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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1185085
審判番号 不服2005-21657  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-10 
確定日 2008-09-25 
事件の表示 特願2002- 92798「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-288065〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件は、平成14年3月28日にされた特許出願(特願2002-092798号)につき、平成17年10月5日付け(同年10月11日発送)で拒絶査定がされたところ、これに対して、同年11月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月12日付けで明細書を補正対象とする手続補正書が提出されたものである。

2 平成17年12月12日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年12月12日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成17年12月12日提出の手続補正(以下、「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲の記載
「【請求項1】入力される画像信号に応じて光学像を形成表示する画像形成手段と、この画像形成手段を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、
前記制御手段は、
前記画像信号が入力される入力端子の接続設定の切替制御を行う接続設定切替制御部と、
複数のカラーモード設定の切替制御を行うカラーモード設定切替制御部と、
前記光学像の表示状態を切り替えるための操作信号を受け付ける操作信号受付部と、
受け付けられた操作信号を監視して、最終的に切り替えられる接続設定及びカラーモード設定を判定する切替状態判定部とを備え、
前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】請求項1に記載の画像表示装置において、
前記切替表示状態判定部は、第1回目の操作信号が前記操作信号受付部で受け付けられたと判定すると、切替可能な表示状態一覧画像を提示して、切り替える表示状態の選択を促すことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】請求項2に記載の画像表示装置において、
前記切替表示状態判定部は、表示状態一覧画像提示後、一定時間の操作信号の入力がないことを条件として、最終的に切り替えられる表示状態を判定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】請求項1?請求項3のいずれかに記載の画像表示装置において、
前記切替表示状態判定部は、特定の操作信号が受け付けられたことを条件として、最終的に切り替えられる表示状態を判定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】請求項1に記載の画像表示装置において、
前記操作信号受付部は、前記表示状態切替制御部の切替制御中に操作信号を受け付けるように構成され、
前記切替表示状態判定部は、この操作信号受付部への操作信号の入力が一定時間ないことを条件として、最終的に切り替えられる表示状態を判定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項6】請求項5に記載の画像表示装置において、
前記切替表示状態判定部は、前記操作信号受付部で受け付けられた切替操作情報に係る画像を提示することを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】請求項1?請求項6のいずれかに記載の画像表示装置において、
複数の画像機器から画像信号を入力させるために、複数の入力端子を備え、
前記表示状態は、これら複数の入力端子の接続設定状態であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項8】請求項1?請求項6のいずれかに記載の画像表示装置において、
前記表示状態は、γ補正、色補正を含むカラーモード設定状態であることを特徴とする画像表示装置。」
を、
「【請求項1】入力される画像信号に応じて光学像を形成表示する画像形成手段と、この画像形成手段を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、
前記制御手段は、
前記画像信号が入力される入力端子の接続設定の切替制御を行う接続設定切替制御部と、
複数のカラーモード設定の切替制御を行うカラーモード設定切替制御部と、
前記光学像の表示状態を切り替えるための操作信号を受け付ける操作信号受付部と、
受け付けられた操作信号を監視して、最終的に切り替えられる接続設定及びカラーモード設定を判定する切替表示状態判定部とを備え、
前記操作信号受付部により、接続設定及びカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行うことを特徴とする画像表示装置。
【請求項2】請求項1に記載の画像表示装置において、
前記切替表示状態判定部は、第1回目の操作信号が前記操作信号受付部で受け付けられたと判定すると、切替可能な表示状態一覧画像を提示して、切り替える表示状態の選択を促すことを特徴とする画像表示装置。
【請求項3】請求項2に記載の画像表示装置において、
前記切替表示状態判定部は、表示状態一覧画像提示後、一定時間の操作信号の入力がないことを条件として、最終的に切り替えられる表示状態を判定することを特徴とする画像表示装置。
【請求項4】請求項1?請求項3のいずれかに記載の画像表示装置において、
複数の画像機器から画像信号を入力させるために、複数の入力端子を備え、
前記表示状態は、これら複数の入力端子の接続設定状態であることを特徴とする画像表示装置。
【請求項5】請求項1?請求項4のいずれかに記載の画像表示装置において、
前記表示状態は、γ補正、色補正を含むカラーモード設定状態であることを特徴とする画像表示装置。」
と補正する内容を含むものである。

