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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1185304
審判番号 不服2004-3028  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-16 
確定日 2008-10-01 
事件の表示 特願2000-547562「広域網上の実効的な対話式データ処理のための調整されたデータおよび送信プロトコル」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月11日国際公開、WO99/57657、平成14年 5月14日国内公表、特表2002-513972〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年4月30日(優先権主張1998年5月4日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成15年11月14日に拒絶査定がなされ(発送日同年11月18日)、これに対して平成16年2月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月17日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年3月17日付手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年3月17日付手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
平成16年3月17日付手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、補正前の平成15年10月15日付手続補正書で補正された特許請求の範囲に記載された
「 【請求項1】 ウェブブラウジングシステムにおいて、ウェブサーバからクライアント装置へデータを転送する方法において、
(a)1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みから得られたパラメータのリストを作成し、
(b)ウェブサーバにおいてテンプレートとして前記パラメータを記憶し、
(c)ウェブサーバはカスタマによりリクエストされたウェブページをアクセスして獲得し、
(d)ウェブサーバは前記記憶されているテンプレートにしたがって獲得したウェブデータを変換してデータ量を減少させ、
(e)ウェブサーバは変換されてデータ量の減少されたデータをクライアント装置へ送信するステップを有しているデータ転送方法。
【請求項2】 パラメータはクライアント装置により使用されるディスプレイの詳細を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項3】 クライアント装置へ送信されるウェブデータを減少されたデータ形態に変換するウェブサーバにおいて、
クライアント装置の特性から得られる1以上のパラメータを記憶しており、
制御ルーチンによりウェブページからのデータを前記記憶されたパラメータにより変換して変換されてデータ量の減少されたデータをクライアント装置へ送信するように構成されているウェブサーバ。
【請求項4】 ウェブページの特性と、カスタマの好みから得られたのパラメータの少なくとも1つをさらに含んでいる請求項3記載のウェブサーバ。
【請求項5】 1以上のパラメータはクライアント装置により使用されるディスプレイの特性から得られる請求項3記載のウェブサーバ。
【請求項6】 1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、カスタマの好みから得られたパラメータとのリストを含むテンプレートを記憶しているウェブサーバを具備し、ウェブサーバはそのテンプレートを使用してクライアント装置へ送信されるファイルのデータ内容を減少させるようにデータを変換するウェブブラウジングシステムにおいて、テンプレートエディタは、
テンプレートの特性を表示するクライアントインターフェイスと、特性を変更させるツールとを具備しているテンプレートエディタ。
【請求項7】 エディタはクライアント装置で実行する請求項6記載のテンプレートエディタ。
【請求項8】 エディタはウェブページの一部としてウェブサーバで実行し、クライアントがウェブページをアクセスすることにより操作するように構成されている請求項6記載のテンプレートエディタ。
【請求項9】 1以上の周辺装置およびインターネットに接続されたホストコンピュータと、
ホストコンピュータのためにインターネットをブラウズするように構成されたウェブサーバとを具備し、
ウェブサーバはホストコンピュータに対するウェブページを獲得し、ウェブサーバに予め記憶されている前記ホストコンピュータに接続された周辺装置の特性に基づいてホストコンピュータへ送信するデータをそのデータ内容を減少させるように処理し、ウェブサーバはその減少されたデータ内容のデータをホストコンピュータへ送信するインターネットブラウジング用システム。
【請求項10】 ウェブサーバはウェブページを獲得してそれをウェブサーバに記憶しており、ホストコンピュータにより提供されてウェブサーバに記憶されているスクリプトにしたがってウェブページを処理してデータを減少させてからそれを需要されているホストコンピュータへ送信する請求項9記載のシステム。
【請求項11】 クライアントの代理としてウェブサイトをブラウズするように構成されているウェブサーバとこのウェブサーバに接続されたクライアント装置とを含むインターネットブラウジング用のシステムにおいて、
ウェブサーバへ送信する前に、ウェブサーバによってリクエストされたデータをハイパーテキストマークアッププロトコル(HTML)に変換するように構成されたソースサイドテンプレートと、
データをクライアント装置へ送信する前にクライアント装置により供給されてウェブサーバに記憶されている特性にしたがってクライアント装置へ送信するデータのデータ内容を減少するように変換するために使用されるクライアントサイドテンプレートとを具備しているシステム。」
から、
「 【請求項1】 ウェブブラウジングシステムにおいて、ウェブサーバからクライアント装置へデータを転送する方法において、
(a)1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカストマの好みから得られたパラメータのリストを作成し、
(b)ウェブサーバにおいてテンプレートとして前記パラメータを記憶し、
(c)ウェブサーバはカストマによりリクエストされたウェブページをアクセスして獲得し、
(d)ウェブサーバは前記記憶されているテンプレートにしたがって獲得したウェブデータを変換してデータ量を減少させ、
(e)ウェブサーバは変換されてデータ量の減少されたデータをクライアント装置へ送信するステップを有しているデータ転送方法。
【請求項2】 パラメータはクライアント装置により使用されるディスプレイの詳細を含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項3】 クライアント装置へ送信されるウェブデータを減少されたデータ形態に変換するウェブサーバにおいて、
ウェブサーバはクライアント装置の特性から得られる1以上のパラメータを記憶しており、
クライアント装置へ送信するためにウェブページからのデータを前記記憶されている1以上のパラメータを適用して変換してデータ量の減少されたデータとして送信するように制御する制御ルーチンを有しているウェブサーバ。
【請求項4】 ウェブページの特性と、カストマの好みから得られたのパラメータの少なくとも1つをさらに含んでいる請求項3記載のウェブサーバ。
【請求項5】 1以上のパラメータはクライアント装置により使用されるディスプレイの特性から得られる請求項3記載のウェブサーバ。
【請求項6】 ウェブサーバが1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、カストマの好みとから得られたパラメータのリストを含むテンプレートを記憶しており、ウェブサーバはそのテンプレートを使用してクライアント装置へ送信されるファイルのデータ内容を減少させるようにデータを変換するウェブブラウジングシステムにおけるテンプレートエディタにおいて、
テンプレートの特性を表示するクライアントインターフェイスと、特性を変更させるツールとを具備しているテンプレートエディタ。
【請求項7】 エディタはクライアント装置で実行する請求項6記載のテンプレートエディタ。
【請求項8】 エディタはウェブページの一部としてウェブサーバで実行し、クライアントがウェブページをアクセスすることにより操作するように構成されている請求項6記載のテンプレートエディタ。
【請求項9】 1以上の周辺装置およびインターネットに接続されたホストコンピュータと、
ホストコンピュータのためにインターネットをブラウズするように構成されたウェブサーバとを具備し、
ウェブサーバはホストコンピュータに対するウェブページを獲得し、ホストコンピュータへ送信する前に前記ホストコンピュータに接続された1以上の周辺装置の特性と、獲得したウェブページの特性と、1以上の周辺装置を使用するカストマの好みとに基づいて送信するデータ内容を減少させるように処理し、ウェブサーバはその減少されたデータ内容のデータをホストコンピュータへ送信するインターネットブラウジング用システム。
【請求項10】 ウェブサーバは、ホストコンピュータにより提供されたスクリプトにしたがってウェブページを獲得し、それをウェブサーバに記憶し、需要に応じてホストコンピュータへ送信する請求項9記載のシステム。
【請求項11】 クライアントの代理としてウェブサイトをブラウズするように構成されているウェブサーバとこのウェブサーバに接続されたクライアント装置とを含むインターネットブラウジング用のシステムにおいて、
ウェブサーバへ送信する前に、ウェブサーバによってリクエストされたデータをハイパーテキストマークアッププロトコル(HTML)に変換するように構成されたソースサイドテンプレートと、
データをクライアント装置へ送信する前にクライアント装置により供給されたクライアント装置の1以上の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカストマの好みとから導出された特性とにしたがってウェブサイトにおいてクライアント装置へ送信するデータのデータ内容を減少するように処理するためのクライアントサイドテンプレートとを具備しているシステム。」
と補正された。

