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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) G01N
管理番号 1185695
審判番号 不服2006-12295  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-15 
確定日 2008-10-09 
事件の表示 特願2001- 56415「表面プラズモン共鳴励起蛍光を利用した高感度センシング素子」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月11日出願公開、特開2002-257731〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成13年 3月 1日の出願であって、その請求項1,2に係る発明は、平成18年6月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して、平成20年 4月23日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。

ここで、上記拒絶の理由は、以下のとおりである。

『1.手続の経緯
本願は、平成13年3月1日の出願であって、平成18年4月27日付で拒絶査定がされ、これに対し同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。


2.平成18年6月15日付の手続補正について
平成18年6月15日付の手続補正は、特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものと認められる。


3.本願発明について
本願の請求項1に係る発明および請求項2に係る発明は、それぞれ平成18年6月15日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1および請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】 光透過性固体基板22と、マッチング媒体27を介し光透過性固体基板22の励起光入射側表面に接合されたプリズム21と、光透過性固体基板22の他面に金属薄膜24を介して堆積された光応答薄膜25と、光応答薄膜25上方の測定空間Vを閉じる透光板29と、光透過性固体基板22を搭載し、全反射角を超え且つ表面プラズモン共鳴又は導波モード条件を満足する入射角θで励起光L_(1)をプリズム21の一面に入射させる回転量に調節される回転テーブル23と、測定対象流体Sを測定空間Vに送り込む流入管28in,排出管28outと、入射角θで光応答薄膜25に入射し閉じ込められた励起光L_(1)による励起で光応答薄膜25から発する蛍光L_(2)が測定空間Vの測定対象流体Sを透過して測定系に送られる出射光路とを備え、前記光応答薄膜25は蛍光性の脂肪族有機化合物,芳香族有機化合物,複素環族有機化合物又はその分子集合体から成膜された薄膜であることを特徴とする表面プラズモン共鳴励起蛍光法による高感度センシング素子。」(以下「本願発明1」という。)
「 【請求項2】 測定対象流体Sが送り込まれる測定空間Vが内部に形成された光透過性固体基板41と、光透過性固体基板41の一面に積層された金属薄膜42及び光応答薄膜43と、光透過性固体基板41の他面に装着された集光レンズ31と、金属薄膜42及び光応答薄膜43の上方に配置され、表面プラズモン共鳴又は導波モード条件を満足する入射角θで励起光L_(1)を光応答薄膜43に入射させ閉じ込める励起光源46を内蔵した透明媒質45と、入射角θで光応答薄膜43に入射し閉じ込められた励起光L_(1)による励起で光応答薄膜43から発する蛍光L_(2)が測定空間Vの測定対象流体Sを透過して測定系に送られる出射光路とを備え、前記光応答薄膜43は蛍光性の脂肪族有機化合物,芳香族有機化合物,複素環族有機化合物又はその分子集合体から成膜された薄膜であることを特徴とする表面プラズモン共鳴励起蛍光法による高感度センシング素子。」(以下「本願発明2」という。)


