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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1185072
審判番号 不服2004-10444  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-19 
確定日 2008-09-25 
事件の表示 平成11年特許願第38253号「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年9月8日出願公開、特開2000-242055〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年2月17日の出願であって、平成16年4月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年5月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年5月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正の内容について
平成16年5月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成16年1月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明である、
「配置された複数の像担持体上に特定色毎の顕像剤画像を形成し、記録媒体上に前記複数の像担持体に対応した前記特定色毎の顕像剤画像を重ね合わせることで画像形成を行う画像形成装置において、上記複数の像担持体のうちの所定の像担持体の慣性条件が、他の像担持体の慣性条件とは異なるように、上記他の像担持体に取り付けた回転慣性体とは径若しくは重量の異なる回転慣性体が上記所定の像担持体に取り付けられていることを特徴とする画像形成装置。」を、
「配置された複数の像担持体上に特定色毎の顕像剤画像を形成し、記録媒体上に前記複数の像担持体に対応した前記特定色毎の顕像剤画像を重ね合わせることで画像形成を行う画像形成装置において、上記複数の像担持体のそれぞれに回転慣性体を支持するための支持部を備え、かつ、上記複数の像担持体のうちの所定の像担持体の慣性条件が、他の像担持体の慣性条件とは異なるように、上記他の像担持体に取り付けた回転慣性体とは径若しくは重量の異なる回転慣性体が上記所定の像担持体に取り付けられていることを特徴とする画像形成装置。」とする補正事項を含む。
上記補正事項は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の像担持体」について、「上記複数の像担持体のそれぞれに回転慣性体を支持するための支持部を備え」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
本願の出願日前に頒布され、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-194354号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。(下線は当審で付与。)

(2-a)「【請求項1】 複数の像担持体を並べて配列し、像担持体毎に支持する各支持軸を回転駆動することによって、各像担持体を回転させるようにした画像形成装置において、各像担持体の支持軸に、回転速度ムラ低減用のフライホイールを設けると共に、各フライホイールの、互いに隣接する部分が、像担持体の軸方向で互いに重なり合うように、各フライホイールを配列したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】 複数の像担持体を並べて配列し、像担持体毎に支持する各支持軸を回転駆動することによって、各像担持体を回転させるようにした画像形成装置において、各像担持体のうち、回転速度ムラの低減を要求される特定の像担持体の支持軸のみに、回転速度ムラ低減用のフライホイールを設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】 特定の像担持体が、隣り合うもの同士で2個以上であるとき、これらの像担持体の支持軸に設けられた各フライホイールの、互いに隣接する部分が、像担持体の軸方向で互いに重なり合うように、それらのフライホイールを配列した請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】 各フライホイールは、それぞれほぼ等しい慣性モーメントを有するものである請求項1乃至3のいずれかに記載の画像形成装置。」

(2-b)「【0010】このように、複数の感光体を用いてカラー画像を形成する方式の画像形成装置においては、1つの感光体を用いる画像形成装置と比較して、色モアレや画像ブレなどを生じにくくするために、感光体の回転速度ムラをでき得る限り小さくする必要があり、従来よりそのための種々の対策が講じられている。
【0011】一般的に、この種のカラー式の画像形成装置では、より高品質なカラー画像を得ることの正否に関しては、解像度や階調性や色調などの種々の画像特性を所定の水準に保持しながら、いかに原稿像を忠実に再現するかにかかっている。
【0012】特に、画像の濃度ムラをできるだけ小さくすることが要求されているが、かような濃度ムラを発生させる要因の一つとして、感光体の円周方向(副走査方向)の回転速度ムラを挙げることができる。このような回転速度ムラを生じると、「バンディング画像」と呼ばれる横縞状の画像濃度ムラが発生し易くなる。このように、この種の画像形成装置では、感光体の回転速度ムラをいかに低減するかが、画質を向上させる上での重要な技術課題となっているのである。
【0013】特にデジタル式の画像形成装置では、レーザビームなどによって、感光体に対して主走査方向に光書き込み走査を行う方式であることから、感光体に前述のような回転速度ムラが生じた場合、バンディング画像が一層発生し易くなる。感光体の駆動伝達系中に、図5に示すようなウォーム伝達要素や、前述したギア系による伝達要素(以下必要に応じて、「ギア系伝達要素」と言う)を用いた場合、そのギア間のガタなどによって、高周波の速度ムラが発生し、感光体の回転速度ムラが大きくなり、バンディング画像が発生し易くなる。このようなバンディングの中でも、周波数が視覚のMTFの高い0.2?2サイクル/mmの領域のものが見た目の画質を著しく劣化させてしまう。」

