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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B42D
管理番号 1185230
審判番号 不服2006-1868  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-02 
確定日 2008-10-03 
事件の表示 平成10年特許願第 64154号「リライト型ICカードに対する情報書き込み方法及びリライト型ICカード処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 9月14日出願公開、特開平11-245568〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯 ・本願発明
本願は平成10年2月28日の出願であって、平成17年12月20日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成18年2月2日付けで本件審判請求がされたものである。
本願の請求項4に係る発明は、平成17年7月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。

「カード本体にIC回路を内包し、表面に取引記録を表示する書込加熱温度で発色しかつ該書込加熱温度と異なる消色加熱温度で消色する可逆性感熱記録層が設けられ、該可逆性感熱記録層に取引記録を前記書込加熱温度で順次追記的に、所定の文字サイズ、文字間、文字行が設定された第1の書式で書き込み表示する取引記録領域を有してなるリライト型ICカードに対して取引記録の表示を行うリライト型ICカード処理装置であって、
前記書込加熱温度で前記取引記録領域に取引記録を書き込み表示する書込ヘッドと、
前記取引記録領域に書き込み表示された取引記録を前記消色加熱温度で消色する消色ヘッドと、
前記取引記録領域への取引記録が所定の領域を越えた場合、前記取引記録領域に書き込み表示された取引記録を前記消色ヘッドによって一旦消色し、前記第1の書式の文字サイズ、文字間、文字行の内少なくとも1つ以上を縮小する第2の書式で、前記IC回路に記憶された取引記録データに基づき、前記消色された取引記録を前記書込ヘッドによって再書き込み表示する制御部とを有するリライト型ICカード処理装置。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-239070号公報、特開平9-138842号公報(以下、順に「刊行物1」、「刊行物2」という。)には、以下の記載が図示とともにある。

2-1 刊行物1
【特許請求の範囲】
「【請求項1】 取引情報を不可視情報として記憶可能な記憶手段と、
外部の可視像書換手段により複数の取引分野の取引情報に係わる可視像の書換表示が可能な可視像表示手段とを具備したことを特徴とする携帯可能記憶媒体。
【請求項2】 取引情報を不可視情報として記憶可能な記憶手段と、複数の取引分野の取引情報に係わる可視像の書換表示が可能な可視像表示手段とを具備してなる携帯可能記憶媒体の前記記憶手段から不可視情報を読出す不可視情報読出手段と、
この不可視情報読出手段で読出した不可視情報を更新する不可視情報更新手段と、
前記携帯可能記憶媒体の可視像表示手段の表示内容を指定する表示内容指定手段と、
この表示内容指定手段の指定内容あるいは前記不可視情報更新手段の更新結果に応じて前記携帯可能記憶媒体の可視像表示手段の表示内容を書換える可視像書換手段とを具備したことを特徴とする携帯可能記憶媒体処理装置。
【請求項3】 取引情報を不可視情報として記憶可能な記憶手段と、複数の取引分野の取引情報に係わる可視像の書換表示が可能な可視像表示手段とを具備してなる携帯可能記憶媒体の前記記憶手段から、複数の取引分野の取引に応じて不可視情報を読出す不可視情報読出手段と、
この不可視情報読出手段で読出した不可視情報の内容を確認、判定、更新する不可視情報処理手段と、
少なくとも取引の都度、前記携帯可能記憶媒体の可視像表示手段の表示内容を前記不可視情報処理手段の更新内容に応じた可視像に書換える可視像書換手段とを具備したこと特徴とする携帯可能記憶媒体処理装置。」

段落【0001】「【産業上の両分野】本発明は、たとえば、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、プリペイドカードなどと称され、磁気記録部、ICメモリ、光メモリなどの記憶手段に取引情報などを不可視情報として記憶する携帯可能記憶媒体、およびび、その携帯可能記憶媒体を処理する携帯可能記憶媒体処理装置に関する。」

段落【0011】「本発明は、可視像を表示させるための電源および専用回路などを設ける必要がなくなり、携帯性を損なうことがなくなるとともに、製造行程の簡略化などが可能になり、低コスト化が図れる携帯可能記憶媒体を提供することを目的とする。」

段落【0012】「また、本発明は、上記携帯可能記憶媒体に対して、少なくとも取引の都度、更新内容に応じた可視像、あるいは、指定内容に応じた可視像を表示させることが可能になり、よって、ユーザが必要とする情報を表示させることが可能になる携帯可能記憶媒体処理装置を提供することを目的とする。」

