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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1185527
審判番号 不服2006-28187  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-14 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 平成10年特許願第 1137号「磁気記録再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月30日出願公開、特開平11-203664〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年1月6日の出願であって、平成18年1月10日付けで手続補正がなされたが、平成18年11月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年12月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成19年1月9日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年1月9日付け手続補正(以下「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成19年1月9日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の、
(a) 「【請求項1】非磁性支持体上に磁性層が形成されてなる磁気テープから、ヘリカルスキャン方式によって信号を再生する磁気記録再生装置であって、
上記磁気テープからの信号を検出する感磁素子として磁気抵抗効果素子を備えて該信号を再生する磁気抵抗効果型磁気ヘッドと、
上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドが搭載された回転ドラムとを備え、
上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気テープ表面に複数の突起が形成され、磁性層に導電材料を含有して磁性層の表面導電抵抗が100kΩ以下とされた磁気テープの信号を再生することを特徴とする磁気記録再生装置。」を、
(b) 「【請求項1】非磁性支持体上に磁性層が形成されてなる磁気テープから、ヘリカルスキャン方式によって信号を再生する磁気記録再生装置であって、
上記磁気テープからの信号を検出する感磁素子として磁気抵抗効果素子を備えて該信号を再生する磁気抵抗効果型磁気ヘッドと、
上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドが搭載された導電材料からなる回転ドラムと、該回転ドラムと中心軸を略一致するように配設された導電材料からなる固定ドラムとを備え、
上記回転ドラム及び上記固定ドラムの中心には導電材料からなる回転軸が挿通されて電気的に接続されていることを特徴とする磁気記録再生装置。」
と補正するものである。(なお、下線は、補正の前後で異なっている箇所に当審で付与したものである。)
本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明の「回転ドラム」について「導電材料からなる」との限定を付加し、「磁気記録再生装置」について「該回転ドラムと中心軸を略一致するように配設された導電材料からなる固定ドラムとを備え、上記回転ドラム及び上記固定ドラムの中心には導電材料からなる回転軸が挿通されて電気的に接続されている」という限定を付加する一方、補正前の「上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気テープ表面に複数の突起が形成され、磁性層に導電材料を含有して磁性層の表面導電抵抗が100kΩ以下とされた磁気テープの信号を再生する」という特定事項を削除するものであり、磁気ヘッドが再生する磁気テープについての限定をなくすものであり、補正前の発明を実質的に変更もしくは拡張するものであり、特許請求の範囲の減縮に該当しない。
請求人は、上記特定事項の削除は、明りょうでない記載の釈明を目的とすると主張している。しかしながら、上記特定事項は、明りょうな記載であり、また原審における拒絶理由に係る事項でもないので、上記特定事項の削除は、特許法第17条の2第4項第4号に規定される明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)に該当しない。
また、本件補正は、誤記の訂正を目的とするものでもない。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の各号のいずれにも該当しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成19年1月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至3に係る発明は、平成18年1月10日付け手続補正の特許請求の範囲の請求項1乃至3に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2の1の(a)」のとおりである。

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-7138号公報(以下「引用例1」という。)には、「回転磁気ヘッド装置」に関し、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与したものである。)
(ア)「【請求項1】 テープ状記録媒体の情報をヘリカルスキャン方式で再生するための回転磁気ヘッド装置であり、
固定ドラムと、
この固定ドラムに対して回転可能である回転ドラムと、
回転ドラムに配置されて、テープ状記録媒体の情報を再生するためのアクティブ型の再生ヘッドと、
回転ドラムのアクティブ型の再生ヘッドがテープ状記録媒体の情報を再生する際に出力する再生出力信号を、回転ドラムの外部に取り出すための非接触信号伝達装置と、
回転ドラムの定電流回路に外部の直流電源を供給するための摺動型の接点装置と、を備えることを特徴とする回転磁気ヘッド装置。
【請求項2】 アクティブ型の再生ヘッドは、磁気抵抗素子ヘッドである請求項1に記載の回転磁気ヘッド装置。」(特許請求の範囲の請求項1?2)
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ビデオテープレコーダ(VTR)などに用いて最適な回転磁気ヘッド装置に関するものである。」
(ウ)「【0006】(略)そこで、磁気抵抗素子ヘッドのようなアクティブヘッドを、磁気誘導ヘッドに替えて採用する必要が生じる。(略)」(発明が解決しようとする課題の項)
(エ)「【0026】(略)磁気抵抗素子ヘッドの信頼性に関しては、磁気抵抗素子ヘッドの寿命を決定する素子の高さは数μmと小さいことと、静電破壊を受け易いということが考えられる。しかし本発明者らの検討の結果、素子高さ3μmの摺動型の磁気抵抗素子ヘッドにより、100時間以上の寿命を確認でき、通常の動作状態での静電破壊は起こらなかった。
【0027】このように、本発明の実施例では、回転ドラムの内部には、例えば磁気抵抗素子ヘッドなどのような高感度の再生用のアクティブ型のヘッドが取り付けられている。アクティブ型のヘッドの一例として、磁気抵抗素子ヘッドを例にとれば、この磁気抵抗素子ヘッドは、外部磁界の変化を素子の抵抗変化へと変換するために、定電流が必要となる。そこで、図7乃至図9の実施例1では、ドラム内部に直流電源を利用して定電流回路を作成して磁気抵抗素子ヘッドに定電流を供給する。磁気抵抗素子ヘッドは、記録メディアである磁気テープをスキャンすることで感知される外部磁界の変化を電圧変化として出力する。例えばビデオテープレコーダ装置の場合には、(略)。
【0028】本発明の実施例では、高感度な磁気抵抗素子ヘッドなどのアクティブ型のヘッドを使用することにより、磁気テープの狭トラック化、高帯域化が可能となり、高密度で高転送レートを達成することができる。また、多チャンネル化が容易な磁気抵抗素子ヘッドなどの薄膜のアクティブ型ヘッドを、ヘリカルスキャン方式の回転磁気ヘッド装置に用いることができる為に、更なる高記録密度化、高転送レート化が可能である。
【0029】ところで本発明の上述した実施例に限定されない。上述した実施例では、たとえばVHS型のビデオテープレコーダの回転磁気ヘッド装置について説明しているが、これに限らず8mmビデオテープレコーダや、デジタルオーディオテープレコーダ(DAT)や、データストリーマなどに対しても、本発明は適用することができる。」(実施例の項)

