した近年にあっては、ビルや集合住宅では、コンピュータ技術や通信技術を駆使した中央監視装置や警報監視装置を設置して、照明制御やセキュリティ監視の一括管理を行っている。また、一般住宅においても、セキュリティ管理のためにホームコントコーラなどの監視装置が、設置されるようになってきている。そして、これらの中央監視装置や警報監視装置にあっては、それぞれ自己の内蔵時計を具備しており、この内蔵時計に基づいて、例えば、スケジュール制御を行ったり、異常発生の日時や監視記録の日時などを記憶部に記憶したり、プリンターで印字したりしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、従来の中央監視装置や警報監視装置などの各種監視装置が具備している内蔵時計にあっては、内蔵時計が狂っていたりすると、とんでもないときにスケジュール制御が実行されてしまったり、また、特にセキュリティ絡みの問題にあっては、印字記録を辿っても監視装置相互の時間的経過の整合性がとれずに、問題解決に至らないことになる場合がある。
【0005】そこで、監視装置にあっては、内蔵時計は、高精度のものが要求され、一般に高精度の水晶時計が使用される。しかし、そのような高価な水晶時計であっても月差±数秒程度の精度である。また、監視装置にあっては、停電があっても再び復電したときに監視装置が自動的に再起動できるように、内蔵時計はリチウム電池などのバックアップ電池にて保護される。しかし、電池寿命よりも設備寿命の方が長いので電池交換などのメンテナンスが必要になり、メンテナンスを怠ると停電発生時に内蔵時計が狂ってしまう。更に、中央監視装置と、照明監視装置や警報監視装置などのサブシステムとの間でデータ通信を行うような場合、それぞれの内蔵時計が狂っていると、記録の整合性が保たれないという問題点があった。」

・「【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る電波時計付き監視装置の一実施の形態を図1?図3に基づいて詳細に説明する。図1は電波時計付き監視装置の構成を示すブロック図、図2は電波時計付き監視装置の電源投入時の時刻設定手順を示す流れ図、図3は電波時計付き監視装置の定期的な時刻修正手順を示す流れ図である。なお、監視装置は一般に知られているものであり、監視装置の動作についての説明は省略する。
【0011】図1に示す電波時計付き監視装置1は、標準電波受信アンテナ10と、標準電波受信回路11と、内蔵時計12と、中央演算処理装置13と、監視回路14とを含んで構成される。
【0012】標準電波受信アンテナ10は、棒状のフェライトにコイルを巻装したバーアンテナが用いられる。このとき、監視装置1の筐体に金属が用いられていると、筐体の内部では金属の電波遮蔽効果により標準電波を受信できないので、標準電波受信アンテナ10をアンテナカバー10aにて覆って筐体の外部に設ける。
【0013】標準電波受信回路11は、図示しないが、AGCアンプ、水晶フィルタ、検波回路、コンパレータとを含んで構成され、標準電波受信アンテナ10の受信する標準電波に対して包絡線検波を行って、標準時情報に相当するタイムコードを出力する。内蔵時計12は、電波時計付き監視装置1の自己基準時刻を生成する部分であり、一般に集積回路化されたリアルタイムクロックICが用いられる。
【0014】中央演算処理装置13は、電波時計付き監視装置1の全体を統括制御するものであり、デコード部13aと時刻修正部13bとを含んで構成されている。デコード部13aは、標準電波受信回路11の出力するタイムコードの各ビットのデューティ比を測定して、0と1との判定を行うことによってデコードを行い、標準時を得る。時刻修正部13bは、デコード部13aの得た標準時に基づいて、内蔵時計12の時刻を修正する。
【0015】監視回路14は、中央演算処理装置13からの指示の下で、センサ(図示せず)などを介して予め定められた監視対象を監視しており、監視対象に異常などが発生する毎に、その旨を中央演算処理装置13に通知する。すると、中央演算処理装置13は、監視回路14から監視対象に異常などが発生した旨の通知を受ける毎に、日時を付したデータを作成して記憶したり、プリンター(図示せず)で印字して記録したりする。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「ビルオートメーションやホームオートメーションのための中央監視装置によって一括管理される複数の監視装置のそれぞれにおける内蔵時計の時刻の修正を行うためのビルオートメーションやホームオートメーションにおける時刻の修正方法において、
標準時を受信するための標準電波受信回路を前記複数の監視装置に設けておき、前記標準電波受信回路によって得られた標準時により前記内蔵時計の時刻を修正するビルオートメーションやホームオートメーションにおける時刻の修正方法。」

