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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C04B
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C04B
管理番号 1185683
審判番号 不服2006-2910  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-16 
確定日 2008-10-09 
事件の表示 特願2001-252451「セラミックスセッター及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月22日出願公開、特開2002-145672〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年8月23日(優先権主張平成12年8月28日)に特許出願されたものであって、平成18年1月12日付けで拒絶査定がなされ、それに対し、同年2月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付け及び同年3月20日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年3月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年3月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
〔1〕平成18年3月20日付けの手続補正(以下、「本件補正2」という。)により、特許請求の範囲の記載が、
補正前の
「【請求項1】セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッターを製造する方法であって、少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を用いて押し出し成形により、その全てが一様な大きさの直線状の複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成することで、その長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmである貫通孔を形成することを特徴とするセラミックスセッターの製造方法。
【請求項2】前記アルミナの含有量が、78?85重量%である請求項1に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項3】前記アルミナの含有量が、99重量%以上である請求項1に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項4】1400?1700℃の温度で焼成後、更に得られた焼成物を所望の形状に加工する請求項1?3の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項5】少なくとも、セラミックス系電子デバイス部品や、射出成形によって得られる金属部品と接触する部分に、更に安定化ジルコニア若しくはマグネシアの水性スラリーをコーティングした後、上記部分に焼き付ける請求項1?4の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項6】請求項1?5の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法によって得られたセラミックスセッターであって、該セッターは、少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが押し出し成形によって形成された一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmであることを特徴とするセラミックスセッター。
【請求項7】前記セッターの形状が、複数の貫通孔を有するプレート状、少なくとも一方の面にスペーサーとして機能する凸部を有する複数の貫通孔を有するプレート状、底板と側壁とからなるトレイ状から選択される何れかである請求項6に記載のセラミックスセッター。」から、
補正後の
「【請求項1】セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成して、その全てが一様な大きさの直線状の複数の貫通孔を有する焼成物であるセラミックスセッターを製造する方法であって、少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を用いて押し出し成形で複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物を得、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成して、その長手方向において内径が略同一の直線状の、該内径が0.3?0.7mmである複数の貫通孔を形成することを特徴とするセラミックスセッターの製造方法。
【請求項2】前記アルミナの含有量が、78?85重量%である請求項1に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項3】前記アルミナの含有量が、99重量%以上である請求項1に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項4】1400?1700℃の温度で焼成後、更に得られた焼成物を所望の形状に加工する請求項1?3の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項5】少なくとも、セラミックス系電子デバイス部品や、射出成形によって得られる金属部品と接触する部分に、更に安定化ジルコニア若しくはマグネシアの水性スラリーをコーティングした後、上記部分に焼き付ける請求項1?4の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項6】セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッターであって、該セッターは、少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが押し出し成形によって形成された一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmであることを特徴とするセラミックスセッター。