4.引用例について
(1)平成6年2月4日に公開された特開平 6- 27023号公報(以下「引用例1」という。)には、
「【0010】
【実施例】以下に本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に基づく光センサーの第1実施例を示す概要図である。透明基材として高屈折率プリズム7を用い、このプリズムの一面には金属薄膜8を蒸着させている。またこの金属薄膜8には更に分子認識機能物質及び発光物質を含む分子認識機能膜9を電解重合法によって形成し、分析試料液の流れる流路10に直接接して設置している。試料の測定時には、励起光発生器11から発せられた角度分布を持った光を、高屈折率プリズム7によって全反射角以上の角度をもって金属薄膜8へ照射する。このとき金属薄膜8の裏面に図示しないエバネッセント波が発生し、この波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって発光物質から蛍光が発生する。この蛍光を、流路10を隔てて設置した光検出器12によって検知する。光検出器12は、エバネッセント波及び表面プラズモンの両波が直接受光されない程度に離れて設置することにより、分子認識機能膜9から発生した蛍光や燐光のみを検出することができる。」、
「【0013】分子認識機能膜9には公知の酵素、抗体等のタンパク質を分子認識機能物質として使用することができる。また発光物質としては、公知の蛍光又は燐光を発する物質を使用することができる。発光物質の例を挙げると、フルオレセイン、チオフラビン、エオシン、ローダミンB等がある。励起光の照射は、使用する発光物質の光学特性に合わせた光源を選択する必要がある。これらの発光物質はエバネッセント波及びこれに励起された表面プラズモンによって発光するが、分子認識機能物質が特定物質を触媒した際に、発光強度が低下又は増加する。」、
「【0018】図2は本発明に基づく光センサーの第2実施例を示す概略図である。透明基材として高屈折率プリズム7及び透明基板13を用い、両者の間を屈折率調整オイル14で満たした。この透明基板13の一面には前もって金属薄膜8を蒸着させ、更に分子認識機能物質及び発光物質を含む分子認識機能膜9をLB法によって形成しておいた。次に透明基板13の分子認識機能膜9側が、分析試料液の流れる流路10に直接接するように設置した。試料の測定時には、励起光発生器11から発せられた角度分布を持った光を、高屈折率プリズム7、屈折率調整オイル14及び透明基板13を透過させて全反射角以上の角度をもって金属薄膜8へ照射した。このとき発生した図示しないエバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって、発光物質から蛍光が発生した。この蛍光を、流路10を隔てて設置した光検出器12によって検知した。
【0019】ところで、上記透明ガラス基板13として屈折率nd=1.523のものを使用し、この上にスパッタ法により金属薄膜8として白金膜を5nmの膜厚で形成した。次にこの金属薄膜8を作用極として電解重合を行った。参照電極に飽和カロメル電極(SCE)を用い、0.8V vs SCEの条件で、分子認識機能物質としてのグルコースオキシダーゼ 200mg/dl、膜材料としてのピロール 0.1M、発光物質としての[Ru(phen)_(3)]Cl_(2) 1M、及び緩衝剤としてのKCl 1Mを含有する水溶液を、通電量25C/cm^(2)で電解し、2cm×3cmの面積に膜厚0.1μmの薄膜を形成した。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例1には、
「透明基材として高屈折率プリズム7及び透明基板13を用い、両者の間を屈折率調整オイル14で満たし、この透明基板13の一面には前もって金属薄膜8を蒸着させ、更に分子認識機能物質及び[Ru(phen)_(3)]Cl_(2) 1Mからなる発光物質を含む分子認識機能膜9をLB法によって形成しておき、透明基板13の分子認識機能膜9側が、分析試料液の流れる流路10に直接接するように設置し、励起光発生器11から発せられた角度分布を持った光を、高屈折率プリズム7、屈折率調整オイル14及び透明基板13を透過させて全反射角以上の角度をもって金属薄膜8へ照射し、エバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって、発光物質から蛍光が発生し、この蛍光を、流路10を隔てて設置した光検出器12によって発光強度が低下又は増加するのを検知する光センサー。」(以下「引用例1実施例2に記載された発明」という。)
および、
「プリズムの一面に金属薄膜8を蒸着させ、更に分子認識機能物質及びフルオレセイン、チオフラビン、エオシン、ローダミンB等の発光物質を含む分子認識機能膜9を形成し、分析試料液の流れる流路10に直接接して設置し、励起光発生器11から発せられた角度分布を持った光を、高屈折率プリズム7によって全反射角以上の角度をもって金属薄膜8へ照射し、エバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって発光物質から発生する蛍光を、流路10を隔てて設置した光検出器12によって発光強度が低下又は増加するのを検知する光センサー。」(以下「引用例1実施例1に記載された発明」という。)
が開示されていると認めることができる。

(2)平成10年5月22日に公開された特開平10-132749号公報(以下「引用例2」という)には、
「【0022】つぎに図3に移ると、本発明による集積蛍光センサとその利点が示されており、一般に200で表されている。図3は、光透過性容器205の内部に各種センサ部品が封入されていることを示している。インタフェース207,210は容器205に接続され、センサ200と外部との間の通信路を提供している。1つの実施例においては、インタフェース207は、外部の電源をセンサ200に供給するために使用されており、インタフェース210は検出器220の出力である。
【0023】図示のとおり、インタフェース207は、経路216,218を介してセンサの各種部品に接続され、検出器220は経路219を介してインタフェース210に接続されている。
【0024】蛍光性化学物質230と試料240を反応させるセンシング表面228に、気体溶液または液体溶液などの試料240を接触させる。蛍光性化学物質230はセンシング表面228に堆積しており、励起エネルギ224に対して所定の角度をもたせセンサ200に配置されている。当業者にはすべて公知のディッピング、スピンコーティング、パッドプリンティングまたは気相成長など、各種プロセスの1つにより蛍光性化学物質230を堆積させることができる。1つの実施例においては、蛍光性化学物質層230は、試料300と反応して光エネルギ226を放射する蛍光性化学物質の薄膜で構成されている。放射光226は、容器205内の所定の位置に固定されている検出器220の方向に向けられる。
【0025】蛍光性化学物質230に必要な励起エネルギは光源212から供給される。発光ダイオード、レーザまたは小型白熱ランプを含む各種の放射源を使用することができる。他の形式の光を使用する構想もある。センサ200に対する電力は、リード線216を介してインタフェース207から供給される。光源212からの励起エネルギ214は、1つ又はそれ以上の光学レンズまたは容器205の焦点面でもよい光学的構成体222に向けられる。1つの実施例においては、全幅が最大値の半分で約80ナノメートルあり、ピーク波長が約450ナノメートルの放射エネルギが、層230の化学物質に対する励起エネルギ214の適切な結合を十分保証している。」、
「【0027】試料240が存在している場合、蛍光放射226の特性が変化して、励起光214に比較して低輝度の放射光になる。センシング表面228は、検出器220について空間をあけて配置され、検出器220の受光面221に十分な量の放射光226が到達することを保証して、検出器表面221に入射する主励起光222を最小にする。」、
と記載されている。これらの記載によれば、引用例2には、
「光透過性容器205の内部に各種センサ部品が封入されており、蛍光性化学物質層230は試料300と反応して光エネルギ226を放射する蛍光性化学物質の薄膜で構成され、蛍光性化学物質230はセンシング表面228に堆積し、蛍光性化学物質230に必要な励起エネルギは光源212から供給され、放射光226は、容器205内の所定の位置に固定されている検出器220の方向に向けられ、試料240が存在している場合蛍光放射226の特性が変化する集積蛍光センサ。」
が開示されていると認めることができる。