(2)本件補正についての検討
本件補正は、補正前の請求項10に記載された「ウェブサーバはウェブページを獲得してそれをウェブサーバに記憶しており、ホストコンピュータにより提供されてウェブサーバに記憶されているスクリプトにしたがってウェブページを処理してデータを減少させてからそれを需要されているホストコンピュータへ送信する」を、「ウェブサーバは、ホストコンピュータにより提供されたスクリプトにしたがってウェブページを獲得し、それをウェブサーバに記憶し、需要に応じてホストコンピュータへ送信する」と変更する補正を含んでいる。
補正前の請求項10に記載された「スクリプト」は、「ホストコンピュータにより提供されてウェブサーバに記憶されている」ものであり、「スクリプトにしたがってウェブページを処理してデータを減少させてからそれを需要されているホストコンピュータへ送信する」のであるから、前記「スクリプト」は、「ウェブページを処理してデータを減少させ」るものであるのに対し、補正後の請求項10に記載された「スクリプト」は、単に「ホストコンピュータにより提供された」ものであり、「スクリプトにしたがってウェブページを獲得し、それをウェブサーバに記憶し、需要に応じてホストコンピュータへ送信する」のであるから、補正後の「スクリプト」は、ウェブサーバが「ウェブページを獲得」するものであり、「ウェブページを処理してデータを減少させ」ることが削除されたものであるから、本件補正は、補正前の請求項10に係る「スクリプト」に係る事項を拡張、変更するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、本件補正が請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。

(3)むすび
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、 同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
(1)平成16年3月17日付手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年10月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「【請求項1】 ウェブブラウジングシステムにおいて、ウェブサーバからクライアント装置へデータを転送する方法において、
(a)1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みから得られたパラメータのリストを作成し、
(b)ウェブサーバにおいてテンプレートとして前記パラメータを記憶し、
(c)ウェブサーバはカスタマによりリクエストされたウェブページをアクセスして獲得し、
(d)ウェブサーバは前記記憶されているテンプレートにしたがって獲得したウェブデータを変換してデータ量を減少させ、
(e)ウェブサーバは変換されてデータ量の減少されたデータをクライアント装置へ送信するステップを有しているデータ転送方法。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-21165号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の事項ア)?ケ)が記載されている。(摘記箇所は段落番号により特定する。)

