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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200413441 審決 特許
不服200424934 審決 特許
不服200220454 審決 特許
不服200516973 審決 特許
無効200135092 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1185506
審判番号 不服2006-8354  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 特願2002-553479「新規プロテアーゼ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月 4日国際公開、WO02/51998〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成13年12月21日(優先日 平成12年12月25日、特願2000-393372号)を国際出願日とする国際出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年5月29日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列における第1番?第750番のアミノ酸からなる配列、(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列における第1番?第750番のアミノ酸からなる配列において、1?10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列、あるいは、(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列における第1番?第1224番のアミノ酸からなる配列において、1?10個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は挿入されたアミノ酸配列を含み、しかも、プロテアーゼ活性を示すポリペプチド。」(以下、「本願発明」という。)

2.原査定の理由・当審の判断
(1)原査定の理由
原査定における拒絶の理由の概要は、本願発明の詳細な説明の記載には、本願請求項1?10に記載の発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されておらず、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないというものである。
(2)実施可能要件
本願発明はプロテアーゼ活性を示すポリペプチドという化学物質に係る発明であり、化学物質に係る発明を当業者が実施することができるとは、当該発明に係る物質を作ることができ、かつ、使用することができることである。
そして、化学物質としてのポリペプチドにどのような有用性(1つ以上の技術的に意味のある特定の用途)があるかが明細書に記載され、あるいは明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき当業者が理解できなければ、その化学物質をどのように使用できるかについて記載されているとはいえず、当該化学物質に係る発明について当業者がその実施ができる程度に明確かつ十分に、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

(3)明細書の記載
そこで、本願明細書の記載を検討すると、本願発明の詳細な説明には、本願発明のポリペプチドの有用性に関する記載としては、以下のとおり、当該ポリペプチドのプロテアーゼ活性に関する事項と、腎不全の原因物質に関する事項が記載されている。
(3-1)プロテアーゼ活性について
本願明細書の実施例2の下から第2行?最下行には、「配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドは、ADAMTSプロテアーゼであると考えられる。」と記載され、また、「MDTS9短長タンパク質のプロテアーゼ活性の確認」と見出しのある実施例4には、本願発明のポリペプチドのうち、(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列における第1番?第750番のアミノ酸からなる配列を有するポリペプチドであるMDTS9短長タンパク質が、血清中に存在するプロテアーゼ阻害タンパク質であるα_(2)-マクログロブリンと、SDSでは解離しない複合体を形成するのに対して、プロテアーゼの活性中心と考えられるHis-Glu-Ser-Gly-His配列のGluをGlnに置換したMDTS9短長タンパク質変異体はα_(2)-マクログロブリンと複合体を形成しないことが記載され、その下から第4行?最下行には「この結果は、MDTS9短長タンパク質(MDTS9Cys2)が、α_(2)-マクログロブリンと複合体を形成したことを示しており、従って、MDTS9短長タンパク質(MDTS9Cys2)にプロテアーゼ活性があることが確認された。」と記載されている。
