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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1185474
審判番号 不服2005-13821  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-07-20 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 平成 8年特許願第 13056号「撮像システム及び撮像システムの制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 8月 5日出願公開、特開平 9-205572〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【第1】経緯

[1]手続
本願は、平成8年1月29日の出願であって、手続の概要は以下のとおりである。

手続補正(明細書の補正) :平成15年 1月28日
拒絶理由通知 :平成16年12月 1日(起案日)
手続補正(明細書の補正) :平成17年 2月 4日
拒絶査定 :平成17年 6月13日(起案日)
拒絶査定不服審判請求 :平成17年 7月20日
手続補正(明細書の補正) :平成17年 7月20日
前置審査報告 :平成18年 1月 6日

[2]査定
原審での査定の理由は、概略、以下のとおりである。

本願の各請求項に係る発明は、下記刊行物に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開平07-322106号公報
刊行物2:特開平05-300133号公報
刊行物3:特開平06-205409号公報
刊行物4:特開平07-306933号公報
刊行物5:特開平07-282289号公報

【第2】補正の却下の決定

平成17年7月20日付けの手続補正(以下、本件補正という。)について次の通り決定する。

《結論》

平成17年7月20日付けの補正を却下する。

《理由》

[1]特許請求の範囲の記載(補正前と補正後)
本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含むところ、本件補正前および本件補正後の特許請求の範囲は、下記のとおりである。(補正部分をアンダーラインで示す。)
記(補正前)
【請求項1】 撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムであって、
前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段と、
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段とを有することを特徴とする撮像システム。
【請求項2】 前記データ一覧表示制御手段は、前記メモリに記録されるデータの一覧および前記メモリに記録されるデータの一覧をそれぞれ独立したウィンドウ内に表示するよう制御することを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】 前記データ一覧表示制御手段は、前記ウィンドウ内にウィンドウをスクロールさせるための操作部を表示するよう制御することを特徴とする請求項2に記載の
撮像システム。
【請求項4】 前記入力装置により前記撮像ユニットに対応するアイコンを選択したときに、前記メモリに記録されるデータの少なくとも一部を前記記録装置に転送するデータ転送手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項5】 前記撮像ユニットが前記コンピュータに接続されたときに、前記撮像ユニットと前記コンピュータとの間で通信可能な最大速度を検出する接続速度検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項6】 撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムの制御方法であって、
前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御ステップと、
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御ステップとを有することを特徴とする撮像システムの制御方法。
【請求項7】 前記データ一覧表示制御ステップは、前記メモリに記録されるデータの一覧および前記メモリに記録されるデータの一覧をそれぞれ独立したウィンドウ内に表示するよう制御することを特徴とする請求項6に記載の撮像システムの制御方法。
【請求項8】 前記データ一覧表示制御ステップは、前記ウィンドウ内にウィンドウをスクロールさせるための操作部を表示するよう制御することを特徴とする請求項7に記載の撮像システムの制御方法。
【請求項9】 前記入力装置により前記撮像ユニットに対応するアイコンを選択したときに、前記メモリに記録されるデータの少なくとも一部を前記記録装置に転送するデータ転送ステップを有することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか一項に記載の撮像システムの制御方法。
【請求項10】 前記撮像ユニットが前記コンピュータに接続されたときに、前記撮像ユニットと前記コンピュータとの間で通信可能な最大速度を検出する接続速度検出ステップを有することを特徴とする請求項6ないし9のいずれか一項に記載の撮像システムの制御方法。

記(補正後)
【請求項1】 撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムであって、
前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段と、
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するように制御するデータ一覧表示制御手段と、
前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段とを有することを特徴とする撮像システム。
【請求項2】 前記データ一覧表示制御手段は、前記メモリに記録されるデータの一覧および前記メモリに記録されるデータの一覧をそれぞれ独立したウィンドウ内に表示するよう制御することを特徴とする請求項1に記載した撮像システム。
【請求項3】 前記データ一覧表示制御手段は、前記ウィンドウ内にウィンドウをスクロールさせるための操作部を表示するよう制御することを特徴とする請求項2に記載した撮像システム。
【請求項4】 前記撮像ユニットが前記コンピュータに接続されたときに、前記撮像ユニットと前記コンピュータとの間で通信可能な最大速度を検出する接続速度検出手段を有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項5】 撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムの制御方法であって、
前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御ステップと、
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するように制御するデータ一覧表示制御ステップと、
前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送ステップとを有することを特徴とする撮像システムの制御方法。
【請求項6】 前記データ一覧表示制御ステップは、前記メモリに記録されるデータの一覧および前記メモリに記録されるデータの一覧をそれぞれ独立したウィンドウ内に表示するよう制御することを特徴とする請求項5に記載の撮像システムの制御方法。
【請求項7】 前記データ一覧表示制御ステップは、前記ウィンドウ内にウィンドウをスクロールさせるための操作部を表示するよう制御することを特徴とする請求項6に記載の撮像システムの制御方法。
【請求項8】 前記入力装置により前記撮像ユニットに対応するアイコンを選択したときに、前記メモリに記録されるデータの少なくとも一部を前記記録装置に転送するデータ転送ステップを有することを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載の撮像システムの制御方法。
【請求項9】 前記撮像ユニットが前記コンピュータに接続されたときに、前記撮像ユニットと前記コンピュータとの間で通信可能な最大速度を検出する接続速度検出ステップを有することを特徴とする請求項5ないし8のいずれか一項に記載の撮像システムの制御方法。

[2]本件補正の適合性(第17条の2第4項第1号?第4号)

(1)補正前後の各請求項の対応関係
(a)請求項2および請求項3は補正の前後を通じて変更はなく、補正後請求項4は補正前請求項5に対応すること、補正後請求項5?9のそれぞれは、補正前請求項6?10のそれぞれに対応すること、以上は明らかである。
(b)補正後請求項1が、補正前請求項1を補正するものであるか、補正前請求項4を補正するものであるか、それらの対応について検討するに、
補正後請求項1の下線部分「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」はコンピュータに転送するものであり、補正前請求項4が規定する「前記記録装置に転送する」を拡張したものであって減縮態様とはなっていない。
また、補正後請求項1の下線部分「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段」は、前記記録装置に保存する場合の転送であって、補正前請求項4が規定する「前記入力装置により前記撮像ユニットに対応するアイコンを選択したときに」「転送する」ものとは異なるものであるから、補正前請求項4の減縮態様とはなっていない。すなわち、補正後請求項1は、補正前請求項4の構成要件「前記入力装置により前記撮像ユニットに対応するアイコンを選択したときに、前記メモリに記録されるデータの少なくとも一部を前記記録装置に転送するデータ転送手段」を有さず、したがって、補正後請求項1は、補正前請求項4を減縮するものではない。
以上から、補正後請求項1は、補正前請求項1を補正したものであり、補正前請求項4は削除されている。

(2)補正事項
すなわち、特許請求の範囲についてする補正は、以下の補正事項からなる。
(i)請求項4の削除
(ii)請求項1についてする補正
補正前請求項1について、「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」および「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段」を追加記載して、補正後請求項1とする補正。
(iii)請求項5についてする補正
補正前請求項5について、自身の項番号を1つ繰り上げるとともに、引用請求項を「請求項1ないし請求項4」から「請求項1ないし請求項3」として、補正後請求項4とする補正。
を補正後請求項1とする補正、
(iv)請求項6についてする補正
補正前請求項6について、自身の項番号を1つ繰り上げるとともに、「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」および「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送ステップ」を追加記載して、補正後請求項5とする補正。
(v)請求項7?10についてする補正
補正前請求項7?10について、それぞれ自身の項番号と引用請求項番号を1つ繰り上げて、補正後請求項6?9とする補正