(2)補正の目的
本件補正により、請求項1の「切替状態判定部」が、「切替表示状態判定部」と補正され(以下「補正1」という。)、また、請求項1の「前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行うこと」が、「前記操作信号受付部により、接続設定及びカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行うこと」と補正(以下「補正2」という。)された。
上記補正1は、「切替状態判定部」との誤記を訂正する目的でなされたものである。
また、上記補正2は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項である「前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行う」の切替制御を行う条件として「操作信号受付部により、接続設定及びカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として」との限定事項を加えるものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正、及び、同第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
本件補正後の請求項1に係る発明は、平成17年12月12日付け手続補正書より補正された明細書及び図面の記載からみて、次のとおりである。
「【請求項1】入力される画像信号に応じて光学像を形成表示する画像形成手段と、この画像形成手段を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、
前記制御手段は、
前記画像信号が入力される入力端子の接続設定の切替制御を行う接続設定切替制御部と、
複数のカラーモード設定の切替制御を行うカラーモード設定切替制御部と、
前記光学像の表示状態を切り替えるための操作信号を受け付ける操作信号受付部と、
受け付けられた操作信号を監視して、最終的に切り替えられる接続設定及びカラーモード設定を判定する切替表示状態判定部とを備え、
前記操作信号受付部により、接続設定又はカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行うことを特徴とする画像表示装置。」(以下、「本件補正発明」という。)(審決注:下線は、合議体が付加したものである。以下、同様。)
なお、発明の詳細な説明の段落【0064】及び【0067】-【0068】、【図10】、【図11】の記載を参酌するに接続設定の選択画面G2とカラーモード設定の選択画面G3とは、同時に表示されるものではないことから、接続設定とカラーモード設定が同時に確定するような構成ではなく、接続設定又はカラーモード設定の一方が確定する構成であることは明らかである。
よって、請求項1の「接続設定及びカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として」との記載は、「接続設定又はカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として」との誤記であると認め、本件補正発明を上記のように認定した。

そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

(4)刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-285751号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア「【0007】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の一実施の形態による画像再生装置の概要を表すブロック図である。この画像再生装置は、入力されるビデオ信号による画像をスクリーンなどに投射して再生する。図1において、画像再生装置1は、第1のスロット2と、第2のスロット3と、第3のスロット100と、第1のスロット2に設けられているコネクタ10と、第2のスロット3に設けられているコネクタ11と、第3のスロット100に設けられているコネクタ102と、出力端子17と、スピーカ160と、投射レンズ9と、赤外線受光部107と、投射用ランプ105を有するランプユニット6と、コネクタ106とを有する。また、画像再生装置1の内部には、MPU16と、制御部15と、インターフェイス部20と、符号、復号部103と、第1のスイッチ12と、第2のスイッチ18と、処理部19と、プロセス回路13と、駆動回路14と、液晶パネル8と、光学系7と、ランプドライバ82と、電源回路81とが設けられている。液晶パネル8は、光学系7の内部に設けられている。」

