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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01R
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01R
管理番号 1185677
審判番号 不服2005-21298  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-04 
確定日 2008-10-09 
事件の表示 平成11年特許願第327354号「ランプソケット」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 5月25日出願公開、特開2001-143839〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月17日の出願であって、平成17年 9月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成17年10月 4日)、これに対し、同年11月 4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年12月 1日付けで明細書について手続補正がなされたものである。

2.平成17年12月 1日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年12月 1日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ソケット本体に筒状部を設けて、この筒状部内を、ランプのランプ側嵌合部が嵌合するソケット側嵌合部にすると共に、前記ソケット側嵌合部の中央部にランプ端子が接触する一方の端子を、前記ソケット側嵌合部の周部に前記ランプ側嵌合部の周部のコンタクト部が接触する他方の端子をそれぞれ設けたランプソケットであって、
前記ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピンが挿入される挿入用溝を、前記筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入用溝と前記係合孔部とでランプ係合部を構成し、
前記係合孔部の、前記挿入用溝に連なる端部とは反対方向の端部に、前記係合孔部に連なる切欠き部を設けると共に、前記係合孔部が互いに平行な辺縁部を有して、これら辺縁部のうち鍔部に対する側の辺縁部に突起部が設けられ、
且つ、前記筒状部の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部の先端部を他の部分より肉厚にすると共に、前記挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を前記鍔状部から連ねて筒状部の外周側にかけて形成し、
更に、前記筒状部に有端閉塞のスリットを設けて、前記スリットを、前記切欠き部の下側から前記肉厚部の下側の範囲まで、前記係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、前記ランプ係合部に係合された前記係合ピンの移動により撓む撓み部にしたことを特徴とするランプソケット。」と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「突起部」について「鍔部に対する側の(辺縁部に)」との限定を付加し、同じく「スリット」について「有端閉塞のスリット」と限定すると共に、更に該「スリット」について「前記切欠き部の下側から前記肉厚部の下側の範囲まで、」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-69953号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

a「【産業上の利用分野】本発明は、自動車のヘッドライトなどのランプを装着するランプソケットに関するものである。」(段落【0001】)

b「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1の発明に係るランプソケットは、ソケット本体に筒状部を設けて、この筒状部内を、ランプのランプ側嵌合部が嵌合するソケット側嵌合部にすると共に、前記ソケット側嵌合部の中央部に、前記ランプ側嵌合部の前記ソケット側嵌合部への嵌合時に、ランプ端子が接触する一方の端子を、前記ソケット側嵌合部の周部に、前記ランプ側嵌合部の前記ソケット側嵌合部への嵌合時に、前記ランプ側嵌合部の周部のコンタクト部が接触する他方の端子をそれぞれ設け、前記一方及び他方の端子に圧着端子を介して電線を接続したランプソケットであって、前記筒状部の周部に、前記ソケット側嵌合部の周部に形成され且つランプ側嵌合部の嵌合時に、前記ランプ側嵌合部に設けた係合ピンが挿入される挿入用溝と、前記挿入用溝の端部に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合される係合孔部とで構成したランプ係合部を設けたことを特徴とする。」(段落【0005】)

c「本発明に係わるランプソケットAは、ソケット本体1と、カバー2と、ソケット本体1の中心側に位置する一方の端子3と、ソケット本体1の周側に位置する他方の端子4と、接続用の圧着端子5とを備えている。
前記ソケット本体1は図1及び図2示すように円形状の筒状部6を有しており、この筒状部6にはソケット側嵌合部7とランプ係合部8と端子導出部9とが形成してある。前記ソケット側嵌合部7は中央の円筒部10と筒状部6の内周面部6aとの間の円環状の部分であり、前記円筒部10の底部には中央の端子装着部11が、また、嵌合部7の周部には側部の端子装着部12がそれぞれ形成してある。」(段落【0013】、【0014】)

