• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1185530
審判番号 不服2006-28751  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-26 
確定日 2008-10-02 
事件の表示 特願2001-185763「二重化システム構成設計・表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月10日出願公開、特開2003- 6247〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年6月20日の出願であって、平成18年11月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月26日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年12月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年12月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「シンボルの配置及びシンボル間を線の始点がシンボルの座標と重なるように図面的に表示された結線によって、装置を表わす図形の配置及び上記図形の結線を行うことによりシステム構成図を作画すると共に構成形態データ及び装置データのエントリーと接続情報のシステム構成を作成するシステム構成図入力手段、このシステム構成図入力手段によって作画されたシステム構成図を保管するシステム構成図定義ファイル、上記システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を保管するためのシステム構成定義ファイル、上記システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を補うための任意のシステム構成を定義して上記システム構成の定義を完成させ上記システム構成定義ファイルに保管するシステム構成入力手段、上記システム構成定義ファイル及び上記システム構成図定義ファイルを用いてシステム監視用の図面データを作成するシステム監視図面データ生成手段を備えたことを特徴とする二重化システム構成設計・表示装置。」と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定する事項について、限定的に減縮したものとはいえない。すなわち、付加された「線の始点がシンボルの座標と重なるように図面的に表示された」点について、請求人は明細書の段落【0012】【0013】の記載を補正の根拠としているものの、これらいずれにも上記付加事項が記載されているとはいえないし、これら記載から自明な事項でもない。したがって、この手続補正は、特許法第17条の2第3項の規定に適合しない。
また仮に、上記補正が限定的減縮を目的とするものといえたとしても、以下に述べるように、補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が独立して特許を受けることができるものとはいえない。
すなわち、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討すると以下のとおりである。

(2)刊行物
原審拒絶理由で引用された、本願の出願日前である平成5年11月26日に頒布された「特開平5-313557公報」(以下、「刊行物1」という)は、「プラントモデル自動生成装置」に関するものであって、その公報には図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「図1は、本発明に係るプラントモデル自動生成装置を機能ブロック図で示したものである。
同図において、プラントモデル自動生成装置は、プラント構成図記憶部10と、シンボルデータベース20と、画像理解知識ベース30と、接続情報生成装置40と、接続情報記憶部50と、機器モデルデータベース60と、モデル合成装置70と、プラント定性モデル記憶部80とを有して構成されている。
上述した図面データ記憶手段の機能を果たすプラント構成図記憶部10には、従来から存在するプラント用CAD(Computer Aided Design )を用いて描画されたプラントの構成図であるP&I等の図面情報が格納されている。この図面の情報(CADデータ)には、部品としてシンボルデータベース20に登録されているプラントの構成機器のシンボル名(これは、図形を示す名称であって、構成機器の名称ではない)と、そのシンボルの図面上での座標、及びその構成機器の識別子(TAG NO.)といった機器に関するデータや、シンボルデータベース20には登録されていない直線や文字などのデータが含まれている。このような図面の情報はテキスト形式で格納されている。なお、一般的に、CADデータには、構成器機に対応するシンボルを描画するためのデータは含まれているが、構成機器の種類(例えばポンプ、バルブなど)を示す情報は含まれていない。
シンボルデータベース20には、プラント用CADにおいて用いられるプラントの構成器機を表す図形がシンボルとして登録されている。そのシンボル情報の内容は、シンボル名毎に、シンボルの形状及び大きさ、機器の種類から構成されている。なおプラント用CADを用いて描画された入力データ内のシンボルの種類に関する情報は、シンボル名に基づいてシンボルデータベース20を参照することにより得られる。
