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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 F02D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F02D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F02D 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 F02D |
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管理番号 | 1185088 |
審判番号 | 不服2006-2857 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-02-16 |
確定日 | 2008-09-25 |
事件の表示 | 特願2001-254517「内燃機関の排気浄化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 5日出願公開、特開2003- 65116〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年8月24日の出願であって、平成17年9月15日付けで拒絶理由が通知され、同年11月24日に意見書が提出されたが、平成18年1月4日付けで拒絶査定がなされ、同年2月16日に同拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月20日付けで明細書を補正する手続補正がなされたものである。 2.平成18年3月20日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年3月20日付けの手続補正を却下する。 [理由] 平成18年3月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、 「内燃機関の排気通路に配置され、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxをトラップし、排気の空燃比がリッチのときにトラップしたNOxを脱離浄化するNOxトラップ触媒と、 前記NOxトラップ触媒にトラップしたNOxの浄化時期を判断する浄化時期判断手段と、 前記NOxトラップ触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段と、 運転条件に応じて内燃機関の燃焼状態を拡散燃焼と予混合燃焼とのいずれかに切換可能な燃焼状態切換手段と、 運転状態を検出する手段と、 吸気通路に配設された吸気絞り弁と、 運転状態に応じて拡散燃焼でのリッチ運転時の目標吸入空気量を設定する手段と、 前記NOxトラップ触媒の浄化時期で前記NOxトラップ触媒が活性状態にあるとき、予混合燃焼で排気空燃比をリッチにし、前記NOxトラップ触媒の浄化時期で前記NOxトラップ触媒が活性状態にないとき、拡散燃焼で排気空燃比を少なくとも吸入空気量が前記目標吸入空気量となるように前記吸気絞り弁を制御することでリッチにする空燃比制御手段と、 を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。」 と補正された。 (1)新規事項 上記追加補正された、「少なくとも吸入空気量が前記目標吸入空気量となるように前記吸気絞り弁を制御する」事項について、「少なくとも」と限定する事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとはいえない。願書に最初に添付した明細書又は図面には、明細書の段落【0040】に「図9に示す拡散燃焼でリッチ運転を実現するための目標吸入空気量マップを参照して、目標吸入空気量を設定し、これに基づいて吸気絞り弁5を制御する」と記載されているだけである。 したがって、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。 (2)本件補正の目的 上記追加補正された、「運転状態を検出する手段」の事項、「吸気通路に配設された吸気絞り弁」の事項、「運転状態に応じて拡散燃焼でのリッチ運転時の目標吸入空気量を設定する手段」の事項、及び「少なくとも吸入空気量が前記目標吸入空気量となるように前記吸気絞り弁を制御することで」の事項は、本件補正前の請求項1に記載された発明の発明特定事項、即ち、課題解決手段のいずれの事項の限定でもなく、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもない。 したがって、本件補正は、平成14年改正前特許法第17条の2第4項各号の規定に適合しない。 (3)独立特許要件 上記(2)で検討したように、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえないが、仮に特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとして、以下に検討する。 上記補正された請求項1の記載は、次の点で不明りょうである。 (ア)「運転条件」、「運転状態」が、それぞれどのような「条件」、「状態」をいうのか? また、「運転条件」と「運転状態」とはどのように相違するのか? (イ)「少なくとも吸入空気量が前記目標吸入空気量となるように前記吸気絞り弁を制御する」は、少なくとも吸入空気量が前記目標吸入空気量となるようにするのか、少なくとも前記吸気絞り弁を制御するのか? (ウ)「拡散燃焼でのリッチ運転」がどのように行われるのか? 燃料噴射量をそのままで、吸入空気量を目標吸入空気量に設定すればよいのか? したがって、本願は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないから、本件補正後の請求項1に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項及び平成14年改正前特許法第17条の2第4項の規定に適合しないから、若しくは、平成14年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 3.本願発明について 平成18年3月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「内燃機関の排気通路に配置され、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxをトラップし、排気の空燃比がリッチのときにトラップしたNOxを脱離浄化するNOxトラップ触媒と、 前記NOxトラップ触媒にトラップしたNOxの浄化時期を判断する浄化時期判断手段と、 前記NOxトラップ触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段と、 運転条件に応じて内燃機関の燃焼状態を拡散燃焼と予混合燃焼とのいずれかに切換可能な燃焼状態切換手段と、 前記NOxトラップ触媒の浄化時期で前記NOxトラップ触媒が活性状態にあるとき、予混合燃焼で排気空燃比をリッチにし、前記NOxトラップ触媒の浄化時期で前記NOxトラップ触媒が活性状態にないとき、拡散燃焼で排気空燃比をリッチにする空燃比制御手段と、 を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特許第3079933号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (a)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関し、詳細には、ディーゼルエンジンの排気中のNOxを効果的に除去可能な排気浄化装置に関する。」(段落【0001】) (b)「【0038】…(前略)…図1に5で示すのは、エンジン1の排気通路3に設けられたNOx吸収剤である。NOx吸収剤5は排気空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸収し、排気中の酸素濃度が低下したときに吸収したNOxを放出する後述のNOx吸放出作用を行う。」(段落【0038】) (c)「【0039】…(前略)…NOx吸収剤5の再生時にエンジン1の燃焼状態を拡散燃焼主体の燃焼から予混合燃焼主体の燃焼に切り換えてエンジン1の空気過剰率を1またはそれ以下に(すなわち理論空燃比またはリッチ空燃比に)低下させる運転を行う。」(段落【0039】) (d)「【0079】図6(A)は、本実施例において空気過剰率を低下させた予混合燃焼を行う負荷領域の例を示している。図6(A)において、縦軸はエンジンのアクセル開度(すなわち、エンジン出力トルク)、横軸はエンジン回転数を示し、図中に斜線を付した領域が予混合燃焼を行う負荷領域である。…(中略)…図6(A)の実施例では、このように本来空気過剰率λが大きい運転が行われる低負荷領域で、エンジンの負荷状態が図に斜線で示した負荷領域になると、前述のいずれかの方法により燃焼室内に予混合気を形成し、同時に空気過剰率λを1.0以下に低下させた運転を行う。」(段落【0079】) (e)「【0103】ステップ1703、1705で予混合燃焼運転の条件が成立した場合には、ステップ1707が実行される。ステップ1707では、NOx吸収剤5に吸収したNOx量ANが予め定めた所定量AN_(0)以上に増大しているか否かが判定される。ステップ1707でNOx吸収剤5のNOx吸収量ANが所定量AN_(0)少ない場合には、NOx吸収剤5の再生操作は実施せずにステップ1713を実行した後ルーチンは終了する。すなわち、NOx吸収剤5のNOx吸収量が所定量以上であり、真に再生が必要な場合にのみ、ステップ1709以降の空気過剰率を低下した予混合燃焼運転が実行される。」(段落【0103】) 上記記載事項によると、引用例には、それぞれ、 (イ)上記記載事項(b)、(c)から、「エンジン1の排気通路3に配置され、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸収し、排気の空燃比がリッチのときに吸収したNOxを放出するNOx吸収剤5」の事項、 (ロ)上記記載事項(e)から、「NOx吸収剤5に吸収したNOxの再生時期を判定する再生時期判定手段」の事項、 (ハ)上記記載事項(c)、(d)から、「負荷領域に応じてエンジン1の燃焼状態を拡散燃焼と予混合燃焼とのいずれかに切換可能な燃焼状態切換手段」の事項、 (ニ)上記記載事項(c)?