d「前記ランプ係合部8は、前記筒状部6の周方向に所定の間隔をおいて形成された複数の係合孔部18と、前記筒状部6の内周面部に形成されて前記係合孔部18の端部に連なる挿入用溝19と、係合孔部18の、挿入用溝19に連なる端部とは反対方向に端部に設けられて係合孔部18に連なる切欠き部18aとで構成してある。また、前記ソケット本体1の下部周面には複数の係合突起20と電源導出部21とが形成してある。」(段落【0016】)

e「そして、一方の端子3は前記ソケット本体1の中央の端子装着部11に圧入状態で装着してあり、この端子3の端子脚部26は端子脚用孔部14を貫通して前記端子導出部9に突出しており、また、他方の端子4は前記ソケット本体1の端子装着部12に圧入状態で装着してあり、この端子4の接点部27aは前記端子表出部16よりソケット側嵌合部7内に表出している。また、端子4の端子脚部29は端子脚用孔部17を貫通して前記端子導出部9に突出している。」(段落【0020】)

f「ランプBは図7に示すようにランプボディ40を備えており、このランプボディ40は、前記ランプソケットAのソケット側嵌合部7に嵌合するランプ側の嵌合部41と、前記ランプソケットAのランプ係合部8に係合する係合部42とが形成してあり、この係合部42には係合ピン43が形成してある。また、前記嵌合部41の端面には円形凹部44が形成してある。
前記ランプボディ40の中心部にはランプ端子45が装着してあり、このランプ端子45のランプ接続部46は前記ランプボディ40の上面部に表出しており、また、ランプ端子45のコンタクト部47は前記円形凹部44内に突出している。そして、前記ランプ側嵌合部41の周部には円環状のコンタクト部48が設けてある。
そして、前記ランプ端子45のランプ接続部46にはバルブ49が接続してあり、このバルブ49の一方の接点49aはランプ端子45に導通しており、バルブ49の他方の接点49bはコンタクト部48に導通している。
そして、上記のように構成されたランプBは、そのランプ側嵌合部41を前記ランプソケットAのソケット側嵌合部7に嵌合し、係合部42の係合ピン部43を前記挿入用溝19に挿入した後、ランプBを回転させて係合ピン部43を係合孔部18に係合して前記ランプソケットAに装着してあり、ランプ端子45のコンタクト部47は一方の端子3のランプ接触部25に接触し、前記嵌合部41の周部のコンタクト部48は、他方の端子4の接点部27aに接触している。」(段落【0023】?【0026】)

g「また、筒状部6に、周方向に所定の間隔をおいて複数のランプ係合部8を設けても、隣り合うランプ係合部8が筒状部6の周壁部で連ねられているために、ソケット側嵌合部7の強度が低下することがなく、ランプ側嵌合部41のソケット側嵌合部7への嵌合時にこじりが発生しても、ソケット側嵌合部7が変形することがなく、ランプBを確実にランプソケットに装着することができる。
また、係合ピン43が係合孔部18に挿入された時に、係合孔部18は、切欠き部18aがあるために、ランプ側嵌合部41の嵌合方向に拡げる。したがって、係合ピン43の係合孔部18への挿入を確実に行うことができる。」(段落【0028】、【0029】)

そして、引用例1に記載されたランプソケットAは、引用例1の図1及び図2の記載からみて、筒状部6の先端部の外周側に鍔状部が形成されて、該鍔状部により前記筒状部6の先端部を他の部分より肉厚にされているものと理解できる。

上記事項a?g及び図面の記載からみて、引用例1には、
「ソケット本体1に筒状部6を設けて、この筒状部6内を、ランプBのランプ側嵌合部41が嵌合するソケット側嵌合部7にすると共に、前記ソケット側嵌合部7の中央部にランプ端子45が接触する一方の端子3を、前記ソケット側嵌合部7の周部に前記ランプ側嵌合部41の周部のコンタクト部48が接触する他方の端子4をそれぞれ設けたランプソケットAであって、
前記ランプ側嵌合部41の嵌合時に前記ランプ側嵌合部41の周部の係合ピン43が挿入される挿入用溝19を、前記筒状部6の周縁側から前記筒状部6の軸方向に形成し、前記挿入用溝19に連なり且つ前記ランプBの回転により前記係合ピン43が係合する係合孔部18を、前記筒状部6の周方向に長い形状になるように、前記筒状部6の周部に設けて、前記挿入用溝19と前記係合孔部18とでランプ係合部8を構成し、
前記係合孔部18の、前記挿入用溝19に連なる端部とは反対方向の端部に、前記係合孔部18に連なる切欠き部18aを設けると共に、前記係合孔部18が互いに平行な辺縁部を有して、
且つ、前記筒状部6の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部6の先端部を他の部分より肉厚にすることを特徴とするランプソケット。」(以下「引用発明1」という。)
が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-237684号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

