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審決分類 |
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G11B 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1185630 |
審判番号 | 不服2006-15760 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-07-21 |
確定日 | 2008-10-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第187339号「光ピックアップ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月19日出願公開、特開2001- 14722〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成11年7月1日に出願されたものであって、平成16年10月15日付けで手続補正がされたものの、平成16年12月17日付けで最後の拒絶理由が通知され、これに応答して平成17年2月21日付けで手続補正書の提出がされたが、平成18年6月21日付けで平成17年2月21日付け手続補正を却下すると共に、拒絶査定がされたものである。 そして、平成18年7月21日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年8月21日付けで手続補正がされた。 その後、平成20年6月5日付けで当審から前置審尋の通知をし、これを踏まえて平成20年6月20日に面接をしたものである。 II.平成18年8月21日付け手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成18年8月21日付け手続補正を却下する。 〔理由〕 1.平成18年8月21日付け手続補正(以下「本件補正」という。)について補正の内容 本件補正は明細書全文を補正するものであるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る補正内容については(なお、下線は当審で付与した。)、本件補正前、 「【請求項1】 レーザー光源から出射されるレーザー光を光記録媒体の記録面に集光させ、当該記録面で反射されたレーザー戻り光に基づき前記記録面の記録情報の再生動作等を行う光ピックアップ装置において、 前記レーザー光を前記記録面上の目標とするトラックに収束させるトラッキング制御を行うために、前記レーザー光を回折して複数のビームを生成するグレーティング部材と、当該グレーティング部材を取り付けるために装置フレームに形成したグレーティング取り付け部とを有し、 前記グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分の外周部を保持していると共に、前記グレーティング面の光軸を中心とする円形外周面が形成されている保持部と、この保持部から外方に突出しているアーム部とを備えており、 前記グレーティング取り付け部は、前記保持部を回転可能な状態で支持している円形装着孔と、前記アーム部を装置フレームの外側に突出させているアーム貫通部とを備えており、 前記装置フレームの外側に突出している前記アーム部の部位を移動させることにより、前記保持部によって保持されている前記グレーティング本体部分の回転位置を調整できるようになっており、 前記アーム貫通部に接着剤が注入され、前記グレーティング部材と前記装置フレームとが接着固定されていることを特徴とする光ピックアップ装置。」 というものであったところ、本件補正は、 「【請求項1】 レーザー光源から出射されるレーザー光を光記録媒体の記録面に集光させ、当該記録面で反射されたレーザー戻り光に基づき前記記録面の記録情報の再生動作等を行う光ピックアップ装置において、 前記レーザー光を前記記録面上の目標とするトラックに収束させるトラッキング制御を行うために、前記レーザー光を回折して複数のビームを生成するグレーティング部材と、当該グレーティング部材を取り付けるために装置フレームに形成したグレーティング取り付け部とを有し、 