(3)補正事項(ii)および(iv)(請求項1,請求項6についてする補正)
これら各補正は、「手段」か「ステップ」の違いはあるものの実質的に同じ補正であり、いずれも、対応する補正前請求項1,6に発明を特定するために必要な事項として記載していなかった、下記特定事項(以下、「特定事項A」という。)を、新たに追加記載する補正を含んでいる。
記(特定事項A)
「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段」。
(ただし、補正前請求項6について補正後請求項5とする補正にあっては、「データ転送手段」は「データ転送ステップ」と読み替える。)

これら各補正は、特定事項の追加であるから補正前請求項1,6を減縮するものではある。しかし、補正前請求項1,6は、いずれも追加記載した上記「特定事項A」に対応する特定事項を全く記載しておらず、したがって、上記「特定事項A」を追加記載するこれら各補正は、補正前請求項1,6に記載した発明を特定するために必要な事項を限定したものとはいえず、新たな観点から発明を特定する事項を付加したというべきものである。

(4)まとめ
上記補正事項(ii)(補正前請求項1について、「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」および「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段」を追加記載して、補正後請求項1とする補正。)、および
上記補正事項(iv)(補正前請求項6について、自身の項番号を1つ繰り上げるとともに、「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」および「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送ステップ」を追加記載して、補正後請求項5とする補正。)は、 いずれも、特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
そして、これら各補正は、いずれも、特許法第17条の2第4項第1号,第3号,第4号でそれぞれ規定する請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しない。

以上によれば、これら各補正を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる目的とするもののいずれにも該当しない。

[3]まとめ
本件補正は特許請求の範囲についてする補正を含むところ、その補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにもも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反しているものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

《独立特許要件についての予備的検討》
本件補正は、前記した理由により却下すべきであるが、仮に、本件補正が特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的するものに該当し、特許法第17条の2第4項の規定に適合するとしたとしても、補正後の請求項1に記載された発明(以下、「補正後発明」ともいう。)は、以下のとおり、上記刊行物4に記載された発明および上記刊行物1に記載された発明および下記刊行物6ならびに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126号第5項の規定に違反するから、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

補正後の請求項1に記載された発明(補正後発明)が、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由は、以下のとおりである。

《特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由》
後記【第4】での検討(特に[2]刊行物4を主引用例として)を踏まえた上検討する。

(a)補正前請求項1について追加される特定事項
補正前請求項1について追加される特定事項は、以下の2点である。
(i)追加特定事項A
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、なされる前記メモリに記録されるデータの一覧の表示が、「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」なされる点
この「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」は、本願明細書の段落0049、0055の記載に照らせば、「データを間引いてコピー」することをも含む意味と解される。
(ii)追加特定事項B
「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段」

(b)対比(刊行物4を主引用発明として)
補正後発明(上記追加される特定事項)と刊行物4発明{刊行物4(特開平7-306933号公報)に記載された発明}とを対比する。

(b1)追加特定事項Aについて
後記【第4】[2](1)(c)での検討結果によれば、は、前記入力装置による特定の操作がされると、外部メモリ2(補正後発明の「メモリ」)に記録される圧縮標準画像データに対応する縮小画像データの画面が一覧表示されるものであるところ、「縮小画像データ」は、「間引いたデータ」といえるから、「間引いたデータ」を用いてなされるとはいえるものの、画像読取装置3を介して画像データ処理手段4(コンピュータ)に取り込まれるものは「縮小画像データ」ではないから、「間引いたデータを前記コンピュータに転送」されるものとはいえない。
相違が認められる。
(b2)追加特定事項Bについて
後掲(K14)「メモリーカードウィンドウ内に表示されているネガ画面を選択し、次に他のアルバムウィンドウの矩形を選択すると、自動的にネガフィルムのコマ状の枠取りのないフォト画面として他のアルバムの矩形内に複写されるようになっている。」における、複写され保存される画像データは、アルバムとして残す画像であることから、(圧縮)標準画像と認め得、したがって、「間引いていないデータを転送する」ものといえ、
また、「アルバム」は記憶装置4b(補正後発明の「記録装置」に相当する。)の特定の保存領域のことであるから、「前記記録装置に転送する」ものといえる。
以上によれば、刊行物4発明は上記追加特定事項Bに相当する手段を有しているといえ、この点において補正後発明と相違しない。

(c)一致点・相違点
上記(b1)(b2)および、後記【第4】での検討によれば、
一致点 補正後発明と刊行物4発明は、後記【第4】[2](2)記載の一致点に加え、上記追加特定事項Bでも一致(追加の一致点)する。
相違点 後記【第4】[2](2)記載の相違点1?3に加え、下記追加の相違点(相違点4)でも相違する。
記(追加の一致点)
「前記メモリに記録されるデータを前記記録装置に保存する場合には、前記メモリから間引いていないデータを前記記録装置に転送するデータ転送手段」を有する点。
記(追加の相違点(相違点4))
「前記入力装置による特定の操作がされると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」が、
補正後発明では、
「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」なされるのに対して、
刊行物4発明では、間引いたデータを用いてなされるものの、そのように
「前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」なされるとはしていない点。

(c)相違点の判断
(c1)相違点1?3について
後記する判断と同じく、当業者が容易になし得ることである。
(c2)相違点4について
〈周知技術〉
メモリに、原画像データとともに、原画像を間引いた縮小画像も記録しておき、縮小画像を検索や一覧表示に使用できるようすることは周知である。これには、例えば、下記周知例3?5、7等が参照される。
また、メモリに記録された画像データについて、データを間引いて転送すること(周知例6)や、間引いた縮小データを転送すること(周知例3、4)も周知である。
〈刊行物6記載技術〉
新たに引用する特開平7-245723号公報(以下「刊行物6」という)には、
ディジタルスチルカメラのメモリカードに、主画像と、主画像を間引いた縮小画像を対応して記録しておき、他の画像取扱装置に伝送する場合、まず縮小画像を送信し、受信側からの必要な画像指定情報を受信後、指定された間引いていない主画像を伝送するようにすること
が記載されている(特に段落0097?0099、図36)。
〈判断〉
後記(【第4】[2](3)(a))するように、刊行物1記載技術を参照することにより、刊行物4発明が使用する「画像読取装置3」を用いず、撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットをコンピュータに接続する構成とすることは当業者が容易になし得るところ、
そのようにしたとき、一覧表示は、同表示から記録装置に(間引かない)標準画像を保存する画像を確認するためのものでもあり、縮小画像(間引いたデータ)があれば十分であることは当業者に自明であるから、
上記周知技術、刊行物6記載技術を参照すれば、補正後発明に係る上記相違点4の構成とすること、すなわち、刊行物4発明において、「前記入力装置による特定の操作がされると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」のに、前記メモリから間引いたデータを前記コンピュータに転送して、」なされるように変更することは、当業者が容易になし得ることである。
また、刊行物4の(K15)に、画像受信時は、送信されてきたフォト画面又はネガ画面、すなわち縮小画像を見て確認した後に保存するので「標準画像データを保存する前に送信元画面及びフォト画面又はネガ画面を確認できるので無駄な画像データを保存してしまうことがなくなる。」との記載があることからも、上記変更への示唆があると言うべきである。