段落【0019】「【実施例】以下、本発明の一実施例について図面を参照して説明する。」

段落【0020】「図1は、本発明に係る複数の取引分野の取引を行なう携帯可能記憶媒体と、その処理装置、および全体システムの構成図である。図において、1は携帯可能記憶媒体としてのICカードであり、たとえば、図2に示すように、プラスチック製のカード基板2には、磁気ストライプ3、ICメモリ4、および、外部コンタクト部5が設けられているとともに、与える加熱温度により繰返し可視像の書換表示が可能な記録媒体を用いた可視像表示部(可視像表示手段)6が設けられている。」

段落【0021】「なお、ICカード1は、それ1枚で複数の取引分野の取引を行なうことが可能で、取引時の内容に応じた取引情報を不可視情報として記憶、書換えが可能なように構成されている。」

段落【0022】「10はカード処理装置で、ICカード1の取引処理などを行なうものであり、取引する分野の数に応じた種類が用意されている。図3にカード処理装置10の構成図を示す。カード処理装置10は、ICカード1に設けられた磁気ストライプ3の内容を電気信号に変換する磁気ヘッド11、磁気ヘッド11を駆動制御する磁気読み書き駆動制御部12、ICメモリ4の内容をコンタクト部5を介して読み書きするICメモリ読み書き制御部13、可視像表示部6の表示内容を書換えるための熱表示書換部14、取引時に入力が必要な指定項目がある場合に、その処理を行なう指定入力処理部15、指定入力処理部15に接続され指定入力を行なうキーボード16、取引時の内容および指定内容などを表示する液晶表示素子または発光ダイオードなどからなる表示部17、表示部17を駆動制御する表示制御部18、これら全体の制御を司る主制御部としてのCPU(セントラル・プロセッシング・ユラユニット)19などから構成されている。」

段落【0023】「なお、指定入力処理部15およびキーボード16により表示内容指定手段を構成しており、不可視情報の更新内容に関わらず、可視像表示部6を指定した表示内容に書換える指定を行なえるようになっている。」

段落【0024】「30はホストコンピュータであり、カード処理装置10が読込んだICカード1の記憶内容が送られ、内容を判断、更新するとともに、ICカード1の表示内容を更新した内容に書換えるように、カード処理装置10に対し指示を出す。さらに、複数接続されているカード処理装置10に対し、それぞれの動作を一括管理している。」

段落【0025】「40は端末装置で、本システムを管理する管理者が遠隔操作により、カード処理装置10の動作状況、システムのチェック、変更などを行なうためのものであり、ホストコンピュータ30に接続されている。」

段落【0026】「これら各ユーザが所有するICカード1に対し、取引に応じた複数のカード処理装置10、ホストコンピュータ30、端末装置40が接続されてシステムが構成されている。」

段落【0059】「以上説明したように上記実施例によれば、複数の取引分野の取引情報を取扱うICカードにおいて、可視像を表示させるための電源および専用回路を持つことなく、可視像の書換表示が可能となる。したがって、携帯性を損なうことが無くなるとともに、製造行程の簡略化などが可能になるため、低コスト化が可能になる。」

段落【0060】「また、上記ICカードを処理するカード処理装置では、取引の都度、取引内容に応じた可視像への書換え、指定した表示内容への書換えが可能になり、ICカードのユーザが必要とする情報を表示させることが可能になる。」

段落【0001】及び【0011】、【0012】の目的を参照するに、前記【特許請求の範囲】に記載された携帯可能記憶媒体処理装置は、携帯可能記憶媒体に対して、取引の都度、更新内容に応じた可視像、あるいは、指定内容に応じた可視像を表示させることが可能で、ユーザが必要とする情報を表示させることが可能になるものである。
そして、当該処理装置が対象とする携帯可能記録媒体とは、ICカードであって、それに不可視情報として記憶させた情報内容を可視像として表示させるものであるから、リライト型ICカードと呼称し得るものである。
そこで、実施例に係る段落【0019】?【0026】記載に照らして、前記【特許請求の範囲】記載されたリライト型ICカード処理装置の具体的構成を示すと、以下のものである。

