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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B29C |
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管理番号 | 1185693 |
審判番号 | 不服2006-11603 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-06-08 |
確定日 | 2008-10-09 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第306685号「タイヤ加硫機」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 5月25日出願公開、特開平11-138545〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年11月10日の出願であって、平成17年11月18日付けで拒絶理由が通知され、平成18年1月13日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月8日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年6月20日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年8月24日付けで前置報告がなされ、その後、当審において平成20年3月24日付けで審尋がなされ、同年5月22日に回答書が提出されたものである。 そして、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成18年6月20日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められ、そのうち本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 タイヤ金型を組付けてタイヤを加硫するものであって、下部固定板に立設された支柱を案内として昇降可能で、前記タイヤ金型の上型部分が組付けられる上部可動板と、一端が前記下部固定板または前記上部可動板の一方に固定され、他端が前記下部固定板または前記上部可動板の他方に対し着脱自在に固定された複数本のタイロッドと、前記下部固定板のタイヤ金型中心と同心位置に配設され、かつ圧力媒体が供給される加圧室と、該加圧室に昇降自在に配設された加圧ピストン板とを備え、前記加圧ピストン板と前記上部可動板との間で前記タイヤ金型を締付けるタイヤ加硫機において、前記加圧ピストン板の外径を前記タイヤ金型の外径と最大タイヤの外径との中間径としたことを特徴とするタイヤ加硫機。」 なお、本願発明は、願書に最初に添付した明細書の特許請求の範囲の請求項3に係る発明における請求項1を引用するものについて、「2組のタイヤ金型」の「2組の」を削除し、上位の概念としたものに相当するものである。 2.原査定の理由の概要 原査定の理由とされた平成17年11月18日付け拒絶理由通知書に記載した理由の概要は以下のとおりである。 「1.この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 (引用文献等については引用文献等一覧参照) 理由1/請求項1?4/引用文献1、2 引 用 文 献 等 一 覧 1.特開平09-076237号公報 2.特開平09-029746号公報」 3.合議体の判断 3-1.刊行物の記載事項 原査定において引用された刊行物である引用文献2には、以下の事項が記載されている。 (1)「【請求項1】 タイヤ加硫用金型の上型部分を支持する上部プレートと、同タイヤ加硫用金型の下型部分を昇降可能に支持する下部プレートと、同下部プレートに組み込んだ金型締付用ピストン板と、前記上部プレート及び前記下部プレートの一方に一端部を固定するとともに同上部プレート及び同下部プレートの他方に設けた穴に他端部の挿入される複数本のロッドと、同穴に挿入された同ロッドの他端部との間に出入可能なロックプレートとを具えていることを特徴としたタイヤ加硫用金型組立体。」(特許請求の範囲請求項1) (2)「【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等に装着する空気タイヤの加硫設備に適用するタイヤ加硫用金型組立体に関するものである。」(段落【0001】) (3)「202は一端部が下部プレート204に固定され、他端部が上部プレート201に形成された穴201aに挿入可能な複数のロッド」(段落【0033】) (4)「ブロック206には、前記ボルスタープレート140(図9、10参照)に上端部が固定されたボルスタープレート140と上部プレート201とを連結するロッド215の下端部に形成したフランヂ215aとが通過可能な穴206bが形成されている。またロックプレート205には、同フランヂ215aが通過可能な穴部205fと同フランヂ215aを係止する棚部205eとを有する穴205dが形成されており、同フランヂ215aが棚部205eに係止されたとき、ボルスタープレート140と上部プレート201とが連結状態になる。」