ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B |
---|---|
管理番号 | 1185723 |
審判番号 | 不服2007-34251 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-12-20 |
確定日 | 2008-10-09 |
事件の表示 | 特願2002-221520「顕微鏡システム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 61942〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成14年(2002年)年7月30日の出願(特願2002-221520号)であって、平成19年10月26日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年12月20日付で拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付で手続補正がなされたものである。 第2 平成19年12月20日付の手続補正についての補正の却下の決定について [補正の却下の決定の結論] 平成19年12月20付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 1 本件補正について 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成19年10月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「標本を搭載するステージと、 前記標本の標本像を形成する光学系と、 前記標本上の観察位置を変更するため、XY方向に前記ステージを駆動すると共に、前記ステージをZ方向に駆動する駆動部と、 前記光学系により形成された前記標本像を撮像する撮像部と、 前記駆動部により変更された前記標本の観察位置において、前記撮像部が撮像した画像のコントラスト値に基づいて、前記標本の合焦位置を検出する合焦位置検出部と、 前記合焦位置検出部によって検出された前記合焦位置を記憶する記憶部と、 前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し、 前記合焦位置検出部は、前記標本の観察位置が変更されて、前記検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定し、設定した前記サーチ範囲で前記ステージを移動して新たに前記合焦位置を検出することを特徴とする顕微鏡システム。 」が 「標本を搭載するステージと、 前記標本の標本像を形成する光学系と、 前記標本上の観察位置を変更するため、XY方向に前記ステージを駆動すると共に、前記ステージをZ方向に駆動する駆動部と、 前記光学系により形成された前記標本像を撮像する撮像部と、 前記駆動部により変更された前記標本の観察位置において、前記撮像部が撮像した画像のコントラスト値に基づいて、前記標本の合焦位置を検出する合焦位置検出部と、 前記合焦位置検出部によって検出された前記合焦位置を記憶する記憶部と、 ユーザーの操作により、前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し、 前記合焦位置検出部は、前記標本の観察位置が変更されて、前記検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定し、設定した前記サーチ範囲で前記ステージを移動して新たに前記合焦位置を検出することを特徴とする顕微鏡システム。 」と補正された。 そして、この補正は、「前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し」を「ユーザーの操作により、前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し」とするもので、これは、「合焦位置検出部の動作を指示する」ことが「ユーザーの操作により」開始されることを限定したものであるから、特許請求の範囲のいわゆる限定的減縮を目的とするものに該当する。 すなわち、上記補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものを含む。 2 独立特許要件違反についての検討 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平4-318509号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。(なお、刊行物中の丸囲みの数字は、半角カッコ付きの数字に変更して記載した。) 