(3-2)腎不全の原因物質について
「MDTS9遺伝子の組織発現分布の確認」と見出しのある実施例5の下から第2行?最下行には、「その結果、MDTS9遺伝子のmRNAは、腎臓に発現していることが判明した。」と記載され、「TGF-βによるMDTS9遺伝子の発現誘導」と見出しのある実施例6の下から第3行?最下行には、「その結果、MDTS9遺伝子のmRNAは、TGF-β1により、約8倍に遺伝子発現誘導されることが判明した。」と記載され、「ラット腎不全モデルにおけるMDTS9遺伝子の発現変動」と見出しのある実施例7の下から第2行?最下行には、「本実施例により、腎不全モデルでは、MDTS9の遺伝子が発現誘導されることが明らかとなった。」と記載され、「ヒト腎臓組織切片の免疫組織染色」と見出しのある実施例8の下から2行?最下行には、「本実施例から、MDTS9タンパク質がヒト腎臓で発現していることが明らかである。」と記載されている。
そして、実施例8に続く産業上の利用可能性の項中で、
「本発明のポリペプチドは、TGF-βにより誘導され、細胞外マトリックスの代謝に関与する、腎臓に発現している新規プロテアーゼであるので、本発明のポリペプチドのプロテアーゼ活性を阻害する物質は、TGF-βの生理作用のうち、細胞外マトリックス成分の質的変化及び量的増加に係わる部分だけを抑制又は阻害する可能性が高く、長期投与が想定される慢性腎不全治療剤として有用である。すわなち、本発明のポリペプチドによれば、慢性腎不全治療剤の簡便なスクリーニング系を提供することができる。また、本発明のポリヌクレオチド、発現ベクター、細胞、及び抗体は、本発明のポリペプチドを製造するのに有用である。」と記載されている。
(4)当審における判断
(4-1)プロテアーゼ活性について
本願明細書によれば、配列番号2で表される1224個のアミノ酸からなる配列のポリペプチドは、そのアミノ酸配列からADAMTSの各ドメインの特徴を有するものであり、新規ADAMTSメタロプロテアーゼと推定され、そして、上記(3-1)の明細書の記載のように、α_(2)-マクログロブリンと複合体を形成することが確認されているので、何らかのプロテアーゼ活性を有するADAMTSファミリーの新メンバーであるとは推認できるかもしれない。
しかしながら、当該プロテアーゼの基質は特定されておらず、そして、プロテアーゼの基質あるいは開裂する特定のアミノ酸配列が解明されていない以上、当該ポリペプチドを何に作用させてよいのかわからない。
してみれば、本願明細書には、当業者が当該ポリペプチドをプロテアーゼとして使用できるように、明確かつ十分に記載されているとはいえない。
(4-2)腎不全の原因物質について
ADAMTSメタロプロテアーゼのメンバーに属すると推認される本願発明の配列番号2で表される第1番?第1224番のアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、「MDTS9ポリペプチド」という。)及びそれをコードするMDTS9遺伝子について、上記(3-2)の本願明細書の実施例5?8により確認されたことは、MDTS9遺伝子がヒト腎臓で発現し、MDTS9ポリペプチドがヒト腎臓で発現していること、腎不全の原因物質の1つとされているTGF-βの添加により、正常ヒト腎臓近位尿細管上皮細胞において、MDTS9遺伝子の発現が誘導されること、及びラット腎不全モデルでは正常ラットに比べ、MDTS9遺伝子の発現が誘導されることであり、まとめると、新規ADAMTSメタロプロテアーゼが腎臓で発現し、その発現が、腎不全の原因物質の1つであるTGF-β及び腎不全モデルラットで誘導されることである。
上記(3-2)の本願明細書の記載では、この事実から、TGF-βによる生理作用のうち、この新規ADAMTSメタロプロテアーゼが細胞外マトリックス成分の質的変化及び量的増加に係わる可能性が高いと推定しているが、その根拠は、ADAMTSメタロプロテアーゼが細胞外マトリックスの代謝に関与するものであるためであると記載されている。
しかしながら、そもそもADAMTSメタロプロテアーゼに属する細胞外酵素は、細胞外マトリックスであるコラーゲン、アグリカンに作用するもののみならず、血管新生阻害、血液凝固にも係わるものも知られており(必要があれば、Biochem.J.(2005)Vol.386,p.15-27参照、以下「参考文献」という。)、その機能が広範にわたることは本願出願時の技術常識であるので、ADAMTSメタロプロテアーゼに属する酵素であっても、それだけでは細胞外マトリックスに作用するかどうか不明であるにもかかわらず、本願明細書では、本願発明のポリペプチドにより細胞外マトリックスが代謝されることを確認しておらず、また、腎不全における細胞外マトリックスの変化と本願発明のポリペプチドの発現の因果関係を確認してもいない。