前記グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分を取り囲む状態で、当該グレーティング本体部分と一体成形されている保持部と、当該保持部のレーザー光出射側の端面において前記グレーティング本体部分の前記グレーティング面とは反対側の面を取り囲む状態に一体形成されている円筒状部分と、前記保持部の円形外周面の一部から半径方向に沿って外方に突出しているアーム部とを備えており、 前記保持部の前記円形外周面は前記グレーティング面の光軸を中心とするものであり、 前記グレーティング取り付け部は、前記装置フレームの側壁部分の外側面と内側面との間に形成され、前記保持部を回転可能な状態で支持している円形装着孔と、前記アーム部を前記装置フレームの外側に突出させるアーム貫通部とを備えており、前記グレーティング部材を前記側壁部分の内部に収納するものであり、 前記装置フレームの外側に突出している前記アーム部の部位を移動させることにより、前記保持部に一体成形されている前記グレーティング本体部分の回転位置を調整できるようになっており、 前記アーム貫通部に前記装置フレームの外側から注入された接着剤によって、前記グレーティング部材と前記装置フレームとが接着固定されていることを特徴とする光ピックアップ装置。」 とするものである。要するに、 (1-1)グレーティング部材について、 本件補正前に「前記グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分の外周部を保持していると共に、前記グレーティング面の光軸を中心とする円形外周面が形成されている保持部と、この保持部から外方に突出しているアーム部とを備えており」としていたものを、 本件補正では「前記グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分を取り囲む状態で、当該グレーティング本体部分と一体成形されている保持部と、当該保持部のレーザー光出射側の端面において前記グレーティング本体部分の前記グレーティング面とは反対側の面を取り囲む状態に一体形成されている円筒状部分と、前記保持部の円形外周面の一部から半径方向に沿って外方に突出しているアーム部とを備えており、 前記保持部の前記円形外周面は前記グレーティング面の光軸を中心とするものであり、」と、 (1-2)グレーティング取り付け部について、 本件補正前に「前記グレーティング取り付け部は、前記保持部を回転可能な状態で支持している円形装着孔と、前記アーム部を装置フレームの外側に突出させているアーム貫通部とを備えており、」としていたものを、 本件補正では「前記グレーティング取り付け部は、前記装置フレームの側壁部分の外側面と内側面との間に形成され、前記保持部を回転可能な状態で支持している円形装着孔と、前記アーム部を前記装置フレームの外側に突出させるアーム貫通部とを備えており、前記グレーティング部材を前記側壁部分の内部に収納するものであり、」と、 『グレーティング本体部分と一体成形される保持部』となるように上記下線部の構成を変えているものである。 2.本件補正の目的 ところで、本件補正について、請求人は審判請求理由で 『ii)本願発明のグレーティング部材は、「グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分を取り囲む状態で、当該グレーティング本体部分と一体成形されている保持部と、当該保持部のレーザー光出射側の端面において前記グレーティング本体部分の前記グレーティング面とは反対側の面を取り囲む状態に一体形成されている円筒状部分と」を備えている。 グレーティング本体部分が一体成形されているので、別部材として製造したグレーティングをホルダなどの部品に接着剤を用いて固定する作業が不要である。よって、接着剤がグレーティングの表面に付着するおそれがない。また、グレーティング本体部分が保持部および円筒状部分によって取り囲まれているので、そのグレーティング面および反対側の面に接着剤が回り込み、それらの面に付着してしまうことも防止できる。 特に、本願発明では、グレーティング取り付け部の貫通穴の内部に形成されている円形装着孔にグレーティング部材の保持部が装着され、当該円形装着孔から半径方向に延びて装置フレームの外側に露出しているアーム貫通部から注入した接着剤によってグレーティング部材が装置フレームに固定されている。グレーティング面に対して、その半径方向の外側から接着剤が注入されるので、グレーティング面と接着剤の注入位置が近い位置にある。