【請求項7】前記セッターの形状が、複数の貫通孔を有するプレート状、少なくとも一方の面にスペーサーとして機能する凸部を有する複数の貫通孔を有するプレート状、底板と側壁とからなるトレイ状から選択される何れかである請求項6に記載のセラミックスセッター。」
に補正された。
上記補正は、請求項6に係る発明を、補正前の請求項6で「請求項1?5の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法によって得られたセラミックスセッターであって」という引用形式で表されていた事項を、補正前の請求項1の「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッター」という記載を用いて、「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッターであって」という独立形式の表現にすることにより、補正前の「請求項1?5の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法によって得られたセラミックスセッターであって、該セッターは、少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが押し出し成形によって形成された一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmであること」という事項を全体の特定事項とするものから、「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッターであって、該セッターは、少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが押し出し成形によって形成された一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmであること」という事項を全体の特定事項とするものにする補正事項を含んでいる。
しかしながら、補正前の請求項1に記載されたセラミックスセッターの製造方法の発明が、上記の「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッター」という事項だけでなく、「少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を用いて押し出し成形により、その全てが一様な大きさの直線状の複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成することで、その長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmである貫通孔を形成すること」という事項をもその特定事項に含んでいることを勘案すると、単に、引用形式から独立形式に記載形式の変更を行うのであれば、補正後の請求項6は上記の特定事項の他に「アルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与する」という事項及び「成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成する」という事項をもその特定事項に含ませることが必要である。
してみると、上記補正事項は、補正前の請求項1に記載されたセラミックスセッターの製造方法の発明の部分的な事項だけを引用して新たな特定事項としたものであるから特許請求の範囲を拡大するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正にも、同法同条同項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明を目的とする補正にも、また、同法同条同項第3号に規定する誤記の訂正を目的とする補正にも該当しない。
〔2〕むすび
以上のとおりであるから、平成18年3月20日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.平成18年2月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年2月16日付けの手続補正を却下する。
[理由]
〔1〕平成18年2月16日付けの手続補正(以下、「本件補正1」という。)により、特許請求の範囲の記載が、
補正前の
「【請求項1】セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッターにおいて、該セッターは、少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?1mmであることを特徴とするセラミックスセッター。
【請求項2】前記アルミナの含有量が、78?85重量%である請求項1に記載のセラミックスセッター。
【請求項3】前記アルミナの含有量が、99重量%以上である請求項1に記載のセラミックスセッター。
【請求項4】少なくとも、セラミックス系電子デバイス部品や、射出成形によって得られる金属部品と接触する部分に、安定化ジルコニア若しくはマグネシアがコーティングされている請求項1?3の何れか1項に記載のセラミックスセッター。
【請求項5】前記セッターの形状が、複数の貫通孔を有するプレート状である請求項1?4の何れか1項に記載のセラミックスセッター。
【請求項6】前記セッターの形状が、複数の貫通孔を有するプレート状であって、その少なくとも一方の面にスペーサーとして機能する凸部を有する請求項1?4の何れか1項に記載のセラミックスセッター。
【請求項7】前記セッターの形状が、底板と側壁とからなるトレイ状であり、上記底板と側壁との少なくとも一方に複数の貫通孔を有する請求項1?4の何れか1項に記載のセラミックスセッター。
【請求項8】複数の貫通孔の平均孔径が、0.3?0.5mmである請求項1?7の何れか1項に記載のセラミックスセッター。
【請求項9】複数の貫通孔が設けられている部分の気孔率が、30?70容量%である請求項1?8の何れか1項に記載のセラミックスセッター。
【請求項10】請求項1?9の何れか1項に記載のセラミックスセッターを製造する方法であって、少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成することを特徴とするセラミックスセッターの製造方法。
