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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A45D
管理番号 1185316
審判番号 不服2005-14217  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-25 
確定日 2008-10-01 
事件の表示 特願2000-604814号「化粧マス製品をカラーカスタマイズするための方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月21日国際公開、WO00/54736、平成14年11月19日国内公表、特表2002-538894号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年3月16日(パリ条約による優先権主張1999年3月17日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年4月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年7月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年7月25日付けおよび8月23日付けで明細書についての手続補正がなされ、さらに、平成19年10月12日付けで当審の拒絶理由の通知がなされ、これに対して、平成20年4月10日付けで意見書が提出されたものであって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、平成17年8月23日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「客に販売する段階で、複数の色の複数の完全処方ペレットから、カスタマイズされた最終的な色を有する化粧マスを作る方法であって、
該複数の完全処方ペレットから、ペレットを組み合わせた際に該最終的な色が作られるように、ペレットの重量およびペレットの色に基づいてペレットの組み合わせを特定するステップ、
該組み合わせたペレットを容器内で加熱して、加熱材料を形成するステップ、
該加熱材料を、該容器から、開口部を少なくとも1つ有し、少なくとも1つの化粧品マスの形状を画定する鋳型に移すステップ、
該加熱材料が少なくとも1つの化粧品マスに固化するまで、鋳型を冷却するステップ、
ならびに
該鋳型を解体して該少なくとも1つの化粧品マスをそこから取り出すステップ、
を含む上記方法。」

2.引用例の記載事項
当審の拒絶理由に引用された特表平6-508625号公報(以下、「引用例」という)には、次の事項が記載されている。
(a)公報第4頁左下欄第14行から同右下欄第11行
「本発明は、多くの利点を提供する。極めて広い範囲の色彩や色合いが消費者の手に入るようにすることができるのと同時に小売業者の在庫管理問題を無くすことができる。この色ペレットについては、工場で配合することによって高度な正確性と均一な色分散を発現することができるので、得られた口紅の色の信頼性ある再現が可能となる。
上記の色ペレットの形が重要でないことは理解されよう。本明細書では色ペレットという術語は、ワックス成分、油成分及び予め定められた量の顔料及び/又は真珠光沢付与剤を包含する既知の予め定められた重量又は容量の色ユニットを記述するために使用される。他の選択的な成分も前述のように存在させることができる。上記の色ペレットは室温で固体であることか好ましいが、半固体のペーストも使用することができる。ただし、顔料及び/又は真珠光沢付与剤の安定かつ均一分散の分散体が一度に大量に製造され、後で多数の同一の色ユニットへ細分することができることが条件である。この色ペレットは既知の重量であることが好ましい。ペレットの重量は、0.1?10gの範囲にあることが適当である。この重量は0.2?5.0gの範囲にあることが好ましく、0.5?1.5gの範囲にあることが、より好ましい。」

(b)公報第6頁左上欄第17行から同右上欄15行
「次いで、色ペレットを含有するこれらのブリスターパックを販売点まで送り、ここで口紅を処方することができる。以下の実施例に記載の色ペレットの組み合わせによって、例えば、240個の異なる色合いの口紅の範囲が最初に得られるものとしよう。これらの色合いの口紅を、消費者が肌に試すために試験用の口紅として陳列することにする。そうすると、これらの色合いの中のいずれか二つの組み合わせを選ぶと、28,000個以上の色合いを選択することができる。
特定の色合いのものが消費者に選ばれた後、この色合いを作るのに必要な色ベレットの数と種類とを確かめるために参照チャートを参照することになる。これらのペレットをブリスターパックから取り出し、適当な容器、例えば、プラスチック袋へ入れ、口紅を以下のように調製する。
典型的には油混合物の測定された用量を、ポンプディスペンサから予め定められた数の色ペレットを含む容器へ入れる。この混合物を電子レンジで溶融する。この溶融混合物をレンジから取り出し、均一になるまで手でスパチラを用いて攪拌する。次に混合物を電子レンジに戻して80?85℃まで再加熱する。次にこの混合物を単一穴のスプリット鋳型へ注ぐ。冷却後口紅を鋳型から取り出し、適当なケースに入れた後、消費者に販売することになる。」

(c)公報第4頁左上欄第11から25行
「色ペレットの油成分は、化粧品として許容される油を一種又はそれ以上及び/又は化粧品として許容される脂を一種又はそれ以上包含することが適当である。適当な油には天然油(例えば、ひまし油、ラノリン油、アーモンド油及び小麦麦芽油)、合成エステル(例えば、ペンタエリトリトールテトラカブリレートやペンタエリトリトールテトラカプレート)、脂肪油(例えば、トリグリセリドエステル)、及び脂肪アルコール(例えば、オレイルアルコールやオクチルドデカノール)が挙げられる。適当な脂には動物脂(例えば、羊毛脂)、植物脂(例えば、トリグリセリドエステル)及び鉱物脂(例えば白色軟質パラフィン)が挙げられる。上記の油成分の構成は、色ペレットの35?60重量%であるのが好ましく、40?55%がより好ましく、50?55%、例えば、52?54%が最も好ましい。」

(d)公報第4頁右上欄第20行から同左下欄第6行
「色ペレットは、油混合物と一緒にして、前述したように、口紅を形成することができる。この油混合物としては、化粧品として許容される油、例えば、天然油(例えば、ひまし油、ラノリン油、アーモンド油及び小麦麦芽油)、合成エステル(例えば、ペンタエリトリトールテトラカブリレートやペンタエリトリトールテトラカプレート)、脂肪油(例えば、トリグリセリドエステル)及び脂肪アルコール(例えば、オレイルアルコールやオクチルドデカノール)又はこれらの混合物を一種又はそれ以上含有するのが好適である。上記油混合物には動物脂、植物脂又は鉱物脂を選択的にさらに含有させることができる。」