したがって、本願発明のMDTS9ポリペプチドが、腎不全で多く発現しTGF-βにより誘導されるからといって、このことをもって直ちに、このプロテアーゼが慢性腎不全の原因物質の1つであるとすることはできない。

これに対して、本件請求人は、平成20年3月27日付で提出した回答書において、
「この点につきましては、まず、或るタンパク質のファミリーに属することは、タンパク質の機能・活性を実際に実験により確認することなく、タンパク質の構造的特徴により決定するものであること、従って、本願発明のポリペプチドがADAMTSファミリーに属すると判断したことが妥当であることを申し述べます。
次いで、本願発明のポリペプチドの機能を実験を伴わずに主張しているのではないことをご説明いたします。明細書の背景技術欄及び平成18年7月4日付け提出の理由補充書に記載しましたとおり、ADAMTS分子が、アグリカンやコラーゲン等の細胞外マトリクスの分解及び成熟といった代謝に関与することは、本願出願時には公知であります。また、本願明細書の実施例から明らかなように、α2-マクログロブリンとの複合体形成確認の実験結果を得ています(実施例4)。両者を考慮すると、本願発明のポリペプチドがプロテアーゼであることは明らかです。本願明細書では、更に、(1)腎臓の初代培養細胞において、抑制することにより慢性腎不全治療につながるTGF-β(すなわち慢性腎不全の増悪因子)により発現誘導されること(実施例6)、(2)腎不全モデル動物において腎不全の症状悪化に伴い遺伝子発現量が増加していること(実施例7)も実験的に確認しています。そして、これらに基づき、本願発明のポリペプチドの機能、すなわち腎不全の原因であることを見出しました。従って、本願発明のポリペプチドの有用性を裏付ける機能が十分に実証されていると思料いたします。」と主張している。
しかしながら、上記(4-1)で述べたように、仮に本願発明に係るポリペプチドがADAMTSメタロプロテアーゼのメンバーであるとしても、そのプロテアーゼの基質が本願明細書に記載されていないので、プロテアーゼとして使用できる程度に本願明細書に記載されているとはいえない。
また、本願発明に係るポリペプチドが、腎不全で多く発現し、TGF-βにより誘導されるからといって、腎不全の結果として発現する物質である可能性も高く、この事実だけから腎不全の原因物質であるとはいえないことは、上記(4-2)で述べたとおりであり、拒絶理由通知及び拒絶査定における審査官の同様の観点からの指摘に対しても、審判請求人は上記のような主張をするにとどまり、腎不全の原因物質であることを裏付けるデータ等の具体的事実を何ら提出しておらず、審判請求人の上記主張は採用できない。
なお、本願発明に係るポリペプチドは、本願出願後3年以上たってから頒布された刊行物であり、ADAMTSメタロプロテアーゼの総説である上記参考文献に記載されたADAMTS16と同じアミノ配列を有するものであるが、当該文献の第22頁の右欄下から第6行?下から第2行には、ADAMTS16は、2005年の時点においても、機能及び基質のわからないいわゆるオーファンADAMTSであることが記載されており、また、当該文献には、ADAMTS16と腎不全との関係について、何も記載されていない。
以上の理由により、本願発明に係るポリペプチドにどのような有用性(1つ以上の技術的に意味のある特定の用途)があるかは、本願明細書に記載されておらず、かつ明細書の記載及び出願時の技術常識に基づき当業者にとって自明な事項でもないので、本願明細書には、そのポリペプチドを使用できるように記載されているとはいえず、本願の発明の詳細な説明は、本願発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとは認められない。
3.むすび
したがって、本願は、本願請求項1に係る発明について、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしておらず、他の請求項に係る発明については検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。。
 
審理終結日 2008-07-25 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-15 
出願番号 特願2002-553479(P2002-553479)
審決分類 P 1 8・ 536- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 左海 匡子  
特許庁審判長 種村 慈樹
特許庁審判官 鈴木 恵理子
上條 肇
発明の名称 新規プロテアーゼ  
代理人 山口 健次郎  
代理人 鈴木 ▲頼▼子  
代理人 矢野 恵美子  
代理人 濱井 康丞  
代理人 森田 拓  
代理人 森田 憲一  
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