2.対比判断
(1)対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
上記1で摘示した記載事項、特に(ア)(下線部参照)によれば、引用例1には、
「テープ状記録媒体の情報をヘリカルスキャン方式で再生するための回転磁気ヘッド装置であり、
固定ドラムと、
この固定ドラムに対して回転可能である回転ドラムと、
回転ドラムに配置されて、テープ状記録媒体の情報を再生するためのアクティブ型の再生ヘッドと、
回転ドラムのアクティブ型の再生ヘッドがテープ状記録媒体の情報を再生する際に出力する再生出力信号を、回転ドラムの外部に取り出すための非接触信号伝達装置と、
を備える、回転磁気ヘッド装置であって、
アクティブ型の再生ヘッドは、磁気抵抗素子ヘッドである、回転磁気ヘッド装置。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「テープ状記録媒体」は、ビデオテープ等が例示されている(上記(イ)(エ)参照)から、本願発明の「磁気テープ」に相当し、本願発明の「非磁性支持体上に磁性層が形成されてなる」に相当する構成を備えている。
引用例1に記載された発明の「再生ヘッド」は、「磁気抵抗素子ヘッド」であるから、本願発明の「磁気抵抗効果型磁気ヘッド」に相当している。
引用例1に記載された発明の「回転磁気ヘッド装置」は、再生ヘッドと、回転ドラムとを備え、再生ヘッドが磁気テープの信号を再生するものであり、例えばビデオテープレコーダ装置(上記(エ)参照)の一部を構成するものであるから、本願発明の「磁気記録再生装置」に実質的に相当している。

そうすると、本願発明と引用例1に記載された発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。
(一致点) 「非磁性支持体上に磁性層が形成されてなる磁気テープから、ヘリカルスキャン方式によって信号を再生する磁気記録再生装置であって、
上記磁気テープからの信号を検出する感磁素子として磁気抵抗効果素子を備えて該信号を再生する磁気抵抗効果型磁気ヘッドと、
上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドが搭載された回転ドラムとを備え、
上記磁気抵抗効果型磁気ヘッドは、磁気テープの信号を再生する、磁気記録再生装置。」
(相違点) 「磁気テープ」について、本願発明は、「磁気テープ表面に複数の突起が形成され、磁性層に導電材料を含有して磁性層の表面導電抵抗が100kΩ以下とされた磁気テープ」と特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。

(2)相違点についての判断
ヘリカルスキャン方式によって信号を再生する磁気記録再生装置に用いる磁気テープとして、非磁性支持体上に磁性層を真空薄膜形成技術により形成した金属磁性薄膜型の磁気テープが普通に用いられており、当該金属磁性薄膜型の磁気テープにおいて、走行性を確保する目的で、表面に多数の突起を設けたものは、周知の事項であり、例えば、原審で例示された特開平5-225544号公報(従来の技術の項の記載である段落2?5等参照)にも記載されている。
ところで、本願発明の「磁性層に導電材料を含有して磁性層の表面導電抵抗が100kΩ以下」である磁気テープについて、本願明細書には、一般に表面導電抵抗が100kΩ程度以下のものは導電材と呼ばれること、及び磁性層となる強磁性金属材料を真空蒸着法、スパッタリング法又はイオンプレーティング法等により非磁性支持体の上に成膜して形成すること(平成18年1月10日付け手続補正書により全文補正された段落56?57参照)が記載されている。そうすると、上記周知の事項として示した金属磁性薄膜型の磁気テープは、その磁性層は導電材である金属薄膜からなり、「磁性層に導電材料を含有して磁性層の表面導電抵抗が100kΩ以下」である磁気テープに該当していることが明らかである。
してみれば、引用例1に記載された発明の磁気記録再生装置において、その磁気抵抗効果型ヘッドが信号を再生する磁気テープとして、上記周知の、表面に多数の突起を設けた金属磁性薄膜型の磁気テープを用い、磁性層の表面導電抵抗を100kΩ以下と限定することは、当業者が容易に想到しうることである。
そして、本願発明の効果は、引用例1に記載された発明及び上記周知の事項から予測される範囲内であるので、上記相違点に格別の困難性を要したものではない。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-24 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-19 
出願番号 特願平10-1137
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 574- Z (G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵野 雅昭橘 均憲  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 吉川 康男
横尾 俊一
発明の名称 磁気記録再生装置  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  

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