(2-c)「【0016】このように、例えば、ウォーム伝達要素やギア系伝達要素などで、伝達上のガタを生じるのであるが、これを抑えるために、1つの感光体を用いる画像形成装置では、感光体軸に、かなりの大きさで、しかもかなりの重量の回転速度ムラ低減用フライホイールを設けている。
【0017】そこで、複数の感光体を用いる画像形成装置でも、感光体毎にかようなフライホイールを設けることが、感光体の回転速度ムラを無くす上で有効である。ところが、かようなフライホイールを感光体毎に設けた場合、当該画像形成装置を、1つの感光体を用いる画像形成装置に相当する程度の大きさのものにしようとすると、感光体をより小径のものにする必要があり、又、感光体同士の配列ピッチ間隔をできるだけ短くする必要がある。更に、感光体の周りに配設される各種の画像形成プロセス機器をできるだけ小さくする必要がある。このようにしないと、単純に考えて、機械全体のサイズとしては、1感光体方式の画像形成装置の4倍の大きさになってしまう。ところが、画像形成装置の各要素を、このように構成することは困難である。このため、複数の感光体を用いる画像形成装置において、感光体毎にフライホイールを設けると、画像形成装置全体のサイズが著しく大型化し、よって各感光体にフライホイールを設ける構成を採用することに躊躇する面があったのである。
【0018】フライホイールは、感光体の高周波の速度ムラを低減するのに効果的な役割を果たすが、その低減性を高めるためには、より慣性モーメントの大きなフライホイールを使用するのが有効的である。因に、その慣性モーメントIは次のような式で表わされる。
I=ΣmR^(2)
上記式中、mはフライホイールの各微小部分の質量であり、Rはその各微小部分の半径である。フライホイールの半径を大きくすればする程、べき乗効果で、慣性モーメントIは増大することとなる。
【0019】かような点から、フライホイールとして半径の大きいものを用いると、回転速度ムラの低減に大きく寄与することになるが、このようにすると、画像形成装置の全体サイズ(特に横幅サイズ)が大きくなってしまう。いずれにしても、従来においては、複数の感光体を用いる画像形成装置をコンパクト化することを優先した場合、フライホイールの大きなものにしたり、或いはそれを感光体毎に設けたりする構成が採用しにくいものとなっていたのである。」

(2-d)「【0020】ところで、複数の感光体を用いる画像形成装置、就中、フルカラー式の画像形成装置では、例えば黄色の画像に関して、これが視覚的に目立ちにくいものであるため、かような色の画像を形成する感光体については、この回転速度ムラをとりわけ低減しないでも済む場合がある。又、2色式の画像形成装置では、黒画像が中心となるため、黒の画像を形成する感光体にのみフライホイールを設置することで、総合的な画像の仕上がりとしては充分である場合もある。かような点に鑑みて、回転速度ムラの低減を要求される感光体のみにフライホイールを設けるようにすると、その感光体の回転速度ムラを小さくできると共に、画像形成装置の一層のコンパクト化や軽量化などを期待することができる。」

(2-e)「【0021】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述した諸点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の像担持体を有する画像形成装置において、その像担持体の回転速度ムラの一層の低減化を図り、より高品質の画像を得ると共に、その回転速度ムラ低減用のフライホイールとして大きなものを用いても、装置が大型化することのないようにした画像形成装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、複数の像担持体を並べて配列し、像担持体毎に支持する各支持軸を回転駆動することによって、各像担持体を回転させるようにした画像形成装置において、各像担持体の支持軸に、回転速度ムラ低減用のフライホイールを設けると共に、各フライホイールの、互いに隣接する部分が、像担持体の軸方向で互いに重なり合うように、各フライホイールを配列したことを特徴とする画像形成装置を提案する。
【0023】又、本発明は、同じ目的を達成するため、複数の像担持体を並べて配列し、像担持体毎に支持する各支持軸を回転駆動することによって、各像担持体を回転させるようにした画像形成装置において、各像担持体のうち、回転速度ムラの低減を要求される特定の像担持体の支持軸のみに、回転速度ムラ低減用のフライホイールを設けたことを特徴とする画像形成装置を提案する。」