ア)「【請求項1】 文書情報を要求するための要求信号を発信する第1通信装置と、第1通信装置より受信した要求信号に対応する文書情報を外部から取得する第2通信装置と、を通信路を介して随時接続し、前記第1通信装置が前記文書情報の受信時における自装置の物理環境や利用状況の指定を含む環境指定データを生成して前記要求信号と共に第2通信装置へ送信する段階と、
前記環境指定データを受信した第2通信装置が前記取得した文書情報の情報量や情報配置順などを前記環境指定データの指定内容に適合するように編集し、編集後の文書情報を第1通信装置へ送信する段階と、
を有することを特徴とする通信方法。」

イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばインターネットを用いた通信システムに係り、特に、文書情報、例えばハイパーテキストの要求信号を発信したクライアントへ文書情報を送信する際に、クライアント側の受信時の物理環境や生活シーンなどに合わせてハイパーテキストを編集して送信する技術に関する。ここでサーバ及びクライアントとは、所定のプログラムにより通信装置としての機能を付与されたコンピュータ装置であり、ハイパーテキストとは、テキストデータや画像等のマルチメディアデータが一定のフォーマットに従って構造化されている電子文書である。
【0002】
【従来の技術】インターネットの発達に伴い、特定サーバに存するハイパーテキストを不特定のクライアント側のインターネットブラウザを用いて取得することが広く行われている。サーバからのハイパーテキストの送信は、クライアントが発信した要求信号の受信を契機に該要求信号に対応するハイパーテキストの所在を特定するとともに、このハイパーテキストを当該クライアントのインターネットアドレスに向けて発信することによって行われる。このような通信形態において、サーバとクライアントは、それぞれ有線回線を介して固定的に接続されるのが通常であるが、近年は、通信ネットワークや通信装置の物理環境、あるいはクライアントを操作するユーザの生活シーンに併せて通信形態も多様化されてきている。
【0003】例えば、外出時には簡易なノート型パソコンをクライアントとして用い、これを携帯電話と組み合わせて携帯型通信装置として使用したり、オフィスにおいては、ワークステーションをクライアントとして用い、これをLAN(ローカルエリアネットワーク)に接続して固定型通信装置として使用する等の使い分けも行われている。このように、クライアントを操作するユーザの生活シーンに合わせていくつかの通信形態の組み替えが行われ、インターネットの様々な利用状況が存在している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、インターネット上の文書情報は、サーバ側の情報提供者によってHTML(ハイパーテキスト言語)等の所定の書式で記述されており、クライアント側では、受信した文書情報の書式を解釈して、情報提供者の意図通りに文書情報を画面表示ないしプリンタ出力している。そのため、インターネットの利用状況によっては、通信装置の物理的環境が情報提供者の意図したものと合致しない事態が生じ得る。このような状況において、通信装置の物理環境が文書情報のデータ量の変化に十分対応できるほど優れている場合は問題はないが、そうでない場合には文書情報のデータ量が負担となって、受信に伴う通信コストや待ち時間が過大になってしまう問題があった。また、受信した文書情報は、サーバ側の情報提供者の意図によって編集されたものなので、文書情報のデータ配置は、クライアント側のユーザが望むものとは必ずしも一致するとは限らず、ユーザにとって不要な情報も多く受信しなければならない問題があった。このような問題は、インターネットによる通信と同様の形態をとる他の一般的なクライアント・サーバシステムにおいても共通であり、改善が望まれていた。
【0005】そこで本発明の課題は、受信側の多様な物理環境あるいは利用状況に合わせて文書情報を編集し、該文書情報を受信側で無理なく効率的に受信することができる通信技術を提供することにある。」

ウ)「【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明をインターネットを用いた通信システムに適用した場合の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0013】図1は、本実施形態の通信システムの構成図である。この通信システムは、共通の通信回線4に、クライアント1、編集サーバ2、及びアプリケーションサーバ(以下、APサーバ)3が接続されている。クライアント1やAPサーバ3は、実際には多種多様のものが複数接続されるが、本実施形態では、便宜上それぞれ一つのものとして説明する。また、本発明の実施に不可欠な要素についてのみ示し、従来品と同一の要素についてはその説明を省略する。
【0014】本実施形態のクライアント1は、インターネットブラウザを動作させてハイパーテキストの送信を要求するための要求信号を発信するAP処理部11と、通信性能や通信手段、あるいは画像の表示種別などの物理的環境、及びインターネットの利用状況等を指定するための環境指定データを生成する利用環境情報生成部12と、通信制御を行う通信制御部13とを備えている。ここで通信手段とは、例えばクライアント1と編集サーバ2とを繋ぐ回線の種別や、ワークステーション、携帯電話等であり、画像の表示種別とは、例えば受信時に採用する画像の色数やサイズであり、利用状況とは、例えばクライアント1を操作するユーザの生活シーンである。
【0015】編集サーバ2は、クライアント1から送信された環境指定データに基づいて、どのようなキーワードを含むハイパーテキストを優先的にクライアント1へ送信するか、送信するデータ量の上限値はどの程度か、画像データを圧縮する場合の色数・サイズの範囲はどこまでかなど、ハイパーテキストの編集に必要なキーワードを含む編集データを生成する利用環境情報処理部21と、利用環境情報処理部21で生成された編集データに基づいてAPサーバ3から送信されたハイパーテキストを実際に環境指定データに適合するように編集する情報編集部22と、通信制御を行う通信制御部23とを備えている。APサーバ3は、クライアント1から発信され、編集サーバ2により中継された要求信号を受信して、要求されたハイパーテキストを編集サーバ2に向けて送信するAP処理部31と、通信制御を行う通信制御部32とを備えている。なお、APサーバ3は、要求信号の受信とそれに対応するハイパーテキストの送信を編集サーバ2との間で行う以外は従来のものと同一である。」