記(刊行物)
刊行物6:特開平7-245723号公報(特許請求の範囲、段落0003?0005、0028?0049、0097?0099、00136?0137)

記(周知例)
周知例3:特開平7-245723号公報
周知例4:特開平5-167973号公報(特許請求の範囲、段落0002?0003、0017、0033?0036等参照)
周知例5:特開平5-22682号公報
周知例6:特開平5-167973号公報
周知例7:特開平7-184160号公報(段落0020等)

(c3)まとめ
相違点1?相違点4に係る補正後発明の構成は、いずれも当業者に想到容易でない格別のものであるとはいえず、また、補正後発明の構成を全体としてみても格別のものはなく、その技術的効果も、上記刊行物4、刊行物1および刊行物6の記載及び周知慣用技術から当業者に予測し得る範囲内のものである。

(d)まとめ (当審の判断)
補正後発明は、刊行物4に記載された発明、刊行物1に記載された発明、および刊行物6に記載された発明並びに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

【第3】本願発明

平成17年7月20日付けの手続補正は上記のとおり却下する。
本願の請求項1から請求項10までに係る発明は、本願明細書及び図面(平成15年1月28日付および平成17年2月4日付の手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1から請求項10までに記載した事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、本願発明ともいう)は、下記(上記補正前の請求項1に同じ、再掲)のとおりである。

記(本願発明)
撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムであって、
前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段と、
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段とを有することを特徴とする撮像システム。

【第4】当審の判断

[1]引用刊行物の記載

(1)刊行物4(特開平07-306933号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物4には、以下の記載がある。

〈請求項1〉
(K1)「【請求項1】 映像信号をデジタル化された画像データとして外部メモリに記録するデジタル電子スチルカメラと、該外部メモリに記録された画像データを読み取る画像読取手段と、画像データを画面表示する表示装置及び画像データを保存する記憶装置及び画像データを圧縮して縮小画像データを作る圧縮/伸長器とを有する画像データ処理手段と、画像データの送受信を行う通信手段とからなる通信機能を持つ画像データのファイリングシステムであって、
前記外部メモリに記録された複数の画像データにそれぞれ対応する縮小画像データをネガフイルムのコマ状の枠取りがされたネガ画面として前記表示装置に一覧表示し、前記記憶装置の画像データの保存領域をアルバムとして表示し、該保存領域に保存された複数の画像データにそれぞれ対応する縮小画像データをアルバムに貼られたフォト画面として前記表示手段に一覧表示し、ネガ画面またはフォト画面を選択してこれに対応する画像データを前記記録装置に対して複写・削除することによって、画像データの分類・整理・表示を行うことを特徴とする通信機能を持つ画像データのファイリングシステム。」(請求項1)

〈産業上の利用分野〉
(K2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は通信機能を持つ画像データのファイリングシステムに関する。」

〈発明が解決しようとする問題点〉
「【0004】
(K3)「【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような背景の下で、あたかも写真を撮るようにデジタル画像データを記録するというデジタル電子スチルカメラの特性に着眼し、写真として認識できるような比較的小さな画面を一覧表示したうえで、その表示方法や操作方法に最大限の工夫を加えることにより、コンピュータを用いたデータファイリングや通信の専門知識や未熟な者でも容易に扱うことのできる、通信機能を持つ画像データのファイリングシステムを提供することを目的としている。」

〈課題を解決するための手段〉
(K4)「【0005】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために本発明は、日常的な写真の取扱いと視覚的感覚的に一致するよう縮小画像データを用いて比較的小さい画面を常に一覧表示させながら縮小画像データが現在どのような記録状態にあるかを直観させるようにしている。
【0006】具体的には、映像信号をデジタル化された画像データとして外部メモリに記録するデジタル電子スチルカメラと、該外部メモリに記録された画像データを読み取る画像読取手段と、画像データを画面表示する表示装置及び画像データを保存する記憶装置及び画像データを圧縮して縮小画像データを作る圧縮/伸長器とを有する画像データ処理手段と、画像データの送受信を行う通信手段とからなる通信機能を持つ画像データのファイリングシステムであって、前記外部メモリに記録された複数の画像データにそれぞれ対応する縮小画像データをネガフイルムのコマ状の枠取りがされたネガ画面として前記表示装置に一覧表示し、前記記憶装置の画像データの保存領域をアルバムとして表示し、該保存領域に保存された複数の画像データにそれぞれ対応する縮小画像データをアルバムに貼られたフォト画面として前記表示手段に一覧表示し、ネガ画面またはフォト画面を選択してこれに対応する画像データを前記記録装置に対して複写・削除することによって、画像データの分類・整理・表示を行うようにしたものである。」

