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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1185225
審判番号 不服2005-23283  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-01 
確定日 2008-10-03 
事件の表示 平成10年特許願第203389号「インクジェットプリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月 2日出願公開、特開2000- 33690〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年7月17日の出願であって、平成17年10月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月1日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに同年12月20日付けで明細書に係る手続補正がなされ、当審から平成20年4月30日付けで拒絶理由が通知され、同年6月30日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明の認定
本願の請求項1に係る発明は、前記平成20年6月30日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】 インクを加圧してノズルから噴出するインク噴出機構部と、
所定サイズのシート状の記録材が静止した状態で配置される定置部とを備え、
前記定置部に配置された前記記録材が静止した状態で、前記インク噴出機構部を主走査及び副走査して、前記ノズルから記録に必要なインクを選択的に噴出し、噴出したインクを前記記録材に付着させて画像を記録するインクジェットプリンタにおいて、
噴出されたインクの飛翔経路を規制する電界を生成する規制電極を備え、
前記規制電極は、主走査方向に長く延びた形状であり、その長さが前記記録材の主走査方向の長さよりも大きく、かつ、副走査方向に長く延びた形状であり、その長さが前記記録材の副走査方向の長さよりも大きいものであり、
前記定置部に配置された前記記録材は前記ノズルと対向する位置に配置され、
前記規制電極と前記ノズルとは前記定置部に配置された前記記録材を挟んで対向するように配置され、
前記ノズルから噴出したインクの飛翔経路を前記電界により規制して、前記記録材に到達させることを特徴とするインクジェットプリンタ。」(以下、「本願発明」という。 )

3.引用例記載の発明
これに対して、当審における平成20年4月30日付けで通知した拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用した本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平2-248254号公報(以下、「引用例」という。)には図示と共に次の記載がある。

(ア)「2.特許請求の範囲
1)記録ヘッドの液路に設けられた電気熱変換素子に電気信号を供給し、前記液路中の記録液を加熱発泡させて飛翔的液滴を形成し、該飛翔的液滴を被記録材上に着弾させて記録が行われる液体噴射記録装置において、
前記飛翔的液路の飛翔経路に沿って電界を形成したことを特徴とする液体噴射記録装置。」(第1頁左下欄第4?11行)

(イ)「本発明は、液体噴射記録装置に関し、詳しくは、液路に設けられた電気熱変換素子により記録液中に気泡を発生させ、その膨張力により記録液をヘッドのインク吐出口から吐出させて記録が行われる液体噴射記録装置に関する。」(第2頁左上欄第3?7行)

(ウ)「第1図および第2図は本発明の一実施例を示す。第1図は本発明の特徴を模式的に表わす図であり、同図において、1は被記録材、2および3は被記録材lを記録位置4に保持すると共に被記録材1を矢印方向にシート送り可能なそれぞれ対をなす送りローラである。5は記録位置4に保持される被記録材1に対し、その対向位置に配設され、吐出面5Aから被記録材1に向けてインクを吐出させる記録ヘッド、6は記録ヘッド5を駆動して第2図に示すように個々の液路7に連通するインク吐出口8からインクを吐出させるための駆動回路である。
またここで、吐出面5Aと被記録材1との間には所定の間隔、例えば0.6mmの間隔が保たれており、吐出面5Aに複数のインク吐出口8がシート送り方向とは直角の方向に一列に配列されている。9は各液路7に設けられ、駆動回路6から選択的駆動信号(駆動電圧)が供給される電気熱エネルギー変換体(以下で電気熱変換素子という)であり、駆動信号が供給された電気熱変換素子9ではその周囲のインク10中に気泡11を発生させることによって吐出口8からインク10をインク滴12となして被記録材1に向け飛翔させることができる。
13は被記録材lの記録位置4における背面側に設けた背面電極、14は背面電極13に直流電圧を印加する直流電源である。このように背面電極13に直流電圧を印加することによって記録ヘッド5と被記録材1との間に電界を形成するもので、飛翔的インク滴12はこの電界内で飛翔することになり、電界によってインク滴12を加速することができる。」(第2頁右下欄第4?第3頁左上欄第15行)