「磁気ストライプ3、ICメモリ4、外部コンタクト部5、及び、与える加熱温度により繰返し可視像の書換表示が可能な記録媒体を用いた可視像表示部(可視像表示手段)6が設けられているICカード1に取引処理を行うカード処理装置10とホストコンピュータ30とから構成されたリライト型ICカード処理装置であって、
カード処理装置10は、ICカード1に設けられた磁気ストライプ3の内容を電気信号に変換する磁気ヘッド11、磁気ヘッド11を駆動制御する磁気読み書き駆動制御部12、ICメモリ4の内容をコンタクト部5を介して読み書きするICメモリ読み書き制御部13、可視像表示部6の表示内容を書換えるための熱表示書換部14、取引時に入力が必要な指定項目がある場合に、その処理を行なう指定入力処理部15、指定入力処理部15に接続され指定入力を行なうキーボード16、取引時の内容および指定内容などを表示する液晶表示素子または発光ダイオードなどからなる表示部17、表示部17を駆動制御する表示制御部18、これら全体の制御を司る主制御部としてのCPU(セントラル・プロセッシング・ユラユニット)19などから構成されており、
ホストコンピュータ30は、カード処理装置10が読込んだICカード1の記憶内容が送られ、内容を判断、更新するとともに、ICカード1の表示内容を更新した内容に書換えるように、カード処理装置10に対し指示を出すように構成されている、リライト型ICカード処理装置。」
以下、「引用発明」という。

また、段落【0059】及び【0060】に記載されているように、当該引用発明は、複数の取引分野の取引情報を取扱うICカードにおいて、取引の都度、取引内容に応じた可視像への書換え、指定した表示内容への書換えが可能になり、ICカードのユーザが必要とする情報を表示させることが可能とされているものの、当該刊行物1には、特段に、どのような書式をもって取引情報を表示するかについての詳細は記載されていない。

2-2 刊行物2
【特許請求の範囲】
「【請求項1】 外部から識別可能な外観面にリライタブルな記録材から成る印字層を有するICカードを用い、該印字層に出力する情報を制御する印字制御情報を前記ICカードの利用セグメントを単位として設け、前記印字層へ出力を行う利用セグメントか否かを判定する印字出力選択情報と、前記印字層における前記利用セグメントの印字エリアを指定する印字セグメント情報を、前記印字制御情報に含ませることによって、前記印字層を利用セグメントを単位として分割・利用するようにしたことを特徴とするICカード内格納情報確認方法。
【請求項2】 外部から識別可能な外観面にリライタブルな記録材から成る印字層を有するICカードにおいて、該印字層に出力する情報を制御する印字制御情報が格納されることを特徴とするICカード。
【請求項3】 ICカードに格納されている、利用セグメントに対応した印字制御情報をICカードから直接読み込む第1ステップと、
ICカードへ新たな情報を書き込む場合、前記第1ステップで読み込んだ印字制御情報の中の印字出力選択情報を基にして新たに書き込む情報が印字出力すべき情報か否かを判定する第2ステップと、
前記第2ステップの判定の結果が印字出力すべき情報なら利用者が確認可能なレベルまで編集して印字情報を作成する第3ステップと、
この後、印字制御情報の中の印字セグメント情報と印字出力状態情報を基に印字セグメント内に印字情報を出力すべき印字エリアが存在するか否かを判定する第4ステップと、
前記第4ステップの判定の結果、印字エリアが存在すると判定された場合に、印字制御情報の中の印字出力状態情報から定められる印字ポジションに該印字情報を出力する第5ステップと、
前記第4ステップの判定の結果、印字出力エリアが足りない場合に、印字層を一端消去する第6ステップと、
その後、最初の印字ポジションに該印字情報を出力する第7ステップとを含むことを特徴とするICカード内格納情報確認方法。」

段落【0001】「【発明の属する技術分野】本発明は、情報処理システムにおいて利用されるICカードを用いて、利用者が行うICカード内格納情報確認方法に関するものであり、特に、外部から識別可能なICカードの外観面に設けたリライタブルな印字層に出力する情報を制御するようにしたICカード内格納情報確認方法に関する。」

段落【0018】「図1は本発明によるICカード内格納情報確認方法の一実施の形態を示す流れ図である。 図1はICカードの情報読み込み/書き込み動作、及び新たに設けたリライタブルな記録材から成る印字層への出力動作を行う制御装置が実行すべき印字出力制御手順を示す。」

段落【0019】「図2は図1のICカード内格納情報確認方法を用いた場合の印字層の分割・使用に関する制御の一構成例を示す。」

段落【0025】「ICカードへ新たな情報を書き込む場合、制御装置は、上記のようにして読み込んだ印字制御情報の中の印字出力選択情報を基にして新たに書き込む情報が印字出力すべき情報か否かを判定(ステップ12)した後、印字出力すべき情報なら利用者が確認可能なレベルまで編集して印字情報を作成する(ステップ13)。」

段落【0026】「この後、制御装置は、印字制御情報の中の印字セグメント情報と印字出力状態情報を基に印字セグメント内に印字情報を出力すべき印字エリアが存在するか否かを判定する(ステップ14)。」

