ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
不服200418426 | 審決 | 特許 |
不服200416091 | 審決 | 特許 |
不服20056282 | 審決 | 特許 |
不服200420207 | 審決 | 特許 |
不服200517013 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
---|---|
管理番号 | 1185167 |
審判番号 | 不服2004-21179 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-10-13 |
確定日 | 2008-09-22 |
事件の表示 | 特願2002-538966「虚血性障害の処置用医薬品の製造のためのメラガトランの使用」拒絶査定不服審判事件〔平成14年5月10日、国際公開、WO02/36157;平成16年4月22日、国内公表、特表2004-512376〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年11月9日(パリ条約による優先権主張、平成12年11月6日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、平成16年2月5日付け拒絶理由通知に対して、平成16年4月28日付けで意見書とともに明細書を対象とする手続補正書が提出されたが、平成16年7月13日付けで拒絶査定がなされ(同謄本の送達は平成16年7月16日)、平成16年10月13日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2.本願発明 本願請求項1?14に係る発明は、平成16年4月28日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、そのうち請求項2に係る発明は、次のとおりである。 「非弁膜性心房細動の患者またはそのリスクのある患者における虚血性障害の処置に使用する医薬製剤であって、メラガトランまたは医薬的に受容可能なその誘導体の有効量を含む当該製剤。」(以下、「本願発明」という。) 3.引用例の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先日前に頒布されたことが明らかな刊行物である、特表2000-504313号公報(公表日:平成12年4月11日、原査定における「引用文献2」。以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 <摘記事項A> 「1.式I R_(1)O(O)C-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-R_(2) (I) 〔式中、…………。〕の化合物またはその薬学的に許容しうる塩。」(請求項1) <摘記事項B> 「32.………… EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-OH; ………… である請求項1記載の化合物。」(請求項32) <摘記事項C> 「39.請求項1?38の何れかの項記載の式Iの化合物またはその薬学的に許容しうる塩を薬学的に許容しうる補助剤、希釈剤または賦形剤と混合して含有する医薬製剤。」(請求項39) <摘記事項D> 「ごく最近、ペプチド誘導体に基づくトロンビン阻害剤が…………およびWO 94/29336に開示されている。 特に、後者の出願はペプチド誘導体R^(a)OOC-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-H(式中、R^(a)はH、ベンジルまたはC_(1-6)アルキルである)を開示している。 これらの活性化合物は有意な抗トロンビン活性を示すことが知られているが、経口的および非経口的投与後のこれらの薬物動態学的特性を改善することは有益である。…………。 …………。 本発明者らは上記の問題が本発明の化合物を投与することにより解決されることを見い出した。本発明の化合物はそれ自体不活性であり、経口および/または非経口投与により体内で代謝して活性なトロンビン阻害剤、例えば上記の化合物を生成する。」(第12頁第9行?第13頁第11行) <摘記事項E> 「本発明の化合物は体内で代謝して薬理活性を有する化合物を生成するため有用である。したがって、これらは薬剤、特にプロドラッグとして適している。 特に、本発明の化合物はトロンビンそれ自体には不活性であるが、例えば下記の試験で証明されるように、体内で代謝して強力なトロンビン阻害剤を生成する。 …………。 したがって、本発明の化合物はトロンビンの阻害が必要な症状において有用であることが予想される。 したがって、本発明の化合物はヒトを含む動物の血液および組織における血栓症および凝固性亢進の治療的および/または予防的処置に適用される。 凝固性冗進が血栓塞栓症をもたらすことは知られている。 …………。 特定の疾患への適用の例として、静脈血栓症、肺塞栓症、動脈血栓症(例えば心筋梗塞、不安定な狭心症、血栓症に基づく卒中および末梢性動脈血栓症において)、および通常は心房細動中の心房または経壁性(transmural)心筋梗塞後の左心室の全身性塞栓症の治療的および/または予防的処置が挙げられる。」