イ「【0009】インターフェイスモジュール4を図2のブロック図を参照して説明する。インターフェイスモジュール4は、ビデオ信号の入力端子21と、音声信号の入力端子22と、画像再生装置1(図1)のコネクタ10と嵌合するコネクタ24とを有する。また、インターフェイスモジュール4の内部には、デコード回路23と、記憶回路26と、判定回路25と、A/D変換回路27とを有する。インターフェイスモジュール4の入力端子21には、画像再生用信号が入力される。画像再生用信号は、たとえば、NTSC方式のVTR(Video Tape Recorder)から出力されるアナログコンポジットビデオ信号がある。また、入力端子22には2チャンネルステレオのアナログ音声信号が入力される。インターフェイスモジュール4は、入力されるビデオ信号および音声信号を所定のディジタルRGB信号およびディジタル音声信号に変換して、コネクタ24から画像再生装置1(図1)へ出力する。
【0010】図2において、コネクタ21から入力されるアナログコンポジットビデオ信号が、デコード回路23と判定回路25とに入力される。デコード回路23は、入力されたコンポジットビデオ信号をディジタルRGB信号に変換する。A/D変換回路27は、入力されたアナログ音声信号をディジタル音声信号に変換する。デコード回路23の変換処理では、γ特性に対する処理は行わない。判定回路25は、入力されたコンポジットビデオ信号の同期周波数により、ビデオ信号の方式を判定する。判定回路25で判定されたビデオ信号の方式を示すデータは、記憶回路26へ送られる。記憶回路26には、NTSC方式、PAL方式、SECAM方式の各方式におけるγ変換特性、基準白色の色温度、3原色の色度値、HUEおよびSATURATIONなどの特性のデータと、これらの特性を調整するためのオンスクリーンメニューに関するデータとが記録されている。判定回路25によりビデオ信号の方式が判定されると、判定されたビデオ信号の方式に応じた各特性のデータとオンスクリーンメニューに関するデータとが記憶回路26からMPU16の指示により読み出される。」

ウ「【0020】スイッチ12およびスイッチ18は、制御部15からの切換え信号により端子A?Cに入力されるディジタルRGB信号および音声信号のうち、いずれかの端子に入力されるディジタルRGB信号および音声信号を端子Dに出力する。また、後述するようにスイッチ12は第2の接続子を有する。第2の接続子は、上述した端子Dに対する出力とは別に、端子Cと端子Aとを接続、端子Cと端子Bとを接続、端子Cを端子Aおよび端子Bの両端子に対して非接続のいずれかの状態に切換えることができる。第2の接続子は、後述する記録媒体101に対する記録時に使用される。」

エ「【0022】スイッチ12の端子Dから出力されるディジタルRGB信号および音声信号は、プロセス回路13に入力される。プロセス回路13は、制御部15からの制御信号を受けて、スイッチ12の端子Dより入力された信号をディジタルRGB信号と音声信号とに分離する。分離された音声信号がプロセス回路13で所定の処理を施され、スピーカ160に入力される。スピーカ160は、入力された音声信号を再生する。一方、分離されたディジタルRGB信号に対しては、後述する液晶パネル8の表示解像度に合わせるために解像度変換と、液晶パネル8のγ特性に合わせるためにγ変換処理などの画像処理とが施される。画像処理後のディジタルRGB信号が駆動回路14に入力される。駆動回路14は、制御部15からの制御信号を受けて、入力されたディジタルRGB信号により液晶パネル8を駆動する。」

オ「【0028】赤外線受光素子107は、リモコン送信機108から送信される赤外光による操作信号を受光して電気信号に変換する。電気信号に変換された操作信号は、MPU16に入力される。図5は、リモコン送信機108の操作パネルを示す図である。リモコン送信機108には、パワーオン/オフスイッチ55と、メニュー/選択スイッチ56と、ランプオン/オフスイッチ57と、上向き操作スイッチ51と、左向き操作スイッチ52と、下向き操作スイッチ53と、右向き操作スイッチ54とが設けられている。パワーオン/オフスイッチ55が操作されると、このスイッチが操作されるごとに画像再生装置1に対してパワーオン操作信号とパワーオフ操作信号とが交互に送信される。ランプオン/オフスイッチ57が操作されると、このスイッチが操作されるごとに画像再生装置1に対してランプオン操作信号とランプオフ操作信号とが交互に送信される。」