〈実施例〉
(K5)「【0013】【実施例】
第1実施例(図1?図8)
図1に本発明に係る一実施例の構成例を示す。本発明の通信機能を持つ画像データのファイリングシステムは、デジタル電子スチルカメラ1と、外部メモリ2と、画像読取装置3と、表示装置4a、記憶装置4b、圧縮/伸長器4c及び制御・処理装置4dを有する画像データ処理手段4と、データの送受信を行う通信手段5とから構成されている。
【0014】デジタル電子スチルカメラ1は、CCDによりアナログ映像信号として変換された被写体の映像をデジタル化された画像データに変換するものである。このデジタル電子スチルカメラ1で生成される画像データは、1画像当たり48KBの非常にコンパクトな容量に圧縮された形式となっている(なお、以下この容量の画像データを「圧縮標準画像データ」と称する)。外部メモリ2は、デジタル電子スチルカメラ1にて得られた画像データを記録するもので、この例ではデジタル電子スチルカメラ1に着脱自在に取り付けられた、書換え可能なカード式の不揮発性メモリである。画像読取装置3は、外部メモリ2に記録された画像データを読み取って画像データ処理手段4に出力するものである。
【0015】画像データ処理手段4は、この例ではモニタ、ハードディスク、圧縮/伸長器などの周辺機器、本体からなるパーソナルコンピュータを用いている。そして、通信手段5は、インターフェースコンバータ、回線端末装置(DSU)などを備えたデジタル信号を送受信するための公知の通信手段である。」
(K6)「【0016】外部メモリ2に記録された圧縮標準画像データは、画像読取装置3を介して画像データ処理手段4に取り込まれ、圧縮/伸長器4cによって伸長され、後述するネガ画面又はフォト画面の詳細表示用、若しくはフル拡大表示用の標準画像データ(1画像約1MB)となる。さらに、この標準画像データは、圧縮/伸長器4cによって縦横1/8、容量1/64に圧縮され、ネガ画面又はフォト画面若しくは後述する送信先画面又は送信元画面の表示用の縮小画像データ(1画像約1.5KB)となる。この標準画像データ及び対応する縮小画像データは、対応を示す識別子が付けられこれら画像に付随させる文字データと共に記憶装置4bに設けられた後述するアルバム保存領域又は受信アルバム保存領域に保存される。さらに、送信先画面又は送信元画面の表示用の縮小画像データは、この画像に付随させる送信先文字データと共に記憶装置4bに設けられた後述するアドレス帳保存領域に保存される。なお、通信手段5を介してデータの通信を行う時は送受信時間の節約のために標準画像データの状態では送受信を行わず、圧縮標準画像データ、縮小画像データの状態で送受信するようになっている。」
(K7)「【0017】図2?4は本実施例の画像データ処理手段4における操作フローの概略を示す図である。このシステムを起動すると、先ず表示装置4aに画像データの保存領域の設定を促すダイアログが表示される。このダイアログでは、既に記憶装置4b内に設定されている画像データの保存領域をアルバム保存領域としてそのアルバム名を一覧表示し、アルバム名を選択するとアルバムウィンドウが開き、その保存領域内の圧縮標準画像データに対応する縮小画像データを用いて後述するフォト画面が表示されるようになっている。また、記憶装置4b内にアルバム保存領域が設定されていない場合には、アルバム名の入力を促してアルバム保存領域を設定するようになっている。このように画像データの保存領域をアルバムとして扱い、表示するようにしているので、写真アルバムを開くという日常の感覚と一致して操作を行うことができる」
(K8)「【0018】なお、ここで表示装置4aの画面上段に『アルバム』、『メモリーカード(なお、メモリーカードとは外部メモリ2を意味する)』、『アドレス帳』、『アドレス帳作成』の表示がなされ、これらを指定することにより、メニュー選択をすることができる。メニュー選択すると、上記のアルバムウィンドウとは別途にアルバムウィンドウ、メモリーカードウィンドウ又はアドレス帳ウィンドウが表示され、それぞれのメニューに対する操作に移ることができるが、これについては後述する」
(K9)「【0019】図5にアルバムウィンドウの一例を示す。アルバムウィンドウの上側枠内にはアルバム名が表示され、アルバムウィンドウ内には『アルバム作成』、『名称変更』、『削除』の機能ボタン、その下に上下2段に分かれて10個の矩形が表示され、この矩形内に縮小画像データの画面(以下、「フォト画面」とする)が一覧表示される。すなわちこのシステムの利用者は、アルバム名を選択しウィンドウを開くとフォト画面が一覧表示されるので、アルバムを開いて写真を見るという日常的な作業と視覚的感覚的に一致した操作に従って画像データを閲覧することができるようになっている。
【0020】また、同図の矩形の枠線だけが示された部分は、この保存領域に画像データが10個以下しかないことを表している。さらに、また、矩形内の写真アルバムを模した図案(以下、アルバムマークと称する)は、記憶装置4b内の階層構造における下位階層に存在する画像データの保存領域を示し、矩形内にさらに小さく分類されたアルバムがあることを視覚的に表している。」
(K10)「【0023】そして、アルバムウィンドウ内に表示されているフォト画面またはアルバムマークを、他の所定のマウス操作により選択するとフォト画面の詳細表示またはアルバムウィンドウの表示を行うことができる。フォト画面を選択した場合は、フォト画面の縦横4倍の大きさの画像および文字データ表示領域および『拡大』、『終了』の機能ボタンを持つフォト詳細ダイアログが表示される。文字データ表示領域には文字データを入力することができ、この文字データはフォト画面の画像データと共に記憶装置4bに記憶され、このフォト画面のフォト詳細ダイアログを表示したときには常に表示されるようになっている。また、『拡大』機能ボタンを選択すると、このフォト詳細ダイアログの画像をさらに縦横2倍、すなわちフォト画面の縦横4倍のサイズ(前述した標準画像データが表示装置4aの画面にフル表示される。)で画像だけを表示し、拡大された画像に所定のマウス操作を行うとフォト詳細ダイアログに戻るようになっている。『終了』を選択した場合にはフォト詳細ダイアログが閉じられ、元のアルバムウィンドウの表示に戻る。このように通常は比較的小さなフォト画面で一覧表示し、必要時のみに標準詳細画像として見ることができるようになっているため、一度に沢山の画像を見比べることができ、分類・整理などを効率よく行うことができる。
【0024】また、アルバムマークを選択してアルバムウィンドウを表示させた場合は、下位階層のアルバム保存領域にある画像データのフォト画面とさらに下位階層に位置するアルバムマークが表示される。すなわち、システムの利用者はアルバムウィンドウ内のアルバムマークをマウス操作で選択して開くだけで、階層構造を意識せずに下位階層への移行を行うことができる。なお、新たに開かれたアルバムウィンドウ内での機能およびその操作は先のアルバムウィンドウと同じであるため説明を省略する。」
(K11)「【0025】さらに、他のアルバムウィンドウを複数表示させた状態で、フォト画面またはアルバムマークを選択し、次に、他のアルバムウィンドウの空いた矩形を選択するとフォト画面またはアルバムマークを他のアルバムの矩形内に移動させることができる。この例では、この選択をマウスのドラッグ(マウスのクリックボタンを押したままマウスを移動させること)とドロップ(押されていたマウスのクリックボタンを離すこと)により行うようにしている。すなわち、一つまたは複数の画像データを異なる保存領域間で簡単に移動することができ、使用者は画像データをあたかも写真アルバムに写真を貼り替える感覚で分類・整理することができるようになっている。」
(K12)「【0026】図3を参照してメニュー選択をした場合について説明する。メニュー選択で『アルバム』を指定するとアルバムメニューが示され、ここで『開く』を選択すると新たに別なアルバムウィンドウが開かれ、『閉じる』を選択すると一番最後に開かれたアルバムウィンドウが閉じられるようになっている。ここで新たに開かれたアルバムウィンドウ内での機能およびその操作も先のアルバムウィンドウと同じであるため説明を省略する。そして『終了』を選択した場合には、システム終了となる。」
(K13)【0027】また、『メモリーカード』を指定するとメモリーカードメニューが示され、ここで『開く』を選択すると図6に示すメモリーカードウィンドウが開かれ、『閉じる』を選択するとメモリーカードウィンドウが閉じられる。メモリーカードウィンドウ内には『削除』の機能ボタン、その下に上下2段に分かれて10個のネガフイルムのこま送り用の穴を模した枠取りがなされた矩形が表示され、この矩形内には画像読取装置3で読み取られた外部メモリ2内の画像データに対応する縮小画像データの画面(以下、ネガ画面とする)が一覧表示される。このように、外部メモリ2に記録され記憶装置4bに保存される前の画像データをネガ画面として示しているため、システムの利用者はアルバムに貼られる前の状態、すなわち記憶装置4bに保存される前であるということを視覚的感覚的に認識することができるようになっている。なお、外部メモリ2内の画像データが10枚以下の場合には、枠取りのみが表示される。」
(K14)「【0029】さらに、メモリーカードウィンドウ内に表示されているネガ画面を選択し、次に他のアルバムウィンドウの矩形を選択すると、自動的にネガフィルムのコマ状の枠取りのないフォト画面として他のアルバムの矩形内に複写されるようになっている。すなわち、利用者は、あたかもネガを焼き付け写真とした後、アルバムに貼付して分類・整理するという感覚で画像データのファイリングを行うことができる。」
(K15)「【0033】また、本システムは、受信を常に監視する常駐タイプのプログラムを有しているので画像データの受信を電話の受信音で知らせることができるようになっており、この受信音が鳴ったときにアドレス帳メニューから受信を選択すると送信元画面及び送信されてきたフォト画面又はネガ画面と共にメッセージが表示される。そして、その画面を見て必要と判断した時には、『受信する』を選択すれば送信されてきた標準画像データが記憶装置4b内にあらかじめ設けた受信専用の画像データ保存領域(以下、「受信アルバム保存領域」とする)に保存される。このように標準画像データを保存する前に送信元画面及びフォト画面又はネガ画面を確認できるので無駄な画像データを保存してしまうことがなくなる。なお、受信アルバム保存領域は前述したアルバム保存領域と実質上同じもので、設定する保存領域の階層位置に応じて、アルバムウィンドウを開けたときにその中の矩形内にアルバムマークで示されるようになっている。」