画像理解知識ベース30には、シンボルデータベース20には登録されていないシンボル以外の画像情報を理解したり、シンボルの接続情報を決定するための知識が予め格納されている。なおシンボル以外の画像情報とは直線や矢印、文字などである。
画像理解知識ベース30に格納されている知識情報には、線に接続されているシンボルの検索ルールと、機器の接続の方向の決定ルールとが含まれている。具体的には次の様な知識である。
(1)線に接続されているシンボルの検索ルールに関して
(a)任意のシンボルについての予め設定されるシンボル領域内に、線の始点(又は終点)の座標が含まれている場合は、そのシンボルとその線とは繋がっている。
(b)任意のシンボルについての予め設定されるシンボル領域内に、線の始点(又は終点)の座標が含まれていない場合は、線の始点(又は終点)の座標に最も近いシンボルが、その線に繋がっているとものとする。
(c)シンボルとシンボル間に直線が引かれている場合は、それら2つのシンボルに相当する機器間に配管が存在して2つの機器が接続されている。
ここで線1とシンボル1との関係が図3(a)に示す様になっている場合は上記(a)の知識を用いることにより、線1とシンボル1とが接続されていると認識される。また線2とシンボル2との関係が図3(b)に示す様になっている場合は上記(b)の知識を用いることにより、線2とシンボル2とが接続されていると認識される。」(3頁段落【0012】ないし【0019】、図1、3)
(イ)「機器モデルデータベース60には、プラントの異なる複数の構成機器、たとえばポンプ、プロア、バルブをそれぞれペトリネットによるプラントの定性モデル(中略)で個々に表現したモデル(以下、機器モデルという)が、部品として格納されている。その機器モデルは、接続情報記憶部50に保存されている接続情報内の機器データに基づいて一意に決定される。なおプラントの定性モデルとは、物理量を定性値と定性微分値の2つを用いて表現し、幾つかの原理や法則に従って定性的な状態遷移をするということをモデル化したものである。
モデル合成装置70において、入力部71は、接続情報記憶部50から該当する接続情報ファイルを取り込んで機器モデル検索部72に渡す。
機器モデル検索部72では、接続情報に含まれる各機器データにそれぞれ対応する機器モデルを機器モデルデータベース60から抽出すると共に、その抽出した機器モデルに、機器の識別子(TAG NO.)などの属性を付加する。更に、抽出された機器モデルを接続情報内の接続関係情報に従って順次結合していく。この様な処理が全ての機器に対して行われることとにより、プラント全体のモデルが生成される。
出力部73は、最終的に生成されたプラント全体のモデルを、プラントの定性モデルとして出力する。このプラントの定性モデルは、所定のファイル形式のファイルとして、プラント定性モデル記憶部80に保存される。」(4頁段落【0027】ないし【0030】)
(ウ)「次に、接続情報生成装置による接続情報の生成処理について、図8のフローチャートを参照して説明する。
まず、入力部41は、プラント構成図ファイル保存部10から該当するプラント構成図ファイルを読み込んで、シンボル検索部42に渡す。
シンボル検索部42は、受け取ったプラント構成図ファイル内のCADデータを読み込むと共に(ステップ101)、データが終了したか否かを判断する(ステップ102)。
データが終了していない場合は、データの種類を認識し、その種類に応じた処理を実行する(ステップ103)。ここでデータの種類が、シンボルであった場合は、そのシンボル名に基づいてシンボルデータベース20から機器の種類を検索し、その検索した機器の種類及びシンボルデータに含まれている機器の識別子を機器データとして接続情報保持部43に保存する(ステップ104)。また、線及び矢印、又は文字であった場合はそれらのデータを接続情報生成部44に渡す。
接続情報生成部44では、受け取った線及び矢印のデータから得られる情報に対して、画像理解知識ベース30内の知識を適用することによって、シンボルの接続関係を生成し(ステップ105)、その情報を接続情報保持部43に保存する。また受け取った文字については、文字データとして接続情報保持部43に保存する(ステップ106)。
ステップ104、ステップ105、ステップ106のいずれかが終了した場合は上記ステップ101に戻りこのステップ以降を実行する。
ステップ102でデータが終了した場合は、出力部45は、1つの機器毎に、機器の接続に関する情報として、ステップ105において生成された接続関係情報を記述するとともに(ステップ107)、機器の属性に関する情報として、機器の名称、機器の種類を記述する(ステップ108)。そして全ての機器について、機器の接続に関する情報および機器の属性に関する情報を記述したならば、それらの情報を接続情報に関するファイルとして、接続情報記憶部50に保存する(ステップ109)。
次に、接続情報生成部44によるシンボルの接続関係の生成処理について、図9のフローチャートを参照して説明する。
接続情報生成部44は、シンボル検索部42から線を受け取ると、その線の種類は矢印か直線かを判断する(ステップ201)。
矢印の場合は、矢印の方向から、画像理解知識ベース60の知識を適用することにより物質の流れる方向を決定して、接続情報保持部43に記憶する(ステップ202)。次に、線の両端にシンボルが接続されているか否かを判断する(ステップ203)。ステップ201で線が直線の場合はステップ203に進む。
ステップ203において、線の両端にシンボルが接続されている場合は、線の両端にシンボルが接続されているという情報を接続情報保持部43に記憶し(ステップ204)、一方、線の両端にシンボルが接続されていない場合は、線の一端にシンボルが接続され、また他端に文字が接続(他端の近傍に文字が存在)しているか否かを判断する(ステップ205)。ここで、シンボルと文字が接続されていれば、その文字を文字データとして接続情報保持部43に記憶する(ステップ206)。