保持部あるいは円筒状部分に切り欠き、溝などが形成されている場合には、接着剤がそれらを介してグレーティング面に回り込みやすいが、本願発明では、グレーティング本体部分が保持部および円筒状部分に取り囲まれた状態で一体成形されている。したがって、グレーティング面に接着が付着してしまうことを確実に防止できる。 iii)さらに、本願発明のグレーティング取り付け部は、装置フレームの側壁部分の外側面と内側面との間に形成され、グレーティング部材を側壁部分の内部に収納するものなので、グレーティング取り付け部を形成するスペースを節約して、光ピックアップ装置を小型化できる。また、装置フレームの側壁内に収納されているグレーティング部材を固定する際に接着剤を注入するとグレーティング面に接着剤が侵入しやすいが、本願発明のグレーティング部材は、前記ii)のような特徴を備えているので、グレーティング面に接着が付着してしまうことを確実に防止できる。』と主張する。 とするものであれば、本件補正での特に「保持部のレーザー光出射側の端面において前記グレーティング本体部分の前記グレーティング面とは反対側の面を取り囲む状態に一体形成されている円筒状部分」の構成は、円筒状部までも一体成形していくことを含め、『グレーティング面に接着が付着してしまうことを確実に防止できる』といった新たな課題を解決するもので、補正した内容が願書に添付に最初に添付した明細書、又は図面に記載された事項の範囲内であるとしても、本件補正前になかった構成要件を附加して新たな課題を解決していくものである。 そして、上記補正は「請求項の削除」でもなく、「誤記の訂正」でもなく、さらには「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」に掲げる事項を目的とするものでもない。 結局、本件補正は、特許法17条の2第4項第1?4号に規定された目的のいずれにも該当しないことは明らかである。 3.本件補正についての結び したがって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成18年8月21日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願請求項1?6に係る各発明は、平成16年10月15日付けの手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲からみて、その請求項1?6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は、上記II.〔理由〕1.本件補正前として記載(以下「本願発明」という。)したとおりである。 2.刊行物及びその記載 これに対して、拒絶の理由(最後)で引用した特開昭62-157330号公報(以下「刊行物1」という。)には以下の記載がある。 (2-1)「(1)光源からの光を複数に分割する回折格子と、分割された特定の光を光記録媒体上に集光する対物レンズ及びこの対物レンズの駆動機構を備えたアクチュエータ部と、光記録媒体からの反射光を拡大し非点収差を生じさせるセンサーレンズと、センサーレンズを通った光を受光する光検知器とを、共通のベースに組込んだ光学式情報記録再生装置の光学ヘッドにおいて、 前記回折格子を収納保持する円筒状ホルダーには円筒状ホルダーの円筒面の所望の突出部が設けられ、該突出部には回折格子を貫く光軸を中心として放射方向に溝が形成され、またこの溝のほぼ軸線上には偏心ピン受穴が設けられ、 前記偏心ピン受穴よりも小さな所望の径を持つ第1の軸部と、第1の軸部の軸線より所定距離偏心した位置に軸線を持ちほぼ前記溝の幅と同じ径を持つ第2の軸部と、前記第1の軸部と同軸の軸線を持つ第3の軸部及び第4の軸部とからなる偏心ピンが、前記溝に第2の軸部がはまり合うように挿入され前記ベースに組込まれていることを特徴とする光学式情報記録再生装置の光学ヘッド。」(1頁左下欄5行?右下欄5行) (2-2)「[産業上の利用分野] 本考案は、記録媒体上のデータトラックに記録された情報の読取り又は記録媒体上の光学的な情報記録の少くともいずれか一方の機能を有する光学式情報記録再生装置の光学ヘッド、特に光スポットと記録媒体上のデータトラックの位置関係を最適に調整するのに好適な調整構造に関するものである。 [従来の技術] 従来、この種の光学ヘッドとしては例えば光学式ビデオディスクプレーヤ、コンパクトディスクプレーヤ装置等に使用されているものが知られており、それらの回折格子調整機構は、第9図に示されているものが一般的である。 