(2)刊行物1(特開平7-322106号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、以下の記載がある。

〈産業上の利用分野〉
(M1)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ディジタル電子スチルカメラに関し、特にメモリカード等の記憶媒体または外部制御装置との接続ケーブルとが共通に接続可能な電子スチルカメラの構成に関する。」

〈発明が解決しようとする課題〉
(M2)「【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術においては、外部記憶媒体としてPC(パソコン)等の外部制御機器に直結可能なPCカードを使用する事が多い。このPCカードとしてはSRAMカード、フラッシュメモリカード、1.8"HDD等が実用化されている。SRAMカードの場合は、SRAMチップ自体が小容量で且つ高価である。
【0011】フラッシュメモリカードの場合は、大容量化の可能性はあるものの、書き込み時間が遅く画像ファイルのような大容量のデータを高速に扱うためには、メモリ以外に制御回路が必要となり、結果としてフラッシュメモリカードを制御するためには全体の価格が上昇してしまうこととなる。
【0012】また、HDD装置を外部記憶媒体として考えた場合も同様に、記憶媒体自体が高価なものとなってしまう。」

〈実施例〉
(M3)「【0014】
【実施例】以下、図面を用いて本発明の一実施例を説明する。図において同じ部位は同じ符号で示す。図1は本発明の実施例である電子スチルカメラの具体的な構成ブロック図である。図において、1はレンズ、2はCCD等の撮像素子、3は撮像素子からの撮像信号、4は映像信号を作成する信号処理回路、5は信号処理回路4により得られる映像信号、6は映像信号5をディジタル信号に変換するA/D変換器、7はコモンメモリ11の画像データの制御を行うメモリコントローラー、8はメモリコントローラー7とコモンメモリ11との間のデータバス、9は同アドレスバス、10は同制御信号バス、11は複数枚分の画像データを記憶可能なコモンメモリ、・・・(以下略)
【0015】また、図2は図1のカメラに脱着可能なメモリカードの構成図であり、図6の従来のメモリカードにカードの判別ツメ68が追加されたものである。図において、50はメモリカード側データバス、51は同アドレスバス、52は同制御信号バス、53はコモンメモリ61の画像データを制御するメモリコントローラー、・・・(中略)・・・61は複数枚分の画像データを記憶可能なコモンメモリ、62は電源、63は電源電圧、64は電源制御回路、65、66、67は電源制御回路64からの電源電圧、68はこのカードはメモリカードであるという事をカメラ側が判別するためのツメ、69は50?68のデバイスおよび信号線を格納するケースである。」
(M4)「【0016】また、図3は図1の電子スチルカメラに装着可能な接続ケーブルと外部制御機器との接続構成図である。図において、100は接続ケーブル側データバス、101は同アドレスバス、102は同制御信号バス、120はデータバス100をスルーで外部出力した信号線、121はアドレスバス101をスルーで外部出力した信号線、122は制御信号バス102をスルーで外部出力した信号線、118はこのカードは接続ケーブルであるという事をカメラ側が判別するためのツメ、119は100?122のデバイスおよび信号線を格納するケース、123はパソコンなどの外部制御機器である。」
(M5)「【0019】メモリカード未装着時は、画像の記録/再生/消去をカメラ内コモンメモリを通して制御する。コモンメモリ11をアクセスするには制御信号バス10を介して動作モードをコモンメモリに伝えた後、アドレスバス9を介してアドレスを指定しデータバス8を介してデータの入出力を行う。ここでカメラ内コモンメモリ11はメモリカード内のコモンメモリと同様の通常DOS FATファイルシステムで記述されるように構成される。
【0020】接続ケーブル装着時、メモリコントローラー7は接続ケーブルが装着されている時には外部制御機器からの制御信号/アドレス信号に従い動作し、データバスを介してデータの入出力を行う。メモリコントローラー7はコモンメモリ11をアクセスする時にはまずアトリビュートメモリ15をアクセスしコモンメモリ11の属性情報(アクセスタイム、メモリ種別等のR/W条件)を外部制御機器に転送した後、その属性情報に従ってコモンメモリ11が外部制御機器からアクセスされ、接続ケーブル装着時はDOS FATファイルシステムで記述された内蔵コモンメモリに対して外部制御機器からアクセスされるように構成される」
(M6)「【0023】ここで、メモリカード内のコモンメモリ61は通常DOS FATファイルシステムで記述され,図4に示されるようにセクタ0から順にシステム予約領域、FAT、ディレクトリ、データ領域から構成される。カメラCPU16はディレクトリとFATを管理しながらコモンメモリ61へのリード/ライト制御をメモリコントローラー7,53を通して行う。・・・(以下略)
【0024】接続ケーブル装着時には、接続ケーブル内のデータバス100/アドレスバス101/制御信号バス102は接続ケーブルのケース119の内部をいかなる信号処理も受けずにそのままスルーでデータバス120/アドレスバス121/制御信号バス122として外部に出力される。外部出力されたバス120/121/122はパソコンなどの外部制御機器123と接続されている。」
(M7)「【0026】以上のような動作を行う事により、メモリカード装着時にはカメラ内マイコンから出力される制御信号に従ってメモリカード内のコモンメモリへデータをアクセスし、接続ケーブル装着時には外部装置から出力される制御信号に従ってカメラ内のコモンメモリへデータをアクセスする映像装置を実現できる。
【0027】また接続ケーブル装着時には外部制御機器はカメラ内コモンメモリ11に対し画像データの書込/読出/消去いずれの事も行う事ができ、さらにディジタル画像データをディジタル映像信号出力24を介してNTSCビデオアウト信号として出力する事も可能である。」
(M8)「【0030】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、カード型記憶媒体を使用可能で、且つ、内蔵された画像記憶手段をカード型記憶媒体と同様に扱う(すなわち、PC等の外部制御機器からみると、あたかも電子スチルカメラ自体が安価なメモリカード型記憶媒体として動作する)事が可能となり、ユーザーは、自分の目的に応じた記憶媒体を選択可能となる。
【0031】また、比較的少ない記録枚数で良い場合には、カメラに内蔵された安価な記憶媒体のみで充分であり、撮影後、カメラ内部の画像データを、PCカードインターフェースを通してPC等の外部制御機器に転送すれば良い。
【0032】また、記録枚数の多い撮影の場合には、フラッシュメモリカード、HDD等の大容量記憶が可能なPCカードに画像を記録させ、撮影後は、PCカードを直接PC等の外部制御機器に装着し、画像データの転送を行う事が可能となる。
【0033】またPC等の外部制御機器で加工した画像データを、直接、カメラに内蔵された記憶手段に転送し、TV上で見る事も可能となる。」

[2]刊行物4を主引用例として

(1)対比(対応関係)

〈引用発明4〉
上記刊行物4には、名称を「通信機能を持つ画像データのファイリングシステム」とする発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されており、前掲(K3)を目的とし、前掲(K1)(K4)を要部とするものであって、その詳細を第1実施例(前掲(K5)?(K13)、第1図?第8図)のようにしたものである。