段落【0027】「その結果、印字エリアが存在すると判定された場合には、制御装置は、印字制御情報の中の印字出力状態情報から定められる印字ポジションに該印字情報を出力する(ステップ15)。一方、印字出力エリアが足りない場合には、制御装置は、印字層を一端消去(ステップ16)した後、最初の印字ポジションに該印字情報を出力する(ステップ17)。」

段落【0028】「【0028】図2を参照すると、OABCはICカードの印字層2を表したものであり、座標系は、O点を原点とし、OA方向をX軸、OC方向をY軸にとる。リニアサーマルヘッド(図2内未記入)はX軸方向にあって、ICカード1は矢印の方向へ搬送され、印字4はOAからCBの方へ行われるものとする。また、DEFGは一つの印字セグメント3であり、ppで示されるラインまで既に印字は行われているものとする。」
段落【0029】「印字情報のライン数をL、印字セグメント情報から得られる点D,Fの座標をそれぞれ(Xs ,Ys)、( Xs +α,Ys +β) とし、印字出力状態情報から得られる印字ポジションppのY座標をYp とすれば、Yp +L+1とYs +βを比較することによって印字セグメント内の印字エリアの有無を判定できる。すなわち、Yp +L+1≦Ys +βならば、印字エリアは有りと判定され、Yp +L+1>Ys +βならば、印字エリアは無いと判定される。」

段落【0030】「その結果、印字エリアが有ると判定された場合には、制御装置は、印字ポジションppの次のラインからL行印字し、印字ポジションppのY座標はYp +Lに更新する。」

段落【0031】「一方、印字エリアが無いと判定された場合には、制御装置は、印字セグメントを一端消去した後、最初の行からL行印字し、印字ポジションppのY座標はLに更新する。」

【特許請求の範囲】の記載及び、【図1】、【図2】、段落【0025】?【0031】の具体的説明を参照するに、当該刊行物2には、外部から識別可能な外観面にリライタブルな記録材から成る印字層を有するICカードにおいて、これへの情報書き込みに際して、印字制御情報の中の印字セグメント情報と印字出力状態情報を基に印字セグメント内に印字情報を出力すべき印字エリアが存在するか否かに応じて、
印字エリアが存在すると判定された場合に、印字制御情報の中の印字出力状態情報から定められる印字ポジションに該印字情報を出力し、
一方、印字出力エリアが足りない場合には、印字層を一端消去した後、最初の印字ポジションに該印字情報を出力するようにして、
利用者がいつでもICカード内格納情報を確認できるようにする手法が開示されている。

3.対比
本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の「磁気ストライプ3、ICメモリ4、外部コンタクト部5、及び、与える加熱温度により繰返し可視像の書換表示が可能な記録媒体を用いた可視像表示部(可視像表示手段)6が設けられているICカード1」は、
本願発明の「カード本体にIC回路を内包し、表面に取引記録を表示する書込加熱温度で発色しかつ該書込加熱温度と異なる消色加熱温度で消色する可逆性感熱記録層が設けられ、該可逆性感熱記録層に取引記録を前記書込加熱温度で書き込み表示する取引記録領域を有してなるリライト型ICカード」に相当する。
そして、引用発明の「取引処理を行うカード処理装置10とホストコンピュータ30とから構成されたリライト型ICカード処理装置」は、「リライト型ICカード」に対して取引記録の表示を行うリライト型ICカード処理装置である点において、本願発明の「リライト型ICカードに対して取引記録の表示を行うリライト型ICカード処理装置」に相当する。
また、引用発明の「可視像表示部6の表示内容を書換えるための熱表示書換部14」は、本願発明の「前記書込加熱温度で前記取引記録領域に取引記録を書き込み表示する書込ヘッド」及び「前記取引記録領域に書き込み表示された取引記録を前記消色加熱温度で消色する消色ヘッド」に相当する。
引用発明の「ホストコンピュータ30」は、カード処理装置10が読込んだICカード1の記憶内容が送られ、内容を判断、更新するとともに、ICカード1の表示内容を更新した内容に書換えるように、カード処理装置10に対し指示を出すものであり、「全体の制御を司る主制御部としてのCPU」は、「カード処理装置」を制御していることから、本願発明の「取引記録領域への取引記録」を「書き込み制御する制御部」と相当関係にある。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「カード本体にIC回路を内包し、表面に取引記録を表示する書込加熱温度で発色しかつ該書込加熱温度と異なる消色加熱温度で消色する可逆性感熱記録層が設けられ、該可逆性感熱記録層に取引記録を前記書込加熱温度で書き込み表示する取引記録領域を有してなるリライト型ICカードに対して取引記録の表示を行うリライト型ICカード処理装置であって、
前記書込加熱温度で前記取引記録領域に取引記録を書き込み表示する書込ヘッドと、
前記取引記録領域に書き込み表示された取引記録を前記消色加熱温度で消色する消色ヘッドと、
これらを制御する制御部とを有するリライト型ICカード処理装置。」
である点で一致するものの、以下の点で相違している。