図において、(1)は半導体レーザ、(2)は回折格子,(3)はハーフプリズム,(4)は対物レンズ、(5)はセンサーレンズ,(6)は光検知器,(30)は格子ホルダ,(31)は偏心ドライバー,(32)はディスクである。 次に、動作について説明する。第9図で半導体レーザ(1)から出射したレーザ光は、回折格子(2)に入射後の、複数の回折光に分割され、その内少なくとも0次光と±次光は、ハーフプリズム(3)を透過し、対物レンズ(4)により、ディスク(32)上に集光し、ディスク(32)によって反射された光は、入射光とは逆行して対物レンズ(4)を通過し、ハーフプリズム(3)によって直角方向に反射される。反射光は、センサーレンズ(5)を経て光検知器(6)によって受光される。 第10図に示すように、分割されたレーザ光の0次光と±1次光の3つのビームは、ディスク(32)上では、ピット列に対し角度を持って集光され、その反射光は、0次ビームは第10図の光検知器受光素子のB1?B4に入射し、±1次ビームは同図A1、A2に入射する。0次ビームは、ディスク上の情報信号及び焦点誤差信号の検出に使われ、±1次ビームは、受光部A1,A2の差信号(A1-A2)がトラック誤差信号となり、これが零となるようにあらかじめ光学系を調整してトラック制御を行う。ディスク(32)上の±1次ビームのピット列に対する角度を最適角度に調整することにより、トラック制御が良好となる。このため、第9図のごとく、回折格子(2)を溝を設けた格子ホルダ(30)に固定し、偏心ドライバ(31)により±1次ビームとピット列との角度を微調整し、トラック制御を良好なものにする。」(1頁右下欄20行?左下欄7行) (2-3)「以下本考案による光学ヘッドの一実施例を第1図ないし第8図を用いて説明する。説明に当り、前記従来例と同一又は相当部分には同一符号を付して、一部説明を略す。第1図において、(1)はレーザ光を発する半導体レーザ、(2)はレーザ光を複数に分離する回折格子、(3)はハーフプリズム、(4)は半導体レーザから発せられたレーザ光を集光する対物レンズ、(5)は凹レンズの作用とシリンダレンズの作用を兼ね備えたセンサーレンズ、(6)は光検知器、(7)は回折格子(2)を光軸を中心に矢印A方向に回動自在に保持する回折格子ホルダ,(8)は回折格子ホルダ(7)を回動するための偏心ピン,(9)はセンサーレンズ(5)を光軸方向に1習動自在に保持するセンサーレンズホルダ、(100)は対物レンズ(4)を光軸方向(B)、トラック調整方向(C)に変位させる対物レンズ移動機構(以下アクチュエータと略す)である。 このような構成において、半導体レーザ(1)から出射したレーザ光(図示せず)は、回折格子(2)により複数の光ビームに回折される。回折された光のうち少なくとも0次光と±1次光はハーフプリズム(3)を通過して対物レンズ(4)に入射し、ディスク(図示せず)上に光スポットを形成する。ディスクにより反射された光は、入射光とは逆行して対物レンズ(4)を通過し、ハーフプリズム(3)によって直角方向に反射される。反射光は、センサーレンズ(5)を経て非点収差を生じさせ光検知器(6)により受光される。 ここで、光検知器(6)は、ディスク上の情報を検出すると同時に、ディスクと対物レンズ(4)との間の距離と、ディスク上の図示していないトラックと光スポットのずれ量を検出し、それぞれの検出量に応じて対物レンズ(4)を矢印Bの光軸方向と、トラックとほぼ直交する矢印C方向にアクチュエータ(100)により可動する。 以上のような装置を実現するための具体的構成例を第2図ないし第4図に示す。 各図において、(10)はヘッドベース,(11)は半導体レーザ(1)をヘッドベースに固定するためのLD押え板、(12a),(12b)はLD固定ネジ、(13)は回折格子ホルダ(7)をヘッドベース(10)に押し付けるための格子バネ、(14a),(14b)は回折格子ホルダ(7)と格子バネ(13)の間に介在し、回折格子ホルダ(7)の矢印A方向への回動がスムーズに行われるようにするための格子スペーサ、(15〉は光検知器(6)を保持する検知器基板、(16)は光検知器(6)を保護する検知器カバー、(17a),(17b)は検知器基板(15)、検知器カバー(6)をヘッドベース(10)に固定するための検知器固定ネジ、(18)はアクチュエータ(100)を保護するアクチュエータカバー、(101)は対物レンズ(4)を偏心して取り付けているアクチュエータホルダ、(102)はアクチュエータホルダ下部に巻装されている