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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1185501
審判番号 不服2006-5756  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-29 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 平成 9年特許願第 71398号「ヘッド装置及び記録及び/又は再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年10月 9日出願公開、特開平10-269641〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯、本願発明
本願は、平成9年3月25日の出願であって、平成17年7月11日付けで手続補正書が提出されたが、平成18月2月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年3月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年7月11日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「光学ヘッドと磁気ヘッドを有し、ディスク状記録媒体に対する記録又は再生時に、前記光学ヘッドと前記磁気ヘッドがディスク状記録媒体を介して対向する状態とされ、かつ前記磁気ヘッドはディスク状記録媒体に対して負荷を与える状態とされるヘッド装置において、
前記磁気ヘッドがディスク状記録媒体に与える負荷が、前記光学ヘッドから前記ディスク状記録媒体に照射されるレーザ光の入射角度の許容範囲と、ディスク状記録媒体の厚さと、ディスク状記録媒体の半径とを用いて算出される上限値以内に設定されていることを特徴とするヘッド装置。」

2 引用例
(1)原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-84308号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。)
(ア) 「【請求項4】実質的に剛性である支持アーム、およびこの支持アームに基部が取り付けられたサスペンションを有し、このサスペンションが、全体として長尺な板状であって、支持体に取り付けられる基部、この基部からほぼ平行に延びる2つのサスペンションアームを有する二股状部、およびこの二股状部の前記2つのサスペンションアームのそれぞれの内側縁から内方に、該サスペンションアームとほぼ直交する方向に延びる2つのサスペンションパーツを備え、記録媒体と摺動接触するスライダが前記2つのサスペンションパーツの間に渡る状態で取り付けられていることを特徴とする摺動型磁気ヘッド。
【請求項6】サスペンションのバネ荷重が3gf以下に設定されている請求項4または5の摺動型磁気ヘッド。
【請求項13】前記記録媒体が光磁気記録媒体である請求項8ないし12のいずれかの摺動型磁気ヘッド。」(特許請求の範囲、請求項4、6、13)
(イ) 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、摺動型磁気ヘッド用サスペンション、およびこのサスペンションによって支持された光磁気記録媒体や磁気記録媒体などの駆動装置に用いられる摺動型磁気ヘッドに関する。」
(ウ) 「【0002】
【従来の技術】大容量情報記録媒体として光ディスクが注目されている。このなかには、磁界変調方式の光磁気ディスクがあり、データファイル等への応用が期待されている。磁界変調方式では、光ヘッドからレーザー光をディスクの記録層にDC的に照射してその温度を上昇させておき、これと同時に、変調された磁界を光ヘッドの反対側に配置した磁気ヘッドから記録層に印加して記録を行なう。(略)」
(エ) 「【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記特開昭62-287488号公報に開示されたジンバル板によれば、磁気ディスクの2方向の面振れに良く追従することができるが、微小な面振れしか吸収することができず、上記の光磁気ディスクのように数100μmオーダでの面振れには追従することができず、新たなサスペンション等の開発が望まれていた。
【0009】なお、従来の浮上型磁気ヘッドの駆動装置におけるバネ荷重が5?10gf、フロッピーディスク駆動装置におけるバネ荷重が10?20gf程度であり、このような大きなバネ荷重では、一般に、フロッピーディスクの表面より大きな摩擦抵抗をもつ光磁気ディスクの保護膜では、直ぐに傷付いてしまうという問題があるとともに、ディスク駆動用モータの負荷が大きくなるという問題もある。」
(オ) 「【0024】
【作用および効果】本発明のサスペンションにおいては、所定長のサスペンションアームにより大きな面振れを吸収するとともに、磁気ヘッドのディスク走行方向軸周りの傾きは、該サスペンションアームの捩れで吸収し、一方、磁気ヘッドのディスク走行方向軸に直交する軸周りの傾きはサスペンションパーツの捩れて吸収することができ、多様な面振れ、傾きがあっても、これらに磁気ヘッドを完全に追従させることができ、安定した記録、再生を行うことができるようになる。」
(カ) 「【0028】(略)摺動型磁気ヘッド10のスライダ11は、前記2つのサスペンションパーツの間に渡る状態で取り付けられるようになっている。
【0029】サスペンション1のバネ荷重は、3gf以下、0.1gf以上となるように設定することが望ましい。このため、サスペンション1の厚さは、通常20μmないし50μmに設定される。特に、1gf以下に設定することが望ましい。バネ荷重が3gfを越えると記録媒体表面の傷つきが多くなり0.1gf未満では大きな面振れに対して追従できなくなる。」(実施例の項)
(キ) 「【0032】図3に、本発明の摺動型磁気ヘッドを光磁気ディスク駆動装置に適用する場合の好ましい実施例を示す。同図に示される磁気ヘッド10は、スライダ11内にヘッドコアの磁界発生部13とその巻線14とを有する。」(実施例の項)
(ク) 「【0041】本発明においてヘッドコアの磁界発生部は、複数設けられる摺動面の間に位置するが、特に、各摺動面の中央を結んだ直線ないし多角形の重心位置付近に位置することが好ましい。また、本発明の磁気ヘッドは所定の荷重により押圧されて記録媒体表面を摺動するが、この場合の荷重中心も前記重心位置付近とすることが好ましい。」(実施例の項)
(ケ) 「【0053】次に、上記磁気ヘッド10を上記サスペンション1で支持する支持構造について、図6以降を参照して説明する。」(実施例の項)
(コ) 「【0060】以上の構造のサスペンションおよび摺動型磁気ヘッドの支持構造においては、所定の長さをもち、バネ荷重が従来のサスペンションあるいはジンバルのバネ荷重より小さな3gfであるサスペンションアームで、例えば光磁気ディスクである磁気ディスクの面振れ等の大きな変動に追従することができ、また、このサスペンションアームで、サスペンションの長さ方向軸周りの小さな傾斜等の変動を有効に吸収する一方、上記サスペンションパーツで、上記長さ方向軸と直交する水平軸周りの小さな傾斜等の変動を有効に吸収することができる。(略)」(実施例の項)