(3)平成13年1月26日に公開された特開2001- 21565号公報(以下「引用例3」という。)には、
「【0011】
【実施の形態】本発明に従った蛍光免疫分析装置は、たとえば図1に示すように三角形ガラスプリズム10を回転テーブル1に載置している。三角形ガラスプリズム10の一面には抗体を固定化した金属薄膜11が設けられており、試料溶液が金属薄膜11に接触しながら流れるようにフローパイプ12及びフローセル13で流路を構成する。フローパイプ12に替えて固定セルを使用することも勿論可能である。金属薄膜11は、三角形ガラスプリズム10の一面に直接形成し、或いは金属薄膜11を形成したガラス基板17(図3)を三角形ガラスプリズム10に貼り合せることにより設けられる。金属薄膜11が設けられる三角形ガラスプリズム10又はガラス基板17としては、近紫外線又は近赤外線の透過率が高い高屈折率である限り材質に制約を受けるものではなく、光学用ガラスBK-7,LaSF-N30,SF-10(ドイツSchott社製)等が使用される。金属薄膜11としては、Au,Ag,Cu,Pt,Ni,Al等が使用可能である。」、
「【0013】励起光源2から出射されたレーザ光は、ビームスプリッタ3aで透過光及び反射光に分割される。透過光は、更にビームスプリッタ3bで透過光及び反射光に分割され、透過光が三角形ガラスプリズム10のプリズム面に導かれる。プリズム側から三角形ガラスプリズム10に入射した透過光は、屈折して金属薄膜11に投影され、金属薄膜11で反射した後、三角形ガラスプリズム10の他のプリズム面から出射される。三角形ガラスプリズム10に対する入射角は、回転テーブル1 の回転角度を調整することにより設定・変更される。
【0014】三角形ガラスプリズム10から出射された光を光検出器4aで検出し、反射光強度Iを測定する。また、ビームスプリッタ3bで分割された反射光を光検出器4bで検出し、入射光強度I0 を測定する。反射光強度I及び入射光強度I0 は、それぞれ光検出器4a及び光検出器4bからI/I_(0) 回路5に出力される。I/I_(0) 回路5で反射率I/I_(0) が求められ、コンピュータ6に出力され記録される。三角形ガラスプリズム10を載せた回転テーブル1を回転させながら反射率I/I_(0) の測定するとき、反射率I/I_(0) が最小になる入射角、すなわち共鳴角θR が求められる。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例3には、
「一面に金属薄膜11が設けられた三角形ガラスプリズム10を回転テーブル1に載置しており、三角形ガラスプリズム10に対する入射角は、回転テーブル1 の回転角度を調整することにより設定・変更され、反射率I/I_(0) が最小になる入射角、すなわち共鳴角θR が求められる分析装置。」
が開示されていると認めることができる。

