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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1185425 |
審判番号 | 不服2005-23377 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-05 |
確定日 | 2008-09-24 |
事件の表示 | 平成10年特許願第532483号「有効ベースも同様に界面活性剤を含む、別々に取出されるクレンジングベースと有効ベースとを含んでいるクレンジング組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月 6日国際公開、WO98/33477、平成13年 7月24日国内公表、特表2001-509798〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年1月12日(優先権主張1997年1月30日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年2月3日付けで通知された拒絶の理由に対して、同年6月2日付けで意見書を提出するとともに手続補正がなされたが、同年8月31日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月28日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年12月28日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年12月28日付の手続補正を却下する。 [理由] ア.補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「【請求項1】水性液体クレンジング及びモイスチャリング組成物であって、 (a)1から35重量%のアニオン、非イオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤、又はこれらの混合物を含む、製品総重量の10から99.9 重量%のベース配合物及び補足水、及び (b)(i)1から80重量%の有効薬剤、 (ii)5から20重量%のアニオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤又はそれらの混合物、及び、 (iii)補足水 を含む、製品総重量の0.1から90重量%の添加剤配合物、 を含み、ここで、添加剤配合物及びベース配合物は物理的に分離されているが、単一包装手段であって、それによる各ストライプ(stripe)により使用前にベース配合物と添加剤配合物との後混合の必要が無い該単一包装手段から組合せて取出され、各ストライプは少なくとも1000ミクロンの幅を有し、シリンダー振とう法を用いた有効薬剤を含む添加剤配合物ストライプの泡の高さが88mlより大であることを特徴とする前記組成物。」と補正された。 上記補正は、平成17年6月2日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の発明を特定するために必要な事項である(b)(ii)に規定する界面活性剤の配合割合「0.1 ?20重量%」を「5?20重量%」と減縮するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 ところで、本件補正後の前記請求項1には、(a)に「……ベース配合物及び補足水」と補足水がベース配合物とは別成分として記載されているが、同請求項1には、(b)に「(i)……、(ii)……、及び、(iii)補足水を含む、製品総重量の0.1から90重量%の添加剤配合物」と記載されており、続いて、「ここで、添加剤配合物及びベース配合物は……」と記載されており、(a)の補足水がベース配合物とは別成分とした記載は不自然である。そこで、本願明細書を検討するに、本願明細書6頁下から6?3行には、「(a)アニオン(セッケンを含む)、非イオン、両性/双性イオン、及びカチオン界面活性剤、及びこれらの混合物から成る群から選ばれる界面活性剤と、補足水及び任意成分とを含むベース配合物」とベース配合物に補足水が含まれる旨記載され、ベース配合物に相当する界面活性剤ストライプの処方例(24頁、表1)には、「水 100.0まで」と補足水としてベース配合物に水を配合することが記載がなされていることから、上記(a)は、「1から35重量%のアニオン、非イオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤、又はこれらの混合物及び補足水を含む、製品総重量の10から99.9 重量%のベース配合物」と解される。 