【請求項11】1400?1700℃の温度で焼成する前に、乾燥した成形物を仮焼する請求項10に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項12】1400?1700℃の温度で焼成後、更に得られた焼成物を所望の形状に加工する請求項10又は11に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項13】有機化合物が、重量平均分子量400?6,000の重合体である請求項10?12の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項14】上記粉末のアルミナの含有量が、78?85重量%である請求項10?13の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項15】上記粉末のアルミナの含有量が、99重量%以上である請求項10?13の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。
【請求項16】少なくとも、セラミックス系電子デバイス部品や、射出成形によって得られる金属部品と接触する部分に、更に安定化ジルコニア若しくはマグネシアの水性スラリーをコーティングした後、上記部分に焼き付ける請求項10?15の何れか1項に記載のセラミックスセッターの製造方法。」から、
補正後の
前記「2.〔1〕」に記載されている「補正前の【請求項1】?【請求項7】の記載」
に補正された。
そして、上記補正は、セラミックスセッターの製造方法の発明の独立請求項及びセラミックスセッターの発明の独立請求項を、それぞれ、補正前の請求項10から補正後の請求項1及び補正前の請求項1から補正後の請求項6に変更し、補正前の請求項12、14、15及び16を、それぞれ、補正後の請求項4、2、3及び5に変更し、補正前の請求項5、6及び7を補正後の請求項7に纏め、さらに、補正前の請求項2?4、8、9、11及び13を削除するものであり、そして、
(1)補正後の請求項1の「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッター」という事項は、補正前の請求項1の「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、可塑性を付与したアルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッター」という記載に基づく。 そして、補正後の請求項1の「少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を用いて押し出し成形により、その全てが一様な大きさの直線状の複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成することで、その長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmである貫通孔を形成する」という事項は、補正前の請求項10の「少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した後、該可塑化粉末を複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を1400?1700℃の温度で焼成する」という記載と、補正前の請求項1の「少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?1mmである」という記載に基づき、更に、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0024】、【0025】及び【0030】等の記載に基づいて、貫通孔が押し出し成形により形成されたものにする限定と、貫通孔の内径を「0.3?1mm」から「0.3?0.7mm」にする減縮を付加したものであり、また、補正後の請求項6の「少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが押し出し成形によって形成された一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmである」という事項は、補正前の請求項1の「少なくとも70重量%のアルミナを含有し、上記貫通孔は、その全てが一様な大きさの直線状をしており、且つその長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?1mmである」という記載に基づき、更に、本願の願書に最初に添付した明細書の段落【0024】、【0025】及び【0030】等の記載に基づいて、貫通孔が押し出し成形により形成されたものにする限定と、貫通孔の内径を「0.3?1mm」から「0.3?0.7mm」にする減縮を付加したものであるから、これらの補正事項は、いずれも、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
(2)補正後の請求項7は、補正前の請求項5、6及び7に係る発明を1つに纏めることによりセッターの形状が択一的に選ばれるようにするものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当する。
(3)補正前の請求項2?4、8、9、11及び13を削除することは、特許法第17条の2第4項第1号に規定する請求項の削除を目的とする補正に該当する。
〔2〕そして、平成18年2月16日付けで提出された手続補正書によりなされた補正が、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしており、また、特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するものを含んでいるから、本件補正1後の請求項1に記載された発明(前記「2.〔1〕」に記載されている「補正前の【請求項1】に記載された発明。以下、「本願補正1発明1」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。
(i)引用文献
(ア)原査定の拒絶の理由に引用文献2として引用された特開平11-79853号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア-1)「請求項1に記載の貫通孔の1個の面積が、0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にあることを特徴とする焼成用セッター。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)、