(2)同じく、引用した特開平9-230070号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0040】第4の発明と第6の発明を合わせた一実施例について、図5を参照しながら説明する。図5において、時間補正システムは、放送信号源27と、現在時刻を保持する主装置18と、主装置18からの時間情報により時刻を更新する従装置19と、主装置18と従装置19間でデータ伝送を行うための信号伝送手段20とからなり、信号伝送手段20の媒体は電力線を用いている。
【0041】また、基準となる主装置18の調時を行うために、放送信号源27と、放送信号源27から時間情報を取り出す時刻情報取り出し部21と、時刻情報取り出し部21の出力信号に基づいて主装置18の内部時刻計時部23Aを調時する主装置調時部22とを設けた構成としている。一方、従装置の内部時刻計時部23Bの調時を行うために信号伝送部28Bから時間情報を受け取り、内部時刻計時部23Bの調時を行う従装置調時部26が設けられている。
【0042】上記構成における動作について説明する。主装置18の調時を行うときには、主装置18は放送信号源27(例えば、NHKの時報)からの信号を受信し、時刻情報取り出し部21が放送信号源27から時刻情報を取り出す。そして、時刻情報取り出し部21からの時刻情報に基づき主装置調時部22が内部時刻計時部23Aの時刻を書き換える。主装置18の現在時刻表示部24Aは、内部時刻計時部23Aの時刻を表示する。
【0043】次に、主装置18から、従装置19の内部時刻計時部23Bを調時するときの動作について説明する。主装置18と従装置19間で時刻情報のデータ伝送を行うときには、電力線を媒体とした信号伝送部20を利用する。まず、主装置18内の内部時刻計時部23Aが、信号伝送手段28Aに対して時刻情報を出力し、主装置18の信号伝送手段28Aと従装置19の信号伝送手段28Bとの間で、時刻情報のデータ伝送を行う。このとき信号送受信手段28A、Bは電力線搬送によって行われる。従装置19の信号伝送手段28Bで受信された時刻情報は、従装置調時部26に出力され、従装置調時部26は受信した時刻情報に基づき従装置19の内部時刻計時部部23Bを調時する。また、従装置19の現在時刻表示部24Bは、内部時刻計時部23Bの時刻をそのまま表示する。」

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例2には、図5の実施例に係る次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。

「主装置の時刻情報取り出し部によって得られた時刻情報を電力線を介して前記時刻情報取り出し部を備えていない従装置に各内部時刻計時部の調時のための情報としてデータ伝送する、複数の装置における調時方法。」

3.対比
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者における「ビルオートメーションやホームオートメーション」が前者における「機械警備システム」に相当し、以下同様に、
「中央監視装置」が「所定の監視センタ」に、
「一括管理される」態様が「監視される」態様に、
「監視装置」が「警備用装置」に、
「内蔵時計」が「時計装置」に、
「時刻の修正」が「時刻校正」に、
「標準時」が「標準時刻データ」に、
「標準電波受信回路」が「受信機」に、
「複数の監視装置に設けてお」く態様が「複数の警備用装置のうちの少なくとも1つに設けてお」く態様に、それぞれ相当している。
また、後者の「標準電波受信回路によって得られた標準時により内蔵時計の時刻を修正する」構成と前者の「受信機によって得られた標準時刻データを配電線を介して複数の警備用装置のうち前記受信機を備えていない警備用装置に各時計装置の時刻校正のための情報として送るようにした」構成とは、「受信機によって得られた標準時刻データを時計装置の時刻校正のための情報として利用する」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「機械警備システムのための所定の監視センタによって監視される複数の警備用装置のそれぞれにおける時計装置の時刻校正を行うための機械警備システムにおける時刻校正方法において、
標準時刻データを受信するための受信機を前記複数の警備用装置のうちの少なくとも1つに設けておき、受信機によって得られた標準時刻データを時計装置の時刻校正のための情報として利用する機械警備システムにおける時刻校正方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
受信機によって得られた標準時刻データを時計装置の時刻校正のための情報として利用する際に、本願発明は、標準時刻データを「配電線を介して複数の警備用装置のうち前記受信機を備えていない警備用装置に各」時計装置の時刻校正のための情報として「送る」ようにしているのに対し、引用発明1では、各監視装置に設けられている標準電波受信回路で得られた標準時により、その監視装置における内蔵時計の時刻を修正している点。

4.判断
上記相違点について以下検討する。

受信機によって得られた標準時刻データを利用した時計装置の時刻校正方法として、引用発明2は、主装置の時刻情報取り出し部(本願発明の「受信機」に相当、以下同様)によって得られた時刻情報(「標準時刻データ」)を電力線(「配電線」)を介して前記時刻情報取り出し部を備えていない従装置(「受信機を備えていない警備用装置」)に各内部時刻計時部(「各時計装置」)の調時(「時刻校正」)のための情報としてデータ伝送する(「送る」)ようにしたものである。
引用発明1と引用発明2は、複数の装置がそれぞれ備える時計の時刻を一致させるという共通の課題を解決するものであり、また、同等の機能を実現するために共通化等により構成をより簡略化してコストを削減することは、当然要求される課題であるから、かかる課題の下に、引用発明1における時刻の修正方法を、引用発明2の上記時刻校正方法に置換して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願発明の全体構成によって奏される効果も、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

5.むすび
したがって,本願発明は,引用発明1及び引用発明2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-07 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-31 
出願番号 特願2001-344304(P2001-344304)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G08B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日比谷 洋平  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 仁木 浩
小川 恭司
発明の名称 機械警備システムにおける時刻校正方法  
代理人 高野 昌俊  

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