(第24頁第20行?第25頁第19行) <摘記事項F> 「本発明の化合物はまた、従来の既知化合物よりも有効であり、低い毒性であり、長く作用し、広範囲の活性を有し、副作用が少なく、容易に吸収される、または他の有用な薬理学的特性を有するという利点を持つ。」(第27頁第23?25行) <摘記事項G> 「生物学的試験 試験A トロンビン凝固時間(TT)の測定 …………。 試験B 生体外での血漿におけるトロンビン凝固時間の測定 …………。 試験C 生体外(ex vivo)での尿におけるトロンビン凝固時間の測定 …………。 試験D LC-MSによる尿中のHO(O)C-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-Hの測定 …………。」(第27頁第26行?第31頁第9行) <摘記事項H> 「[実施例17] EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-OH EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-C(O)OCH(CH_(3))OOCCH_(3)(184mg;0.31ミリモル;上記実施例14(iii)を参照)の溶液にEtOH(95%;4.0ml)中のヒドロキシルアミン塩酸塩(120mg;1.72ミリモル)およびトリエチルアミン(0.8ml;5.7ミリモル)を加え、混合物を室温で4日間攪拌した。反応混合物を濃縮し、粗生成物を分取用RPLCに付した。これにより85mg(58%)の表題化合物を得た。 …………」(実施例17) <摘記事項I> 「[実施例69] 実施例1?68の化合物をすべて上記試験Aで試験した結果、すべて1.0μMより大きいIC50TT値を示すことがわかった(すなわち、これらの化合物はトロンビンそれ自体に対して不活性である;0.01μMのIC50TTを示す活性な阻害剤HOOC-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-Hを参照)。 [実施例70] 実施例1?68の化合物を上記試験B、Cおよび/またはDの1種、2種またはすべてにおいて試験した結果、これらはすべて遊離塩基および/またはその1種以上のエステルとしての活性な阻害剤HOOC-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-Hとして、ラットにおいて経口的および/または非経口的な生体利用性を示すことがわかった。HOOC-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-Hがラットにおいて生成するという仮定に基づいて、生体内有効率を試験Bおよび/または試験Cに記載の式に従って計算した。」(実施例69?70) 4.引用例に記載された発明 引用例には、「EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-OH」という式で表される化合物が、その製造実施例とともに具体的に記載されており(摘記事項A?B、Hを参照)、該化合物は、プロドラッグであって、トロンビン自体に対しては不活性であるが、経口/非経口投与によって生体内で代謝され、「HOOC-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-H」となって、トロンビン阻害活性を発揮することが、薬理試験データにより具体的に裏付けられている(摘記事項D?Iを参照)。 また、引用例には、上記化合物を含有する医薬製剤が記載され(摘記事項Cを参照)、上記化合物のトロンビン阻害活性に基づき適用される具体的な疾患として、「静脈血栓症、肺塞栓症、動脈血栓症(例えば、心筋梗塞、不安定な狭心症、血栓症に基づく卒中および末梢性動脈血栓症)」とともに、「通常は心房細動中の心房または経壁性(transmural)心筋梗塞後の左心室の全身性塞栓症」についての「治療的および/または予防的処置」が挙げられており(摘記事項Eを参照)、上記「通常は心房細動中の心房または経壁性(transmural)心筋梗塞後の左心室の全身性塞栓症」とは、「通常は心房細動中の心房または経壁性(transmural)心筋梗塞後の左心室に由来する全身性塞栓症」のことを意味しているものと解されるから、上記引用例に記載された医薬製剤の用途には、「心房細動中の心房に由来する全身性塞栓症の治療的および/または予防的処置」が含まれるものと認められる。 そして、医薬製剤は有効量の医薬化合物を含むものであることは明らかである。 以上によれば、引用例には、 「心房細動中の心房に由来する全身性塞栓症の治療的および/または予防的処置に使用する医薬製剤であって、式:HOOC-CH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-Hの化合物のプロドラッグである式:EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-OHの化合物の有効量を含む当該製剤。」 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 5.対比 本願発明と引用発明を対比すると、本願明細書の段落【0015】?