a「本発明は、自動車、2輪車、農業用機器、建築用機器などでランプを保持するソケットに関する。」(第2頁左上欄第7行?第8行)

b「このソケット1が保持するランプ2は、発光体3を外包するガラス球4と、筒状の電極部5とからなる。電極部5は、電極部5の外周全体に設けられた外周電極6と、その端部に設けられた中心電極7とを備え、外周電極6と中心電極7とは図示しない絶縁体により発光体3を介してのみ導通するよう絶縁されている。そして、外周電極6の外周には、円柱状の突起8が1つまたは少数設けられている。」(第2頁右下欄第15行?第3頁左上欄第3行)

c「このランプ2を保持するソケット1は、電極部5を外嵌するように、電極部5の挿入側が開口された金属製よりなる筒状のソケット本体9を備える。この本体9は、ランプ2を点灯するための一方の図示しない電極に導通される。本体9の底部には、絶縁体10が配設され、この絶縁体10の電極部5の挿入される側の中央には中心電極7と接触可能な中心接触子11が設けられる。この中心接触子11は、本体9の底部より挿通され、絶縁体10の中央部を挿通されたランプ2を点灯するための他方の図示しない電極に導通される電線12と接続される。」(第3頁左上欄第4行?第15行)

d「本体9の外周には、ランプ2の電極部5を本体9に保持する際に、ランプ2の中心電極7が圧縮コイルスプリング14に付勢される位置へ突起8を案内する挿入溝15と、中心電極7が圧縮コイルスプリング14に付勢された状態でランプ2を回転する方向に案内する係止部16とからなる略L字型の案内溝17が形成されている。この係止部16の電極部5が挿入される側(図示上側)の辺18は、係止部16の中間部が狭くされるよう、電極部5が挿入される側とは反対側に突設して設けられている。」(第3頁右上欄第2行?第11行)

e「一方、係止部16の電極部5が挿入される側とは反対側(図示下側)の辺19を形成する撓み部材20は、係止部16の回動終点を頂点とする略U字型の弾性溝21に囲まれて形成される。これにより、撓み部材20は、係止部16の回動始点側(図示右側)に支持されて撓みが可能とされる。」(第3頁右上欄第16行?左下欄第1行)

f「上記よりなるソケット1は、ランプ2をソケット1に保持する際、まず、突起8を挿入溝15に沿って差込み、圧縮コイルスプリング14を圧縮して本体9内に電極部5を挿入する。次に突起8を係止部16に沿って回転させる。これにより、圧縮コイルスプリング14が絶縁体10、中心接触子11を介して電極部5を電極部5を挿入する側に付勢し、辺18に突起8が押圧されてランプ2がソケット1に支持される。また、突起8が突起8の径より狭い係止部16の中間部を通過する時は、突起8の径と係止部16の中間部の間隔との差を撓み部材20が撓んで突起8を通過させる。突起8が係止部16の回動終点に位置するときは、突起8の径と係止部16の回動終点の間隔との差を撓み部材20が撓んで吸収する。これにより、係止部16の回動終点に位置する突起8は、撓み部材20が元の状態に戻る力により電極部5が挿入される側に付勢される。」(第3頁左下欄第4行?第20行)。