また、上記請求項1には、「シリンダー振とう法を用いた有効薬剤を含む添加剤配合物ストライプの泡の高さが88mlより大である」と記載されているが、mlは容積の単位であり、記載は矛盾している。そこで、本願明細書を検討するに、本願明細書には、泡の容積を測定したことが記載されていること(23頁末4行?24頁2行)から、上記「泡の高さ」は「泡の容積」の誤記と認められる。 したがって、本願補正発明は、以下の事項により特定されるとおりのものと認める。 「水性液体クレンジング及びモイスチャリング組成物であって、 (a)1から35重量%のアニオン、非イオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤、又はこれらの混合物及び補足水を含む、製品総重量の10から99.9重量%のベース配合物、及び (b)(i)1から80重量%の有効薬剤、 (ii)5から20重量%のアニオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤又はそれらの混合物、及び、 (iii)補足水 を含む、製品総重量の0.1から90重量%の添加剤配合物、 を含み、ここで、添加剤配合物及びベース配合物は物理的に分離されているが、単一包装手段であって、それによる各ストライプ(stripe)により使用前にベース配合物と添加剤配合物との後混合の必要が無い該単一包装手段から組合せて取出され、各ストライプは少なくとも1000ミクロンの幅を有し、シリンダー振とう法を用いた有効薬剤を含む添加剤配合物ストライプの泡の容積が88mlより大であることを特徴とする前記組成物。」 であると認める。 イ.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第96/02230号パンフレット(以下、引用例1という。翻訳文として特表平9-512826号公報参照。なお、下記の摘示は、引用例1から翻訳して摘示したものであり、必ずしも翻訳文である特表平9-512826号公報の記載をそのまま使用するものではない。)には、次の事項が記載されている。 (1) (a)アニオン性、非イオン性、両イオン性及びカチオン性界面活性剤、セッケン並びにその混合物から選択された界面活性剤と、 (b)有効薬剤 とから成り、有効薬剤と界面活性剤とが別々になっているが単一の包装手段から所定の割合で個別領域として併行して分配され、前記領域の1つの寸法が少なくとも 1,000ミクロンであることを特徴とする水性液体状のクレンジング及びモイスチャリング組成物。(特許請求の範囲の請求項1) (2) 有効薬剤が、シリコーンオイル、ゴム、脂肪、油、ワックス、疎水性植物エキス、炭化水素、脂肪酸、アルコール、エステル、精油、脂質、リン脂質、ビタミン、日焼け防止剤及びその混合物から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。(同請求項2) (3) 本発明は、人体を清浄にしその状態を改善し、特に上皮組織を含む皮膚、毛髪、爪及びその他の粘膜を保湿する、外用に適した洗浄剤組成物に関する。(1頁2?6行、翻訳文4頁3?4行) (4) 界面活性剤と有効薬剤とは組成物の所期の用途に従って所定の割合で単一包装手段から分配されうる。界面活性剤と有効薬剤とを一緒に分配する組成物の利点は、2つの成分を後で混合しなければならないという不都合を回避できることである。(2頁31行?3頁1行、翻訳文5頁11?14行) (5) 有効薬剤はエマルジョンの形態で提供できる。有効薬剤は、好ましくは 0.1?50重量%、極めて好ましくは4?25重量%の量で存在する。(5頁14行?16行、翻訳文7頁下10?8行) (6) 洗顔料のベース配合物(A)として ココイルイセチオン酸ナトリウム 7.5 重量% ココアミドプロピルベタイン(CAPB) 3.75 MEAスルホスクシネート 3.75 脂肪酸モノグリセリドポリグリコールエーテル 3.00 ステアリン酸 3.00 ベヘニルアルコール 3.00 水+微量成分 100まで なる配合物が記載されている。そして、有効薬剤はシリコーンオイルであること、縞状の練り歯磨を分配するために使用される英国特許第956,377号に記載の型の練り歯磨チューブを包装容器として使用し、チューブ内の全組成物は6重量%のシリコーンオイルと94重量%の基剤配合物であったこと、練り歯磨きチューブから皮膚に分配すると、有効薬剤とベース配合物が縞状に供給され、有効薬剤は外側の縞を形成することが記載されている。(実施例1) 同じく引用された特開平4-243813号公報(以下、引用例2という。)には、次の事項が記載されている。 (7) (A)アニオン性、非イオン性及び両性イオン性界面活性剤並びにその混合物から選択される界面活性剤と、カチオン性コンディショニングポリマーとを含むベースシャンプー組成物の入った第1のパックと、 (B)2μm未満の平均粒度の毛髪に効能を付与する効果剤粒子を含むシャンプー添加剤組成物の入った第2のパックとを含んでなり、使用前に第1のパックと第2のパックを混合するようになっているシャンプー系。