(段落【0035】) (5)「209は下部プレート204に昇降可能に組込まれたピストン板で、下部プレート204とピストン板209との間には、公知のシール部材(例えばOリング)が組込まれて、下部プレート204とピストン板209とで囲まれた気密室210が形成されている。 また一端部が気密室210に開口する通路(図示せず)の他端部には、圧力流体給排装置に至る管路接続用クイックカプラ(図示せず)が取付けられており、気密室210に圧力流体を給排出することにより、ピストン板209が昇降し、ピストン板209に取付けられた断熱板208を介して載架された前記下型部分200bが押上げられて、金型200の締付が行われる。」(段落【0037】?【0038】) (6)「予め気密室210に充填された圧力流体の作用によりピストン板209が下型部分200bに押付けられ、タイヤ内方に注入された加熱加圧媒体の圧力により生じるタイヤ金型200を開こうとする力に抗して同金型200が閉じた状態に保持されるが、この金型押付力は、上部プレート201、ロックプレート205、ロッド202、下部プレート204を介して相殺されるので、外部から力を付与する必要がない。」(段落【0040】) (7)「加硫が終了して、金型搬送手段3により、金型開閉ステーション2の金型開閉装置6に搬入されてきた金型組立体Mは、下部プレート204をフレーム6eにロックした後、タイヤ内方から加熱加圧媒体を排出し、気密室210から加圧流体を排出する。この間にボルスタープレート140が降下して、ロッド215の下端部が上部プレート201に当接する。この工程が完了したら、ロックプレート205が滑動して、上部プレート201とロッド202との連結が解除されると同時に上部プレート201とロッド215とが連結する(図4参照)。 次いでボルスタープレート140が上昇して、公知手順により金型200が開き、加硫済タイヤの取出し、それから次に加硫される未加硫タイヤの搬入が行われた後、未加硫タイヤの整形並びに金型200の閉型が行われる。金型200が閉じ終ったら、ロックプレート205が上記と逆に滑動して、上部プレート201とロッド215との連結が解除されると同時に上部プレート201とロッド202との連結が行われ、次いで上記と逆の手順で気密室210に加圧媒体が充填され、タイヤ内方に加熱加圧媒体が注入されて、加硫工程に入り、加硫ステーションの所定位置に移送して、加硫が続行する。」(段落【0042】?【0043】 (8)「 」(図1) 3-2.対比、判断 3-2-1.引用文献2に記載された発明の認定 摘示(1)及び(2)の記載からみて、引用文献1には、「タイヤ加硫用金型の上型部分を支持する上部プレートと、同タイヤ加硫用金型の下型部分を昇降可能に支持する下部プレートと、同下部プレートに組み込んだ金型締付用ピストン板と、前記上部プレート及び前記下部プレートの一方に一端部を固定するとともに同上部プレート及び同下部プレートの他方に設けた穴に他端部の挿入される複数本のロッドと、同穴に挿入された同ロッドの他端部との間に出入可能なロックプレートとを具えているタイヤ加硫用金型組立体が適用された空気タイヤの加硫設備。」が記載されている。 また、摘示(3)には、ロッド202の一端部が下部プレート204に固定され、他端部が上部プレート201に形成された穴201aに挿入可能であること、及び摘示(5)には、上部プレート201とロッド202との連結及びその解除を行うことがそれぞれ記載されている。 そして、摘示(4)において、ボルスタープレート140と上部プレート201とをロッド215で連結すること、及び摘示(7)において、加硫終了後、上部プレート201とロッド215とが連結し、次いでボルスタープレート140が上昇して金型200が開き、その後金型の閉型が行われることがそれぞれ記載されていることから、上部プレートは昇降可能なものであると認められる。 さらに、摘示(5)には、下部プレート204とピストン板209との間に気密室210が形成され、気密室210に圧力流体を給排出することにより、ピストン板209が昇降することが記載されている。 また、摘示(8)からみて、ピストン板209は、タイヤ加硫用金型200の中心線D-Dと同心位置に配置されているものと認められる。 してみると、引用文献1には、「タイヤ加硫用金型の上型部分を支持し、昇降可能な上部プレートと、同タイヤ加硫用金型の下型部分を昇降可能に支持する下部プレートと、同下部プレートに組み込まれ、前記タイヤ加硫用金型中心と同心位置に配置された金型締付用ピストン板と、下部プレートと同金型締付用ピストン板との間に形成され、圧力流体を給排出することにより同金型締付用ピストン板を昇降させる気密室と、前記下部プレートに一端部を固定するとともに同上部プレートに設けた穴に他端部が挿入されて上部プレートとの連結及びその解除がなされる複数本のロッドと、同穴に挿入された同ロッドの他端部との間に出入可能なロックプレートとを具えているタイヤ加硫用金型組立体が適用された空気タイヤの加硫設備。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 3-2-2.