エ)「【0017】本実施形態では、図3に示すように「項番1」?「項番4」の情報をもつ環境指定データを生成する。「項番1」はユーザの識別情報、「項番2」はハイパーテキストを受信するときのクライアント1の利用状況(ユーザ生活シーン)、「項番3」はハイパーテキストを受信するときの通信手段の種別(通信種別)、そして「項番4」は(画像の)表示種別である。各項番の具体的な情報例を示したのが図4である。図4の例では、「利用状況」(項番2)の情報には、クライアント1を操作するときのユーザ環境が出勤中、出張中、在席中、休日、・・・のいずれであるかを表すデータ、「通信種別」(項番3)の情報には、クライアント1を操作するときの通信手段が携帯電話、PHS(簡易型携帯電話)、公衆回線、LAN,・・・のいずれを用いるかを表すデータ、そして「表示種別」(項番4)の情報には、クライアント1の表示能力がSVGA・16bit、VGA・256色、CGA・白黒、・・・のいずれであるかを表すデータをそれぞれ指定する。これらはユーザ名(項番1)毎に指定される。なお、項番及びユーザ毎の利用環境情報としては、上記のような内容以外にも目的に応じて別の項番や必要なデータを追加指定することができる。」

オ)「【0018】編集サーバ2では、クライアント1から受け取った上記要求信号と環境指定データを、一旦利用環境情報処理部21で保持する。利用環境情報処理部21では、環境指定データをハイパーテキストの編集時に用いる編集データに変換して情報編集部22へ渡す。また、クライアント1から受信した要求信号をAPサーバ3に向けて送信する。つまり要求信号の中継を行う。
【0019】利用環境処理部21では、まず、環境指定データの項番の情報から編集項目を生成する。例えば、図5に示すように、環境指定データの「利用状況」からクライアント1への送信情報としてどのような情報を優先させるかを表す「優先情報」を編集項目として生成する。また、「通信種別」からハイパーテキストのデータ処理の上限値(しきい値A)を表す「データ量」を編集項目として生成する。さらに、「表示種別」からクライアント1の表示能力に適した「画像色数」や「サイズの圧縮範囲」を編集項目として生成する。利用環境情報処理部21は、図示しないメモリ上に図6(a)?(c)に示すような環境指定データと編集項目との対応テーブル、及び図7に示すような編集項目(図示の例では優先情報)とキーワードとの対応テーブルをもち、これらの対応テーブルの参照によって環境指定データからキーワードを含む編集データへの変換を行う。
【0020】例えば、図6(a)から、環境指定データが「利用状況」の情報として「出勤時」という生活シーンを指定している場合は、「利用状況」に対応する編集項目である「最新情報」を取得する。また、図7から、「最新情報」に対応するキーワードとして「その日の日付」をキーワードとして取得する。同様に、環境指定データが「在席中」という生活シーンを指定している場合は、「仕事情報」の編集項目を取得し、「お客様社名」、「プロジェクト関係者名」、「移動体通信」・・・というキーワードを取得する。また、環境指定データが「休日」という生活シーンを指定している場合は、「プライベート情報」という編集項目を取得し、それに対応する「育児情報」、「地域情報」、「料理」、・・・というキーワードを取得する。
【0021】また、図6(b)から、環境指定データが通信種別として「携帯電話」を指定している場合は、データ量のしきい値Aとして「100kバイト以下」という情報を取得する。同様に、「PHS」を指定している場合は「1Mバイト以下」、「公衆回線」を指定している場合は「10Mバイト以下」、「LAN」を指定している場合は「無制限」という情報を取得する。
【0022】さらに、図6(c)から、環境指定データが「SVGA・16bit」のような「表示種別」を指定している場合、高画質モードにおいては「16bit・サイズ100%」、低画質モードにおいては「256色・サイズ20%」のような圧縮情報を取得する。また、環境指定データが「VGA・256色」のような「表示種別」を指定している場合は、高画質モードにおいては「256色・サイズ100%」、低画質モードにおいては「16色・サイズ20%」のような圧縮情報を取得する。低画質モード及び高画質モードの選択については後述する。」

カ)「【0023】次に、APサーバ3から送信されるハイパーテキストについて上記編集データに基づく編集処理について説明する。図8は、この場合の各種データのフローを示す図である。APサーバ3は、編集サーバ2を介して受信したクライアント1からの要求信号に対応するハイパーテキストを索出し、これを編集サーバ2に向けて送信する。送信されたハイパーテキストは、編集サーバ2の情報編集部22に入力される。そして、先に利用環境情報処理部21において生成された編集データに基づいて情報編集部22がハイパーテキストの編集を行う。編集対象となるハイパーテキストは、例えば図9に示すとおり、HTTPのフォーマットにしたがったもので、そのヘッダ等によりテキストの見出し、本文、画像の種別、及びそれらの情報の意味的なグルーピングの識別が可能なものである。」