カ「【0037】図6(b)において、画像45の上にオンスクリーンメニュー46が重ねて表示(投射)されている。図5のリモコン送信機108の上向き操作スイッチ51または下向き操作スイッチ53を操作することにより、HUEを示すボックス41およびSATURATIONを示すボックス42のいずれかを選択して、NTSC方式のビデオ信号が入力されているときのHUEの調整、SATURATIONの調整を行う。ボックス41が選択されている状態、すなわち、ボックス41が強調表示(投射)されている状態で左向き操作スイッチ52または右向き操作スイッチ54を操作すると、スクリーンS上に表示(投射)される画像45の色相が調整される。一方、SATURATIONを示すボックス42が選択されている状態で左向き操作スイッチ52または右向き操作スイッチ54を操作すると、スクリーンS上に表示(投射)される画像45の色の鮮やかさが調整される。
【0038】上述した調整は、リモコン送信機108から送信される操作信号に応じて、MPU16が制御部15を介して駆動回路14に対して指令を出すことによって行われる。駆動回路14が指令に基づいて各色用の液晶パネルP1?P3の透過光量を変化させると、スクリーンS上に表示(投射)される画像45のHUEおよびSATURATIONが調整される。リモコン送信機108の下向き操作スイッチ53を操作して終了を示すボックス98を選択している状態で、メニュー/選択スイッチ56を操作すると、HUEおよびSATURATIONの設定内容が決定されて、オーバーレイ表示が終了する。」

キ「【0070】ステップS142において、MPU16は、制御部15に指令を出して、上述した図6(a),図7(a),図8(a)と同様のインターフェイスモジュールおよび記録媒体の一覧をスクリーンS上に表示(投射)させる。操作者は、リモコン送信機の上向き操作スイッチ51および下向き操作スイッチ53を操作して、装着されているインターフェイスモジュールおよび記録媒体の中から、任意のインターフェイスモジュールおよび記録媒体を選ぶ。ステップS143では、リモコン送信機108からのメニュー/設定スイッチ56による操作信号が再び入力されたか否かを判定する。入力されたと判定する(ステップS143のY)とインターフェイス選択が完了したとみなしてステップS144へ進み、入力されないと判定する(ステップS143のN)とインターフェイス選択の完了を待つ。」

ク「【0077】以上説明した本実施の形態によれば、以下のような作用効果が得られる。
(1)NTSC方式などのビデオ信号、HDTV信号、コンピュータ用のRGB信号など、それぞれ異なる画像再生用信号が入力されるインターフェイスモジュール4,5を着脱可能にした。そして、各々のインターフェイスモジュール4,5内で入力された画像再生用信号を所定のディジタルRGB信号およびディジタル音声信号とに変換するとともに、各インターフェイスモジュール4,5に入力される信号の処理に必要なデータを各インターフェイスモジュール4,5内の記憶回路26,36に記憶させるようにした。したがって、画像再生装置1は、各インターフェイスモジュール4,5から入力される所定のディジタルRGB信号およびディジタル音声信号に対して、各インターフェイスモジュール4,5の記憶回路26,36から読み出したデータを用いて液晶パネル8の特性に応じたγ変換などの画像処理を行う。この結果、たとえば、NTSC方式のビデオ信号による画像を再生する場合は、インターフェイスモジュール4のみを画像再生装置1に装着すればよいので、画像再生装置1のコストを低減することが可能になる。また、新たに画像再生方式が開発される場合でも、新開発の画像再生方式に対応するインターフェイスモジュールを新たに用意するだけで、既存の画像再生装置1を用いて画像を再生することが可能になる。」