(2-f)「【0027】図1は、本発明一実施例の画像形成装置に具備される感光体駆動構成部を、感光体と共に示す平面図である。同図において、符号10Bk、10M、10Y、10Cでそれぞれ示したドラム状感光体は、像担持体の一構成例をなすものであり、これらの複数の感光体は、互いに平行して、且つ隣接するように、一方向に並べて配列されている。
【0028】各感光体を支持する支持軸11Bk、11M、11Y、11Cは、一対の互いに対向した装置基板12,13にそれぞれ回転自在に支持されている。なお、本例では、各支持軸は各感光体の中心部において、該感光体に一体化されるものとなっている。各支持軸11Bk乃至11Cには、一方の装置基板13の側において、ウォームホイール20Bk,20M,20Y,20Cがそれぞれ一体的に取り付けられている。図示されない装置基板に回転自在に支持されたウォーム軸18にはウォーム19Bk,19M,19Y,19Cが一体的にそれぞれ取り付けられ、これらの各ウォーム19Bk乃至19Cは、ウォームホイール20Bk,20M,20Y,20Cにそれぞれ噛み合っている。
【0029】感光体10Bk乃至10Cを駆動するための駆動源としては、DCモータ等より成る駆動モータ14が採用され、このモータ14の回転は、モータプーリ15と、ウォーム軸18に固定されたプーリ17との間に掛け渡されたタイミングベルト16を介して、ウォーム軸18に伝達される。ウォーム軸18が回転すると、各ウォーム19Bk乃至19C及びウォームホイール20Bk乃至20Cを介して、各支持軸11Bk,11M,11Y,11Cが回転し、各感光体10Bk乃至10Cがそれぞれ回転する。このように複数のドラム状感光体10Bk乃至10Cは、感光体毎に支持する各支持軸を回転駆動することによって、回転するものとなっている。」

(2-g)「【0030】図1には示していないが、各感光体10Bk乃至10Cのまわりには、例えば図4に示したところと同様に各プロセス機器が配設され、各感光体上にトナー像がそれぞれ形成される。すなわち、各感光体10Bk乃至10Cのまわりに配設された例えば帯電チャージャより成る帯電器によって、各感光体の表面が一様に帯電され、露光装置による露光によって各感光体10Bk乃至10C上に静電潜像が形成され、現像器によってその各静電潜像がトナー像として可視像化される。その際、感光体10Bkには黒のトナー像が、感光体10Mにはマゼンタ色のトナー像が、又、感光体10Yにはイエロー色のトナー像が、そして感光体10Cにはシアン色のトナー像がそれぞれ形成され、これらのトナー像が図示していない転写手段により、各感光体に順次搬送された同じく図示していない転写紙上に重ね合せて転写され、その転写紙が図示していない定着装置を通るとき、転写されたトナー像が転写紙上に定着される。トナー像転写後に感光体上に残留するトナーは、クリーニング装置によって清掃除去され、その清掃工程前、又は後に各感光体が除電器によって除電作用を受ける。かかる構成と作用は、図2及び図3に示した後述する実施例においても同じである。」

(2-h)「【0031】ここで、図1に示した各支持軸11Bk乃至11Cには、回転速度ムラ低減用のフライホイール21Bk,21M,21Y,21Cがそれぞれ一体的に取り付けられている。各フライホイール21Bk,21M,21Y,21Cは円形のものとなっていて、各支持軸11Bk,11M,11Y,11Cに同心状に固定されている。しかも各フライホイールの、互いに隣接する部分が、感光体10Bk,10M,10Y,10Cの軸方向において、図のように互いに重なり合うように、各フライホイール21Bk,21M,21Y,21Cが配列されている。互いに隣接するフライホイール同士が支持軸の軸線方向に互いに位置をずらし、かつ互いに重なり合うようにして、互いに干渉することなく離間して位置しているのである。このように互いに隣り合うフライホイール部分が、重なり合うように、各感光体10を配列すれば、各感光体10同士のピッチ間隔を狭くすることができるのである。」