(特許請求の範囲の請求項1) (8) 効果剤はシャンプー添加剤組成物中に粒子として配合され、これらの粒子は効果剤の乳化した液滴であるか、水に分散した効果剤粒子であってもよい。効果剤は好ましくは、日焼け止め、不溶性の非揮発性シリコーン、シリコーン樹脂、香料、毛髪成長剤、毛髪湿潤剤、フケ止め剤、増粘剤、香料、ツヤ出し剤または固定剤(setting agent)から選択される。(【0021】?【0022】) (9) シャンプー添加剤組成物の処方例として ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 2EO 16.0重量% ココヤシアミドプロピルベタイン 2.0 Carbopol 940 0.4 ジメチコーン(60,000cSt) 1.0 Timiron MP1001 0.2 香料、着色剤、防腐剤 十分量 水 100になるまでの量 (実施例7) ウ.対比 引用例1には、「(a)アニオン性、非イオン性、両イオン性及びカチオン性界面活性剤、セッケン並びにその混合物から選択された界面活性剤と、 (b)有効薬剤 とから成り、有効薬剤と界面活性剤とが別々になっているが単一の包装手段から所定の割合で個別領域として併行して分配され、前記領域の1つの寸法が少なくとも 1,000ミクロンであることを特徴とする水性液体状のクレンジング及びモイスチャリング組成物。」が記載されている(上記 (1))。 そして、この発明の実施例として、洗顔料が、アニオン、両性及び非イオン界面活性剤(ココイルイセチオン酸ナトリウム、MEAスルホスクシネート、ココアミドプロピルベタイン、脂肪酸モノグリセリドポリグリコールエーテル)18重量%、ステアリン酸3%、ベヘニルアルコール3%、水と微量成分を76重量%を含むベース配合物を、製品総重量の94重量%、有効薬剤であるシリコーンオイルを製品総重量の6重量%含むこと及び縞状の練歯磨を分配するために使用される英国特許第956,377号に記載の型の練歯磨チューブを包装容器として使用したこと(上記 (6))が記載されている。 そうすると、引用例1には、 「(a)アニオン性、非イオン性、両イオン性及びカチオン性界面活性剤、セッケン並びにその混合物から選択された界面活性剤として、ココイルイセチオン酸ナトリウム、MEAスルホスクシネート、ココアミドプロピルベタイン、脂肪酸モノグリセリドポリグリコールエーテルを18重量%、ステアリン酸3%、ベヘニルアルコール3%、水と微量成分を76重量%を含むベース配合物を製品総重量の94重量%、及び (b)有効薬剤として、シリコーンオイルを製品総重量の6重量% とから成り、有効薬剤と界面活性剤とが別々になっているが、単一の包装手段としての英国特許第956,377号に記載の型の練り歯磨きチューブから所定の割合で個別領域として併行して分配され、前記領域の1つの寸法が少なくとも 1,000ミクロンであることを特徴とする水性液体状のクレンジング及びモイスチャリング組成物である洗顔料。」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「(a)アニオン性、非イオン性、両イオン性及びカチオン性界面活性剤、セッケン並びにその混合物から選択された界面活性剤として、ココイルイセチオン酸ナトリウム、MEAスルホスクシネート、ココアミドプロピルベタイン、脂肪酸モノグリセリドポリグリコールエーテルを18重量%、ステアリン酸3%、ベヘニルアルコール3%、水と微量成分を76重量%を含むベース配合物を製品総重量の94重量%」は、ここで、水はベース配合物を100となるように調製するものである(上記(6))から、本願補正発明の補足水にあたるものであり、本願補正発明の「(a)1から35重量%のアニオン、非イオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤、又はこれらの混合物及び補足水を含む、製品総重量の10から99.9重量%のベース配合物」に相当する。 そして、引用発明の「有効薬剤と界面活性剤とが別々になっているが、単一の包装手段としての英国特許第956,377号に記載の型の練り歯磨きチューブから所定の割合で個別領域として併行して分配され、前記領域の1つの寸法が少なくとも 1,000ミクロンである」は、練り歯磨きチューブから皮膚に分配すると、有効成分と基剤配合物が縞状、すなわちストライプとして取り出され、使用前に有効成分と基剤配合物とを後混合する必要が無いことは明らかであるから、本願補正発明の「添加剤配合物及びベース配合物は物理的に分離されているが、単一包装手段であって、それによる各ストライプ(stripe)により使用前にベース配合物と添加剤配合物との後混合の必要が無い該単一包装手段から組合せて取出され、各ストライプは少なくとも1000ミクロンの幅を有し」に相当する。 