ケ 図面の図10及び図11には、ユーザーがメニュー表示を要求し、該メニュー表示から所望の選択を行うことにより表示状態を設定する構成が見て取れる。

上記摘記事項ア及びエから「入力されるビデオ信号による画像を再生する液晶パネル(8)と、この液晶パネルの駆動回路を制御する制御部(15)とを備えた画像再生装置」の構成が読み取れる。前記構成を当該技術分野の技術常識を参酌して解釈するに、制御部(15)は、上記駆動回路を介して液晶パネルの表示状態を制御しているといえるから、前記構成は、実質的に「入力されるビデオ信号による画像を再生する液晶パネル(8)と、この液晶パネルを制御する制御部(15)とを備えた画像再生装置」の構成であるといえる。
上記摘記事項イ及びウから「制御部(15)」は、「ビデオ信号が変換されたディジタルRGB信号が入力される端子A?Cを端子Dに接続するスイッチ12に切換え信号を出力する」手段を備えることが読み取れる。
上記摘記事項オ乃至ク、図面の図10、図11から、「画像再生装置」は、「スクリーン上に表示される画像45の色の鮮やかさ等を調整するための操作信号、及び、それぞれ異なる画像再生用信号が入力されるインターフェイスモジュール4,5を選ぶための操作信号が入力されるMPU(16)」を備えていることを読み取ることができる。
上記摘記事項キから、「MPU(16)」は、「制御部(15)に指令を出して、インターフェイスモジュールおよび記録媒体の一覧をスクリーンS上に表示させ、リモコン送信機(108)からの任意のインターフェイスモジュールを選ぶための操作信号の入力の後、リモコン送信機(108)からのメニュー/設定スイッチ56による操作信号が再び入力されたか否かを判定し、入力されたと判定するとインターフェイス選択が完了したとみなす」手段を備えることを読み取ることができる。

したがって、上記摘記事項ア?ク及び図面の記載からみて、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「入力されるビデオ信号による画像を再生する液晶パネル(8)と、この液晶パネルを制御する制御部(15)とを備えた画像再生装置であって、
ビデオ信号が変換されたディジタルRGB信号が入力される端子A?Cを端子Dに接続するスイッチ12に切換え信号を出力する制御部(15)と、
スクリーン上に表示される画像45の色の鮮やかさ等を調整するための操作信号、及び、それぞれ異なる画像再生用信号が入力されるインターフェイスモジュール4,5を選ぶための操作信号が入力されるMPU(16)とを備え、
MPU(16)は、制御部(15)に指令を出して、インターフェイスモジュールおよび記録媒体の一覧をスクリーンS上に表示させ、リモコン送信機(108)からの任意のインターフェイスモジュールを選ぶための操作信号の入力の後、リモコン送信機(108)からのメニュー/設定スイッチ56による操作信号が再び入力されたか否かを判定し、入力されたと判定するとインターフェイス選択が完了したとみなす手段を備える画像再生装置。」(以下、「刊行物発明1」という。)

(5)対比
本件補正発明と刊行物発明1とを対比すると、
(ア)刊行物発明1の「入力されるビデオ信号による画像を再生する液晶パネル(8)」は、本件補正発明の「入力される画像信号に応じて光学像を形成表示する画像形成手段」に相当し、以下同様に「液晶パネルを制御する制御部(15)」は「画像形成手段を制御する制御手段」に、「画像再生装置」は「画像表示装置」に相当し、
(イ)刊行物発明1の「ビデオ信号が変換されたディジタルRGB信号が入力される端子A?Cを端子Dに接続するスイッチ12に切換え信号を出力する制御部(15)」は、本件補正発明の「画像信号が入力される入力端子の接続設定の切替制御を行う接続設定切替制御部」に相当し、以下同様に「それぞれ異なる画像再生用信号が入力されるインターフェイスモジュール4,5を選ぶための操作信号が入力されるMPU(16)」は「前記光学像の表示状態を切り替えるための操作信号を受け付ける操作信号受付部」に相当し、
(ウ)刊行物発明1の「MPUは、制御部(15)に指令を出して、インターフェイスモジュールおよび記録媒体の一覧をスクリーンS上に表示させ、リモコン送信機(108)からの任意のインターフェイスモジュールを選ぶための操作信号の入力の後、リモコン送信機(108)からのメニュー/設定スイッチ56による操作信号が再び入力されたか否かを判定し、入力されたと判定するとインターフェイス選択が完了したとみなす」は、本件補正発明の「操作信号受付部により、接続設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部は、切替制御を行う」に相当する。
したがって、本件補正発明と刊行物発明1の両者は、 以下の一致点で一致し、以下の相違点1乃至4で相違する。
<一致点>
「入力される画像信号に応じて光学像を形成表示する画像形成手段と、この画像形成手段を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、
前記画像信号が入力される入力端子の接続設定の切替制御を行う接続設定切替制御部と、
前記光学像の表示状態を切り替えるための操作信号を受け付ける操作信号受付部とを備え、
前記操作信号受付部により、接続設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部は、切替制御を行う画像表示装置。」