焦点制御用コイル、(103a),(103b)はアクチュエータホルダの上部両端に設けられたトラック制御用コイル、(14)は焦点制御用永久磁石、(105)は焦点制御用永久磁石を保持するAFヨーク、(106a),(106b)はトラック制御用永久磁石、(107a),(107b)はトラツク制御用永久磁石の背面に固定的に設けられたバックヨーク、(108a),(108b)はトラック制御用永久磁石を保持する基台、(109a),(109b),(109c),(109d)は基台(108a),(108b)をヘッドベース(10)に固定するための基台固定ネジ、(110)は可動部であるアクチュエータホルダ(101)と固定部であるヘッドベース(10)を弾性的に保持する支持ゴム、(111a),(11lb)はヘッドベース(10)に固定的に立設された支持ゴム固定ピン、(112)はAFヨーク(105)に圧入されかつヘッドベース(10)に圧入された支持ピン、(113)はアクチュエータホルダ(101)とAFヨーク(105)の衝突を緩らげるストッパーである。 回折格子(2)保持する回折格子ホルダ(7)には第7,8図に示されるごとく、回折格子ホルダ(7)の円筒面から適当な形状の突出部(腕)(7a)が設けられており、その突出部(7a)に回折格子(2)を貫く光軸に平行な方向から見て、光軸を中心とし放射方向に溝(7b)そしてその溝(7b)の放射方向のほぼ軸線上に偏心ピン穴受穴(7c)が設けられている。また、第5,6図に示されるごとく、偏心ピン(8)の中央部の腹部(8a)と同軸を持ち第1の軸(8b)と第2の軸部(8c)が偏心ピン(8)の両端に設けられており、腹部(8a)と第1の軸部(8b)の間には、前記腹部(8a)の軸線より所定距離はなれた位置に軸線を持ち偏心ピン部(8d)を備えている。偏心ピン(8)の第1の軸部(8b)は回折格子ホルダ(7)のピン受穴(8c)に、偏心ピン部(8d)と溝(7b)がはまり合うように挿入されている。なお、ピン受は穴(7c)は第1の軸部(8b)の径よりも大きな所望径の穴となっている。ピン受け穴(7c)に挿入された第1の軸部(8b)の端は、ヘッドベースの所定位置に設けられたベース穴(10a)に回転可能に挿入支持される。偏心ピン(8)の第2の軸部(8c)は、LD押え板(11)に設けられた固定板穴(11a)によって回転可能に挿入支持されている。なお、第2の支持部(8c)の端には、マイナスドライバー等によって、偏心ピン(8)を回転できるように一文字状のドライバー溝(8c)が設けられている。 次に回折格子調整機構の動作について、説明する。第1図及び第3図において、偏心ピン(8)をマイナスドライバ等によって回転させることによって、回折格子ホルダ(7)が矢印へ方向に回動し、回折格子(2)の傾き調整ができる。また、偏心ピン(8)の第2の軸部(8c)がLD押え板(11)に設けられた固定板穴(11a)に嵌合されているので、調整後に、振動等によって角度が変化しにくい構造になっている。 [考案の効果] 以上の様に、本考案によれば、回折格子を固定保持する円筒上のホルダーに突出部(腕)を設け、回折格子の光軸に垂直な方向に溝を形成し、その軸のほぼ軸線上に偏心ピン受穴を設けて、それに回転角度調整用の偏心ピンを挿入したものを光学ヘッドに相込み、偏心ピンの両端が回転可能に固定されるように構成したので、光学ヘッドの方向からマイナスドライバ等によって調整できるので、光学ヘッドを光学式情報記録再生装置に組込んでも、前記装置下方から容易に調整することができる効果がある。」(3頁左上欄3行?4頁左下欄10行) 以上の摘示事項を各図面と共に整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認める。(なお、記号は図面との対応で残した。) 「記録媒体上のデータトラックに記録された情報の読取り又は記録媒体上の光学的な情報記録の少くともいずれか一方の機能を有する光学式情報記録再生装置の光学ヘッドにおいて、 半導体レーザ(1)から出射したレーザ光は、光軸を中心に矢印A方向に回動自在な回折格子ホルダ(7)に保持された回折格子(2)により複数の光ビームに回折され、回折された光のうち少なくとも0次光と±1次光はハーフプリズム(3)を通過して対物レンズ(4)に入射し、ディスク上に光スポットを形成し、ディスクにより反射された光は、入射光とは逆行して対物レンズ(4)を通過し、ハーフプリズム(3)によって直角方向に反射され、センサーレンズ(5)を経て非点収差を生じさせ光検知器(6)により受光され、ディスク上の情報を検出すると同時に、ディスクと対物レンズ(4)との間の距離と、ディスク上の図示していないトラックと光スポットのずれ量を検出し、それぞれの検出量に応じて対物レンズ(4)を矢印Bの光軸方向と、トラックとほぼ直交する矢印C方向にアクチュエータ(100)により可動し、 