上記事項a?f及び図面の記載からみて、引用例2には、
「ランプ電極部5の嵌合時に前記電極部5の周部の突起8が挿入される挿入溝15を、ソケット本体9の筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入溝15に連なり且つランプ2の回転により前記突起8が係合する係止部16を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入溝15と前記係止部16とで案内溝17を構成したランプのソケット1において、前記係止部16を構成する辺のうち、ランプ電極部5が挿入される側の辺18に、係止部16の中間部が狭くなるよう突設して設けられたランプのソケット。」(以下「引用発明2の1」という。)、
及び、
「ランプ電極部5の嵌合時に前記電極部5の周部の突起8が挿入される挿入溝15を、ソケット本体9の筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入溝15に連なり且つランプ2の回転により前記突起8が係合する係止部16を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入溝15と前記係止部16とで案内溝17を構成したランプのソケット1において、上記筒状部に溝(略U字型の弾性溝21の、筒状部の周縁とは離隔した側の溝)を設けて、該溝(略U字型の弾性溝21の、筒状部の周縁とは離隔した側の溝)を、前記係止部16の一端の下側から他端の下側の範囲まで、前記係止部16に略平行に形成し、前記係止部16と前記溝(略U字型の弾性溝21の、筒状部の周縁とは離隔した側の溝)とに挟まれた部分を、前記案内溝17に係合された前記突起8の移動により撓む撓み部材20にしたことを特徴とするランプのソケット。」(以下「引用発明2の2」という。)
が記載されている。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願平5-13055号(実開平6-68363号)のCD-ROM(以下「引用例3」という。)には、図面を参酌すると、
「ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピン13が挿入される挿入用溝を、前記筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を前記筒状部の周方向に形成した電球ソケット2において、前記挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を筒状部の外周側に形成した電球ソケット。」(以下「引用発明3」という。)
が記載されている。

また、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭57-109274号公報(以下「引用例4」という。)には、図面とともに次のように記載されている。

a「本発明による電気コネクタ用連結部材は、例えばプラスチック製のふたつのコネクタハウジングを接続するのに用いられ、一方のハウジングに取付けられるとともに前方接続部分の内側に他方のハウジングのピンに組合う溝を包含する連結部材において、前記溝の一端に形成した第1の細長穴とこの第1の細長穴とほぼ平行に形成した第2の細長穴とを包含し、これら第1及び第2の細長穴はそれらの間に弾性的に可撓な部分を限定してなることを特徴とする。」(第2頁左上欄第14行?右上欄第3行)

b「第4図は、連結部材1の溝13の端に開口した細長い穴14を詳細に示す。この細長穴14は、その中心軸線が溝13の中心軸線と一直線をなし、またピン21を受けるひとつ又はそれ以上のくぼみ15を包含する。本実施例では、3つのくぼみ15が細長穴14の一側に形成されている。これら3つのくぼみのいずれかひとつにピン21を位置させることにより、ハウジング2、3の連結の解除を生じさせる連結部材の偶発的な回転を防止する。他の細長穴11が細長穴14とほぼ平行に形成され、この細長穴11はまたその拡口端部分12を有する。細長穴11及び拡口端部分12は、それらと細長穴14との間に弾性的に可撓な部分16を限定する。この部分16は、連結部材1が回転されピン21が溝13内を内方へ移動して細長穴14のフラット面17を押しつけたときに撓む。」(第2頁左下欄第7行?右下欄第3行)

上記事項a、b及び図面の記載からみて、引用例4には、
「筒状部に有端閉塞の細長穴11(第2の細長穴)を設けて、該細長穴11を、細長穴14(第1の細長穴)の一端から他端の範囲まで、前記細長穴14にほぼ平行に形成し、前記細長穴14(第1の細長穴)と前記細長穴11(第2の細長穴)とに挟まれた部分を、前記細長穴14(第1の細長穴)に係合されたピン21の移動により撓む可撓な部分16としたことを特徴とする電気コネクタ用連結部材。」(以下「引用発明4」という。)が記載されている。