<相違点1>
本件補正発明では、「制御手段」は、「接続設定切替制御部と、カラーモード設定切替制御部と、操作信号受付部と、切替表示状態判定部」を備えているのに対して、刊行物発明1では、そのような制御手段を備えていない点。

<相違点2>
本件補正発明では、「複数のカラーモード設定の切替制御を行うカラーモード設定切替制御部」を備えているのに対して、刊行物発明1では、そのようなカラーモード設定切替制御部を備えていない点。

<相違点3>
本件補正発明では、「受け付けられた操作信号を監視して、最終的に切り替えられる接続設定及びカラーモード設定を判定する切替表示状態判定部」とを備えているのに対して、刊行物発明1では、そのような切替表示状態判定部を備えていない点。

<相違点4>
本件補正発明では、「操作信号受付部により、接続設定又はカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行う」のに対して、刊行物発明1では、そのように限定されていない点。

(6)判断
上記相違点1について検討する。
刊行物発明1では、本件補正発明の「制御手段」に相当する機能を「制御部(15)」と「MPU(16)」を用いて実現するような構成となっている点で相違している。しかし、電子回路を用いた制御技術一般において、制御の為の各機能を細分化して実現するか、又は、制御部を制御するMPUを用いて一括して実現するかは、目的とする機能を実現する際において等価のものにすぎない。してみると、制御の為の各機能を細分化して実現するか、又は、制御部を制御するMPUを用いて一括して実現するかは、実施時において当業者が適宜選択しうる単なる設計的事項にすぎない。
よって、上記刊行物発明1において、制御部(15)とMPU(16)とを用いて実現していた機能を単に細分化し、接続設定切替制御部と、カラーモード設定切替制御部と、操作信号受付部として実現することに特段の困難性もない。
してみると、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は、刊行物発明1から当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

上記相違点2について検討する。
本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-282174号公報(以下、「刊行物2」という。)には、
「【0002】
【従来の技術】近年におけるテレビジョン放送は、衛星放送等多種の高画質メディアが充実してきている。また、テレビジョン受像機としても、電界放出ディスプレイ等のマトリクス型表示パネル(マトリクスパネル)を用いた画像表示装置が開発され、ユーザは、これらにより、高画質な画像を得ることができるようになっている。
【0003】ここで、このマトリクスパネルを用いた画像表示装置には、前記高画質メディアの画像を良好な状態で視聴可能とするために、当該画像表示装置の設置条件(例えば部屋等の明るさ)やユーザの好みに応じて、例えば画像の明るさ(ブライト=輝度)、色あい、色の濃さ等の各パラメータを調整できるようになっている。具体的には、ブライト(輝度)、色あい、色の濃さ等の各パラメータは、A/D変換前のアナログ信号の状態、或いはA/D変換後のデジタル信号の状態のR,G,Bの各映像信号のゲインを調整することにより調整される。
【0004】また、例えば「ノーマルモード」、「リビングモード」、「ゲームモード」、「シアターモード」等の、それぞれ異なるパラメータに調整された複数の画像モードが設けられており、ユーザは、好みに応じてこれら各画像モードを選択するようになっている。
【0005】例えば、前記「シアターモード」は、映画等の視聴用の画像モードであり、ブライト、ピクチャー等の機能により画像の輝度が低く制御され、色温度は映画ソフトに合わせて6500度に設定される。これにより、色や輪郭等がはっきりしている通常の画像よりも、やや暗く淡い画像が得られるようになっており、映画フィルムの質感に近い表示画像を得ることができるようになっている。このため、この「シアターモード」を選択した際に、視聴する部屋の照明を暗くすることにより、実際に映画館で視聴しているような感覚で映画等の画像を楽しむことができる。」

上記刊行物2の記載事項によれば、画像表示装置の表示制御技術において、予め用意された複数の画像モードから好みのモードを選択し色温度などの切り替えを行う技術は、周知の技術である(以下、「周知技術1」という。)。
してみると、上記刊行物発明1と上記周知技術1とは、ともに画像表示装置の設定の切り替えに関する発明である点で共通していることから、上記刊行物発明1において、画面の状態を調整する際の技術として、上記周知技術1を採用することに特段の困難性もない。
よって、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は、刊行物発明1に上記周知技術1を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