光学ヘッドは、ヘッドベース(10)と、半導体レーザ(1)をヘッドベースに固定するためのLD押え板(11)と、LD固定ネジ(12a),(12b)と、回折格子ホルダ(7)をヘッドベース(10)に押し付けるための格子バネ(13)と、回折格子ホルダ(7)と格子バネ(13)の間に介在し、回折格子ホルダ(7)の矢印A方向への回動がスムーズに行われるようにするための格子スペーサ(14a),(14b)を有し、 回折格子ホルダ(7)は、回折格子ホルダ(7)の円筒面から適当な形状の突出部(腕)(7a)が設けられて、突出部(7a)に回折格子(2)を貫く光軸に平行な方向から見て、光軸を中心とじ放射方向に溝(7b)、溝(7b)の放射方向のほぼ軸線上に偏心ピン穴受穴(7c)が設けられ、 ヘッドベースの所定位置に設けられたベース穴(10a)に回転可能に挿入支持され、偏心ピン(8)の第1の軸部(8b)の端がピン受け穴(7c)に挿入され、偏心ピン(8)の第2の軸部(8c)は、LD押え板(11)に設けられた固定板穴(11a)によって回転可能に挿入支持され、偏心ピン(8)を回転することで回折格子を光学ヘッドを光学式情報記録再生装置に組込んでも、装置下方から調整できる光学ヘッド。」(以下「刊行物1発明」という。) 同じく拒絶の理由(最後)で引用した実願昭58-127665号(実開昭60-35323号)のマイクロフィルム(以下「刊行物2」という。)には以下の記載がある。 (2-4)「ところで、光ディスク(5)の情報トラックTを上記サブスポットP_(1)、P_(3)が適正に走査するよう各スポット P_(0)、P_(1)、P_(3)の位置を調整する必要があり、例えば第4図に示す支持手段により支持され、調整される。 この支持手段としてはハウジング(4)内に固定した円筒形外筒(14)内に回折格子(6)を同軸に固定した円筒形内筒(15)を同軸に嵌入し、外筒(14)の外筒一部に開口した周方向の長穴(16)に内筒(14)から一体に突設したレバー(17)を突出させ、このレバ一(7)を操作して円筒(15)を介し回折格子(6)をその光軸を中心に回転させて微調するものである。しかし、この構造では調整がどうしても粗になり易く精度悪く、構造も複雑でコスト的に不利である。さらに調整後に円筒(15)を接着剤等で固定する必要があり手間を要す上、光ヘッド組立後の実動状態においての調整ができず保守・点検が煩雑である等の問題があつた。」(4頁) 同じく拒絶の理由(最後)で引用した実願昭63-36712号(実開平1-140618号)のマイクロフィルム(以下「刊行物3」という。)には以下の記載がある。 (2-4)「回折格子ホルダ39には回転位置を調整するための位置調整溝39aが形成されている。そして、ピックアップシャーシ25に形成された調整穴25cから工具を挿入し、位置調整溝39aに力を作用させて回折格子ホルダ39を回転させ、これによって回折格子33の光軸に対する回転方向の位置調整、すなわちビームスポットの形成位置の位置調整が行なえるようになっている。そして調整完了後に回折格子ホルダ39が接着剤によって固定される。」(5頁7?16行) 3.対比・判断 〔対比〕 本願発明と刊行物1発明と対比する。 i.刊行物1発明における「半導体レーザ(1)から出射したレーザ光」「記録媒体」「情報の読取り」及び「光学式情報記録再生装置の光学ヘッド」は、本願発明の「レーザー光源から出射されるレーザー光」「光記録媒体」「記録情報の再生」及び「光ピックアップ装置」に相当するから、両発明は「レーザー光源から出射されるレーザー光を光記録媒体の記録面に集光させ、当該記録面で反射されたレーザー戻り光に基づき記録面の記録情報の再生動作等を行う光ピックアップ装置」において共通する。 ii.刊行物1発明における「ディスク上の図示していないトラックと光スポットのずれ量を検出し、それぞれの検出量に応じて対物レンズ(4)を矢印Bの光軸方向と、トラックとほぼ直交する矢印C方向にアクチュエータ(100)により可動」は、本願発明の「レーザー光を記録面上の目標とするトラックに収束させるトラッキング制御を行う」ことを包含する。 iii.