<相違点1>
本願発明においては、カード本体の可逆性感熱記録層に取引記録を書込加熱温度で書き込み表示するに際して、「順次追記的に、所定の文字サイズ、文字間、文字行が設定された第1の書式で書き込み」と特定されているのに対して、
引用発明においては、このような特定を有しない点。

<相違点2>
本願発明においては、「前記取引記録領域への取引記録が所定の領域を越えた場合、前記取引記録領域に書き込み表示された取引記録を前記消色ヘッドによって一旦消色し、前記第1の書式の文字サイズ、文字間、文字行の内少なくとも1つ以上を縮小する第2の書式で、前記IC回路に記憶された取引記録データに基づき、前記消色された取引記録を前記書込ヘッドによって再書き込み表示する」と特定されているのに対して、
引用発明においては、このような特定を有しない点。

4.相違点についての検討
<相違点1>について検討する。
引用発明を認定した刊行物1には、特段に、どのような書式をもって取引情報を表示するかについての詳細は記載されていないが、感熱記録層への記録を、順次追記的に、所定の文字サイズ、文字間、文字行が設定された書式とすることは、ICカードに記憶されている取引情報を確認したい利用者の便宜に合わせ、当業者であれば当然に行うべきことであって、このように書式を構成することは、当業者が適宜に行い得た程度のことである。

<相違点2>について検討する。
リライト型ICカードは、ICメモリに記憶させた不可視情報の書き換え、及びこれに応じて感熱記録層に記録して表示する情報の書き換えが行い得ることをその機能とするものであって、引用発明における「可視像表示部6の表示内容を書換えるための熱表示書換部14」は、書換えの必要に応じて、取引記録領域に書き込み表示された取引記録を消去して、再度書き込みを行うように機能するものである。
また、刊行物2に開示されているように、取引記録領域と呼称し得る「印字出力エリア」が出力すべく印字情報を書き込めない場合に、印字出力エリアの印字情報を一度消去した後に、表示すべき印字情報を再度書き込むようにすることは、当該リライト型ICカードの技術分野において広く行われている手法であって、格別なものとはいえない。
当該相違点2に係る書き込み表示の要部は、「前記取引記録領域への取引記録が所定の領域を越えた場合、前記取引記録領域に書き込み表示された取引記録を前記消色ヘッドによって一旦消色し、」の点までは、前記の広く行われている手法と同様なるも、その後の書き込みに際して、先に用いられた、第1の書式の文字サイズ、文字間、文字行の内少なくとも1つ以上を縮小する第2の書式を用いて、書き込むべき取引記録データを再書き込み表示することにある。
なるほど、プリンターにおいては、出力すべき取引情報数が多いとしても、必要な枚数の用紙を使えば足りるのとは異なり、携帯性を重視されたICカードにおいては、取引記録領域が十分な広さでない故に、このような手法を採る必要があることは理解できる。
しかしながら、文書情報を扱う各種機器(電子手帳、ワープロ、パーソナルコンピュータ、ファクシミリ装置等)において、文書情報の全体像を表示上確認するために、判別可能な範囲で、適宜に表示する情報を縮小して表示することは、従来から周知の手法(特開平9-244836号公報、特開平9-244617号公報、特開平9-231389号公報、特開平7-314839号公報等参照。)である。
してみるに、引用発明のリライト型ICカードにおいて、取引情報の全体像を把握したいとの要求に応えるべく、最初に表示した際の第1の書式に替えて、一旦消去した後に、第2の書式でもって表示すべき取引情報を適宜に縮小表示するようになすことは、当業者であれば必要に応じて適宜に採用し得た程度のことといわざるを得ない。
また、当該相違点2に係る構成を採用したことによる作用効果も、当業者であれば容易に推察可能なものでしかない。

5.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1、2に記載の発明及び周知の手法に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができず、本願のその余の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-05 
結審通知日 2008-08-06 
審決日 2008-08-20 
出願番号 特願平10-64154
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B42D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤木 啓二  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 江成 克己
七字 ひろみ
発明の名称 リライト型ICカードに対する情報書き込み方法及びリライト型ICカード処理装置  
復代理人 石川 雅章  
代理人 宮崎 昭夫  
代理人 石橋 政幸  
代理人 緒方 雅昭  

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