キ)「【0024】以下、図10?図14を参照して、情報編集部22におけるハイパーテキストの編集処理の手順を説明する。図10は全体的な処理手順、図11は画像データの圧縮処理手順、図12は画像データの圧縮順序例、図13はテキストデータの送信内容の例、図14はテキストデータの編集処理手順の説明図である。
【0025】図10を参照すると、情報編集部22では、APサーバ3からハイパーテキストを受信すると(ステップS101)、まず、ハイパーテキストにおける優先情報に関するキーワードの有無を単語マッチングによりグループ毎に判定する(ステップS102)。そして、画像圧縮処理(S103)とテキストデータの編集処理(S104)をこの順に行い、必要と考えられるグループを、そうでないグループより先にくるようにグループ間のソートを行う(S105)。そしてソート後のグループに含まれるデータをクライアント1へ送信する(S106)。
【0026】画像圧縮処理では、図11に示されるように、まず、編集データに含まれる「表示種別」のうち最も高画質のモード(高画質モード)を使ってハイパーテキスト内の全画像データを圧縮したときのハイパーテキストの全データ量を算出する(ステップS111)。例えば図6(c)から,環境指定データの表示種別がSVGA・16bitを示しているとき、編集データに含まれる圧縮情報は高画質モードでは16bit・サイズ100%である。この情報に従って全画像データを圧縮する。そして、全画像を高画質モードで圧縮したとした場合の画像のデータ量とハイパーテキストに含まれる画像データ以外のデータ量とを加算して得られたハイパーテキストの全データ量を算出する。この全データ量が予め定められたしきい値Aを越えるかどうかを判定し(ステップS112)、しきい値Aを越えない場合は(ステップS112:No)、見出しまたはテキスト本文に前述の優先情報のキーワードを含むグループを優先的に文頭に配置する(ステップS105)。一方、全データ量がしきい値Aを越える場合は(ステップS112:Yes)、画質を下げたモード(低画質モード)、即ち256色・サイズ20%で全画像データの圧縮を行った場合のハイパーテキストの全データ量を算出する(ステップS113)。そして、この場合のハイパーテキストの全データ量がしきい値Aを越えるかどうかを判定する(ステップS114)。
【0027】低画質モードによっても全データ量がしきい値Aを越える場合は(ステップS114:No)、画像データの送信を行わないと判定し(ステップS115)、テキストデータの編集処理(ステップS104)に進む。一方、低画質モードでの全データ量がしきい値Aを越えない場合は(ステップS114:Yes)、ハイパーテキストに含まれる画像データの一つを低画質モードで圧縮させる(ステップS116)。画像データの圧縮が終了したら、その時点のハイパーテキストの全データ量を算出し(ステップS117)、全データ量がしきい値Aを越えるか越えないかを判定する(ステップS118)。しきい値Aを越える場合は(ステップS118:No)、ステップS116に戻って、さらに別の一画像データを低画質モードで圧縮し、ステップS117とステップS118とを実行する。以下、圧縮後のハイパーテキストの全データ量がしきい値A以下になるまで一つずつ画像データの圧縮を実行する。
【0028】なお、低画質モードで一つずつ画像データを圧縮する場合は、図12に示されているように、優先情報のキーワードを含むグループに含まれる画像データよりも先に優先情報のキーワードを含まないグループに含まれる画像データを圧縮するものとする。さらに、優先情報のキーワードを含むか否かに拘わらず、各グループ内では、よりサイズが大きいものから先に圧縮を施す。
【0029】テキストデータの編集処理(ステップS104)の内容を説明する。前述したように、全画像データの送信を行わない場合、送信内容に応じたテキストデータの編集を行い、ハイパーテキストのサイズを圧縮させる。この場合の送信内容は例えば図13に示すように予め設定しておく。例えば送信内容#1を例に挙げると、編集データに含まれる優先情報のキーワードを含むグループについては、見出しと本文とを送信内容とし、キーワードを含まない各グループについては、見出しと文頭から数えて所定数の文字のみを送信内容としている。送信内容#2では、キーワードを含むグループについては見出しと本文とを送信内容とし、キーワードを含まない各グループについては、見出しのみを送信内容とする。送信内容#Nでは、キーワードを含むグループについては見出しのみを送信内容とし、キーワードを含まない各グループについては、送信しない。この場合の手順をより詳細に示したのが図14である。
【0030】図14を参照すると、まず、全テキストデータが送信内容#1に従って送信される場合の全データ量を算出し(ステップS131)、算出した全データ量が予め定めたデータ量のしきい値Aを越えるかどうかを判定する(ステップS132)。しきい値Aを越えない場合は(ステップS132:Yes)、テキストデータを送信内容#1の内容に編集する(ステップS133)。この編集されたテキストデータがクライアント1に向けて送信される。一方、全データ量がしきい値Aを越える場合は(ステップS132:No)、全テキストデータが送信内容#2に従って送信される場合の全データ量を算出し(ステップS134)、算出した全データ量がしきい値Aを越えるかどうかを判定する(ステップS135)。しきい値Aを越えない場合は(ステップS135:Yes)、テキストデータを送信内容#2の内容に編集する(ステップS136)。この編集されたテキストデータがクライアント1に向けて送信される。以下、送信内容#3から送信内容#N-1の順に全く同様の処理が繰り返される。最後の送信内容#Nに関しては、送信内容#N-1に従って編集された場合の全データ量がしきい値Aを越えたと判定されたとき、全テキストデータが送信内容#Nに従って送信される場合の全データ量を算出し(ステップS137)、算出した全データ量がしきい値Aを越えるかどうかを判定する(ステップS138)。しきい値Aを越えない場合は(ステップS136:Yes)、テキストデータを送信内容#Nに従って編集する(ステップS139)。
【0031】この編集されたテキストデータがクライアント1に向けて送信される。しかし、全データ量がしきい値Aを越えた場合は(ステップS136:No)、テキストデータに例外的編集処理が行われてクライアント1に向けて送信される。この例外的編集処理に関しては、例えば、キーワードを含む各グループの見出しの頭から数文字のみを取り出して編集することなどが挙げられる。」