3 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1には、特に上記2(ア)(ウ)(カ)(下線部参照)に摘示した記載事項によれば、
「光ヘッドからレーザー光を光磁気記録媒体であるディスクの記録層に照射してその温度を上昇させておき、これと同時に、変調された磁界を光ヘッドの反対側に配置した磁気ヘッドから記録層に印加して記録を行なう装置において、
サスペンションに、光磁気記録媒体と摺動接触するスライダが取り付けられている摺動型磁気ヘッドを備え、
サスペンションのバネ荷重が、3gf以下、望ましくは1gf以下に設定され、
スライダが、その光磁気記録媒体対向面に、摺動面と磁界印加用のヘッドコアを有している、装置。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「光ヘッド」は、本願発明の「光学ヘッド」に相当している。
引用例1に記載された発明の「光磁気記録媒体」は、ディスクであるから、本願発明の「ディスク状記録媒体」に相当している。
引用例1に記載された発明は、「変調された磁界を光ヘッドの反対側に配置した磁気ヘッドから記録層に印加して記録を行なう」ので、本願発明の「光学ヘッドと磁気ヘッドがディスク状記録媒体を介して対向する状態とされ」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「光ヘッドからレーザー光を光磁気記録媒体であるディスクの記録層に照射してその温度を上昇させておき、これと同時に、変調された磁界を光ヘッドの反対側に配置した磁気ヘッドから記録層に印加して記録を行なう装置」は、「光学ヘッド」と「磁気ヘッド」を有しているから、本願発明の「ヘッド装置」に実質的に相当している。
引用例1に記載された発明の「摺動型磁気ヘッド」は、「サスペンションに、光磁気記録媒体と摺動接触するスライダが取り付けられている」ので、ディスク状記録媒体に対して負荷を与えているといえる。また、本願発明の「磁気ヘッド」は、「ディスク状記録媒体に対して負荷を与える状態とされる」と特定されていて、磁気記ヘッドが摺動型であるか浮上型であるかは特定されていないので、本願発明と引用例1に記載された発明とは、「磁気ヘッドがディスク状記録媒体に対して負荷を与える状態」であることについて共通している。
また、本願発明の「磁気ヘッドがディスク状記録媒体に与える負荷」は、「サスペンションのバネ圧等を設定」(段落29参照)することにより調整されるものであるところ、引用例1に記載された発明において、摺動型磁気ヘッドの「サスペンションのバネ荷重」は「3gf以下、望ましくは1gf以下に設定」されているのであるから、引用例1に記載された発明と本願発明とは、「磁気ヘッドがディスク状記録媒体に与える負荷」が「上限値以内に設定されている」ことで共通している。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明は、
「光学ヘッドと磁気ヘッドを有し、ディスク状記録媒体に対する記録又は再生時に、前記光学ヘッドと前記磁気ヘッドがディスク状記録媒体を介して対向する状態とされ、かつ前記磁気ヘッドはディスク状記録媒体に対して負荷を与える状態とされるヘッド装置において、
前記磁気ヘッドがディスク状記録媒体に与える負荷が、上限値以内に設定されている、ヘッド装置。」
である点で一致しており、以下の点で一応相違している。

(相違点) 「上限値」について、本願発明では、「光学ヘッドからディスク状記録媒体に照射されるレーザ光の入射角度の許容範囲と、ディスク状記録媒体の厚さと、ディスク状記録媒体の半径とを用いて算出される」と特定されているのに対し、引用例1に記載された発明では、そのように特定されていない点。

(2)相違点についての判断
引用例1には、サスペンションに支持される磁気ヘッドは、所定の上限値内のバネ荷重で、光磁気ディスクの面振れ等の大きな変動に追従する(上記(エ)(カ)(コ)参照)ことが示され、光磁気ディスクの多様な面振れや傾きに対応させるものであること(上記(オ)参照)が示されている。引用例1に記載された磁気ヘッドは、サスペンションのバネ荷重により光磁気ディスクに負荷を与えているものであるから、その負荷により光磁気ディスク面を傾ける力が作用していることは明らかである。
また、光磁気ディスクの最大傾きは半径、厚さ、材質に左右されることが当業者の技術常識である。例えば、原審で引用された特開平4-366419号公報等を参照されたい。
しかも、光磁気ディスクの傾きは、レーザ光の入射角度の許容範囲に関連して許容される限度があることは周知の事項である。例えば原審で示された特開平6-131696号公報(段落15?17)等参照されたい。
そうすると、引用例1に記載された発明において、磁気ヘッドがディスク状記録媒体に与える負荷の上限値を、ディスク状記録媒体の傾きが許容される限度内であるように、レーザ光の入射角度の許容範囲及びディスクの半径・厚みの値を考慮に入れて算出することは、当業者が容易に想到しうることである。

そして、上記相違点を総合的に検討しても、本願発明の効果は、引用例1に記載された発明から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。

4 むすび
したがって、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-23 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-19 
出願番号 特願平9-71398
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 浩昌  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 横尾 俊一
漆原 孝治
発明の名称 ヘッド装置及び記録及び/又は再生装置  
代理人 脇 篤夫  
代理人 鈴木 伸夫  

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