(4)平成7年7月14日に公開された特開平 7-174693号公報(以下「引用例4」という。)には、
「【0037】本発明は、上述の方法を実施する働きをする装置に関するものでもある。本発明の態様の1つによれば、生体分子の存在および濃度の両方または一方を検出するためのこうした装置は、可視光のスペクトル内であることが望ましい電磁波源、電磁波源から放出される電磁波にp偏向を施す偏向手段と、p偏向を施された電磁波の方向付けをし、光学的に濃度の高い媒体を通って、光学的に濃度の高い媒体と光学的に希薄な媒体の間の界面に達するようにするための手段と、界面上の、金属フィルムが望ましい。薄い導電性フィルムまたは半導体フィルムと、界面において生体分子によって反射され、あるいは、発生する放射線をモニタする第1のモニタ手段と、界面において反射される電磁波の強度を検出する強度検出手段と、界面において反射される電磁波の強度に従って、衝突するp偏向電磁波の入射角を制御し、強度が、表面プラズモン共鳴の発生に対応した最小値にほぼ保たれるようにする制御手段から構成される。
【0038】当該技術の熟練者には明らかなように、上述の第2のモニタ手段と強度検出手段は、1つのコンポーネントに一体化することができるし、あるいは両方のタスクを共通のコンポーネントによって実施することもできる。同様に、第1と第2のモニタ手段は、共通のコンポーネントにすることが可能である。上記はとりわけ、吸収を利用して、生体分子を検出する場合、従って、界面で反射する電磁波の角度、および、生体分子によって反射する電磁波の角度が、ほんのわずかしか変わらない場合に当てはまることである。しかし、上述の角度における差が顕著な、蛍光および燐光を利用する場合には、異なるモニタ手段を利用することが可能である。」、
「【0040】入射角を制御する(あるいは補正する)ための各種代替がある。光学的に濃度の高い媒体が透明なプリズム(例えば、ガラス)である望ましい実施例の場合、こうしたプリズムは、制御手段によって発生する制御信号に基づいて、モータ(ステップ・モータのような)で回転する回転式支持体に取りつけることが可能である。入射角がΔθだけ回転すると、第2のモニタ手段は、2×Δθだけ回転する。従って、ガラス製プリズムがΔθだけ回転すると、第2のモニタ手段を2×Δθだけ回転させるギヤのような伝動手段を備えるのが有利である。この機能を果たすテーブルまたはディスクは、当該技術において周知のところであり、市販されている。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例4には、
「プリズムを回転式支持体に取りつけて、入射角を表面プラズモン共鳴の発生に対応した最小値にほぼ保たれるようにする制御する制御手段を設けた生体分子検出装置。」
が開示されていると認めることができる。

(5)平成7年3月31日に公開された特開平 7- 83900号公報(以下「引用例5」という。)には、
「【0007】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するための本発明に係る流体検査装置は、測定用サンプル液を流通する流路と、本体装置から出射された平行光を前記流路の一部に集光する第1の光学系と測定用サンプル液から出射された光束を平行光に変換する第2の光学系の少なくとも一方とを有するカートリッジを用いる流体検査装置であって、前記カートリッジを着脱可能に保持する保持手段と、前記カートリッジを経た光束を受光する光検出手段と、光源から出射された光束を平行光に変換する第3の光学系と前記カートリッジから出射された平行光を前記光検出手段に集光する第4の光学系の少なくとも一方を有する本体装置とを備えたことを特徴とする。」、
「【0009】
【実施例】本発明を図1?図8に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。図1は第1の実施例の構成図であり、本体装置11の上部には例えば各種のレーザー、LED、ハロゲンランプ、タングステンランプ、水銀ランプ等から成る光源12が設けられ、光源12の光路上には光学系13、ハーフミラー14、カートリッジ保持手段15が配置され、保持手段15にはカートリッジC1を装着し得るようになっている。また、ハーフミラー14の反射方向には光学系16を介して受光系17が設けられている。
【0010】なお、化学発光、生物発光等のサンプル自身が発光し、その光束を検出して測定を行う場合には、光照射は不要であるために光照射部を設ける必要はない。また、ハーフミラー14は光源12からの光束を透過し、サンプル液からの蛍光を反射するように構成すれば、ダイクロイックミラー等で置き換えてもよい。
【0011】図2はカートリッジC1の断面図であり、シリコン基板により製作された第1基板21上に、ガラス基板により製作された第2基板22が接合されている。第2基板22には注入口23、搬出口24が裏面まで貫通して形成され、サンプル液は第1基板21と第2基板22間の第1基板21に形成された微小径の流路25中を流通するようになっている。更に、第2基板22における光源12の光路上には、モールド成型されたガラスから成る集光レンズ26が、これと屈折率が等しい接着剤により接合され、外部からの平行光を流路25上に集光するようになっている。なお、第2基板22をガラス又は合成樹脂のモールド成型により製作してもよく、また集光レンズ26をフレネルレンズ、バイナリレンズ等により構成しても支障はない。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例5には、
「サンプル液が第1基板21と第2基板22間の第1基板21に形成された微小径の流路25中を流通するようになっており、光源12の光路上には光学系13、ハーフミラー14が配置され、また、ハーフミラー14の反射方向には光学系16を介して受光系17が設けられており、第2基板22における光源12の光路上には集光レンズ26が接合された、流体検査装置。」
が開示されていると認めることができる。