接続情報生成装置40によって生成された接続情報の一例を図10及び図11に示す。図11に示される接続情報は図10に示される接続情報の続きを示しており、またそれらの接続情報は図2に示したプラント構成図に対応している。」(7頁段落【0061】ないし8頁段落【0072】、図2,8ないし11)
(エ)「次に、モデル合成装置70によるモデル合成処理について、図12のフローチャートを参照して説明する。
まず、入力部71は、接続情報記憶部50から接続情報ファイルを取り込んで(ステップ301)、機器モデル検索部72に渡す。
機器モデル検索部72では、受け取った接続情報ファイル内から機器に関するデータを1つずつ抽出する(ステップ302)。そして処理すべき機器に関するデータが存在するか否かを判断し(ステップ303)、処理すべき機器に関するデータが存在する場合は、処理すべき機器に関するデータを読み込んで(ステップ303)、そのデータ内に含まれている機器データに対応する機器モデルを機器モデルデータベース60から検索する(ステップ304)。
次に、機器モデル検索部72は、検索して得られた機器モデルの各項目に所定の内容つまりプレース、トランジションの名称を決定し(ステップ305)、更に、機器の接続情報からトランジションの入出力プレースを決定し(ステップ306)、その後、ステップ302に戻りこのステップ以降を実行する。
なおトランジションの入出力プレースを決定するとは、トランジションの出力側と他のトランジションの入力側とを接続する場合にそれらの間にプレースを挿入するようにしているので、そのプレースを決定することをいう。
また機器モデル検索部72は、接続情報から、上流に機器が存在しているポンプ、ブロア、あるいは最下流側のバルブであると認識したときは、機器モデルデータベース60から抽出した機器モデルを所望の機器モデルに変更する。
ステップ303でデータが終了した場合は、出力部73は、機器モデル検索部72によって得られたプラントの定性モデルデータを整形つまりプラントの定性モデルデータに関するファイルを作成して(ステップ307)、プラント定性モデル記憶部80に保存する(ステップ308)。」(8頁段落【0076】ないし段落【0082】、図12)
(オ)第3図(a)には、線1の始点とシンボル1とが重なっている場合が示されている。

(カ)してみると、刊行物1には以下の発明(以下、「刊行物1発明」という)が記載されているといえる。
「図面データ記憶手段の機能を果たすプラント構成図記憶部10には、プラント用CADを用いて描画されたプラントの構成図である図面情報が格納されているものであり、プラント構成図ファイル保存部10から該当するプラント構成図ファイルを読み込んで、シンボル検索部42に渡し、シンボル検索部42は、受け取ったプラント構成図ファイル内のCADデータを読み込むと共に、データの種類を認識し、その種類に応じた処理を実行し、
画像理解知識ベース30に格納されている知識情報には、線に接続されているシンボルの検索ルールに関して、任意のシンボルについての予め設定されるシンボル領域内に、線の始点の座標が含まれている場合は、そのシンボルとその線とは繋がっているというルールがあり、それにより、線の始点とシンボルとが重なっている場合は線1とシンボル1とが接続されていると認識されるものであり、
接続情報生成部44では、受け取った線及び矢印のデータから得られる情報に対して、シンボルの接続関係を生成し、その情報を接続情報保持部43に保存し、また受け取った文字については、文字データとして接続情報保持部43に保存し、出力部45は、1つの機器毎に、機器の接続に関する情報として、接続関係情報を記述するとともに、機器の属性に関する情報として、機器の名称、機器の種類を記述し、全ての機器について、機器の接続に関する情報および機器の属性に関する情報を記述したならば、それらの情報を接続情報に関するファイルとして、接続情報記憶部50に保存し、接続情報記憶部50から接続情報ファイルを取り込んで、機器モデル検索部72に渡し、機器モデル検索部72では、受け取った接続情報ファイル内から機器に関するデータを1つずつ抽出し、処理すべき機器に関するデータが存在する場合は、処理すべき機器に関するデータを読み込んで、そのデータ内に含まれている機器データに対応する機器モデルを機器モデルデータベース60から検索し、機器モデル検索部72は、検索して得られた機器モデルの各項目に所定の内容つまりプレース、トランジションの名称を決定し、更に、機器の接続情報からトランジションの入出力プレースを決定し、出力部73は、機器モデル検索部72によって得られたプラントの定性モデルデータを整形つまりプラントの定性モデルデータに関するファイルを作成して、プラント定性モデル記憶部80に保存するものである、
モデル合成装置」

(3)対比・判断
ア 本願補正発明と刊行物1発明との対比
(ア)刊行物1発明は、図面データ記憶手段の機能を果たすプラント構成図記憶部10には、従来から存在するプラント用CAD(本願補正発明の「システム構成図入力手段」に相当)を用いて描画されたプラントの構成図である図面情報が格納されているものであり、プラント構成図記憶部は、本願補正発明の「システム構成図定義ファイル」に相当するものといえるから、刊行物発明と本願補正発明とは、「システム構成図入力手段によって作画されたシステム構成図を保管するシステム構成図定義ファイル」を備えた点で一致している。