(2-i)「【0041】前述の一連の実施例では、各感光体の全てにフライホイールを設置しているが、機械の狙いによっては、画質の重視される画像形成用のある特定の感光体にのみ、回転速度ムラの低減が要求される場合もある。
【0042】例えば、2つのドラム状感光体を備える2色式のカラー画像形成装置などでは、黒画像が中心となるため、黒画像を形成する感光体にのみフライホイールを設置することで、総合的な画像の仕上がりとしては充分である場合もある。
【0043】又、4つの感光体を具備したフルカラー式の画像形成装置においても、例えば、黄色の画像は眼にも目立ちにくいため、この色のトナー像を形成する感光体にはフライホイールを設置しなくても済む場合がある。又、グラビア印刷方式などで実施されているように、スクリーン角を付けて感光体に対して画像処理をを行う方法があるが、このような方法を適用する画像形成装置では、回転速度ムラの影響を余り受けにくい色の画像を形成する感光体に対して、フライホイールを設置しなくても済む場合がある。
【0044】いずれにしても、回転速度ムラの低減を要求されない感光体に対してはフライホイールを設置せず、それを要求される感光体に対してはフライホイールを設置すれば良いのである。この場合、複数の感光体のうち、1個のみについて、フライホイールが設置されることもあり得る。
【0045】このような構成によれば、必要とする感光体のみにフライホイールを設置すれば良いので、画像形成装置を小型化できるばかりでなく、その重量をフライホイールの無い分、軽減することができる。勿論、この場合、必要とする感光体の回転速度ムラを低減できることは言うまでもないことである。」

(2-j)引用例1の【図1】は、以下に示すものである。

上記【図1】を参照すると、フライホイール(21Bk、21M、21Y、21C)は、感光体(10Bk、10M、10Y、10C)の支持軸(11Bk、11M、11Y、11C)の先端部に取り付けられていることがわかる。

上記摘記事項を総合して勘案すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1記載発明」という。)が実質的に記載されている。

「配置された複数の感光体(10Bk、10M、10Y、10C)上に特定色毎のトナー像を形成し、転写紙上に前記複数の感光体に対応して前記特定色毎のトナー像を重ね合わせることで画像形成を行う画像形成装置において、上記複数の感光体のそれぞれの支持軸(11Bk、11M、11Y、11C)のそれぞれの先端部にフライホイール(21Bk、21M、21Y、21C)を同心状に取り付け可能とし、装置を小型化するとともにフライホイールの無い分だけ重量を軽減するために、上記複数の感光体のうち、回転速度ムラを低減しないでも済む感光体の支持軸にはフライホイールを設置せず、回転速度ムラの低減を要求される感光体の支持軸のみにフライホイールを設置した画像形成装置。」

(3)本願補正発明1(前者)と引用例1記載発明(後者)の対比
後者の「感光体」、「トナー像」、「転写紙」、「フライホイール」は、それぞれ、前者の「像担持体」、「顕像剤画像」、「記録媒体」、「回転慣性体」に相当し、両者ともに、複数の像担持体(感光体)のそれぞれに回転慣性体(フライホイール)を取り付けることが可能であり、後者も、回転速度ムラを低減しないでも済む所定の像担持体には回転慣性体を設置しないのであるから、両者ともに、複数の像担持体のうちの所定の像担持体の慣性条件が、他の回転慣性体が取り付けられた像担持体の慣性条件とは異なるものであるということができる。
したがって、両者は、
「配置された複数の像担持体上に特定色毎の顕像剤画像を形成し、記録媒体上に前記複数の像担持体に対応した前記特定色毎の顕像剤画像を重ね合わせることで画像形成を行う画像形成装置において、上記複数の像担持体のそれぞれに回転慣性体を取り付けることが可能であり、かつ、上記複数の像担持体のうちの所定の像担持体の慣性条件が、上記他の回転慣性体が取り付けられた像担持体の慣性条件とは異なるようにされている画像形成装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

(3-1)相違点1
像担持体に回転慣性体を取り付けることを可能とするための構成において、前者は、「上記複数の像担持体のそれぞれに回転慣性体を支持するための支持部を備え」た構成であるのに対し、後者は、複数の像担持体(感光体)のそれぞれの支持軸の先端部に回転慣性体(フライホイール)を同心状に取り付ける構成であるものの、回転慣性体を支持するための支持部に相当するものがあるかどうか不明である点。

(3-2)相違点2
所定の像担持体の慣性条件を他の回転慣性体が取り付けられた像担持体の慣性条件とは異ならせる構成において、前者は、「他の像担持体に取り付けた回転慣性体とは径若しくは重量の異なる回転慣性体が上記所定の像担持体に取り付けられている」ものであるのに対して、後者は、「装置を小型化するとともにフライホイールの無い分だけ重量を軽減するために、上記複数の感光体のうち、回転速度ムラを低減しないでも済む感光体の支持軸にはフライホイールを設置せず、回転速度ムラの低減を要求される感光体の支持軸のみにフライホイールを設置した」ものである点。