(6)平成5年9月21日に公開された特開平 5-240872号公報(以下「引用例6」という。)には、
「【0013】本実施例のカートリッジは第一基板1と第二基板2と第三基板3とを接合した構成を有し、第一基板1はシリコン基板、第二基板2及び第三基板3はガラス基板である。これら基板の接合によってカートリッジ内部には、反応槽である蓄積部4を成す空間が形成される。第三基板3にはサンプル検体液などの液体を注入するための孔である注入口5が設けられ、外部から蓄積部4内にサンプル液を注入することができる。蓄積部4の内部には球形状で表面に試薬が固定化された不溶性担体6が封入される。不溶性担体6はガラスなどのセラミック、高分子化合物により成るプラスチック、磁性体等の金属などの材料、もしくはそれらの複合材料より成り、試薬が固定しやすいように共有結合基などを導入した表面処理がなされている。不溶性担体6の形状は球形状には限らず多面体など他の形状でもよく、その個数も一つには限らず多数存在してもよい。あるいは不溶性担体を用いずに蓄積部4の内壁面に直接試薬を固定化するようにしても良い。なお、試薬については後に詳述する。」、
「【0019】以上の部材は全て一体集約化されてカートリッジを構成している。カートリッジの製造方法については後述する。一方、流通部7内部のサンプル液に向けて測定エネルギである照射光を与えてサンプル液の呈色度合を調べるため、あるいはサンプル液から蛍光や散乱光を発生させるために、図1のように光源14、16、集光レンズ15、17から成る光照射部がカートリッジとは別に設けられている。光源14、16としては例えば半導体レーザ、LED、ハロゲンランプ、タングステンランプ、水銀ランプ等が適している。なお、化学発光、生物発光など検体自ら発する光を検出して測定を行なう場合には光照射は不要であるため光照射部を設ける必要はない。」、
「【0023】ここで上記カートリッジの変形例をいくつか示す。図4は基板上面に集光レンズ部21、22を一体的に形成した例である。集光レンズとしては、球面レンズ、フレネルレンズ、ゾーンプレートなどが使用できる。又、図5は照射光の導入を光ファイバー23、24を用いて行った例であり、光源とカートリッジとの光軸合わせが不要になるという特徴がある。図6は上記形態を更に発展させたもので、各々が蓄積部、流通部、各素子などから成る測定モジュールを一枚の基板上に高密度で並列に配置してアレイ化したカートリッジの例である。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例6には、
「第一基板1と第二基板2と第三基板3とを接合した構成を有し、流通部7内部のサンプル液の呈色度合を調べるため、基板上面に集光レンズ部21、22を一体的に形成したカートリッジ。」
が開示されていると認めることができる。

(7)平成10年9月2日に公開された特開平10-232199号公報(以下「引用例7」という。)には、
「【0007】
【実施例】以下に添付図面に基づいて本発明の実施例を説明する。添付図面においては、特記する以外は対応する部分に対しては対応する番号を付してある。図1に、一体に形成された表面プラズモン共鳴(“SPR”)センサ50を示す。基体52はデバイスプラットフォームを形成し、それに透光生ハウジング56が結合されている。光源58は、基体52上、または基体52内に配置することが好ましく、光を通過させることができる開口60をその上に有している。偏光子62が開口60の付近に配置されていて通過光を偏光し、偏光された光はハウジング56を走行してハウジング56の外面上に形成させることが好ましいSPR層64に衝突する。SPR層64は、ガラススライド等の上に堆積または配置することができる。この構成は、偏光された光が層64と関心サンプル(図1には示してない)との間の界面から完全に内部的に反射した時に観測できる光学的表面現象を達成する。」
と記載されている。ここで、「透光生ハウジング56」は「透光性ハウジング56」の誤記と認められる。これらの記載によれば、引用例7には、
「光源58が透光性ハウジング56内に配置された表面プラズモン共鳴(“SPR”)センサ50。」
が開示されていると認めることができる。