刊行物1発明は、プラント構成図ファイル保存部10から該当するプラント構成図ファイルを読み込んで、シンボル検索部42に渡し、シンボル検索部42は、受け取ったプラント構成図ファイル内のCADデータを読み込むと共に、データの種類を認識し、その種類に応じた処理を実行し、接続情報生成部44では、受け取った線及び矢印のデータから得られる情報に対して、シンボルの接続関係を生成し、その情報を接続情報保持部43に保存し、また受け取った文字については、文字データとして接続情報保持部43に保存し、出力部45は、1つの機器毎に、機器の接続に関する情報として、接続関係情報を記述するとともに、機器の属性に関する情報として、機器の名称、機器の種類を記述し、全ての機器について、機器の接続に関する情報および機器の属性に関する情報を記述したならば、それらの情報を接続情報に関するファイルとして、接続情報記憶部50に保存するところ、シンボルの接続関係によりシステム構成が規定されるといえるから、上記シンボルの接続関係は本願補正発明の「システム構成図入力手段にて作成されたシステム構成」に相当するものであって、接続情報記憶部(本願補正発明の「システム構成定義ファイル」に対応)に保存するものであるから、刊行物1発明には本願補正発明でいう、「システム構成図入力手段にて作成されたシステム構成を保管するためのシステム構成定義ファイル」を備えた点に対応する構成の存在が伺える。
刊行物1発明は、接続情報記憶部50から接続情報ファイルを取り込んで、機器モデル検索部72に渡し、機器モデル検索部72では、受け取った接続情報ファイル内から機器に関するデータを1つずつ抽出し、処理すべき機器に関するデータが存在する場合は、処理すべき機器に関するデータを読み込んで、そのデータ内に含まれている機器データに対応する機器モデルを機器モデルデータベース60から検索し、機器モデル検索部72は、検索して得られた機器モデルの各項目に所定の内容つまりプレース、トランジションの名称を決定し、更に、機器の接続情報からトランジションの入出力プレースを決定し、出力部73は、機器モデル検索部72によって得られたプラントの定性モデルデータを整形つまりプラントの定性モデルデータに関するファイルを作成して、プラント定性モデル記憶部80に保存するものであるところ、上記のごとく、接続情報は本願補正発明の「システム構成図入力手段にて作成されたシステム構成」といえるから、上記の、検索して得られた機器モデルの各項目に所定の内容つまりプレース、トランジションの名称を決定し、更に、機器の接続情報からトランジションの入出力プレースを決定する点は、本願補正発明の「システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を補うための任意のシステム構成を定義して上記システム構成の定義を完成させ」る点に対応するものといえ、上記の、出力部73が、機器モデル検索部72によって得られたプラントの定性モデルデータを整形つまりプラントの定性モデルデータに関するファイルを作成して保存するプラント定性モデル記憶部80も、本願補正発明における「システム構成定義ファイル」に対応するものといえる。
してみれば、刊行物1発明には、本願補正発明でいう、「システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を補うための任意のシステム構成を定義して上記システム構成の定義を完成させ上記システム構成定義ファイルに保管するシステム構成入力手段」を備えた点に相当する構成が伺える。
これらのことから、刊行物1発明と本願補正発明とは、「システム構成設計装置。」である点で一致している。
(イ)したがって、両者は、
「システム構成図入力手段によって作画されたシステム構成図を保管するシステム構成図定義ファイル、上記システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を保管するためのシステム構成定義ファイル、上記システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を補うための任意のシステム構成を定義して上記システム構成の定義を完成させ上記システム構成定義ファイルに保管するシステム構成入力手段を備えたことを特徴とするシステム構成設計装置。」である点で一致し、次の点で相違しているものと認められる。
a 本願補正発明は、「シンボルの配置及びシンボル間を線の始点がシンボルの座標と重なるように図面的に表示された結線によって、装置を表わす図形の配置及び上記図形の結線を行うことによりシステム構成図を作画すると共に構成形態データ及び装置データのエントリーと接続情報のシステム構成を作成するシステム構成図入力手段」を備え、「システム構成定義ファイル及び上記システム構成図定義ファイルを用いてシステム監視用の図面データを作成するシステム監視図面データ生成手段」を備えた「システム構成設計・表示装置」であるのに対し、刊行物1発明は、CADデータからモデルを合成するものである点
b 本願補正発明は、「二重化」システムについてのものであるのに対し、刊行物1発明は、その点明確でない点

イ 相違点についての検討
相違点aについて
CADデータを生成するCADシステムは周知であるところ、刊行物1発明のシステム構成図は、従来からあるCADシステムにおいて作成されたCADデータであるから、周知のCADシステムにおいて表示され、表示画面上で結線されて作画されたデータであることは自明といえ、また、刊行物1発明のものは、画像理解知識ベース30に格納されている知識情報のルールにより、CADデータにおいて、線の始点とシンボルとが重なっている場合は線1とシンボル1とが接続されていると認識されるものである。