刊行物1発明における「回折格子ホルダ(7)に保持された回折格子(2)により複数の光ビームに回折され、回折された光のうち少なくとも0次光と±1次光はハーフプリズム(3)を通過して対物レンズ(4)に入射し、ディスク上に光スポットを形成」の「回折格子(2)」は、本願発明の「レーザー光を回折して複数のビームを生成するグレーティング部材」に相当する。 iv.刊行物1発明における「光学ヘッドは、ヘッドベース(10)と、半導体レーザ(1)をヘッドベースに固定するためのLD押え板(11)と、LD固定ネジ(12a),(12b)と、回折格子ホルダ(7)をヘッドベース(10)に押し付けるための格子バネ(13)と、回折格子ホルダ(7)と格子バネ(13)の間に介在し、回折格子ホルダ(7)の矢印A方向への回動がスムーズに行われるようにするための格子スペーサ(14a),(14b)を有し」であるが、ヘッドベース10に配置する第3図及び第4図を参照していくと、本願発明の「グレーティング部材を取り付けるために装置フレームに形成したグレーティング取り付け部」に相当する構成の記載のあることは明らかで、さらに第1図を参酌して回折格子ホルダ(7)は「矢印A方向への回動がスムーズに行われる」というものであるから、本願発明の「グレーティング取り付け部は、保持部を回転可能な状態で支持している円形装着孔」にも共通する構成がある。 v.刊行物1発明の「回折格子ホルダ(7)は、回折格子ホルダ(7)の円筒面から適当な形状の突出部(腕)(7a)が設けられて、突出部(7a)に回折格子(2)を貫く光軸に平行な方向から見て、光軸を中心とじ放射方向に溝(7b)、溝(7b)の放射方向のほぼ軸線上に偏心ピン穴受穴(7c)が設け」であるが、第1図,第7図,第8図を参酌して、上記「回折格子(2)」「回折格子ホルダ(7)」及び「突出部(腕)(7a)」は本願発明の「グレーティング本体部分」「保持部」及び「保持部から外方に突出しているアーム部」に対応するから、本願発明の「グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分の外周部を保持していると共に、グレーティング面の光軸を中心とする円形外周面が形成されている保持部と、この保持部から外方に突出しているアーム部とを備え」に相当する。 結局、両発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 [一致点] 「レーザー光源から出射されるレーザー光を光記録媒体の記録面に集光させ、当該記録面で反射されたレーザー戻り光に基づき前記記録面の記録情報の再生動作等を行う光ピックアップ装置において、 前記レーザー光を前記記録面上の目標とするトラックに収束させるトラッキング制御を行うために、前記レーザー光を回折して複数のビームを生成するグレーティング部材と、当該グレーティング部材を取り付けるために装置フレームに形成したグレーティング取り付け部とを有し、 前記グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分の外周部を保持していると共に、前記グレーティング面の光軸を中心とする円形外周面が形成されている保持部と、この保持部から外方に突出しているアーム部とを備えており、 前記グレーティング取り付け部は、前記保持部を回転可能な状態で支持している円形装着孔と、 前記装置フレームの、前記保持部によって保持されている前記グレーティング本体部分の回転位置を調整できるようになっており、 前記グレーティング部材と前記装置フレームとが固定されている光ピックアップ装置。」 [相違点] a.保持部の回転可能にする手段であるが、本願発明は「前記アーム部を装置フレームの外側に突出させているアーム貫通部とを備えており」というものであるが、刊行物1発明は「ヘッドベースの所定位置に設けられたベース穴(10a)に回転可能に挿入支持され、偏心ピン(8)の第1の軸部(8b)の端がピン受け穴(7c)に挿入され、偏心ピン(8)の第2の軸部(8c)は、LD押え仮(11)に設けられた固定板穴(11a)によって回転可能に挿入支持され、偏心ピン(8)を回転」というもので、フレームの外側に突出させるアームの上記記載がない点。 b.「グレーティング部材と装置フレームとが固定」について、本願発明は「接着固定」というものであるが、刊行物1発明のものにはこのような固定手段の記載がない点。 〔判断〕 相違点a.