(8)平成9年10月31日に公開された特開平 9-281102号公報(以下「引用例8」という。)には、
「【0036】次に、本発明に係るバイオセンサの好適な実施例について、図面に基づき説明する。図12はバイオセンサ120の正面図、平面図および右側面図である。図示するように、バイオセンサ120は、ほぼ名刺サイズの大きさの直方体をなし、2枚の透光性の光透過媒体であるアクリル基板122R,122Lを基板主面123で接合して形成されている。各アクリル基板122R,122Lは、図12および概略分解斜視図である図13に示すように、その外観形状は同じであり、半球断面の光源ユニット収納凹所124の形成において左右対称とされている。各アクリル基板122R,122Lの表裏の基板主面123には、周知の蒸着,スパッタリング法等によりその全面に亘ってクロム薄膜が形成されており、各アクリル基板122R,122Lの周囲端面には、いずれもクロム薄膜は形成されていない。この場合、各アクリル基板122R,122Lにおける光源ユニット収納凹所124では、少なくともその底面にはクロム薄膜は形成されていない。
【0037】よって、各アクリル基板122R,122Lは、幾何学的な全反射条件で光を反射する全反射面として表裏の基板主面123を対向させる。このため、各アクリル基板122R、122Lは、周囲端面又は光源ユニット収納凹所124底面から入射した光を、この表裏の基板主面123間において光の波動を閉じ込めて伝送する伝送路を形成した透光性基板として機能する。
【0038】各アクリル基板122R、122Lの光源ユニット収納凹所124は、それぞれ半球断面の柱状凹所として形成されており、各アクリル基板上端の上端面126R、126Lに対して所定角度で傾斜して形成されている。また、各アクリル基板122R、122Lの接合は、それぞれの上端面126R、126Lが同一の平面をなすよう行なわれる。よって、光源ユニット収納凹所124は、各アクリル基板122R、122L単独では半球断面であるものの、両アクリル基板が接合されると、円柱状の凹所をなし、その中心軸は同一の平面をなす上端面126R、126Lに対して傾斜することになる。そして、この光源ユニット収納凹所124に後述の光源ユニット130が収納される。」、
「【0047】活性のある生体物質が固定された側であるアクリル基板122LのAu薄膜128表面では、この生体物質と測定対象基質との生物化学的反応が基質濃度で規定される程度だけ進行するので、被測定溶液の誘電率、延いてはその屈折率は、生物化学的反応の進行に伴い変化し基質濃度で規定される値になると安定する。この際の被測定溶液の誘電率、延いてはその屈折率の変化は、アクリル基板122Lと光反射面129のAu薄膜128とで形成されるエバネッセント波結合により、表面プラズモン共鳴現象が起きた場合の反射光のエネルギの現象として観察される。」
と記載されている。これらの記載によれば、引用例8には、
「2枚の透光性の光透過媒体であるアクリル基板122R,122Lを接合して形成され、各アクリル基板122R、122Lの光源ユニット収納凹所124に光源ユニット130が収納されている表面プラズモン共鳴現象を測定するバイオセンサ。」
が開示されていると認めることができる。


5.本願発明1について
(1)対比
そこで、本願発明1と引用例1実施例2に記載された発明とを比較すると、引用例1実施例2に記載された発明の「透明基板13」、「屈折率調整オイル14」、「高屈折率プリズム7」、「金属薄膜8」は、それぞれ本願発明1の「光透過性固体基板22」、「マッチング媒体27」、「プリズム21」、「金属薄膜24」に相当する。また、引用例1実施例2に記載された発明の「流路10」は分析液の流れるものであるから、本願発明1の「測定空間V」および「測定対象流体Sを測定空間Vに送り込む流入管28in,排出管28out」に相当する。さらに、引用例1実施例2に記載された発明の「[Ru(phen)_(3)]Cl_(2) 1Mからなる発光物質」は、芳香族有機化合物からなり、金属薄膜8上に形成された分子認識機能膜9に含まれ、エバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって蛍光を発生するものであるから、本願発明1の前記光応答薄膜25の「蛍光性の脂肪族有機化合物,芳香族有機化合物,複素環族有機化合物又はその分子集合体」に該当し、この発光物質を含む「分子認識機能膜9」は、本願発明1の構成ではない「分子認識機能物質」を含むものの、光応答性を有するものであるから本願発明1の「光応答薄膜25」に対応するものである。また、引用例1実施例2に記載された発明では、「励起光発生器11から発せられた角度分布を持った光を、高屈折率プリズム7、屈折率調整オイル14及び透明基板13を透過させて全反射角以上の角度をもって金属薄膜8へ照射し、エバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって、発光物質から蛍光が発生し」ていることから、励起光発生器11による励起光をプラズモンの作用が発生する角度で入射し、分子認識機能膜9に含まれる発光物質から発生する蛍光を分析試料液の流れる流路10を透過して光検出器12に送られる光路を備えているものであり、本願発明1の「入射角θで光応答薄膜25に入射し閉じ込められた励起光L_(1)による励起で光応答薄膜25から発する蛍光L_(2)が測定空間Vの測定対象流体Sを透過して測定系に送られる出射光路」を備えるものと認められる。
したがって、両者は、
「光透過性固体基板22と、マッチング媒体27を介し光透過性固体基板22の励起光入射側表面に接合されたプリズム21と、光透過性固体基板22の他面に金属薄膜24を介して堆積された光応答薄膜25と、光応答薄膜25上方の測定空間Vと、光透過性固体基板22を搭載し、全反射角を超え且つ表面プラズモン共鳴又は導波モード条件を満足する入射角θで励起光L_(1)をプリズム21の一面に入射させ、測定対象流体Sを測定空間Vに送り込む流入管28in,排出管28outと、入射角θで光応答薄膜25に入射し閉じ込められた励起光L_(1)による励起で光応答薄膜25から発する蛍光L_(2)が測定空間Vの測定対象流体Sを透過して測定系に送られる出射光路とを備え、前記光応答薄膜25は蛍光性の脂肪族有機化合物,芳香族有機化合物,複素環族有機化合物又はその分子集合体を含む薄膜であることを特徴とする表面プラズモン共鳴励起蛍光法による高感度センシング素子。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]本願発明1では「光応答薄膜25」が蛍光性の有機化合物又はその分子集合体から成膜された薄膜であるのに対し、引用例1実施例2に記載された発明における「分子認識機能膜9」は蛍光性の有機化合物の他に分子認識機能物質を含むものである点。
[相違点2]本願発明1では「測定空間Vを閉じる透光板29」を備えているのに対し、引用例1実施例2に記載された発明では流路10内に光検出器12が設けられているものであって、流路10を閉じる透光板を有していない点。
[相違点3]本願発明1では、全反射角を超え且つ表面プラズモン共鳴又は導波モード条件を満足する入射角θで励起光L_(1)をプリズム21の一面に入射させるために、回転量を調節される「回転テーブル23」を備えているのに対し、引用例1実施例2に記載された発明ではそのような構成を有していない点。