そうすると、両者は、「水性液体クレンジング及びモイスチャリング組成物であって、 (a)18重量%のアニオン、非イオン及び両性界面活性剤の混合物及び補足水を含む、製品総重量の94重量%のベース配合物、及び (b)製品総重量の6重量%の有効薬剤を含む配合物 を含み、ここで、有効薬剤を含む配合物及びベース配合物は物理的に分離されているが、単一包装手段であって、それによる各ストライプにより使用前にベース配合物と有効薬剤との後混合の必要がない該単一包装手段から組合わせて取出され、各ストライプは少なくとも 1,000ミクロンであることを特徴とする組成物」である点で一致し、 前者は、(b)の有効成分を含む配合物が(i)1?80重量%の有効薬剤、(ii)5?20重量%のアニオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤又はそれらの混合物、及び(iii)補足水を含むのに対して、後者は有効薬剤であるシリコーンオイルのみである点(相違点1)及び前者は有効薬剤を含む添加剤配合物ストライプの泡の容積がシリンダー振とう法を用いると88mlより大であると規定しているのに対して、後者はこの点が記載されていない点(相違点2)で相違する。 エ.判断 そこで、これらの相違点について検討する。 (相違点1について-その1) 引用例1には、 引用例1の特許請求の範囲に記載された発明において、有効薬剤はエマルジョンの形態で提供できることが記載されている(上記(5))。引用例の実施例1は、引用例1の特許請求の範囲に記載された発明の実施例であるから、実施例1においては、有効薬剤はシリコーンオイル単独であるが、これをエマルジョンの形態で使用することは当業者が容易に想到し得ることであり、シリコーンオイルのエマルジョン形態で使用するにあたり、界面活性剤と水と使用すること、その配合比を選定することは当業者が適宜行う程度のことである。 。 したがって、引用発明において、有効薬剤であるシリコーンオイルを、(i)1?80重量%の有効薬剤、(ii)5?20重量%のアニオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤又はそれらの混合物、及び(iii)補足水を含む配合物とすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、有効薬剤にさらに界面活性剤を配合すれば、水性液体状のクレンジング及びモイスチャリング組成物全体の界面活性剤の量が増え、泡立ちが良くなることは当業者が容易に予測し得ることである。 (相違点1について-その2) また、引用例2には、(A)アニオン性、非イオン性及び両性イオン性界面活性剤並びにその混合物から選択される界面活性剤と、カチオン性コンディショニングポリマーとを含むベースシャンプー組成物の入った第1のパックと、(B)2μm未満の平均粒度の毛髪に効能を付与する効果剤粒子を含むシャンプー添加剤組成物の入った第2のパックとを含んでなり、使用前に第1のパックと第2のパックを混合するようになっているシャンプー系(上記 (7))が記載されている。 引用例1の組成物は、上皮組織を含む皮膚、毛髪、爪及びその他の粘膜を保湿する、外用に適した洗浄剤組成物(上記 (3))であり、シャンプー用の組成物を含むものであり、引用例2のシャンプー系組成物と製品分野が共通する。そして、有効薬剤は引用例1では、シリコーンオイル、ゴム、脂肪、油、ワックス、疎水性植物エキス、炭化水素、脂肪酸、アルコール、エステル、精油、脂質、リン脂質、ビタミン、日焼け防止剤(上記 (3))であり、一方、引用例2の組成物における有効薬剤は、添加剤組成物(B)中の効果剤粒子の成分、すなわち日焼け止め、不溶性の非揮発性シリコーン、シリコーン樹脂などであり(上記(8)(9))、非揮発性シリコーンは、シリコーンオイルであるから、有効薬剤として、シリコーンオイルを含め、引用例1の組成物及び引用例2の組成物で多くのものが共通している。 そして、引用例2では、有効薬剤であるシリコーンオイルを、ジメチコーン(シリコーンオイル)1.0 重量%、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ココヤシアミドプロピルベタイン(界面活性剤)18重量%、補足水を含む組成物として使用した処方例が記載されている(上記 (9))。 水性液体状のクレンジング及びモイスチャリング組成物の分野において、泡立ちを改善することは周知の課題であり、界面活性剤の量が増せば、その泡立ちが改善されることは当業者が容易に予測し得ることであるから、引用発明は引用例1の組成物の実施例であることを勘案すれば、引用発明において、有効薬剤であるシリコーンオイルを、引用例2に記載の界面活性剤、水を含む添加剤組成物として使用することは、当業者が容易に想到できるものと認められる。 (相違点2について) 本願補正発明は、泡立ちの改良された水性液体クレンジング及びモイスチャリング組成物の発明であるが、当該組成物注の界面活性剤の配合量が増えれば、当該組成物の泡立ちが改良されることは当業者が容易に予測することである。 そして、界面活性剤を有効薬剤を含む添加剤配合物に添加すれば、添加剤配合物の泡立ちが良くなることは当業者が当然に予想することであり、起泡力をシリンダー振とう法で測定することに格別の困難性、意義は認められない。そして、本願明細書の記載からは、有効薬剤を含む添加剤配合物ストライプの泡の容積がシリンダー振とう法を用いると88mlより大であると規定することにより、本願補正発明が当業者に予測できない顕著な効果を奏するものとは認められない。 なお、請求人は、引用例1には、有効薬剤と界面活性剤が組成物中で分離しており、有効薬剤の付着効率を低下させるような不都合な相互作用を阻止し得る旨記載されており、引用発明において有効薬剤に界面活性剤を配合することは極めて当然ではないと主張するが、製品の性質として泡立ちを重要視するか、有効薬剤の付着率を重要視するかは、当業者が製品化に際し所望に応じて選択することであるし、そもそも本願補正発明は、有効薬剤と界面活性剤が組成物中で分離せず存在することによる有効薬剤の付着率の低下を改善するものとは本願明細書の記載からは認められないので、請求人の主張は採用できない。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成17年12月28日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年6月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるが、上記2.アに記載した理由と同し理由及びストリップはストライプの誤記であることは明らかであることから、以下の事項により特定されるとおりのものと認める。 本願の請求項1に係る発明は 「水性液体クレンジング及びモイスチャリング組成物であって、 (a)1から35重量%のアニオン、非イオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤、又はこれらの混合物及び補足水を含む、製品総重量の10から99.9重量%のベース配合物、及び (b)(i)1から80重量%の有効薬剤、 (ii)0.1 から20重量%のアニオン、両性/双性イオン又はカチオン界面活性剤又はそれらの混合物、及び、 (iii)補足水 を含む、製品総重量の0.1から90重量%の添加剤配合物、 を含み、ここで、添加剤配合物及びベース配合物は物理的に分離されているが、単一包装手段であって、それによる各ストライプにより使用前にベース配合物と添加剤配合物との後混合の必要が無い該単一包装手段から組合せて取出され、各ストライプは少なくとも1000ミクロンの幅を有し、シリンダー振とう法を用いた有効薬剤を含む添加剤配合物ストライプの泡の容積が88mlより大であることを特徴とする前記組成物。」 であると認められる。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例1及び2、及びその記載事項は、前記「2.(2)ア」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願補正発明は、補正前の請求項1の(b)(ii)に規定する界面活性剤の配合割合「0.1 ?20重量%」を「5?20重量%」と減縮し、「ストリップ」を「ストライプ」と誤記を訂正したものであるから、本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明を包含する。 したがって、本願発明は、前記「2.エ」に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-27 |
結審通知日 | 2008-04-01 |
審決日 | 2008-04-14 |
出願番号 | 特願平10-532483 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
P 1 8・ 575- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 關 政立、福井 悟、福井 美穂 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 井上 典之 |
発明の名称 | 有効ベースも同様に界面活性剤を含む、別々に取出されるクレンジングベースと有効ベースとを含んでいるクレンジング組成物 |
代理人 | 川口 義雄 |