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「上部プレート」、「下部プレート」、「金型締付用ピストン板」、「気密室」及び「ロッド」は、本願発明における「上部可動板」、「下部固定板」、「加圧ピストン板」、「加圧室」及び「タイロッド」にそれぞれ相当するものと認められる。 してみると、本願発明と引用発明とは、「タイヤ金型を組付けてタイヤを加硫するものであって、昇降可能で、前記タイヤ金型の上型部分が組付けられる上部可動板と、一端が前記下部固定板に固定され、他端が前記上部可動板に対し着脱自在に固定された複数本のタイロッドと、前記下部固定板のタイヤ金型中心と同心位置に配設され、かつ圧力媒体が供給される加圧室と、該加圧室に昇降自在に配設された加圧ピストン板とを備え、前記加圧ピストン板と前記上部可動板との間で前記タイヤ金型を締付けるタイヤ加硫機。」である点で一致しているが、以下の点において相違している。 <相違点1> 本願発明は、上部可動板を昇降可能とする案内機構として、下部固定板に立設された支柱を有するのに対し、引用発明は、この支柱について規定されていない点 <相違点2> 本願発明は、加圧ピストン板の外径をタイヤ金型の外径と最大タイヤの外径との中間径としたものであるのに対し、引用発明は、加圧ピストン板、すなわち金型締付用ピストン板の外径について規定されていない点 3-2-3.相違点についての検討 (ア)相違点1について 上部可動板と下部固定板を備えるタイヤ加硫機において、上部可動板の昇降を案内する機構として周知のものである支柱を、下部固定板または上部可動板のいずれかに設けることは、当業者が適宜設計可能な事項にすぎない。 そして、上部可動板の昇降を案内する機構である支柱を下部固定板に立設することにより、格別の効果を奏するものとも認められない。 (イ)相違点2について 引用文献2の摘示(6)には、金型締付用ピストン板によって、タイヤ内方に注入された加熱加圧媒体の圧力により生じる金型を開こうとする力に抗して金型が閉じた状態に保持されることが記載されており、加熱加圧媒体の圧力は、金型のキャビティが存在する部分であるタイヤの外径までの範囲で生じるものであることから、その範囲をカバーし、加熱加圧媒体の圧力に抗するために、最大タイヤの径以上の径を有するピストン板によって加圧して金型を締め付けることは、当業者が当然に考慮することである。 他方、ピストン板の外径について、装置の安全及びコストを踏まえれば、装置部材の寸法を必要以上に大きくすることなく、必要最小限程度にするものと考えられ、また、引用文献2の摘示(8)をみると、タイヤ金型の外径とピストン板の外径は略同一であると認められるところ、ピストン板の外径について、最大タイヤの径以上のもののうち、タイヤ金型の外径と最大タイヤの外径との中間の径とすることは、当業者が適宜選択し得る程度のことにすぎない。 そして、加圧ピストン板の外径を上記のように規定することにより、格別の効果を奏するものとも認められない。 この点について、審判請求人は、平成18年6月20日に提出した審判請求書の手続補正書(方式)において、「タイヤ金型の外径よりも加圧ピストン板の外径を小さくすることが可能となり、これによって加圧ピストン板に用いられるシール部材の径を極力小さくできるとともに、加圧部の製作コストを最小にできます。 このシール部材の径の最小化による具体的効果としまして、消耗品であるシール材の保守コストを低減できます。また、コンパクトであるため、保守性が良くなり、機械のダウンタイムを短くでき、生産効率を改善することができます。さらに、大型シールに比べてシールの安定性が増し、製品の信頼性の向上を図ることができます。しかも、加硫後の加圧媒体の排気量が低減するため、低騒音及び省エネルギー化に貢献することができます。また、加圧部の製作コストの最小化による具体的効果としまして、ピストン板の素材費及び機械加工費を低減させることができます。その上、加圧室のボリューム縮減によって、ベースプレートの機械加工費を低減できます。」と主張している。 しかしながら、審判請求人が主張する効果は、加圧ピストン板の外径をタイヤ金型の外径と最大タイヤの外径との中間径としたことによる効果ではなく、単に加圧ピストン板の外径を小さくしたことによる効果にすぎないものであって、装置部材の大きさを必要最小限とすることは、当業者が当然に考慮することである以上、この効果が格別のものであるとすることはできない。 3-2-4.まとめ したがって、本願発明は、引用文献2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-07 |
結審通知日 | 2008-08-08 |
審決日 | 2008-08-27 |
出願番号 | 特願平9-306685 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B29C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大島 祥吾 |
特許庁審判長 |
宮坂 初男 |
特許庁審判官 |
亀ヶ谷 明久 野村 康秀 |
発明の名称 | タイヤ加硫機 |
代理人 | 奥山 尚一 |
代理人 | 松島 鉄男 |
代理人 | 有原 幸一 |