(e)から、「NOx吸収剤5の再生時期にあるとき、予混合燃焼で排気空燃比をリッチにする空燃比制御手段」の事項、 (ホ)上記記載事項(a)から、「エンジン1の排気浄化装置」の事項、が記載されていることが分かる。 そうすると、引用例には、 「エンジン1の排気通路3に配置され、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxを吸収し、排気の空燃比がリッチのときに吸収したNOxを放出するNOx吸収剤5と、 前記NOx吸収剤5に吸収したNOxの再生時期を判定する再生時期判定手段と、 負荷領域に応じてエンジン1の燃焼状態を拡散燃焼と予混合燃焼とのいずれかに切換可能な燃焼状態切換手段と、 前記NOx吸収剤5の再生時期にあるとき、予混合燃焼で排気空燃比をリッチにする空燃比制御手段と、 を備えるエンジン1の排気浄化装置。」 の発明(以下、「引用例に記載された発明」という。)が記載されている。 (2)対比 本願発明と引用例に記載された発明を対比すると、引用例に記載された発明の「エンジン1」は、その技術的意義からみて、本願発明の「内燃機関」に相当し、以下同様に、「排気通路3」は「排気通路」に、「吸収」は「トラップ」に、「放出」は「脱離浄化」に、「NOx吸収剤5」は「NOxトラップ触媒」に、「再生時期」は「浄化時期」に、「再生時期判定手段」は「浄化時期判断手段」に、「負荷領域」は「運転条件」に、それぞれ、相当する。 してみると、両者は、 「内燃機関の排気通路に配置され、流入する排気の空燃比がリーンのときに排気中のNOxをトラップし、排気の空燃比がリッチのときにトラップしたNOxを脱離浄化するNOxトラップ触媒と、 前記NOxトラップ触媒にトラップしたNOxの浄化時期を判断する浄化時期判断手段と、 運転条件に応じて内燃機関の燃焼状態を拡散燃焼と予混合燃焼とのいずれかに切換可能な燃焼状態切換手段と、 前記NOxトラップ触媒の浄化時期にあるとき、排気空燃比をリッチにする空燃比制御手段と、 を備える内燃機関の排気浄化装置。」 という発明の点で一致し、次の[相違点]で相違している。 [相違点] 本願発明においては、「NOxトラップ触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段」を備え、「前記NOxトラップ触媒の浄化時期で前記NOxトラップ触媒が活性状態にあるとき、予混合燃焼で排気空燃比をリッチにし、前記NOxトラップ触媒の浄化時期で前記NOxトラップ触媒が活性状態にないとき、拡散燃焼で排気空燃比をリッチにする」のに対し、引用例に記載された発明においては、「NOxトラップ触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段を備えている」か否かがそもそも明らかではないが、「前記NOxトラップ触媒の浄化時期にあるとき、予混合燃焼で排気空燃比をリッチにする」点。 (3)当審の判断 内燃機関(ディーゼル機関)の排気浄化装置において、「NOxトラップ触媒の浄化時期にあるとき、拡散燃焼で排気空燃比をリッチにする」ことは、周知技術(例えば、特許第2600492号公報の第16?18図記載の実施例、参照。)である。また、ディーゼル機関において、拡散燃焼時の筒内温度や排気温度が予混合燃焼時の筒内温度や排気温度より高くなる傾向を示すということは、技術常識(必要ならば、特開2001-152853号公報の第8頁13欄46?49行、特開2000-356126号公報の第9頁段落【0068】【0070】【0074】【0075】、参照。)というべきものである。 そして、NOxトラップ触媒の活性状態を判断し、NOxトラップ触媒が活性状態にないとき、排気温度を高くすることで、触媒を活性化することは、ごく普通に行われること(必要ならば、特開2001-182586号公報の第8頁13欄14?25行、特開2001-98970号公報の第9頁15欄5?19行、参照。)である。 そうすると、引用例に記載された発明において、NOxトラップ触媒の活性状態を判断する活性状態判断手段を備えるようにし、しかも、NOxトラップ触媒の浄化時期でNOxトラップ触媒が活性状態にないとき、排気温度を高くしてNOxトラップ触媒を活性化するために、上記周知の技術を採用し、もって、上記[相違点]に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。 そして、本願発明の効果についてみても、引用例に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-23 |
結審通知日 | 2008-07-29 |
審決日 | 2008-08-12 |
出願番号 | 特願2001-254517(P2001-254517) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F02D)
P 1 8・ 572- Z (F02D) P 1 8・ 537- Z (F02D) P 1 8・ 575- Z (F02D) P 1 8・ 561- Z (F02D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 畔津 圭介、所村 陽一 |
特許庁審判長 |
深澤 幹朗 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 石井 孝明 |
発明の名称 | 内燃機関の排気浄化装置 |
代理人 | 笹島 富二雄 |