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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1185062
審判番号 不服2007-1423  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-16 
確定日 2008-09-26 
事件の表示 平成9年特許願第103948号「電子部品搬送体用カバ-テ-プ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月20日出願公開、特開平10-278966〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成9年4月7日の出願であって、平成18年5月8日付け(発送:同年5月16日)拒絶理由通知に応答して、平成18年6月8日付けで明細書を対象とする手続補正がなされたが、平成18年12月12日付け(発送:同年12月19日)で拒絶査定され、平成19年1月16日にこれを不服として審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成18年6月8日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1は次のとおり記載されている。
「電子部品キャリアテ-プに接着されるカバ-テ-プであり、側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電機能層が基材の片面に設けられ、該静電機能層上に中間層が設けられ、該中間層上に接着剤層が設けられていることを特徴とする電子部品搬送体用カバ-テ-プ。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

第3 刊行物の記載事項
(1) 刊行物1に記載された発明
本願出願前に頒布された実願昭63-148090号(実開平2-69864号)のマイクロフィルム(以下「刊行物1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「(産業上の利用分野) 本考案はキャリヤーテープ用蓋材に関し、更に詳しくはIC関連電子部品等の包装や運搬に有用なキャリヤーテープの蓋材に関する。」(第1頁第13?16行)
(b)「本考案のキャリヤーテープ蓋材は第1図示の如く、合成樹脂フィルム1、導電性樹脂フィルム3及び易開封性ヒートシール層4がこの記載の順序で積層されていることを特徴としている。」(第4頁第12?15行)
(c)「合成樹脂フィルム1と導電性樹脂フィルム3との接着は、必要に応じて接着剤を用いて行う。用いる接着剤は上記の合成樹脂フィルム1及び導電性樹脂フィルム3の性質によって選択すればよく、例えば、2液型のウレタン系接着剤、例えば、商品名タケラック(武田薬品)の名で入手できる接着剤が好ましく使用され、接着層2を形成する。」(第5頁第14行?第6頁第1行)
(d)「(効 果) 以上の如き考案によれば、キャリヤーテープ用蓋材の導電部として導電性に優れた導電性樹脂フィルムを用いることによって、帯電防止性に優れ、且つ開封性及び帯電防止性が長期間良好に保持でき、更に開封時にも帯電を生じることなく内容物を損傷させないキャリヤーテープ用蓋材が提供される。」(第7頁第1?8行)
(e)「ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡製、E5100、厚み25μm)の表面に接着剤(タケラックA515、武田薬品)10重量部、架橋剤(タケネートA50、武田薬品製)1重量部及び酢酸エチル-アルコール混合溶剤10重量部からなる接着剤溶液を0.1g/m^(2)(固形分)の割合で塗布し、溶剤を蒸発させた後、導電性樹脂フィルム(オークテックCu103♯50、三島製紙、厚さ50μm)のコロナ放電処理面と圧着させた。」(第8頁第14行?第9頁第2行)
(下線は当審において付与したものである。)

したがって、刊行物1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。

「IC関連電子部品等のキャリヤーテ-プに接着される蓋材であり、導電性樹脂フィルムが接着層を介して合成樹脂フィルムの片側に設けられ、該導電性樹脂フィルム上にヒートシール層が設けられているキャリヤーテープの蓋材。」