(3)対比
本願補正発明と引用発明1とを対比すると、
両者は、
「ソケット本体に筒状部を設けて、この筒状部内を、ランプのランプ側嵌合部が嵌合するソケット側嵌合部にすると共に、前記ソケット側嵌合部の中央部にランプ端子が接触する一方の端子を、前記ソケット側嵌合部の周部に前記ランプ側嵌合部の周部のコンタクト部が接触する他方の端子をそれぞれ設けたランプソケットであって、
前記ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピンが挿入される挿入用溝を、前記筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入用溝と前記係合孔部とでランプ係合部を構成し、
前記係合孔部の、前記挿入用溝に連なる端部とは反対方向の端部に、前記係合孔部に連なる切欠き部を設けると共に、前記係合孔部が互いに平行な辺縁部を有して、
且つ、前記筒状部の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部の先端部を他の部分より肉厚にすることを特徴とするランプソケット。」の点
で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、これら辺縁部のうち鍔部に対する側の辺縁部に突起部が設けられているのに対し、引用発明1では、当該事項を具備しない点。

[相違点2]
本願補正発明では、挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を鍔状部から連ねて筒状部の外周側にかけて形成したのに対し、引用発明1では、筒状部の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部の先端部を他の部分より肉厚にするものであるが、鍔状部から連ねて筒状部の外周側に形成される挿入溝を肉厚にするための肉厚部が形成されているかは不明である点。

[相違点3]
本願補正発明では、筒状部に有端閉塞のスリットを設けて、前記スリットを、切欠き部の下側から肉厚部の下側の範囲まで、係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、ランプ係合部に係合された係合ピンの移動により撓む撓み部にしたのに対し、引用発明1では、当該事項を具備しない点。

(4)当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
引用発明2の1における「ランプ電極部5」は本願補正発明における「ランプ側嵌合部」に相当し、以下同様に、「突起8」は「係合ピン」に、「挿入溝15」は「挿入用溝」に、「係止部16」は「係合孔部」に、「案内溝17」は「ランプ係合部」に、「ランプのソケット1」は「ランプソケット」に、「辺」は「辺縁部」にそれぞれ相当する。
また、引用発明2の1における「係止部16の中間部が狭くなるよう突設して設けられ」は、辺18から突起部が突設して設けられているものと理解でき、「突起部が設けられ」に相当するものである。

したがって、引用発明2の1は、
「ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピンが挿入される挿入用溝を、筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入用溝と前記係合孔部とでランプ係合部を構成したランプソケットにおいて、係合孔部を構成する辺縁部のうち、ランプ側嵌合部が挿入される側の辺縁部に突起部が設けられたランプソケット。」であるといえ、この発明は、「ランプソケットにおいて、係合孔部を構成する辺縁部のうち、ランプ側嵌合部が挿入される側の辺縁部に突起部を設けること」を具備するものである。

そして、突起部を、係合孔部を構成する辺縁部のうちどちら側の辺縁部に設けるかは、当業者が適宜決定し得る設計上の事項にすぎないものである。
さらに、引用発明1も引用発明2の1も、同じランプソケットに関する技術である。

そうすると、引用発明1のランプソケットに、引用発明2の1の技術を適用し、これら辺縁部のうち鍔部に対する側の辺縁部に突起部を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
引用発明3は、前記のとおり「ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピン13が挿入される挿入用溝を、前記筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を前記筒状部の周方向に形成した電球ソケット2において、前記挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を筒状部の外周側に形成した電球ソケット。」であって「挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を筒状部の外周側に形成」するものである。

そして、引用発明3も引用発明1と同じ技術分野に属するものである。

してみると、引用発明1のランプソケットに、引用発明3を適用し、肉厚部を形成するのに、挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を鍔状部から連ねて筒状部の外周側にかけて形成することは、引用発明3に基づいて、当業者であれば、容易に想到し得たことである。

[相違点3]について
引用発明2の2と本願補正発明とを対比すると、引用発明2の2における「ランプ電極部5」は本願補正発明における「ランプ側嵌合部」に相当し、以下同様に、「突起8」は「係合ピン」に、「挿入溝15」は「挿入用溝」に、「係止部16」は「係合孔部」に、「案内溝17」は「ランプ係合部」に、「ランプのソケット1」は「ランプソケット」に、「溝(略U字型の弾性溝21の、筒状部の周縁とは離隔した側の溝)」は「スリット」に、「撓み部材20」は、「撓み部」に、それぞれ相当する。