本願発明と引用発明4とを対比すると、以下の対応が認められる。

(a)前提構成、「撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システム」
前掲(K5)によれば、引用発明4では、
「外部メモリ2」は、「デジタル電子スチルカメラ1」に着脱自在に取り付けられ、「デジタル電子スチルカメラ1」にて得られた画像データを記録するものであり(段落0014)、
画像読取装置3は、「外部メモリ2」に記録された画像データを読み取って「画像データ処理手段4」に出力するものであり(段落0014)、
「画像データ処理手段4」は、「外部メモリ2と、画像読取装置3と、表示装置4a、記憶装置4b、圧縮/伸長器4c及び制御・処理装置4dを有」し(段落0013)、「モニタ、ハードディスク、圧縮/伸長器などの周辺機器、本体からなるパーソナルコンピュータ」を用いている(段落0015)。
引用発明4の「外部メモリ2」は、本願発明でいう「撮像したデータを記録するメモリ」に、引用発明4の「デジタル電子スチルカメラ1」は、本願発明でいう「撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニット」にそれぞれ相当する。
また、引用発明4の「表示装置4a」または「モニタ」は、本願発明の「表示装置」に、引用発明4の「記憶装置4b」または「ハードディスク」は、本願発明の「記録装置」に相当する。引用発明4の「パーソナルコンピュータ」または「画像データ処理手段4」は、前掲(K11)の「マウス」を含む「入力装置」も有していることも明らかである。
したがって、引用発明4の「パーソナルコンピュータ」または「画像データ処理手段4」は、本願発明でいう「記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータ」といい得るものであり、これと「デジタル電子スチルカメラ1」と画像読取装置3を合わせたものは、「撮像システム」といい得るものである。
もっとも、引用発明4では、外部メモリ2に記録された画像データは、画像読取装置3を介して画像データ処理手段4(パーソナルコンピュータ)に取り込まれる、すなわち、画像データ処理手段4(パーソナルコンピュータ)は画像読取装置3を介して外部メモリ2に接続されるのに対して、本願発明では、コンピュータは「(メモリを備える)前記撮像ユニットが接続される」としており、この点において相違が認められる。
以上によれば、引用発明4は、「撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システム」である点で本願発明と一致し、
本願発明では、コンピュータは「(メモリを備える)前記撮像ユニットが接続される」とするのに対して、引用発明4では、コンピュータは「画像読取装置3を介して外部メモリ2に接続される」点で相違する。

(b)「前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段」
本願発明の上記「アイコン表示」は、「操作のための表示」といい得るところ、引用発明4は「アイコン表示」するものではないが、後記するように、これに対応する表示として、「操作のための表示」といい得る、メニューの表示(表示装置4aの画面上段の『アルバム』、『メモリーカード』、『アドレス帳』、『アドレス帳作成』の表示)、メモリーカードメニューの表示、アルバムメニューの表示、アルバム名一覧表示をするものである。
したがって、本願発明と引用発明4は、「操作のための表示を制御する制御手段」を有するといい得る点では一致するといえるものの、
「操作のための表示を制御する制御手段」が、本願発明では、「前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段」であるのに対して、引用発明4では、そのような「アイコン表示制御手段」ではない点で相違する。

(c)「前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段」
(c1)前段の「前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」
〈引用発明4のメモリーカードウィンドウ〉
前掲(K6)(K13)、図6によれば、引用発明4では、図6に示されるメモリカードウインドウ内に、画像読取装置3で読み取られた外部メモリ2内の圧縮標準画像データに対応する縮小画像データの画面が一覧表示されるところ、「外部メモリ2」は本願発明でいう「撮像したデータを記録するメモリ」に相当するものであることは前記のとおりであるから、この一覧表示は、本願発明でいう「前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」に相当する。
また、前掲(K8)(K12)(K13)、図2,3,6によれば、このメモリカードウインドウの表示は、表示装置4aの画面上段の『アルバム』、『メモリーカード(なお、メモリーカードとは外部メモリ2を意味する)』、『アドレス帳』、『アドレス帳作成』の表示(段落0018)から、メニュー選択で『メモリーカード』を「指定」し、これにより示されるメモリーカードメニューで『開く』を「選択」することでなされる(段落0027)ところ、そのような「指定」や「選択」の操作が前記「入力装置」でなされることは明らかである。
したがって、引用発明4は、「前記入力装置による特定の操作がされると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」ものということができ、本願発明の「前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、」も「特定の操作がされると、」といえるから、
本願発明と引用発明4とは、「前記入力装置による特定の操作がされると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」点で一致する。
もっとも、その「特定の操作」が、本願発明では、「前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、」であるのに対して、引用発明4では、「メニュー選択で『メモリーカード』を指定し、メモリーカードメニューで『開く』を選択すると、」である点では相違が認められる。
そして、表示装置4aの画面上段の『アルバム』、『メモリーカード』、『アドレス帳』、『アドレス帳作成』の表示、および、メモリーカードメニューの表示は、「操作のための表示」といえ、本願発明でいう「前記撮像ユニットに対応するアイコン」「を前記表示装置に表示する」ことに対応するものである。
(c2)後段の「前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示する」
前掲(K7)(K9)によれば、引用発明4では、図5に示されるように、アルバムウインドウ内に、圧縮標準画像データに対応する縮小画像データを用いてフォト画面が一覧表示されるところ、この圧縮標準画像データは、記憶装置4b(本願発明でいう「記録装置」に相当する)に記録された画像データであって、同記憶装置4b内に設定されている画像データの保存領域(アルバム保存領域)のうちの、選択されたアルバムの保存領域内に記録された画像データ、すなわち、前記記録装置に記録される画像データであって、前記記録装置内の特定の保存領域内に記録されるデータの一覧表示である。
(K7)(K8)(K12)によれば、アルバムウインドウの表示および上記一覧表示は、アルバム名一覧表示からアルバム名を選択することでなされる(段落0017)、または、メニュー選択で『アルバム』を指定し、これにより示されるアルバムメニューで『開く』を選択することでなされる(段落0026)ところ、そのような「指定」や「選択」の操作(前記「特定の操作」とは異なる)が前記「入力装置」でなされることは明らかである。
したがって、引用発明4は、「前記入力装置による(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を表示する」ものということができ、本願発明の「前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、」も「(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、」といえるから、
本願発明と引用発明4とは、「前記入力装置による(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を表示する」点で一致する。
もっとも、引用発明4では、「前記記録装置に記録されるデータの一覧」が、前記記録装置内の特定の保存領域内に記録されるデータの一覧である点では相違が認められ、また、
「(前記特定の操作とは異なる)特定の操作」が、本願発明では、「前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、」であるのに対して、引用発明4では、「メニュー選択で『アルバム』を指定し、アルバムメニューで『開く』を選択すると、」または「アルバム名一覧表示からアルバム名を選択すると、」である点でも相違が認められる。
また、メニュー選択におけるメニューの表示(表示装置4aの画面上段の『アルバム』、『メモリーカード』、『アドレス帳』、『アドレス帳作成』の表示)およびアルバムメニューの表示、またはアルバム名一覧表示は、「操作のための表示」といえ、本願発明でいう「前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示する」ことに対応するものである。
(c3)「一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段」
引用発明4も、一覧を表示装置に表示するよう「制御する手段」を有するといい得るることは明らかである。したがって、「一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段」を有する点において、本願発明と相違するものではない。