(2) 刊行物2に記載された技術的事項
本願出願前に頒布された特開平7-252456号公報 (以下「刊行物2」という。)の段落【0001】、【0002】、【0003】、【0005】、【0007】、【0008】、【0010】、【0011】、【0012】、【0016】及び【0018】には、以下の事項が記載されている。
(a)「【0001】
【産業上の利用分野】 本発明はプラスチックフィルム外表面の静電気発生を抑止し、包装材料、情報記録材料、建築材料、印刷材料、電子材料などの多くの静電気障害を問題とする分野に有効な材料を提供するものである。」
(b)「【0002】
【従来の技術】 プラスチックフィルムやその積層物は様々の分野で用いられているが、プラスチック自体の誘電性のために、接触や剥離によってフィルムが帯電するという欠点を有している。プラスチックフィルムやその積層物が帯電すると、チリや小さなゴミがフィルムに付着し、食品類や医薬品の包装材料として好ましくない。又プラスチックフィルムを印刷する際の給紙適性及び排紙適性が悪化するなどの問題がある。」
(c)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】 本発明は、フィルムの外表面が基材フィルム自体であって、しかも高い帯電防止性能を長く持続することのできる素材の開発を目的とする。」
(d)「【0005】
(1)静電誘電防止性を有する架橋性重合体からなる接着プライマー。
(2)架橋性重合体は側鎖に、少なくとも、カルボキシル基及び4級アン モニウム塩基を有する架橋性共重合高分子である上記(1)項記載 の接着プライマー。
(3)プラスチックフィルム基材に上記(1)項又は(2)記載の接着プ ライマーからなるプライマー層を有する静電誘導防止性積層フィル ム。
(4)プラスチックフィルム基材層、上記(1)項又は(2)記載の接着 プライマーからなるプライマー層、接着剤層、及び他のプラスチッ クフィルム層からなる静電誘導防止性積層フィルム。」
(e)「【0007】
架橋性共重合高分子中の4級アンモニウム塩基は誘電分極性と導電性による速やかな誘電分極緩和性を付与する効果を有し、カルボキシル基は架橋性を高める効果を有し、ヒドロキシル基は接着剤中の官能基、例えばイソシアネート基と反応して接着性を高める効果を有する。
この基本構造の架橋性共重合高分子がプライマーとして有効に機能するために、接着剤層との熱圧着時に、さらにプライマ層に架橋反応を行わしめる要素として多官能単量体を反応させた共重合物を本発明のプライマーとする。」
(f)「【0008】
本発明で用いる架橋性共重合体は、上記の各官能基を有する単量体を共重合することによって得ることができる。各単量体の具体例は、末端に-COOH基をもつ単量体としてはアクリル酸(メタを含む)、アクロイルオキシエチルコハク酸、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸(メタを含む)などが挙げられる。」
(g)「【0010】
本発明の接着プライマーが適用されるプラスチックフィルム基材としては特に制限がなく、それぞれの利用分野で用いられているものが適用可能である。具体例を挙げると、配向された又は未配向のポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、低密度線状ポリエチレン(LLDPE)などのポリオレフィン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢ビ共重合体などの汎用又は特殊用途のプラスチックフィルム及びそのラミネートである。これらは用途により、他の高分子とブレンドされたり着色料などの充填剤を含んでいてもよい。
この基本材料となる積層フィルムはそれ自体でフィルム基材と接着剤とのアンカー材料として帯電防止性と密着性をもつ性能を満足するものである。しかし、フィルム基材の種類やラミネート方法などによって耐熱性、接着強度などを増強を必要とする場合には上記2官能、あるいは3官能エポキシ単量体を添加、調整して架橋密度を高めることができる。」
(h)「【0011】
この場合の添加量は架橋性共重合体の2?15重量%である。また、エポキシ架橋触媒については添加するエポキシ単量体のエポキシ当量と触媒のアミン当量により算出される添加量でよい。このように調整されたプライマーをフィルム基材に塗布し、加熱乾燥した後、ドライラミネート用接着剤にて他のフィルム基材と積層・接着した複合フィルムはフィルム基材の両外面が基材固有の高い表面抵抗値にもかかわらず、摩擦・剥離帯電を生じない特異な複合フィルムにすることができる。さらに、この複合フィルムは他の接触したプラスチックフィルム表面にも摩擦帯電を生じることがない。接触するフィルムの厚さが0.5mm程度までは同様の現象を発現できる。従って、この複合フィルムはその外表面周辺に浮遊する塵埃(細菌などを含む)を吸着汚染することなく、従来からラミネートフィルムの帯電防止対策としての問題点を帯電防止剤を用いることなく一挙に解決できる有用な材料として提供するものである。」
(i)「【0012】
この発明のプライマーによる複合ラミネートフィルムの帯電防止性能は、従来の帯電防止剤の低い表面抵抗値による帯電荷の散逸現象とは全く異なる機能によるもので、静電気誘導(誘電)防止機能によるものである。即ち、本発明の接着プライマーによる積層フィルムの中間接着プライマー層は高い誘電率と導電性をもっており、フィルム外表面の帯電荷により誘電分極される。誘電分極した中間接着プライマー層の対電荷は層間で導電中和されるため、極めて短い緩和時間で分極電荷が消滅する。また、中間層間の対電荷による電気力線は、つねに内向きになっており、フィルム外表面より外側への電気力線がなく、フィルム外表面を取りまく空間での静電誘導を生じない。従って、周辺の微小なチリに有導電荷を発生させることなく、フィルム外表面へのチリ付着を生じない。このようにして、この効果が積層フィルムの帯電防止効果となって発現される。」
(j)「【0016】
【実施例】 以下、この発明のプライマー及びプライマーを使用したラミネートフィルムを実施例と比較例によって具体的に説明する。
実施例1(プライマー)
MMA/EA/AA/DMAQのモノマーを重量比で50/10/5/35の割合にてイソプロパノール/水の混合溶液(混合比1/1)中で共重合し、固形分30%の透明溶液を得た。ここで、
MMA:メチルメタクリレート
EA:エチルアクリレート
AA:アクリル酸
DMAQ:ジメチルアミノエチルメタクリレート4級塩化物
さらに、この溶液に架橋剤としてエポキシモノマーを溶液固形分に対して10%を添加し、さらに、触媒として2-メチルイミダゾールをエポキシモノマー量の5%を加え、イソプロパノールにて固形分濃度15%の溶液を調整した(調整液1)。」
(k)「【0018】
実施例3(ラミネートフィルム)
調整液1を16ミクロンのPETフィルムにドライ厚約1ミクロンにて塗布、90℃10秒にて乾燥。このフィルムを50ミクロン未配向ポリプロピレン(CPP)フィルムとウレタン系ドライラミネート用接着剤(DIC-DRY LX-43+KM-75)を用いて、接着剤ドライ厚3ミクロン接着積層した(ラミネート温度60℃、養生条件:温度40℃、時間48hrs)。(ラミネートフィルム1)」
(下線は当審において付与したものである。)