について グレーティング取付部を装置フレームから外部に回動アーム部を突出させて回動可能にして回折格子の角度調整していくことは刊行物2に記載があることから、刊行物1発明においても装置フレームの外側に突出させているアーム貫通部を備えることは当業者が容易に想到できるものである。 相違点b.について グレーティング部材と装置フレームとの間を「接着固定」する点は刊行物2,3に記載があるから、刊行物1発明においても上記相違点b.の接着固定する事項は必要に応じて適宜なし得ることである。 -補足- 上記審決の内容は、審判請求時の手続補正は、特許法17条の2第4項第1?4号に規定された目的のいずれにも該当しないことは明らかであるとして、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものであることを前提として判断した。 仮に、審判請求時の手続補正が認められるとした場合についても一応考察してみると、上記II.で記載したように、 「前記グレーティング部材は、グレーティング面が形成されているグレーティング本体部分と、このグレーティング本体部分を取り囲む状態で、当該グレーティング本体部分と一体成形されている保持部と、当該保持部のレーザー光出射側の端面において前記グレーティング本体部分の前記グレーティング面とは反対側の面を取り囲む状態に一体形成されている円筒状部分と、前記保持部の円形外周面の一部から半径方向に沿って外方に突出しているアーム部とを備えており、」 「前記グレーティング部材を前記側壁部分の内部に収納するものであり、」 「前記装置フレームの外側から注入された接着剤によって、前記グレーティング部材と前記装置フレームとが接着固定」 の点に特徴をもつことである。 しかしながら、上記手続補正による、特に「グレーティング本体部分を取り囲む状態で、当該グレーティング本体部分と一体成形されている保持部」の構成は、前置審尋で通知した、一例である実公平7-31372号公報には「レーザ光源から出射された光を分光する回折格子部及びこの回折格子部で分光された3ビームとディスク上のトラックとの角度を調整するときに回される回折格子ホルダ部を備えた光ピックアップの回折格子装置において、上記回折格子部と上記回折格子ホルダ部とを一体成形したので、回折格子部と回折格子ホルダ部との接着工程が不要となって安価にでき、回折格子部の回折格子ホルダ部に対する位置ずれがなくなって高精度な回折格子装置が得られ、かつ、回折格子部の格子面が接着剤によって汚れることもなく」(【考案の効果】参照)と記載があるように周知の構成にすぎない。そして、一般的に面接触部分を接着剤で固定する際、接着剤の粘性にもよるが、固着面触部分の少なくとも一方の部材側に、凹溝、凸条の壁部、ないし、囲み等を形成することで表面張力での接着剤が回り込まないようにすることは常套手段と認める。であれば、グレーティング本体部分を接着剤で固定していくことは刊行物2,3に記載があるように自明で回折格子部への接着剤の侵入防止は当然配慮すべき事項にすぎないもので、上記一体成形の際に、グレーティング面とは反対側の面を取り囲む状態に一体形成されている円筒状部分の成形も必要に応じて適宜成し得るもので、進歩性が認められるような特段の構成というべきものでない。 したがって、本願発明は仮に審判請求時の補正が限定的事項で減縮と認められるとした場合であっても、前置審尋で提示した上記刊行物を含め、当該分野の技術常識から当業者であれば容易に想到できたものと認める。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることはできないものである。 したがって、本願はその余の請求項に係る発明に論及するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-08 |
結審通知日 | 2008-07-10 |
審決日 | 2008-08-22 |
出願番号 | 特願平11-187339 |
審決分類 |
P
1
8・
574-
Z
(G11B)
P 1 8・ 572- Z (G11B) P 1 8・ 571- Z (G11B) P 1 8・ 121- Z (G11B) P 1 8・ 573- Z (G11B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田良島 潔、渡邊 聡 |
特許庁審判長 |
江畠 博 |
特許庁審判官 |
小松 正 漆原 孝治 |
発明の名称 | 光ピックアップ装置 |
代理人 | 河合 徹 |
代理人 | 横沢 志郎 |