したがって、引用発明2の2は、
「ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピンが挿入される挿入用溝を、筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入用溝と前記係合孔部とでランプ係合部を構成したランプソケットにおいて、前記筒状部にスリットを設けて、前記スリットを、前記係合孔部の一端の下側から他端の下側の範囲まで、前記係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、前記ランプ係合部に係合された前記係合ピンの移動により撓む撓み部にしたランプソケット。」であるといえ、該発明は、「ランプソケットにおいて、筒状部にスリットを設けて、スリットを、係合孔部の一端の下側から他端の下側の範囲まで、前記係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、前記ランプ係合部に係合された前記係合ピンの移動により撓む撓み部にした」点を具備するものである。

また、引用発明4は、「筒状部に有端閉塞の細長穴11(第2の細長穴)を設けて、該細長穴11を、細長穴14(第1の細長穴)の一端から他端の範囲まで、前記細長穴14にほぼ平行に形成し、前記細長穴14(第1の細長穴)と前記細長穴11(第2の細長穴)とに挟まれた部分を、前記細長穴14(第1の細長穴)に係合されたピン21の移動により撓む可撓な部分16とした」ものである。

そして、引用発明4は、本願補正発明のランプソケットと同様の電気コネクタ用連結部材に関するものである。

加えて、引用発明2の2も引用発明4も、細長い穴(スリット)を形成し、部材を係合させるに際し、被係合部材を撓ませるという点では、共通の技術である。

してみると、引用発明1のランプソケットにおいて、引用発明2の2のようなスリットを施し、係合孔部とスリットとに挟まれた部分を、ランプ係合部に係合された係合ピンの移動により撓む撓み部にするのに際し、該スリットを、引用発明4のように、有端閉塞のスリットとすると共に、該スリットを切欠き部の下側から肉厚部の下側の範囲までとして施すことは、引用発明1、引用発明2の2及び引用発明4から当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願補正発明が奏する作用、効果は、引用発明1ないし引用発明4から、当業者であれば、予測することができたものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1ないし引用発明4に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成17年12月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年6月25日付け手続補正書の特許請求の範囲請求項1に記載された事項により特定される、つぎのとおりのものである。

「ソケット本体に筒状部を設けて、この筒状部内を、ランプのランプ側嵌合部が嵌合するソケット側嵌合部にすると共に、前記ソケット側嵌合部の中央部にランプ端子が接触する一方の端子を、前記ソケット側嵌合部の周部に前記ランプ側嵌合部の周部のコンタクト部が接触する他方の端子をそれぞれ設けたランプソケットであって、
前記ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピンが挿入される挿入用溝を、前記筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入用溝と前記係合孔部とでランプ係合部を構成し、
前記係合孔部の、前記挿入用溝に連なる端部とは反対方向の端部に、前記係合孔部に連なる切欠き部を設けると共に、前記係合孔部が互いに平行な辺縁部を有して、これら辺縁部のうち前記一方の辺縁部に突起部が設けられ、
且つ、前記筒状部の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部の先端部を他の部分より肉厚にすると共に、前記挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を前記鍔状部から連ねて筒状部の外周側にかけて形成し、
更に、前記筒状部にスリットを設けて、前記スリットを、前記係合孔部を挟んで前記鍔状部とは反対側に位置させて前記係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、前記ランプ係合部に係合された前記係合ピンの移動により撓む撓み部にしたことを特徴とするランプソケット。」