(エ)第1図からは、送りローラ対2,3の間(すなわち(ウ)でいう「記録位置4」)において、背面電極13が被記録材1を挟んで記録ヘッド5に対向していること、及び、被記録材1の搬送方向において、背面電極13の寸法が記録ヘッド5の寸法より大きいこと、が看取される。
上記(ア)における「液体」は上記(ウ)では「インク」または「インク10」と称されているから、以下統一して「インク」と呼ぶ。
上記(イ)には「気泡の膨張力により記録液(インク)をヘッドから吐出させる」旨記載されており、上記(ウ)には「インク10中に気泡11を発生させることによって吐出口8からインク10をインク滴12となして被記録材1に向け飛翔させることができる。」と記載されていることは、インクを加圧して噴出することに他ならない。

上記(ウ)によれば、吐出面5A下で被記録材1がシート送りされており、これは通常副走査と呼ばれる。

上記(ウ)には「吐出面5Aに複数のインク吐出口8がシート送り方向とは直角の方向に一列に配列されている。」とあり、これは副走査方向と直交する方向に設けられる複数のインク吐出機構部(引用例に記載される各インク吐出口においてインクを吐出させる機構を本願発明に倣って「インク吐出機構部」と称する。)により主走査がなされることを意味する。

してみるに、引用例には、以下の発明が記載されていると認められる。
「インクを加圧してインク吐出口から噴出するインク吐出機構部と、
被記録材が通過する記録位置4とを備え、
前記記録位置4にて前記インク吐出機構部を主走査し前記搬送により前記記録ヘッドと前記被記録材が相対的に移動することで副走査して、前記インク吐出口から記録に必要なインクを選択的に噴出し、噴出したインクを前記被記録材に付着させて画像を記録するインクジェットプリンタにおいて、
噴出されたインク滴を加速する電界を生成する背面電極を備え、
前記被記録材は前記インク吐出口と対向する位置に配置され、
前記背面電極と前記インク吐出口とは前記記録材を挟んで対向するように配置され、
前記インク吐出口から噴出したインクを前記電界により加速して、前記被記録材に到達させるインクジェットプリンタ」(以下、引用発明という。)

4.対比
本願発明と引用発明とを比較する。

引用発明の「インク吐出口」は、本願発明の「ノズル」に相当する。

引用発明の「被記録材が通過する記録位置4」は、記録材が記録位置に配置される記録位置配置部である点で、本願発明の「所定サイズのシート状の記録材が静止した状態で配置される定置部」と共通している。
引用発明の「被記録材」は、送りローラに挟恃されて搬送されており、シート状の記録材であるのは明らかであり、本願発明の「所定サイズのシート状の記録材」に相当する。

引用発明の「前記記録位置4にて前記インク吐出機構部を主走査し前記搬送により前記記録ヘッドと前記被記録材が相対的に移動することで副走査して」は、記録位置配置部にて「記録ヘッド」(「インク噴出機構部」)を主走査及び副走査する点で、本願発明の「前記定置部に配置された前記記録材が静止した状態で、前記インク噴出機構部を主走査及び副走査して」と共通している。
引用発明の「背面電極」は、飛翔するインクの動きに影響を与える電界を生成する点で、本願発明の「規制電極」と共通している。
引用発明の「前記インク吐出口から噴出したインクを前記電界により加速して」は、飛翔するインクの動きに電界が影響を与える点で、本願発明の「前記ノズルから噴出したインクの飛翔経路を前記電界により規制して」と共通している。

すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、以下の点で相違する。

<一致点>
「インクを加圧してノズルから噴出するインク噴出機構部と、
記録材が記録位置に配置される記録位置配置部とを備え、
前記記録位置配置部に配置された前記記録材に対して、前記インク噴出機構部を主走査及び副走査して、前記ノズルから記録に必要なインクを選択的に噴出し、噴出したインクを前記記録材に付着させて画像を記録するインクジェットプリンタにおいて、
噴出されたインクのインクの動きに影響を与える電界を生成する規制電極を備え、
前記記録位置配置部に配置された前記記録材は前記ノズルと対向する位置に配置され、
前記規制電極と前記ノズルとは前記記録位置配置部に配置された前記記録材を挟んで対向するように配置され、
前記ノズルから噴出したインクの動きに前記電界により影響を与えて、前記記録材に到達させることを特徴とするインクジェットプリンタ」