ク)「【0032】このように、本実施形態の通信システムでは、編集サーバ2が通信回線4やクライアント1の多様な物理的環境や利用状況に合せてクライアント1へのハイパーテキストの圧縮やデータ再配置などの編集処理を施すので、クライアント1に過度の負担を与えることなく効率的にハイパーテキストを送信することができる。例えば、利用状況の観点から見て必要と考えられるデータとそうでないデータとを区別して両者の配置をユーザの希望に合わせて任意に変更することができる。必要なデータとそうでないデータとの選別基準は、ユーザがシステムを使用する時点の生活シーンに合わせて様々に設定することができる。また、データ量を調節するとき、利用状況の観点から見て必要と見做されるデータの情報量はできるだけ圧縮せず、不必要と見做されるデータのみの情報量を圧縮することができる。さらには、情報量がユーザの利用状況に合わせて調節されるため、通信回線4の使用料金の節約にもつながり、ユーザにとって経済的となる。ユーザが必要とする情報が優先的に画面等に表示されるため、ユーザが不必要な情報に目を通さずに済むといったメリットもある。」

ケ)「【0033】なお、本実施形態では、クライアント1、編集サーバ2、及びAPサーバ3をそれぞれ独立の装置として説明したが、クライアント1と編集サーバ2、あるいは編集サーバ2とAPサーバ3とを一体の装置として構成してもよい。また、各装置は、汎用のコンピュータ装置と、このコンピュータ装置によって読み取られ、実行される命令群からなるプログラムを物理的に実体化したプログラム蓄積媒体、例えばCD-ROM(コンパクトディスク型ROM)やフレキシブルディスクとによって実現することもできる。このプログラムは、コンピュータ装置によって実行されたときに上記各処理が形成されるようにする。」

上記ア)?ウ)に記載された事項から、引用例には、クライアントに搭載されたインターネットブラウザを用いてインターネット上のサーバから文書情報(ハイパーテキスト)を取得し閲覧するインターネットブラウジングシステムにおける通信方法が記載されているものと認められる。
上記ア)の「第1通信装置より受信した要求信号に対応する文書情報を外部から取得する第2通信装置」、「前記環境指定データを受信した第2通信装置が前記取得した文書情報の情報量や情報配置順などを前記環境指定データの指定内容に適合するように編集し、編集後の文書情報を第1通信装置へ送信する段階と、」という記載から、引用例に記載された通信システムは、「第1通信装置より受信した要求信号に対応する文書情報を外部から取得する」機能と、「前記取得した文書情報の情報量や情報配置順などを前記環境指定データの指定内容に適合するように編集」する機能と、「編集後の文書情報を第1通信装置へ送信する」という機能を備えた通信装置を有しているものと認められる。
そして、上記ケ)に「【0033】なお、本実施形態では、クライアント1、編集サーバ2、及びAPサーバ3をそれぞれ独立の装置として説明したが、クライアント1と編集サーバ2、あるいは編集サーバ2とAPサーバ3とを一体の装置として構成してもよい。」と記載されていることから、上記「第2通信装置」は、上記ウ)?ク)に記載された「編集サーバ2」と「APサーバ3」とを一体の装置として構成したものと見ることができる。

してみると、上記ア)?ケ)の記載及び関連する図面の記載を参照すれば、引用例には次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。

「文書情報を要求するための要求信号を発信する第1通信装置と、
第1通信装置より受信した要求信号に対応する文書情報を外部から取得する第2通信装置と、をインターネットを介して随時接続し、
前記第1通信装置が前記文書情報の受信時における自装置の物理環境や利用状況の指定を含む環境指定データを生成して前記要求信号と共に第2通信装置へ送信する段階と、
第2通信装置において、
第1通信装置から受け取った上記要求信号と環境指定データを、一旦利用環境情報処理部21で保持し、利用環境情報処理部21では、環境指定データをハイパーテキストの編集時に用いる編集データに変換して情報編集部22へ渡す段階と、
第1通信装置から受信した要求信号に対応する文書情報を索出する段階と、
前記環境指定データを受信した第2通信装置が前記取得した文書情報の情報量や情報配置順などを前記環境指定データの指定内容に適合するように情報編集部22で編集し、
編集後の文書情報を第1通信装置へ送信する段階と、
を有することを特徴とするインターネットブラウジングシステムにおける通信方法。」