そして、上記各記載から次の事項は明白である。

・静電誘導防止機能を有する接着プライマーは、架橋性重合体からなり、この架橋性重合体は、側鎖に、少なくとも、カルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性共重合体であること。そして、この架橋性共重合体は単量体としてアクリル酸を共重合させたものであること。したがって、静電誘導防止機能を有する接着プライマーは、「側鎖に、少なくとも、カルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体」からなること。(特に摘示事項(d)、(f))
・静電誘導防止性積層フィルムはフィルム基材に調整されたプライマーを塗布し、加熱乾燥した後、ドライラミネート用接着剤にて他のフィルム基材と積層・接着して形成されるものであるから、静電誘導防止機能を有するプライマー層上に接着剤層が設けられていること。(特に摘示事項(d)、(e)、(h)、(j)、(k))
したがって、刊行物2には次の発明が記載されているものと認められる。
「静電誘導防止性積層フィルムであり、側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電誘導防止機能を有するプライマー層がフィルム基材の片面に設けられ、該静電誘導防止機能を有するプライマー層上に接着剤層が設けられている静電誘導防止性積層フィルム。」(以下、この発明を引用発明2という)

第4 対比及び判断
1. 引用発明1との対比及び判断
[対比]
本願発明と引用発明1とを対比すると、その文言上の意義、構造及び機能等からみて、引用発明1における「IC関連電子部品等のキャリヤーテ-プ」は、本願発明の「電子部品キャリアテ-プ」に相当し、以下同様に、「蓋材」は「カバ-テ-プ」に、「合成樹脂フィルム」は「基材」に、「ヒートシール層」は「接着剤層」に、「キャリヤーテープの蓋材」は「電子部品搬送体用カバ-テ-プ」にそれぞれ相当する。
また、引用発明1の「導電性樹脂フィルム」は、刊行物1の摘示事項(d)によれば、キャリヤーテープ用蓋材の導電部として導電性に優れており、開封時にも耐電を生じることなくIC関連電子部品等の内容物の損傷を防止するものであり、一方、本願発明の「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電機能層」は、本願の明細書の段落【0006】、【0009】等の記載によれば、カバーテープの接着面側での帯電に対して誘電分極により帯電電荷に基づく電気力線を打ち消すように作用することでカバーテープの接着面での帯電障害を排除するものであるから、「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体」という素材に基づいて、帯電防止のための作用は異なるものの、結局のところ両者は帯電を防止するために設けられた層、すなわち「帯電防止層」の限りで一致している。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「電子部品キャリアテ-プに接着されるカバ-テ-プであり、基材の一方に帯電防止層と接着剤層とをこの順序で有する電子部品搬送体用カバ-テ-プ。」
〈相違点1〉
カバーテープの帯電を防止するために、本願発明においては、「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電機能層」を基材の片面に設けているのに対して、引用発明1においては、導電性樹脂フィルムを合成樹脂フィルムの片面に接着層を介して設けている点。
〈相違点2〉
本願発明においては、接着剤層に隣接して中間層を設けたのに対して、引用発明1においては、中間層は設けられておらず、ヒートシール層には導電性樹脂フィルムが隣接している点。