(ア-2)「請求項1?4のいずれかの請求項に記載のセッターの材質が、アルミナ、シリカ、マグネシア、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素、炭化珪素などのセラミックス、またはこれらを主成分とする複合材料からなることを特徴とする焼成用セッター。」(【特許請求の範囲】【請求項5】)、
(ア-3)「請求項1?5のいずれかの請求項に記載のセッターが、泥漿鋳込成形法あるいはドクターブレード法により成形した後、この成形体に打抜加工により貫通孔を形成させ、焼成したことを特徴とする焼成用セッターの製造方法。」(【特許請求の範囲】【請求項6】)、
(ア-4)「(g)貫通孔の形成方法
表面に独立した貫通孔が形成された成形体を得る方法としては、特に限定する必要はない。」(第4頁左欄第13?15行、段落【0025】)、
(ア-5)「例えば、安定化剤を含まない・・・ジルコニア粉末に、安定化剤であるイットリア粉末をジルコニア粉末に対して・・・加えたもの・・・に対して、水・・・、分散剤・・・、バインダー・・・、消泡剤・・・を加えたものを・・・混合し、得られたスラリーを・・・鋳込成形する。更に、・・・得られた成形体を・・・打抜金型で打抜き、表面に独立した貫通孔が形成された成形体を得る。」(第4頁右欄第20?32行、段落【0032】)、
(ア-6)第6頁に記載の【図1】には、「円形平行型貫通孔セッター上面図とその開孔率を求める式」が示されている。そして、上記図に複数の円形貫通孔を形成したセッターが示されており、また、上記式中で上記複数の円形貫通孔について孔径が「D」という1字で表されている〔【符号の説明】中(第6頁左欄第12行)の「D:貫通孔の孔径(mm)である。」参照。〕ことを勘案すると、上記の貫通孔は、孔径が実質的に等しい複数の円形のものであるといえる。
(イ)原査定の拒絶の理由に引用文献6として引用された特開2000-226253号公報(以下、「慣用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(イ-1)「次に、本発明のコージェライト質セラミックハニカム構造体の製造方法を詳細に説明する。コージェライト質ハニカム構造体のコージェライト化原料バッチは、主成分の化学組成が、SiO_(2):42?56重量%、Al_(2)O_(3):30?45重量%、MgO:12?16重量%になるように、タルク、カオリン、水酸化アルミニウムよりなるコージェライト化生原料を65重量%以上、残部を仮焼カオリン、アルミナ、シリカ、仮焼タルク等で調合したものである。このコージェライト化原料バッチに、水、メチルセルロース等の有機結合剤及び可塑剤を加え、混合・混練後、押出成形を用いてハニカム成形体を成形した。次に、ハニカム成形体を乾燥させ、1350?1440℃の温度で焼成することにより、コージェライト質セラミックハニカム構造体(ハニカム焼成体)を得ることができる。」(第4頁左欄第8?22行、段落【0022】)
(ウ)原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開平6-82166号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ウ-1)「アルミナ質基材の表面にイットリア安定化ジルコニア質層及びカルシア安定化ジルコニア質層を順次設けたことを特徴とする焼成用治具。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、
(ウ-2)「本発明のアルミナ質基材のアルミナ含有量は好ましくは75重量%以上、さらに好ましくは85重量%以上、最も好ましくは95重量%以上である。」(第2頁右欄第13?15行、段落【0008】)
(エ)実願昭63-107756号(実開平2-28099号)のマイクロフィルム(以下、「周知例2」という。)には、次の事項が記載されている。
(エ-1)「第1図(a)(b)ないし第3図は本考案に係る脱脂・焼結用セッター(以下セッターという)11の代表的実施例を示すもので、第1図(a)(b)は多数の円形の小貫通孔を空隙12とするセッターであり、第2図、第3図はそれぞれ四角形、三角形の貫通孔を空隙12とするセッターである。これらセッターは、所定の条件に適合した小さい均一に分布した空隙12を有するものであれば、円形、三角形、四角形、六角形、楕円形等、空隙の形状には制限がない。
上記空隙を有する板状体は公知のプレス成形法、押出成形法、射出成形法、ドクターブレード法などによって成形され、押出成形法やドクターブレード法によって成形する場合は板状体を成形後パンチングプレスして空隙が成形される。またプレス成形法や射出成形法で成形する場合には同様に板状体を成形後空隙を作製してもよいが、金型内で一括して成形してもよい。」(明細書第4頁第5行?第5頁第2行)
(オ)特開平5-58717号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の事項が記載されている。
(オ-1)「高純度アルミナ80?90wt%に対して単斜晶ジルコニア20?10wt%の割合で配合し、さらに高純度アルミナ及び単斜晶ジルコニア100wt%に対して0.3?1.0wt%の割合で酸化イットリウムを添加して炉材原料を調合し、この炉材原料を焼成した焼結体からなるセラミック焼成用炉材。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)、
(オ-2)「【実施例】図1に示す焼成用炉材(セッター)1は、・・・炉材原料を調製し、この炉材原料を・・・成形し、これを・・・1600℃で・・・焼成したものである。」(第2頁右欄第29?38行、段落【0012】)
(ii)対比・判断
引用例1には、記載事項(ア-3)に「成形体に打抜加工により貫通孔を形成させ、焼成した」「焼成用セッターの製造方法」が記載されている。そして、該記載中の「焼成用セッター」に関して、記載事項(ア-2)に「材質が」「アルミナを主成分とする複合材料」であることが記載されており、また、記載事項(ア-3)の上記記載中の「成形体」に関して、記載事項(ア-5)に「粉末」を使用し、「成形」して「得られた」ものであることが記載され、さらに、記載事項(ア-3)の上記記載中の「貫通孔」に関して、記載事項(ア-1)に「1個の面積が」「0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にある」ことが記載され、記載事項(ア-6)に「孔径が実質的に等しい複数の円形」のものであることが示されている。