(4)判断
(4-1)相違点1について
像担持体に回転ムラ発生防止用の回転慣性体を取り付けるに際して、像担持体の支持軸の先端部に回転慣性体を支持するための支持部を備えることは、例えば特開昭63-177190号公報(第1図における質量回転慣性体300の取り付け箇所を参照。)、特開平2-154278号公報(公報第5頁右下欄12?15行参照。)、特開平6-214498号公報(ブラケット16、21参照。)、特開平7-281500号公報(フライホイール止板14参照。)、特開平9-160432号公報(【図2】のねじ18参照)、特開平10-196736号公報(フランジ部材17参照。)に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、引用例1記載発明において、像担持体(感光体)のそれぞれの支持軸の先端部に回転慣性体(フライホイール)を同心状に取り付けるために、該支持軸の先端部が回転慣性体を支持するための支持部を有するものとすることにより上記相違点1に係る構成を有するものとすることは当業者が適宜行うことである。

(4-2)相違点2について
上記(2-c)で摘記した、引用例1の段落【0018】にも記載されているように、像担持体(感光体)の高周波の速度ムラの低減性を高めるためには、より慣性モーメントの大きな回転慣性体(フライホイール)を使用すすれば良いことは当業者にとって明らかである。
したがって、画像形成装置に対してより高い画質性能が要求される場合には、それぞれの像担持体に設置される回転慣性体の慣性モーメントをより大きくすることは当業者が必要に応じて適宜行う事項である。
逆に、画像形成装置に対する小型化及び軽量化の要求に比べて、高画質性能の要求がそれほど高くない場合には、高周波の速度ムラの低減性がそれほど必要とされない像担持体に設置される回転慣性体の慣性モーメントを小さくすることも、当業者が適宜行う事項であって、引用例1記載発明は、装置の小型化及び軽量化を高画質性能化よりも優先し、高周波の速度ムラの低減性が必要とされない像担持体に設置される回転慣性体の慣性モーメントを0にまで減らしたものに相当する。
そして、高周波の速度ムラの低減性が必要とされない像担持体に設置される回転慣性体の慣性モーメントを0にまで減らすと、要求される画質性能を達成できないときに、要求される画質性能が達成される程度の回転慣性体の慣性モーメントの大きさに調整することも当業者が適宜行うことである。
そしてまた、回転体の速度ムラを低減するために用いられる回転慣性体の慣性モーメントを必要に応じて適宜変更することは、審査時に引用された特開平4-244634号公報(段落【0014】参照。)の他に、例えば、実願昭54-44461号(実開昭55-144649号)のマイクロフィルム、実願昭55-133555号(実開昭57-56241号)のマイクロフィルム、実願昭62-10510号(実開昭63-118442号)のマイクロフィルム、特開平10-227337号公報に記載されているように、本願出願前に周知の技術的事項である。
してみると、引用例1記載発明において、「装置を小型化するとともにフライホイールの無い分だけ重量を軽減するために、上記複数の感光体のうち、回転速度ムラを低減しないでも済む感光体の支持軸にはフライホイールを設置せず、回転速度ムラの低減を要求される感光体の支持軸のみにフライホイールを設置した」ことに代えて、当該所定の像担持体(感光体)に対して、他の像担持体に対して設けた回転慣性体(フライホイール)の径若しくは重量とは異なる小さな回転慣性モーメントを有するものを取り付けることにより、上記相違点2に係る構成を有するものとすることは当業者が必要に応じて適宜行うことにすぎない。

(4-4)まとめ
上述したように、引用例1記載発明において、相違点1に係る構成、及び、相違点2に係る構成を有するものとすることはいずれも当業者が適宜行うことである。
また、引用例1記載発明において、相違点1に係る構成と相違点2に係る構成を組み合わせたことにより、当業者が予期せぬ格別の効果が奏せられる
ものでもない。
したがって、本願補正発明1は、引用例1に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)補正却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明1について
平成16年5月19日付けの手続補正は上記のように却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、平成16年1月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記「2.(1)」で摘記したとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明1は、前記「2.」で検討した本願補正発明1から、「複数の像担持体」の限定事項である「上記複数の像担持体のそれぞれに回転慣性体を支持するための支持部を備え」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例1に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-23 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-14 
出願番号 特願平11-38253
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 山下 喜代治
特許庁審判官 赤木 啓二
小宮山 文男
発明の名称 画像形成装置  
代理人 高野 明近  

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