(2)一致点・相違点

以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明4との一致点および相違点は、下記のとおりである。

記(一致点)
撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムであって、
操作のための表示を制御する手段と、
前記入力装置による特定の操作がされると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記入力装置による(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段とを有することを特徴とする撮像システム。

記(相違点)
〈相違点1〉
本願発明では、コンピュータは「(前記メモリを備える)前記撮像ユニットが接続される」とするのに対して、
引用発明4では、コンピュータは「画像読取装置3を介して前記メモリに接続される」点。

〈相違点2〉
本願発明は、
「操作のための表示を制御する手段」が、「前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段」であり、
「前記入力装置による特定の操作がされると、」が、「前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、」であり、
「前記入力装置による(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、」が、「前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、」であるのに対して、
引用発明4は、
「操作のための表示を制御する手段」が、「アイコン表示制御手段」ではなく、
「前記入力装置による特定の操作がされると、」が、「メニュー選択で『メモリーカード』を指定し、メモリーカードメニューで『開く』を選択すると、」であり、
「前記入力装置による(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、」が、「メニュー選択で『アルバム』を指定し、アルバムメニューで『開く』を選択すると、」または「アルバム名一覧表示からアルバム名を選択すると、」である点。

〈相違点3〉
「前記記録装置に記録されるデータの一覧」が、
本願発明では、前記記録装置に記録されるデータの一覧であるのに対して、
引用発明4では、前記記録装置内の特定の保存領域内に記録されるデータの一覧である点。

(3)相違点の判断

(a)相違点1について
〈刊行物1記載技術〉
刊行物1には、後記する発明(引用発明1)が記載されており、これによれば、撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットをコンピュータに接続し、コンピュータから、撮像したデータを記録するメモリに記録される画像データを読出し/およびまたは書込みできるようにすることが記載されている。
〈判断〉
引用発明4の「コンピュータは画像読取装置3を介して前記メモリに接続される」とする構成は、コンピュータから、撮像したデータを記録するメモリに記録される画像データを読出すためのコンピュータとの接続態様であるところ、
上記刊行物1記載技術も、同じくそのような接続態様として、「コンピュータは(前記メモリを備える)前記撮像ユニットが接続される」とするものであって引用発明4の上記接続態様に代替適用し得ることは明らかであり、またこれによれば、画像読取装置3が不要となる点でも利点があることも明らかである。
相違点1に係る本願発明の構成は、上記刊行物1記載技術を参照することにより、当業者が容易になし得ることである。

(b)相違点2および相違点3について
〈周知慣用技術〉
一般に、「アイコン」は、アイコンという技術用語が本願出願前既に存在するように周知慣用のものであり、コンピュータ利用技術において、コンピュータが備える/またはコンピュータに接続される各種装置や各種機能等が直感的に把握できるように表示画面上に小さな絵で表示するものである。
そして、コンピュータから読出し/およびまたは書込みする記録装置(ハードディスクドライブ等)毎にそれぞれに対応するアイコンや、記録装置に記録されるデータを階層的にグループ化して分類するディレクトリ(フォルダ)毎にそれぞれに対応するアイコンを表示画面上に表示すること、そのような記録装置やディレクトリ(フォルダ)に対応するアイコンを選択することにより、そのアイコンに対応する記録装置やディレクトリ(フォルダ)に記録されているデータの一覧を表示することも、ユーザーインターフェースとして周知慣用技術に過ぎない。これには、例えば、ウインドウズ3.1等が挙げられる(例えば、下記周知例1参照)。
〈判断〉
上記周知慣用技術を参照し、引用発明4の、「操作のための表示」(メニュー表示、アルバムメニューの表示、またはアルバム名一覧表示)および、「特定の操作」(「指定」や『開く』操作)に、上記周知慣用技術を適用することは当業者が容易に想到することである。
《前記撮像ユニットに対応するアイコン》
そして、引用発明4において、相違点1に係る本願発明の構成としたとき、すなわち、撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットをコンピュータに接続する構成としたとき、
上記周知慣用技術を適用するのに、撮像ユニットが備えるメモリが、コンピュータが備える記録装置とは別の撮像ユニットが備えるメモリであることが直感的に把握し得るアイコンとすることにメリットがあることは容易に想起され、また、撮像ユニットに対応するアイコンを用いること自体も周知であることから、同メモリを意味するアイコンの表示として「撮像ユニットに対応するアイコン」を表示するようにすることも、格別困難なこととはいえない。
すなわち、引用発明4において、前記撮像ユニットに対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段を有し、前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
《前記記録装置に対応するアイコン》
また、引用発明4に上記周知慣用技術を適用するとき、「アルバム」とは、記録装置に記録されている画像データのうちの特定の画像データの集まり(画像データグループ)を入れるディレクトリ(フォルダ)に対応づけられるものであることは自明であるから、「アルバムに対応するアイコン」を表示するようにし、これを選択すると、同アルバム内のデータの一覧を表示する構成することは容易に想起されるところ、
引用発明4は、記録装置に記録される画像データの分類・整理の便宜を図るために、特に、画像データを格納する複数のアルバムを設定しこれを階層的に扱い得るようにしてあるものであるが、そのようにする代わりに、そのような分類・整理のことを考慮せず単純に撮像した画像データを全て記録装置に記録する構成とすることが格別とはいえない。そして、その場合、データが記録されるのは「アルバム」ではなく「記録装置」となるから、「アルバムに対応するアイコン」の代わりに、「前記記録装置に対応するアイコン」を用いることになる。
したがって、引用発明4において、前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段を有し、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する構成とすることは当業者が容易になし得ることである

(c)全体、効果等
以上のように、相違点1、相違点2および相違点3に係る本願発明の構成は、いずれも当業者に想到容易でない格別のものであるとはいえず、また、本願発明の構成を全体としてみても格別のものはなく、引用発明4との相違点1?相違点3を克服して本願発明に至ることは、当業者が容易に想到し得ることである。
その技術的効果も、上記刊行物4および刊行物1の記載及び周知慣用技術から当業者に予測し得る範囲内のものである。

記(周知例)
〈周知例1〉
「Microsoft Windows Version 3.1 Quick ユーザーズガイド」、マイクロソフト株式会社発行、1993年11月25日、第2版第5刷発行、p.4?7、p.18?19、p.108?131
〈周知例2〉
「ASCII」、Vol.15、第3号、1991年3月1日、「特集 Windows3.0とは何か」、株式会社アスキー,p.229?p.237

(4)まとめ (当審の判断)
本願発明は、刊行物4に記載された発明および刊行物1に記載された発明並びに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[3]刊行物1を主引用例として

(1)対比(対応関係)