(3)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「通信方法」は、上記イ)の「本発明は、例えばインターネットを用いた通信システムに係り、特に、文書情報、例えばハイパーテキストの要求信号を発信したクライアントへ文書情報を送信する際に、クライアント側の受信時の物理環境や生活シーンなどに合わせてハイパーテキストを編集して送信する技術に関する。」との記載、及び上記ウ)の「【0014】本実施形態のクライアント1は、インターネットブラウザを動作させてハイパーテキストの送信を要求するための要求信号を発信するAP処理部11と、通信性能や通信手段、あるいは画像の表示種別などの物理的環境、及びインターネットの利用状況等を指定するための環境指定データを生成する利用環境情報生成部12と、通信制御を行う通信制御部13とを備えている。」との記載などから、インターネットブラウザを搭載した複数のクライアントと、複数のサーバとをインターネットを介して接続し、クライアントに搭載されたインターネットブラウザを用いてサーバからハイパーテキストを取得し閲覧するシステムを前提とするものであることは明らかである。そして、このクライアントは第1通信装置であり、サーバは第2通信装置であるから、引用発明の「通信方法」も、本願発明と同様に「ウェブブラウジングシステムにおいて、ウェブサーバからクライアント装置へデータを転送する方法」であるといえる。
引用発明の「第1通信装置」及び「文書情報」は、それぞれ本願発明の「クライアント装置」及び「ウェブページ」に相当する。
また、引用発明の「第2通信装置」は本願発明の「ウェブサーバ」に対応する。
引用発明の「第1通信装置から受信した要求信号に対応する文書情報を索出する段階」は、本願発明の「(c)ウェブサーバはカスタマによりリクエストされたウェブページをアクセスして獲得し、」に相当する。
引用発明の「編集」は、「前記取得した文書情報の情報量や情報配置順などを前記環境指定データの指定内容に適合するよう」にする処理であって、具体的には上記キ)の画像圧縮処理(段落【0026】?【0028】)やテキスト編集処理(段落【0029】?【0031】)である。そして、上記キ)及び関連する図10?図14に記載された処理の過程では、繰り返し全データ量を求めて予め定められたしきい値A(上記オ)の「利用環境処理部21では、まず、環境指定データの項番の情報から編集項目を生成する。例えば、図5に示すように、環境指定データの『利用状況』からクライアント1への送信情報としてどのような情報を優先させるかを表す『優先情報』を編集項目として生成する。また、『通信種別』からハイパーテキストのデータ処理の上限値(しきい値A)を表す『データ量』を編集項目として生成する。さらに、『表示種別』からクライアント1の表示能力に適した『画像色数』や『サイズの圧縮範囲』を編集項目として生成する。」処理で生成される)と比較し、編集後の全データ量がしきい値A以下となるように処理している。
また、引用発明の「環境指定データ」が含む「通信種別」や「表示種別」の情報は自装置の物理的環境を示す情報であって、本願発明における「1以上のクライアント装置の特性」に相当するものであり、「利用状況」に対応するキーワード(図7参照)は、個々の「利用状況」においてユーザが必要とする情報から得られたパラメータといえるから、本願発明における「使用するカスタマの好みから得られたパラメータ」に相当する。そして、引用発明の図6に示されたデータ量や画像色数・サイズという編集項目や、図13に示された送信データ種別は、文書情報に含まれるデータの特性であるから、引用発明における編集項目や送信データ種別は、本願発明における「ウェブページの特性」に相当するものである。
してみると、引用発明における上記画像圧縮処理やテキスト編集処理は、前記取得した文書情報の特徴を受信装置の特性やユーザの希望に応じて情報配置順などが異なるデータに変える処理に他ならず、また、その過程において全データ量をクライアントの環境指定データから得られた上限値(しきい値A)以下としており、実質的に文書情報のデータ量を減少させていることから、引用発明における「編集」は本願発明の「変換」に対応する処理ということができる。
したがって、引用発明の「前記環境指定データを受信した第2通信装置が前記取得した文書情報の情報量や情報配置順などを前記環境指定データの指定内容に適合するように情報編集部22で編集し」というステップは、本願発明の「ウェブサーバは前記記憶されているテンプレートにしたがって獲得したウェブデータを変換してデータ量を減少させ、」るステップと、ウェブサーバがクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みに基づいて獲得したウェブデータを変換してデータ量を減少させる点で共通する。
さらに、引用発明の「編集後の文書情報を第1通信装置へ送信する段階」は、本願発明の「(e)ウェブサーバは変換されてデータ量の減少されたデータをクライアント装置へ送信するステップ」に相当する。