上記(a)ないし(d)の記載事項より、引用例には、
「販売点で、複数の色の複数の『重量および色が予め定められている色ペレット』から、消費者に選ばれた特定の色合いを有する口紅を作る方法であって、
複数の『重量および色が予め定められている色ペレット』から、必要な種類と数の色ペレットを組み合わせた際に特定の色合いが作られるように、ペレットの重量およびペレットの色に基づいて必要な種類と数の色ペレットの組み合わせを参照チャートを参照して決めること、
組み合わせた色ペレットと油混合物とを一緒にして容器内で加熱して、溶融混合物を形成すること、
溶融混合物を撹拌して均一にすること、
溶融混合物を、容器から、単一穴を有し、口紅を形成する鋳型に移すこと、
溶融混合物が口紅に固化するまで、鋳型を冷却すること、ならびに
鋳型から口紅を取り出すこと、を含む口紅を作る方法。」の発明が開示されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比する。
○引用例記載の発明の「販売点」、「消費者に選ばれた」、「口紅」、「組み合わせを参照チャートを参照して決めること」、「単一穴を有し」、「口紅を形成する鋳型に移すこと」、「口紅に固化するまで、鋳型を冷却すること」、「鋳型から口紅を取り出すこと」、「溶融混合物」は、
本願発明の「客に販売する段階」、「カスタマイズされた」、「化粧マス」、「組み合わせを特定するステップ」、「開口部を少なくとも1つ有し」、「少なくとも1つの化粧品マスの形状を画定する鋳型に移すステップ」、「少なくとも1つの化粧品マスに固化するまで、鋳型を冷却するステップ」、「鋳型を解体して少なくとも1つの化粧品マスをそこから取り出すステップ」、「加熱材料」のそれぞれに相当する。

○引用例記載の発明の「特定の色合い」は、消費者に選ばれたもの、つまり、最終的な使用のために選ばれたものであることから、「最終的な色合い」であるといえるので、本願発明の「最終的な色」に相当する。

○引用例記載の発明の「『重量および色が予め定められている色ペレット』」は、最終的な色合いを作るために特定の組み合わせがなされるもの、つまり、「組み合わせの特定(処方)がなされる色ペレット」であるといえるので、これと本願発明の「完全処方ペレット」とは、「処方ペレット」という点で共通する。

○引用例記載の発明の「組み合わせた処方ペレット(色ペレット)と油混合物とを一緒にして容器内で加熱して」と、本願発明の「組み合わせたペレットを容器内で加熱して」とは、「組み合わせた材料を容器内で加熱して」という点で共通する。

上記より、両者は、
「客に販売する段階で、複数の色の複数の処方ペレットから、カスタマイズされた最終的な色を有する化粧マスを作る方法であって、
該複数の処方ペレットから、ペレットを組み合わせた際に該最終的な色が作られるように、ペレットの重量およびペレットの色に基づいてペレットの組み合わせを特定するステップ、
該組み合わせた材料を容器内で加熱して、加熱材料を形成するステップ、
該加熱材料を、該容器から、開口部を少なくとも1つ有し、少なくとも1つの化粧品マスの形状を画定する鋳型に移すステップ、
該加熱材料が少なくとも1つの化粧品マスに固化するまで、鋳型を冷却するステップ、
ならびに
該鋳型を解体して該少なくとも1つの化粧品マスをそこから取り出すステップ、
を含む上記方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。

本願発明では、組み合わせた完全処方ユニットを加熱しているのに対して、引用例記載発明では、組み合わせた処方ユニット(色ペレット)と油混合物とを一緒にして加熱している点。(以下、「相違点」という。)

上記相違点について検討する。
上記2.(c)および(d)より、引用例記載の発明において、処方ペレット(色ペレット)に含まれる油成分は、例えば、天然油、合成エステル、脂肪油、脂肪アルコール、脂肪エステルの一種又はそれ以上、及び/又は、動物油、植物油、鉱物油の一種又はそれ以上のものであり、一方、処方ペレットと一緒にする油混合物は、例えば、天然油、合成エステル、脂肪油、脂肪アルコール、脂肪エステルの一種又はそれ以上に、動物油、植物油、鉱物油の一種又はそれ以上を選択的にさらに加えたものであることから、上記油成分と油混合物とは、ほぼ同等のものであるので、処方ペレットと一緒にする油混合物を油成分として予め処方ペレットに含有させることで、処方ペレットと一緒にする油混合物の量をゼロにすることは、当業者であれば普通に想起できる程度のことである。
そして、この場合、処方ユニットのみから化粧品マスを作ることができるので、処方ユニットを、完全処方ユニットといい換えることができる。
したがって、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者であれば容易になし得る程度のことである。

そして、本願発明の効果も、引用例記載の発明より当業者であれば十分に予測し得る程度のことである。

よって、本願発明は、引用例記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それゆえ、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-30 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-21 
出願番号 特願2000-604814(P2000-604814)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 沖田 孝裕冨江 耕太郎  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 北村 英隆
豊永 茂弘
発明の名称 化粧マス製品をカラーカスタマイズするための方法およびシステム  
代理人 平木 祐輔  
代理人 藤田 節  
代理人 新井 栄一  
代理人 石井 貞次  

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