また、刊行物1発明のものは、接続情報記憶部50から接続情報ファイルを取り込んで、機器モデル検索部72に渡し、機器モデル検索部72では、受け取った接続情報ファイル内から機器に関するデータを1つずつ抽出し、処理すべき機器に関するデータが存在する場合は、処理すべき機器に関するデータを読み込んで、そのデータ内に含まれている機器データに対応する機器モデルを機器モデルデータベース60から検索するのであるから、構成形態データ及び装置データのエントリーを作成しておくことも適宜なしうるものといえる。
また、プラントの設計装置において、プラントの監視用の図面データを表示させることは普通のことといえる。
してみれば、従来からある周知のCADシステムを採用して、「シンボルの配置及びシンボル間を線の始点がシンボルの座標と重なるように図面的に表示された結線によって、装置を表わす図形の配置及び上記図形の結線を行うことによりシステム構成図を作画すると共に構成形態データ及び装置データのエントリーと接続情報のシステム構成を作成するシステム構成図入力手段」を備え、「システム構成定義ファイル及び上記システム構成図定義ファイルを用いてシステム監視用の図面データを作成するシステム監視図面データ生成手段」を備えた「システム構成設計・表示装置」とすることは当業者が容易に推考し得ることといえる。
相違点bについて
二重化システム構成設計・表示装置については、例えば特開平3-88075号公報にあるように周知のものといえるところ、刊行物1発明のものを二重化システム構成設計に使用することに格別阻害要因があるともいえず、適宜なし得る程度のことといえる。

そして、これら相違点を総合的に考慮しても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、また本願補正発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って当然に予測される程度のものにすぎず、格別顕著なものがあるともいえない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第3項の規定に違反するものといえ、あるいは、同法第29条第2項の規定により特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものといえるから、いずれにしても、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年12月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたところ、平成18年10月25日付けの手続補正は原審において却下されているので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成18年7月12日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明と認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、以下のとおりのものである。
「シンボルの配置及びシンボル間の結線によって、装置を表わす図形の配置及び上記図形の結線を行うことによりシステム構成図を作画すると共に構成形態データ及び装置データのエントリーと接続情報のシステム構成を作成するシステム構成図入力手段、このシステム構成図入力手段によって作画されたシステム構成図を保管するシステム構成図定義ファイル、上記システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を保管するためのシステム構成定義ファイル、上記システム構成図入力手段にて作成された上記システム構成を補うための任意のシステム構成を定義して上記システム構成の定義を完成させ上記システム構成定義ファイルに保管するシステム構成入力手段、上記システム構成定義ファイル及び上記システム構成図定義ファイルを用いてシステム監視用の図面データを作成するシステム監視図面データ生成手段を備えたことを特徴とする二重化システム構成設計・表示装置。」

(1)刊行物
原審拒絶理由で引用された刊行物、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「線の始点がシンボルの座標と重なるように図面的に表示された」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、刊行物発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
したがって、本願発明は、刊行物1発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-25 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-08-18 
出願番号 特願2001-185763(P2001-185763)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加舎 理紅子  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 西山 昇
伊藤 隆夫
発明の名称 二重化システム構成設計・表示装置  
代理人 児玉 俊英  
代理人 大岩 増雄  
代理人 村上 啓吾  
代理人 竹中 岑生  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