(2)判断
[相違点1]について
引用例1実施例2に記載された発明は、発光性の有機化合物の他に分子認識機能物質を含む膜を用い、発光物質を励起して得られた蛍光を用い、発光の変化を測定することによりセンシングを行うものであるが、引用例2に記載された発明も同様に蛍光生化学物質を励起して得られた蛍光を用い、蛍光放射の変化を測定するものであるから、引用例1の両実施例に記載された発明と引用例2に記載された発明とは、共に光源と蛍光物質を使用し、同様の作用機構を用いて目的物質を測定するものである。引用例2に示されるように、分子認識機能物質を含まずとも目的物質を測定しうることは本願出願前にすでに知られていたことであるから、引用例1において用いられる分子認識機能物質は、測定対象に対応して用いられるものであり、分子認識物質を用いるか否かも含めて必要に応じて適宜選択されるべきものであるといえる。
したがって、引用例1実施例2に記載された発明において、分子認識機能物質を含まない膜を用いることは、当業者ならば容易に想到しうることである。

[相違点2]について
引用例1実施例2に記載された発明は、流路10内に光検出器12が設けられているから、測定空間を閉じる透光板は設けられていないが、流路10の外に光検出器12を設けることも当業者が適宜選択することであり、その際、流路を閉じる必要があること、および光を透過する必要があることから、測定空間を閉じる透光板を設けることは、当業者が当然に採用する事項である。

[相違点3]について
引用例3に記載された回転テーブル1および、引用例4に記載された回転式支持体は、ともにプリズムに対してプラズモン共鳴が生じる角度に入射角を制御するものであるから、本願発明1における「回転テーブル23」に相当するものである。
引用例3および引用例4に例示されるように、プラズモン共鳴を発生させることが必要な分析装置において、角度を調節するための回転テーブルを用いることは周知の技術であるから、引用例1実施例2に記載された発明においても、プラズモン共鳴を発生させる角度を調節する目的で、高屈折率プリズム7を回転させる回転テーブルを設けることは、当業者ならば容易に想到しうることである。