【0016】の記載によれば、「虚血性障害」には「血栓症」が含まれ、「血栓症」には「塞栓症」に至る可能性があるものと理解されるとされていることから、引用発明における「心房細動中の心房に由来する全身性塞栓症」は、本願発明における「心房細動患者における虚血性障害」に相当し、本願発明における「処置」は、治療的および/または予防的処置を含むから(本願明細書の段落【0013】を参照)、引用発明における「治療的および/または予防的処置」は、本願発明における「処置」に相当する。 そして、引用発明における「式:EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-OHの化合物」は、本願明細書の段落【0014】の記載によれば、本願発明における「メラガトランの医薬的に受容可能な誘導体」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、 「心房細動の患者における虚血性障害の処置に使用する医薬製剤であって、メラガトランの医薬的に受容可能な誘導体の有効量を含む当該製剤。」 である点で一致しており、「心房細動の患者」が、本願発明では「非弁膜性心房細動の患者」に限定されているのに対し、引用発明ではそのような限定がされていない点で相違している。 6.判断 上記相違点について検討する。 心房細動の原因には、リウマチ性心疾患(特に僧帽弁膜性)等の弁膜症によるものの他に、高血圧や呼吸器疾患等の非弁膜性のものが多数あること、心房細動の治療として脳塞栓症等の血栓塞栓症の予防が行われること、及びその原因が弁膜性であると非弁膜性であるとを問わず血栓塞栓症を予防するために抗凝血剤であるワーファリン等が投与されることは、本願優先日前に技術常識であったと認められる(例えば、日野原重明他監修、「今日の治療指針 1997年版〔ポケット判〕」、株式会社医学書院、1997年6月15日発行第2刷、p.323?324(原査定における「引用文献4」)を参照)。 そして、引用発明における「式:EtOOCCH_(2)-(R)Cgl-Aze-Pab-OHの化合物」は、優れたトロンビン阻害剤(即ち、抗凝血剤)であるとされ(摘記事項D?Fを参照)、心房細動に由来する全身性塞栓症の予防的処置に適用されるものであり(摘記事項Eを参照)、ワーファリンと同じく抗凝血作用により塞栓症を予防するものであるから、該化合物も心房細動の原因を問わず適用できることは、当業者が容易に理解できることである。 してみれば、心房細動の患者のうち、非弁膜性の心房細動の患者に対しても、虚血性障害の予防的処置のために、引用発明の医薬製剤を適用することは、当業者ならば特に創意を要さずになし得ることである。 なお、本願発明の効果についても、本願明細書に記載の臨床試験の結果によれば、ワーファリン投与群と比較して、同等程度か若干良好な虚血性障害の予防効果が得られたことが認められるに過ぎず(特に、本願明細書の段落【0059】?【0060】を参照)、引用例の記載、及び本願優先日前の技術常識から、当業者が予測し得ない程の顕著な効果を、本願発明が奏したものとは認められない。 また、請求人は、平成16年4月28日付け意見書、及び請求の理由において、新たな長期間にわたる大規模臨床治験の結果を示し、本願発明の医薬製剤を投与した場合には、ワーファリンを投与した場合と比較して、臨床的事象(卒中、一過性虚血性発作、大出血、死亡)が33%も低く、血清コレステロール濃度も有意に低いという予測し得ない顕著な効果を奏したことを主張しているが、これらの効果についても、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第00/64470号(原査定における「引用文献3」)には、メラガトランを含有する医薬製剤とメラガトランのプロドラッグを含有する医薬製剤を含むキット製品を用いた場合、ワーファリン製剤等の従来技術を用いた場合よりも、有効で広範囲の活性があり強力で、他の有用な薬理学的性質を有し得ることが記載されているから(クレーム、第4頁第16?23行及び第16頁第15?21行を参照)、当業者が予測し得ない程の顕著な効果であるとは認められない。 7.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明、及び本願優先日前の技術常識に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、請求項2以外の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-30 |
結審通知日 | 2008-05-01 |
審決日 | 2008-05-13 |
出願番号 | 特願2002-538966(P2002-538966) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川口 裕美子 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
森田 ひとみ 井上 典之 |
発明の名称 | 虚血性障害の処置用医薬品の製造のためのメラガトランの使用 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 金本 恵子 |
代理人 | 小林 泰 |