<相違点>
(i)本願発明は、記録材が定置部で静止した状態で記録が行われることを特定しているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。

(ii)噴出されたインクの動きに影響を与える電界を生成する規制電極に関し、本願発明は、「噴出されたインクの飛翔経路を規制する電界を生成する規制電極を備え」と特定されているのに対して、引用発明が当該特定を有するか否か定かでない点。
(iii)本願発明は、「前記規制電極は、主走査方向に長く延びた形状であり、その長さが前記記録材の主走査方向の長さよりも大きく、かつ、副走査方向に長く延びた形状であり、その長さが前記記録材の副走査方向の長さよりも大きいものであり」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。

(iv)「前記ノズルから噴出したインクの動きに前記電界により影響を与え」る点に関し、本願発明は、「前記ノズルから噴出したインクの飛翔経路を前記電界により規制して」と特定されているのに対して、引用発明は当該特定を有しない点。

5.当審の判断
相違点(i)について
本願発明の相違点(i)に係る構成、つまり静置されたシート状記録材に対して主副の走査をする方式は、インクジェット記録装置においては周知である(例えば、特開平2-277806号公報、実公平8-8820号公報、特開平2-130152号公報参照)。
よって、引用発明における走査方式を上記周知の方式に替えることで本願発明の相違点(i)に係る構成を備えることは、当業者が容易に想到し得たことである。

相違点(ii)、(iV)について
上記(ウ)には「記録ヘッド5と被記録材1との間に電界を形成するもので、飛翔的インク滴12はこの電界内で飛翔することになり、電界によってインク滴12を加速することができる。」とある。つまり、インク滴12は記録ヘッド5と被記録材1との間に延びる電気力線に沿った力を受けて加速されるのであり、インク滴12は被記録材1に向かうようその動きを規制される。
よって、本願発明の相違点(i)、(iv)に係る構成は実質的に引用発明も備えている。

相違点(iii)について
上記「3.引用例記載の発明 (エ)」で述べたように、引用発明であるところの、引用例の第1図に示された実施例では、被記録材1の搬送方向において、背面電極13の寸法は記録ヘッド5の寸法より大きい。これと並べて、引用例の第4図に示された「電界を集中して形成」(引用例の第3頁左下欄第9?11行参照)する他の実施例が提示されていることは、引用発明では、少なくとも副走査方向においては、電界を記録ヘッド直下に局在させず、記録ヘッド下近傍のある程度広がった領域に電界を形成することを示唆している。
よって、引用発明の走査方式を、本願発明の相違点(i)に係る構成、つまり静置されたシート状記録材上を記録ヘッドが移動することで主副の走査をする方式に替えることにより規制電極を記録ヘッドが動く範囲に広がるものとする際に、規制電極の長さをその範囲を越えた長さとすることは、少なくとも副走査方向においては、引用例の記載から当業者ならば容易に想到し得る範囲のことである。
そして、副走査方向においてそうする以上、主走査方向においても同様な技術思想(電界を記録ヘッド直下に局在させず、記録ヘッド下近傍のある程度広がった領域に電界を形成すること)を適用して、主走査方向の規制電極の長さを記録材の主走査方向の長さよりも大きくすることも、引用例の記載から当業者ならば容易に想到し得る範囲のことといわざるを得ない。
さらに、インクジェット記録装置において、記録位置の空間に電界を形成する電極を記録材の長さより長く設定することは周知である。例えば、上記「相違点(i)について」で引用した 特開平2-130152号公報の第7図の例では、静電吸引用電極を記録用紙の縦横寸法より長くしている。 特開平4-201345号公報の第5図に示された従来例では、インクジェットヘッド(液体噴射記録ヘッド10)からインク滴を引き出すための電界を形成する対向電極13を被記録材12の幅より長くしている。
よって、引用発明において本願発明の相違点(iii)に係る構成を備えることは、引用例の記載と技術常識、または引用例の記載と周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。

まとめ
以上のとおり、本願発明における上記相違点に係る構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。
すなわち、本願発明は、引用例の記載及び技術常識、或いは周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない
6.むすび

本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-23 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-14 
出願番号 特願平10-203389
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 時男小牧 修  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 菅藤 政明
江成 克己
発明の名称 インクジェットプリンタ  

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