してみると、本願発明と引用発明とは、
「ウェブブラウジングシステムにおいて、ウェブサーバからクライアント装置へデータを転送する方法において、
ウェブサーバはカスタマによりリクエストされたウェブページをアクセスして獲得し、
ウェブサーバはクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みに基づいて獲得したウェブデータを変換してデータ量を減少させ、
ウェブサーバは変換されてデータ量の減少されたデータをクライアント装置へ送信するステップを有しているデータ転送方法。」

で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)本願発明においては、「1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みから得られたパラメータのリストを作成」するのに対し、引用発明においてはそのようにしていない点。
(相違点2)本願発明においては、「ウェブサーバにおいてテンプレートとして前記パラメータを記憶し」、「前記記憶されているテンプレートにしたがって獲得したウェブデータを変換」するのに対し、引用発明においてはそのようにしていない点。

(4)当審の判断
上記相違点について検討する。
(相違点1)について
引用発明においては、「1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みから得られたパラメータのリストを作成」するようにはしていないが、引用発明の第2通信装置においては、受信した環境指定データからユーザ識別情報とともに「クライアント装置の特性」と「使用するカスタマの好みから得られたパラメータ」を得ており、また、第2通信装置には、ウェブページの特性が環境指定データ及びキーワードに対応して記憶されているものである。
そして、情報処理技術において複数の項目からなるデータを保持する形式として、リストは一般的なデータの形式の一つにすぎないから、引用発明の第2通信装置において上記の特性やパラメータのデータを保持する際に「リスト」という形式を採用し、「1以上のクライアント装置の特性と、ウェブページの特性と、クライアント装置を使用するカスタマの好みから得られたパラメータのリストを作成」するものとすることは、当業者が容易に成し得た事項である。

(相違点2)について
引用発明の第2通信装置においても、文書情報の要求信号とともに受信した環境指定データを利用環境情報処理部21に保持しユーザ毎のパラメータを得て処理を取得した文書の編集処理を行っているのだから、引用発明においてもウェブサーバにて前記パラメータを記憶しているといえるが、パラメータをテンプレートとしてウェブサーバに記憶しておくことについてさらに検討する。
引用発明においては、サーバの利用環境情報処理部21で、受信した環境指定データからその都度編集項目を生成する処理を行っているが、情報通信の技術において、情報の加工に関するクライアント側の情報をサーバに記憶しておき、クライアントに送信すべき情報に対して記憶された情報に基づいた加工処理を施し送信を行うことで、システムの処理負荷や通信負荷を抑制するシステムの構成、並びに、ユーザの好みなどをユーザプロファイルとしてサーバに記憶し、ユーザプロファイルに基づいて送信情報を加工して送信するシステムの構成は次に示すように、本願出願前周知の技術である。
例えば、前置報告書に例示された特開平09-245049号公報の【0004】や、森田昌宏 他,情報フィルタリング技術の現状と展望,人工知能と知識処理,日本,社団法人電子情報通信学会,1993年7月22日,第93巻第153号,第49頁乃至第56頁の4.1情報フィルタリングと情報流通機構の記載、あるいは、河井保博、新世代のWWW-RDB連携ソフト登場ユーザー別の情報提供が容易に、日経コミュニケーション、日経BP社、1996年02月05日、第215号、第48乃至49頁の「顧客のプロフィールに合わせたホームページを自動的に作成」することに関する記載、辻順一郎 他、モバイルプロキシーサーバシステムの試作、情報処理学会研究報告、社団法人情報処理学会、1997年07月25日、第97巻第72号、第67乃至72頁の「・ユーザ管理の実現 ユーザ毎にアクセス履歴の管理、イメージ情報の変換に用い各種パラメータのユーザ毎の管理を行うために、モバイルプロキシサーバにおいてユーザ管理を実現することとした。」ことに関する記載、神場知成 他、ユーザプロファイル管理エージェントの提案と試作、情報処理学会研究報告、社団法人情報処理学会、1997年01月16日、第97巻第2号、第1乃至8頁の「これは大量の情報ソースの中からそれぞれユーザが興味あろう記事を取り出し、わかりやすい形で提示する「個人向け新聞」を作る仕組みである。」や「パーソナライゼーション機能を提供するために、ユーザプロフィルをWWWサーバ側に蓄積することも、クライアント側、つまりWWWブラウザが動作している端末上に蓄積することも可能である。」ことに関する記載などがある。
なお、上記周知技術におけるユーザプロファイルなどの加工に関する情報は必要に応じて更新されるものである。
してみると、引用発明において上記周知技術を採用し、環境指定データから生成される編集データや送信データ種別などの文書情報の加工に関する情報を設定済みのパターン(テンプレート)としてサーバに記憶する構成とし、「ウェブサーバにおいてテンプレートとして前記パラメータを記憶し」、「前記記憶されているテンプレートにしたがって獲得したウェブデータを変換」するよう構成することは、当業者が容易に想起し得た事項である。

そして、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、予測される程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

(5)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について論ずるまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-23 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-20 
出願番号 特願2000-547562(P2000-547562)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 紀田 馨平井 誠  
特許庁審判長 田口 英雄
特許庁審判官 手島 聖治
長 由紀子
発明の名称 広域網上の実効的な対話式データ処理のための調整されたデータおよび送信プロトコル  
代理人 白根 俊郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  
代理人 村松 貞男  

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