〈引用発明1〉
上記刊行物1には、ディジタル電子スチルカメラに関し、特にメモリカード等の記憶媒体または外部制御装置との接続ケーブルとが共通に接続可能な電子スチルカメラの構成に関するものが記載されており{(M1)}、
前掲(M2)の課題を解決するため、前掲(M3)?(M8)によれば、以下の発明(以下、「引用発明1」という。」)が記載されていると認められる。
引用発明1「メモリカード未装着で、電子スチルカメラに装着可能な接続ケーブルとPC(パソコン)等の外部制御機器とを接続ケーブルで接続した接続ケーブル装着時、
DOS FATファイルシステムで記述されたカメラ内蔵コモンメモリ11に対して外部制御機器(パソコン)からアクセスされるようにし、
カメラ内コモンメモリ11に対し画像データの書込/読出/消去いずれの事も行う事ができ、撮影後はカメラ内部の画像データを、PCカードインターフェースを通してPC等の外部制御機器に転送し得る構成とすることにより、
内蔵された画像記憶手段(内蔵コモンメモリ11)をカード型記憶媒体と同様に扱う(すなわち、PC等の外部制御機器からみると、あたかも電子スチルカメラ自体が安価なメモリカード型記憶媒体として動作する)事が可能となるようにした発明」

本願発明と引用発明1とを対比すると、以下の対応が認められる。
(a)前提構成、「撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システム」
引用発明1の「内蔵コモンメモリ11」、「電子スチルカメラ」、「パソコン」(「PC」)は、それぞれ、本願発明でいう「撮像したデータを記録するメモリ」、「撮像ユニット」、「コンピュータ」に相当する。
引用発明1の「パソコン」(「PC」)は、「電子スチルカメラ」が接続されるものであり、一般にパソコン(PC)は、「記録装置」、「表示装置」および「入力装置」を備えるものである。
そして、これら「記録装置」、「表示装置」および「入力装置」を備える「パソコン」(「PC」)と「電子スチルカメラ」を合わせたものは、「撮像システム」といい得るものである。
以上のことから、引用発明1も「撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、前記撮像ユニットが接続されるとともに、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システム」といい得るものであり、この点において本願発明との相違は認められない。

(b)「アイコン表示制御手段」、「データ一覧表示制御手段」」
引用発明1は、上記いずれの表示制御手段も有さず、この点において、本願発明と相違する。

(2)一致点・相違点
以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明1との一致点および相違点は、下記のとおりである。

記(一致点)
撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムである点。

記(相違点)
本願発明が、
前記撮像ユニットに対応するアイコンおよび前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段と、
前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記記録装置に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するよう制御するデータ一覧表示制御手段とを有するのに対して、
引用発明1は、そのような、アイコン表示制御手段、データ一覧表示制御手段をいずれも有さない点

(3)相違点の判断

(a)周知慣用技術
前記([2](3)(b))したように、
一般に、「アイコン」は、アイコンという技術用語が本願出願前既に存在するように周知慣用のものであり、コンピュータ利用技術において、コンピュータが備える/またはコンピュータに接続される各種装置や各種機能等が直感的に把握できるように表示画面上に小さな絵で表示するものである。
そして、コンピュータから読み込み/およびまたは書き込みする記録装置(ハードディスクドライブ等)毎にそれぞれに対応するアイコンや、記録装置に記録されるデータを階層的にグループ化して分類するディレクトリ(フォルダ)毎にそれぞれに対応するアイコンを表示画面上に表示すること、そのような記録装置やディレクトリ(フォルダ)に対応するアイコンを選択することにより、そのアイコンに対応する記録装置やディレクトリ(フォルダ)に記録されているデータの一覧を表示することも、ユーザーインターフェースとして周知慣用技術に過ぎない。これには、例えば、ウインドウズ3.1等が挙げられる(例えば、上記周知例1参照)。
また、このようなアイコンを用いたユーザーインターフェースにおいて、(データ等の)ファイルを記録装置(やディレクトリ(フォルダ))間で移動やコピーするのに、ファイルのアイコンを記録装置のアイコンやウィンドウ内へのドラッグして行い得るようにすることも周知慣用技術にすぎない。 これには、例えば、上記周知例1(特にp.19)や上記周知例2(特にp.236,237)が参照される。

(b)刊行物4記載技術
刊行物4には、前記したように、
撮像したデータを記録するメモリを備える撮像ユニットと、画像読取装置3と、記録装置、表示装置および入力装置を備えるコンピュータとを含む撮像システムであって、コンピュータは画像読取装置3を介して外部メモリ2に接続され、入力装置による特定の操作がされると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示するとともに、入力装置による(前記特定の操作とは異なる)特定の操作がされると、前記記録装置内の特定の保存領域内に記録されるデータの一覧を前記表示装置に表示するようにすることが記載されている。

(c)判断
引用発明1は、カメラ内蔵コモンメモリ11に対して外部制御機器(パソコン)からアクセスされるようにし、撮像ユニットが備えるメモリ(カメラ内コモンメモリ11)に対し画像データの書込/読出/消去等を行い得るものであり、また、撮影後はカメラ内部の画像データを、PCカードインターフェースを通してPC等の外部制御機器に転送し得るものであるから、
そのような画像データの書込/読出/消去や、転送すなわちコピーを行う上での確認や操作等のために、上記周知慣用技術のアイコン表示およびアイコン選択によるデータ一覧表示があれば便利であることや、上記刊行物4記載技術からみてもデータ一覧表示があれば便利であることは当業者に自明であり、したがって、引用発明1に上記周知慣用技術を適用することは当業者が容易に想到することである。
(c1)前記撮像ユニットに対応するアイコンの表示、選択
上記適用を図る時、撮像ユニットが備えるメモリが、コンピュータが備える記録装置とは別の撮像ユニットが備えるメモリであることが直感的に把握し得るアイコンとすることにメリットであることは容易に想起され、また、撮像ユニットに対応するアイコンを用いる自体も周知であることから、同メモリを意味するアイコンの表示として「撮像ユニットに対応するアイコン」を表示するようにすることも、格別困難なこととはいえない。
すなわち、引用発明1において、「前記撮像ユニットに対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段を有し、前記撮像ユニットに対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
(c2)前記記録装置に対応するアイコンの表示、選択
上記適用を図る時、「撮影後はカメラ内部の画像データを、PCカードインターフェースを通してPC等の外部制御機器に転送」する転送先としてコンピュータが備える前記記録装置とすることはごく普通に想定されることにすぎないから、引用発明1において、前記記録装置に対応するアイコンを前記表示装置に表示するよう制御するアイコン表示制御手段を有し、前記記録装置に対応するアイコンが前記入力装置により選択されると、前記メモリに記録されるデータの一覧を表示する」構成とすることは当業者が容易になし得ることである
(c3)まとめ(相違点)
以上によれば、引用発明1に、上記相違点に係る本願発明の「アイコン表示制御手段」および「データ一覧表示制御手段」を付加して本願発明に至ることは、当業者が容易になし得ることである。

(4)効果等
以上のように、上記相違点に係る本願発明の構成は、当業者に想到容易でない格別のものであるとはいえず、また、本願発明の構成を全体としてみても格別のものはなく、その技術的効果も、上記刊行物1および刊行物4の記載並びに周知慣用技術から当業者に予測し得る範囲内のものである。

[4]まとめ(当審の判断)
刊行物4を主引用例としても、刊行物1を主引用例としても、本願発明は、刊行物4に記載された発明および刊行物1に記載された発明並びに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【第5】むすび
以上、本願の請求項1に係る発明は、刊行物4に記載された発明および刊行物1に記載された発明並びに周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、残る請求項2?10について特に検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-16 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-18 
出願番号 特願平8-13056
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
P 1 8・ 572- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清田 健一益戸 宏  
特許庁審判長 乾 雅浩
特許庁審判官 奥村 元宏
岩井 健二
発明の名称 撮像システム及び撮像システムの制御方法  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 野口 忠夫  

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