上記相違点3について検討する。
刊行物発明1では、「受け付けられた操作信号を監視して、最終的に切り替えられる接続設定及びカラーモード設定を判定する切替表示状態判定部」、即ち、受け付けられた操作信号を監視し、判定する構成に関して明確には記載されていないが、刊行物1の「【0070】・・・MPU16は、・・・。操作者は、リモコン送信機の上向き操作スイッチ51および下向き操作スイッチ53を操作して、装着されているインターフェイスモジュールおよび記録媒体の中から、任意のインターフェイスモジュールおよび記録媒体を選ぶ。ステップS143では、リモコン送信機108からのメニュー/設定スイッチ56による操作信号が再び入力されたか否かを判定する。入力されたと判定する(ステップS143のY)とインターフェイス選択が完了したとみなしてステップS144へ進み、入力されないと判定する(ステップS143のN)とインターフェイス選択の完了を待つ。」との記載を当該技術分野の技術常識を参酌して解釈するに、MPU(16)が、受け付けられた操作信号を監視し、判定する機能を有していることは技術的に明白である。
してみると、上記相違点3に係る本件補正発明の発明特定事項は、刊行物発明1から当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

相違点4について検討する。
上記相違点2で検討したように、当該技術分野において、画像表示装置が「複数のカラーモード設定の切替制御を行うカラーモード設定切替制御部」を備える構成は、周知の構成にすぎない。してみると、上記刊行物発明1において、前記周知の構成を採用した際には、切替制御が、操作信号受付部により、接続設定又はカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として、前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて行われるようになることは、技術的に明白である。
してみると、上記相違点1に係る本件補正発明の発明特定事項は、刊行物発明1に上記周知の構成を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

そして、本件補正発明の奏する効果も、刊行物1及び2に記載された事項から当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本件補正発明は、刊行物発明1及び周知技術1、周知の構成に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)独立特許要件についてのむすび
したがって、本件補正発明は、刊行物発明1及び周知技術1、周知の構成に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(8)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成17年12月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至8に係る発明は、平成17年5月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】入力される画像信号に応じて光学像を形成表示する画像形成手段と、この画像形成手段を制御する制御手段とを備えた画像表示装置であって、
前記制御手段は、
前記画像信号が入力される入力端子の接続設定の切替制御を行う接続設定切替制御部と、
複数のカラーモード設定の切替制御を行うカラーモード設定切替制御部と、
前記光学像の表示状態を切り替えるための操作信号を受け付ける操作信号受付部と、
受け付けられた操作信号を監視して、最終的に切り替えられる接続設定及びカラーモード設定を判定する切替状態判定部とを備え、
前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行うことを特徴とする画像表示装置。」

4 刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用され、本願の出願前に頒布された刊行物1及びその刊行物発明1は、「2(4)刊行物に記載された発明」の項に記載したとおりである。

5 対比
上記「2(2)補正の目的」で検討したことから、本願発明の発明特定事項である「切替状態判定部」は、本件補正発明の発明特定事項である「切替表示状態判定部」の誤記であるから、本願発明は「前記接続設定切替制御部及び前記カラーモード設定切替制御部は、前記切替表示状態判定部の判定結果に基づいて、切替制御を行う」の切替制御を行う条件として、本件補正発明の発明特定事項である「操作信号受付部により、接続設定及びカラーモード設定を確定した確定操作信号が受け付けられたことを条件として」との限定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「2(6)判断」に記載したとおり、刊行物発明1及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、刊行物発明1及び周知技術1に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明(本願発明)は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項2乃至8に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-23 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-11 
出願番号 特願2002-92798(P2002-92798)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 575- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 杉野 裕幸
西島 篤宏
発明の名称 画像表示装置  
代理人 石崎 剛  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 木下 實三  
代理人 中山 寛二  

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