引用例1における上記の記載を本願補正1発明1の記載振りに則して整理すると、引用例1には、「材質がアルミナを主成分とする複合材料であり、粉末を使用し、成形して得られた成形体に打抜加工により1個の面積が0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にあり、孔径が実質的に等しい複数の円形の貫通孔を形成させ、焼成した焼成用セッターの製造方法」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。
そして、本願補正1発明1と引用1発明を対比すると、アルミナがセラミックスの1つであることが明らかであるから、引用1発明の「材質がアルミナを主成分とする複合材料であり、粉末を使用し、成形して得られた成形体に」「加工により」「貫通孔を形成させ、焼成した焼成用セッター」、「孔径」、「複数の」「貫通孔」及び「孔径が実質的に等しい」「貫通孔」が、それぞれ、本願補正1発明1の「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、」「アルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である」「貫通孔を有するセラミックスセッター」、「内径」、「複数の貫通孔」及び「その全てが一様な大きさの」「貫通孔」に相当する。
そして、引用1発明において、「貫通孔」が成形体に打抜加工により形成させた、孔径が実質的に等しい複数の円形のものであるから、該「貫通孔」が全てが直線状をしており、且つその長手方向において孔径が略同一であることは明らかであり、また、該「貫通孔」が1個の面積が0.07mm^(2)から36mm^(2)の範囲内にある円形のものであるから、その孔径は〔0.07×(2)^(2)/π〕^(1/2)=0.30mmから〔36×(2)^(2)/π〕^(1/2) =6.77mmであって、本願補正1発明1の貫通孔の内径の数値範囲の「0.3?0.7mm」と重複しており、さらに、成形体を成形する際に所望の形状に成形すること及びセラミックス粉末を用いて得た成形体を焼成して焼成体を製造する際に焼成前に成形体を乾燥することは当業者であれば当然行うことであるから、両者は、「セラミックス系電子デバイス部品の製造や、射出成形によって得られる金属系部品の製造の際における熱処理又は焼成工程で用いられる、アルミナを含む粉末を成形し焼成してなる焼成物である複数の貫通孔を有するセラミックスセッターを製造する方法であって、アルミナを含有する粉末を用いて、その全てが一様な大きさの直線状の複数の貫通孔を有する所望の形状の成形物に成形し、該成形物を乾燥後、該乾燥した成形物を焼成することで、その長手方向において内径が略同一であり、該内径が0.3?0.7mmである貫通孔を形成するセラミックスセッターの製造方法」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点ア:本願補正1発明1では「可塑性を付与したアルミナを含む粉末」及び「『アルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した』『可塑化粉末』」を用いるのに対して、引用1発明ではアルミナを含む粉末を用いるものの、可塑性を付与したアルミナを含む粉末及びアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した可塑化粉末を用いることについての記載がない点
相違点イ:本願補正1発明1では「少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末」を用いるのに対して、引用1発明ではアルミナを含む粉末を用いるものの、アルミナの含有量についての記載がない点
相違点ウ:本願補正1発明1では「『押し出し成形により』『貫通孔を有する』『成形物に成形』」するのに対して、引用1発明では成形体に打抜加工により貫通孔を形成させており、押し出し成形により貫通孔を有する成形物に成形することについての記載がない点
相違点エ:本願補正1発明1では「1400?1700℃の温度で焼成する」のに対して、引用1発明では焼成するものの、1400?1700℃の温度で焼成することについての記載がない点
そこで、上記相違点ア?エについて検討する。
(a)相違点アについて
本願補正1発明1おける「可塑性を付与したアルミナを含む粉末」という構成事項は、平成18年2月16日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の段落【0024】の「前記したような粉末材料に、下記に挙げるような有機化合物を適宜に添加して粉末に可塑性を付与した」という記載及び段落【0025】の「有機化合物としては、アルミナ粉体等に適度な可塑性を付与することで」という記載等からみて、本願補正1発明1における「『アルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した』『可塑化粉末』」という構成事項と同一である。
そして、アルミナがセラミックスの1つであることが明らかであり、また、セラミックス粉末を用いて複数の貫通孔を有するセッターを製造する際にセラミックスを含有する粉末に有機化合物を加えることは慣用例1〔記載事項(イ-1)〕に記載されているように本願の優先権主張日前から慣用されている。
してみると、引用1発明に対して可塑性を付与したアルミナを含む粉末及びアルミナを含有する粉末に有機化合物を添加して、該粉末に可塑性を付与した可塑化粉末を用いるものとすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
(b)相違点イについて
アルミナ含有量が70重量%以上のアルミナ質基材を用いて焼成用治具を製造することは周知例1〔記載事項(ウ-1)?(ウ-2)〕に記載されているように本願の優先権主張日前周知である。
そして、上記焼成用治具が引用1発明に係る焼成用セッターと同様にセラミックス粉末を使用して製造されるセッターに該当することは明らかであり、また、引用1発明に係る焼成用セッターは材質がアルミナを主成分とする複合材料であるからアルミナ質基材を用いたものであることも明らかである。
してみると、引用1発明に対して少なくとも70重量%のアルミナを含有する粉末を用いたものとすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
(c)相違点ウについて