6.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用例1実施例1に記載された発明とを比較すると、引用例1実施例1に記載された発明の「金属薄膜8」および「励起光発生器11」は、本願発明2の「金属薄膜42」および「励起光源46」にそれぞれ相当する。また、引用例1実施例1に記載された発明の「フルオレセイン、チオフラビン、エオシン、ローダミンB等の発光物質」は、芳香族有機化合物からなり、金属薄膜8上に形成された分子認識機能膜9に含まれ、エバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって蛍光を発生するものであるから、本願発明2の「蛍光性の脂肪族有機化合物,芳香族有機化合物,複素環族有機化合物又はその分子集合体」に該当し、この発光物質を含む「分子認識機能膜9」は、本願発明2の構成ではない「分子認識機能物質」を含むものの、光応答性を有するものであるから本願発明2の「光応答薄膜43」に対応するものである。また、引用例1実施例1に記載された発明では、「励起光発生器11から発せられた角度分布を持った光を、高屈折率プリズム7によって全反射角以上の角度をもって金属薄膜8へ照射し、エバネッセント波及びこの波に励起された表面プラズモンの作用によって発光物質から発生する蛍光を」用いていることから、励起光発生器11による励起光をプラズモンの作用が発生する角度で入射し、分子認識機能膜9に含まれる発光物質から発生する蛍光を分析試料液の流れる流路10を透過して光検出器12に送られる光路を備えているものであり、本願発明2の「入射角θで光応答薄膜43に入射し閉じ込められた励起光L_(1)による励起で光応答薄膜43から発する蛍光L_(2)が測定空間Vの測定対象流体Sを透過して測定系に送られる出射光路」を備えるものと認められる。
したがって、両者は、
「金属薄膜42及び光応答薄膜43と、金属薄膜42及び光応答薄膜43の上方に配置され、表面プラズモン共鳴又は導波モード条件を満足する入射角θで励起光L_(1)を光応答薄膜43に入射させ閉じ込める励起光源46と、入射角θで光応答薄膜43に入射し閉じ込められた励起光L_(1)による励起で光応答薄膜43から発する蛍光L_(2)が測定空間Vの測定対象流体Sを透過して測定系に送られる出射光路とを備え、前記光応答薄膜43は蛍光性の脂肪族有機化合物,芳香族有機化合物,複素環族有機化合物又はその分子集合体を含む薄膜であることを特徴とする表面プラズモン共鳴励起蛍光法による高感度センシング素子。」の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点4]本願発明2では「測定対象流体Sが送り込まれる測定空間Vが内部に形成された光透過性固体基板41」を備えており、金属薄膜42及び光応答薄膜43が光透過性固体基板41の一面に積層されていて、他面に「集光レンズ31」が装着されているのに対し、引用例1実施例1に記載された発明では「流路10」に金属薄膜8と分子認識機能膜9が接して設置されており、集光レンズは有していない点。
[相違点5]本願発明2では「透明媒体45」を備え、透明媒体45が励起光源46を内蔵しているのに対し、引用例1実施例1に記載された発明では励起光発生器11が高屈折率プリズム7の外部に配置されている点。
[相違点6]本願発明2では「光応答薄膜43」が蛍光性の有機化合物又はその分子集合体から成膜された薄膜であるのに対し、引用例1実施例1に記載された発明における「分子認識機能膜9」は蛍光性の有機化合物の他に分子認識機能物質を含むものである点。

(2)判断
[相違点4]について
引用例5に記載された発明は、流体検査装置において、サンプル液が、第1基板21と第2基板22間の微小径の流路25中を流通しているのであるから、固体基板の内部に測定空間が形成されているものである。また、引用例6に記載された発明も、サンプル液を測定するためのカートリッジが、第一基板1と第二基板2と第三基板3とを接合した構成を有し、流通部が内部に形成されていることから、固体基板の内部に測定空間が形成されているものである。さらに、引用例5には第2基板22には集光レンズ26が接合されており、引用例6には基板上面に集光レンズ部21、22が一体的に形成されており、何れも基板面に集光レンズを設けたものである。
引用例5および引用例6に示されるように、流体を測定する装置において、測定するための空間を固体基板内部に設けることや、基板面上に集光レンズを装着することは、従来より周知の事項である。また、このように流路系や光学系を組み込み小型化することは、当該分野においても一般に認識されている課題である。
したがって、引用例1実施例1に記載された発明において、装置の小型化の目的のために、流路10として、測定空間が内部に形成され集光レンズを備えた周知の光透過性固体基板を採用することは、当業者ならば容易に想到しうることである。

[相違点5]について
引用例7に記載された発明は、表面プラズモン共鳴センサにおいて、プリズムを用いずに、励起光源を透明媒体であるハウジング内に配置するものである。また、引用例8に記載された発明も、表面プラズモン共鳴センサであり、プリズムを用いずに、励起光源を透明媒体であるアクリル基板内に配置するものである。
引用例7および引用例8に示されるように、表面プラズモン共鳴現象を利用する装置において、透明媒体内部に配置した励起光源を用いることは従来より周知の事項である。また、表面プラズモン共鳴を発生させるにあたり、どのような光学系を採用するかは当業者が適宜選択しうることである。
したがって、引用例1実施例1に記載された発明において、高屈折率プリズム7の外部に配置された励起光発生器11を用いる代わりに、従来周知の透明媒体内部に配置された励起光源を採用することは、当業者ならば容易に想到しうることである。

[相違点6]について
引用例1の実施例が異なるものの、相違点6と相違点1はどちらも同じ機能を有する分子機能薄膜9に関するものであり、共に他の分子認識機能物質を含む点に係る相違点である。したがって、相違点1において検討したとおり、引用例1実施例1に記載された発明において、分子認識機能物質を含まない膜を用いることは、当業者ならば容易に想到しうることである。


7.むすび
したがって、本願発明1および本願発明2は、引用例1-8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。』

そして、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-30 
結審通知日 2008-08-05 
審決日 2008-08-26 
出願番号 特願2001-56415(P2001-56415)
審決分類 P 1 8・ 121- WZF (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横井 亜矢子  
特許庁審判長 岡田 孝博
特許庁審判官 秋月 美紀子
宮澤 浩
発明の名称 表面プラズモン共鳴励起蛍光を利用した高感度センシング素子  
代理人 鷲田 公一  

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