[判断]
(1)相違点1について
前述のように、引用発明1の「導電性樹脂フィルム」は、キャリヤーテープ用蓋材の導電部として導電性に優れたものとし、開封時にも帯電を生じることなく、IC関連電子部品等の内容物の損傷を防止する機能が求められるものであるから、帯電に伴う脆弱性等、IC部品固有の特質、あるいは開封時の環境等に応じ、この導電性樹脂フィルムとして、帯電防止機能を有する様々な素材を試みることは、当業者が具体化に当たりごく自然に想起し得ることである。
そして引用発明2には、積層フィルムへの帯電を防止するために、「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体」からなるプライマー層をプラスチックフィルム基材層の片面に設ける技術が示されており、刊行物2の記載(h)をも参照すれば、「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体」は、積層フィルムの両外面に設けられたそれぞれのプラスチックフィルム基材のうち、上記プライマー層に隣接するプラスチックフィルム基材の帯電を防止するだけでなく、他方のプラスチックフィルム基材の帯電(本願発明と対応させると、接着剤層(2)側の帯電)をも防止する機能を有していることは明白である。
また、一般に積層体において、2つの層間に接着層を設けるか否かは、その2層間に要求される接着強度を満たすように、それぞれの層の性質やそれらを積層するための方法を踏まえて決定することである。
そして、刊行物1の摘示事項(e)によれば、引用発明1の合成樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートが用いられており、一方、刊行物2の摘示事項(g)によれば、引用発明2の上記プライマー層が塗布されるプラスチックフィルム基材として、配向された又は未配向のポリエチレンテレフタレート(PET)などが例示されているから、引用発明1の合成樹脂フィルムの片面に引用発明2の上記プライマー層を適用する際に接着層を必要としないことは明白である。
したがって、カバーテープの帯電を防止するために、引用発明1の導電性樹脂フィルムに代えて、上記刊行物2に記載された上記プライマー層を引用発明1の合成樹脂フィルムの片面に設けて、本願発明の相違点1に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点2について
本願発明の中間層の技術的意義は、本願明細書の段落【0010】の「上記の実施形態では、基材と接着剤層との2層構造に静電機能層を設けているが、基材と接着剤層との間に接着助剤としてのアンカ-コ-ト層を設けることもできる。また、接着剤層と基材との接着助剤として、あるいは、カバ-テ-プの剛性の調整用として中間層を設けることもできる。」という記載からみて、基材と接着剤層との間に介在することでそれらの接着を補助することと、カバーテープの全体的な剛性を調整することである。
しかしながら、カバーテープの剛性を調整するために、接着剤層に隣接して中間層を設けることは、特開平8-324676号公報、特開平7-130899号公報、特開平7-186344号公報等に記載されているように、本願出願前より周知の技術である。
したがって、引用発明1において、剛性を調整するために上記周知技術を適用して本願発明の相違点2に係る構成とすることに格別困難性を認めることはできない。
また、接着剤層に隣接して中間層を設けることによる効果も当業者の予測の範囲を超えるものではない。

本願発明と引用発明1とを対比した場合の各相違点に係る判断は以上のとおりである。次に、本願発明と引用発明2とを対比した場合についても予備的に検討する。

2. 引用発明2との対比及び判断
[対比]
本願発明と引用発明2とを対比すると、その文言上の意義、構造及び機能等からみて、引用発明2における「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電誘導防止機能を有するプライマー層」及び「フィルム基材」は、本願発明の「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電機能層」及び「基材」にそれぞれ相当する。
そして、本願発明は、「基材」、「側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電機能層」、「中間層」、「接着剤層」を積層したものであるから、引用発明1の「静電誘導防止性積層フィルム」と、本願発明「電子部品搬送体用カバーテープ」とは、「積層体」の限りで一致している。
したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。
〈一致点〉
「積層体であり、側鎖に少なくともカルボキシル基及び4級アンモニウム塩基を有する架橋性アクリル共重合体からなる静電機能層が基材の片面に設けられている積層体。」
〈相違点〉
本願発明は電子部品搬送体用カバ-テ-プであり、静電機能層上に剛性を調整するための中間層が設けられるとともに、該中間層上にキャリヤーテープにシールするための接着剤層が設けられているのに対して、引用発明2は静電誘導防止性積層フィルムであり、そのような構成となっていない点。

[判断]
引用発明2は静電気障害を問題とする分野に使用される汎用的なフィルムであることを踏まえると、それを同様な課題を有する電子部品搬送用のカバーテープに使用することは、刊行物2に接した当業者であれば容易に想到し得ることであり、その適用にあたり、特開平8-324676号公報、特開平7-130899号公報などに記載された如く、当該分野において周知な構造である接着剤層及び接着剤層に隣接した中間層を採用することに格別困難性を認めることはできない。

第5 むすび
本願発明を全体構成でみても引用発明1、2及び周知技術から予測できる作用効果以上の顕著な作用効果を奏するものではない。
したがって、本願発明は、上記刊行物1、刊行物2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-04 
出願番号 特願平9-103948
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 勝司  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 佐野 健治
遠藤 秀明
発明の名称 電子部品搬送体用カバ-テ-プ  
代理人 松月 美勝  

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