引用1発明では「成形体に打抜加工により貫通孔を形成させる」ものの、記載事項(ア-4)に記載されるように、貫通孔が形成された成形体を得る方法としては、特に限定する必要はない。
そして、多数の貫通孔を空隙とするセッターを製造する際に押出成形法によって板状体を成形後、打抜きプレスを意味するパンチングプレスにより上記空隙を成形することは周知例2〔記載事項(エ-1)〕に記載されているように本願の優先権主張日前周知であり、また、「セラミックス粉末を用いて複数の貫通孔を有するセッターを製造する際に複数の貫通孔を有する成形体を成形する場合を含む、セラミックス粉末を用いて複数の開孔を有する構造体を製造する」際に複数の開孔を有する成形体を成形する場合に、該成形体を押出成形を用いて成形することは慣用例1〔記載事項(イ-1)〕に記載されているように本願の優先権主張日前から慣用されている。
してみると、引用1発明において打抜金型で打抜き打抜加工して貫通孔が形成された成形体を得ることに換えて、押し出し成形により複数の貫通孔を有する成形物に成形するものとすることは当業者であれば適宜なし得ることである。
(d)相違点エについて
アルミナを70wt%以上含有する粉末を用いて成形、焼成してセッターを製造する際に1400?1700℃の温度で焼成することは周知例3〔記載事項(オ-1)?(オ-2)〕に記載されているように本願の優先権主張日前周知である。
そして、引用1発明に係る焼成用セッターを製造する際に1400?1700℃の温度で焼成することを妨げる事情は引用例1に記載されていない

してみると、引用1発明において1400?1700℃の温度で焼成することは当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、上記した相違点(ア)乃至(エ)に係る本願補正1発明1の構成を採ることにより奏される「電子デバイス部品等の熱処理又は焼成工程において使用した場合に、有機物や揮発成分の高い除去効率を達成でき、更に、セッター内部での雰囲気ガスの均一な分散を実現することができる優れたセッターを簡易且つ経済的に製造でき、また、高品質の電子デバイス部品等を安定して且つ生産性よく得ることが達成できると同時に、更に、電子デバイス部品等を使用するセラミックス系電子デバイス製品等の品質及び生産性の向上に寄与できる」という効果も当業者であれば予測し得る範囲内のものである。
してみると、本願補正1発明1は、引用1発明及び慣用例1に記載されているような慣用技術並びに周知例1、2、3に記載されているような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願補正1発明1は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
〔3〕むすび
以上のとおりであるから、平成18年2月16日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反してなされたものであるから、同補正は、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4.本願発明
平成18年3月20日付けで提出された手続補正書によりなされた補正及び同年2月16日付けで提出された手続補正書によりなされた補正が上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成17年9月12日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項10に記載された発明(以下、「本願発明10」という。)は、前記「3.〔1〕」に記載されている「補正前の【請求項10】に記載された発明」のとおりである。

5.引用文献
上記の「引用例1」(特開平11-79853号公報)、「慣用例1」(特開2000-226253号公報)、「周知例1」(特開平6-82166号公報)、「周知例2」〔実願昭63-107756号(実開平2-28099号)のマイクロフィルム〕及び「周知例3」(特開平5-58717号公報)には前記「3.〔2〕(i)」に記載した事項が記載されており、また、引用1発明の構成は「3.〔2〕(ii)」に記載されたとおりである。

6.対比・判断
本願発明10は、本件補正1後の請求項1に記載された発明が本願補正1発明1であるから、本件補正1発明1から貫通孔が押し出し成形により形成されたものにする限定と、貫通孔の内径を「0.3?1mm」から「0.3?0.7mm」にする減縮を省いたものである。
そうすると、本願発明10の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正1発明1が、前記「3.〔2〕」に記載したとおり、引用1発明及び慣用例1に記載されているような上記の2つの慣用技術並びに周知例1、2、3に記載されているような上記の諸周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明10も、同様の理由により引用1発明及び慣用例1に記載されているような慣用技術並びに周知例1、2、3に記載されているような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明10は、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である引用例1に記載された発明及び慣用例1に記載されているような慣用技術並びに周知例1、2、3に記載されているような周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-11 
結審通知日 2008-08-12 
審決日 2008-08-27 
出願番号 特願2001-252451(P2001-252451)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (C04B)
P 1 8・ 57- Z (C04B)
P 1 8・ 121- Z (C04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三崎 仁  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 木村 孔一
大工原 大二
発明の名称 セラミックスセッター及びその製造方法  
代理人 吉田 勝広  
代理人 近藤 利英子  
代理人 吉田 勝広  
代理人 近藤 利英子  

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