(1)引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1ないし引用文献3に記載された発明は、前記「2.(2)」に記載したとおりである(原査定における、「引用文献1」は前記「引用例2」に、同じく「引用文献2」は前記「引用例1」に、「引用文献3」は「引用例3」に、それぞれ対応している。)。
(2)対比
本願発明と引用文献2に記載された発明(前記「引用発明1」)とを対比すると、
両者は、
「ソケット本体に筒状部を設けて、この筒状部内を、ランプのランプ側嵌合部が嵌合するソケット側嵌合部にすると共に、前記ソケット側嵌合部の中央部にランプ端子が接触する一方の端子を、前記ソケット側嵌合部の周部に前記ランプ側嵌合部の周部のコンタクト部が接触する他方の端子をそれぞれ設けたランプソケットであって、
前記ランプ側嵌合部の嵌合時に前記ランプ側嵌合部の周部の係合ピンが挿入される挿入用溝を、前記筒状部の周縁側から前記筒状部の軸方向に形成し、前記挿入用溝に連なり且つ前記ランプの回転により前記係合ピンが係合する係合孔部を、前記筒状部の周方向に長い形状になるように、前記筒状部の周部に設けて、前記挿入用溝と前記係合孔部とでランプ係合部を構成し、
前記係合孔部の、前記挿入用溝に連なる端部とは反対方向の端部に、前記係合孔部に連なる切欠き部を設けると共に、前記係合孔部が互いに平行な辺縁部を有して、
且つ、前記筒状部の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部の先端部を他の部分より肉厚にすることを特徴とするランプソケット。」の点
で一致し、つぎの点で相違している。

[相違点1]
本願発明では、これら辺縁部のうち一方の辺縁部に突起部が設けられているのに対し、引用文献2に記載された発明では、当該事項を具備しな点。

[相違点2]
本願発明では、挿入用溝を肉厚にするための肉厚部を鍔状部から連ねて筒状部の外周側にかけて形成したのに対し、引用文献2に記載された発明では、筒状部の先端部の外周側に鍔状部を形成して、該鍔状部により前記筒状部の先端部を他の部分より肉厚にするものであるが、鍔状部から連ねて筒状部の外周側に形成される挿入溝を肉厚にするための肉厚部が形成されているかは不明である点。

[相違点3]
本願発明では、筒状部にスリットを設けて、前記スリットを、係合孔部を挟んで鍔状部とは反対側に位置させて前記係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、ランプ係合部に係合された係合ピンの移動により撓む撓み部にしたのに対し、引用文献2に記載された発明では、当該事項を具備しない点。

(3)当審の判断
そこで、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
上記「2.(4)」の「[相違点1]について」で記載したとおり、引用文献1に記載された発明(前記「引用発明2の1」)は、「ランプソケットにおいて、係合孔部を構成する辺縁部のうち、ランプ側嵌合部が挿入される側の辺縁部に突起部を設ける」ものである。すなわち、引用文献1に記載された発明は「ランプソケットにおいて、これら辺縁部のうち一方の辺縁部に突起部を設ける」ものである。

してみると、引用文献2に記載されたランプソケットに引用文献1に記載の発明を適用し、[相違点1]における本願発明の構成とすることは、引用文献1及び引用文献2に記載された発明が、いずれもランプソケットに関する技術であって、同じ技術分野に属することからみて、当業者が容易に想到し得たことである。

[相違点2]について
[相違点2]における本願発明の構成とすることは、上記「2.(4)」の「[相違点2]について」で記載したとおり、引用文献2に記載された発明(前記「引用発明1」)及び引用文献3に記載された発明(前記「引用発明3」)に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3]について
前記「2.(4)[相違点3]について」で見たように、引用文献1に記載された発明(前記「引用発明2の2」)は、「ランプソケットにおいて、前記筒状部にスリットを設けて、前記スリットを、前記係合孔部の一端の下側から他端の下側の範囲まで、前記係合孔部に略平行に形成し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、前記ランプ係合部に係合された前記係合ピンの移動により撓む撓み部にした」ものである。

してみると、引用文献2に記載された発明におけるランプソケットにおいて、引用文献1に記載された発明のようなスリットを、係合孔部を挟んで鍔状部とは反対側に位置させて前記係合孔部に略平行に施し、前記係合孔部と前記スリットとに挟まれた部分を、前記ランプ係合部に係合された前記係合ピンの移動により撓む撓み部にする程度のことは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明が奏する作用、効果は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明から、当業者が予測することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献1ないし引用文献3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-11 
結審通知日 2008-08-13 
審決日 2008-08-26 
出願番号 特願平11-327354
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01R)
P 1 8・ 121- Z (H01R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲垣 浩司  
特許庁審判長 岡本 昌直
特許庁審判官 長浜 義憲
関口 哲生
発明の名称 ランプソケット  
代理人 青木 輝夫  

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