「【請求項1】支持体にセットされた被写体を光学系を介して撮像して映像信号を出力する撮像手段と、前記支持体と前記光学系との一方を移動させる駆動手段と、焦点粗調整用の合焦位置検索範囲および移動ピッチと,焦点微調整用の合焦位置検索範囲および移動ピッチとを任意に設定する設定手段と、前記撮像手段からの映像信号を前記設定手段で設定された焦点粗調整用の移動ピッチに対応した部分だけ抽出してこの映像信号より前記設定手段で設定された焦点粗調整用の合焦位置検索範囲内で被写体の合焦位置を検出しこの検出結果により前記駆動手段を作動させて焦点粗調整を行う焦点粗調整手段と、この焦点粗調整手段の焦点粗調整後に前記撮像手段からの映像信号を前記設定手段で設定された焦点微調整用の移動ピッチに対応した部分だけ抽出してこの映像信号より前記設定手段で設定された焦点微調整用の合焦位置検索範囲内で被写体の合焦位置を検出しこの検出結果により前記駆動手段を作動させて焦点微調整を行う焦点微調整手段とを備えたことを特徴 とする自動合焦装置。」 「【0006】 【実施例】図2は本発明の一実施例を示す。基台21には被写体22がセットされ、光学系支持体23が基台21に固定される。被写体22は例えば工場の自動生産ラインにおいて、検査や組み付けの対象となる部品からなり、基台21上に自動的にセットされる。光学系支持体23には固定台24が固定され、この固定台24に移動台25がZ軸方向へ移動可能に取り付けられる。この移動台25には対物レンズ26を有する顕微鏡からなる光学系27及びテレビジョンカメラからなる撮像装置28が一体に固定され、光学系27は基台21上に載置された被写体22を対物レンズ26を介して観察部29より観察することができるものである。テレビジョンカメラ28は基台21上に載置された被写体22を対物レンズ26を介して(光学系27を介して)撮像して映像信号に変換する。ステッピングモータ30は顕微鏡27を光軸方向(Z軸方向)へ移動させてその焦点調節を行い得るように固定台24に取り付けられ、モータ駆動回路31により駆動されて光学系27及びテレビジョンカメラ28をZ軸方向へ移動させる。焦点調節部32は後述するようにホストコンピュータ33からの信号に基づいてテレビジョンカメラ28からの映像信号より光学系27の被写体22に対する合焦位置を検出してこの合焦位置に応じた出力信号をモータ駆動回路31に出力し、モータ駆動回路31が焦点調節部32の出力信号によりステッピングモータ30を駆動して光学系27及びテレビジョンカメラ28をZ軸方向へ移動させることにより焦点調節を行う。また、モニタ用受像機34はテレビジョンカメラ28からの映像信号が焦点調節部32を介して入力され、被写体22を表示する。 【0007】テレビジョンカメラ28からの映像信号は図3に示すようにゲート回路35において検出域設定部36からの信号により特定の検出域内の信号が選択的に通過し、高域通過フィルタ(HPF)37により高周波成分のみが取り出される。このHPF37の出力信号はピークホールド回路38によりピークが検出されて保持されることにより高周波成分の量が検出され、A/D変換器39によりA/D変換されて焦点調節部32へ出力される。 【0008】図4は上記焦点調節部32の構成を示す。焦点調節部32はマイクロコンピュータを用いて構成され、機能的には制御部40,メモリ41,合焦位置検出部42,バックラッシュ除去部43,オフセット補正部44を有する。メモリ41の内容はA/D変換器39からの各撮像位置の信号により順次に更新され、このメモリ41内の信号がバックラッシュ除去部43により移動台25はバックラッシュ量移動される。また、オフセット補正部44により設定したオフセット値だけ移動される。このオフセットは焦点調節部32の合焦位置と人間の目による合焦位置とのずれに応じて設定された値である。合焦位置検出部42はバックラッシュによる影響及びオフセットが除去された映像信号から被写体22の合焦位置を検出する。この合焦位置検出部42の検出結果(出力信号)と光学系27の位置との関係は図5に示すようになり、合焦位置検出部42の検出結果は光学系27の位置が合焦位置のときに最大となって光学系27の位置が合焦位置より離れるに従って次第に小さくなる。 【0009】次に、焦点調節部32について詳細に説明する。焦点調節部32は移動台25を制御するために2つのパラメータJ,Sを用いている。Jは焦点調節動作時における移動台25の移動ピッチを決定する。図6の目盛aは移動台25が停止して被写体22の撮像を行う位置を示し、この目盛aの間隔を決定するパラメータがJである。例えば、本実施例ではステッピングモータ30を駆動する1つのパルス当り0.2μm移動する移動台25を用いると、移動台25をステッピングモータ30により1μmピツチの移動ピッチで動かして焦点調節を行う場合には、ホストコンピュータ33によりJを5に設定して不揮発性のメモリ41に格納する。これにより焦点調節部32はテレビジョンカメラ28からの映像信号を5つのパルスがステッピングモータ30へ出力される毎にとり込む。この移動台25の移動ピッチをユニットと呼ぶ。J=5の場合は1ユニット当り5パルスとなる。Sは合焦位置検索範囲を決定するパラメータであり、図6に示すようにホストコンピュータ33によりS=50と設定してメモリ41に格納した場合、焦点調節用原点から50サンプリングポイントの範囲で合焦位置を検索する。」 「【0011】また、この実施例ではパラメータOを設定する。このパラメータOはワーク22によって異なり、図8に示すようにこの実施例による合焦位置と人間の目による合焦位置とのずれに相当するオフセット値に設定される。光学系27は実施例による合焦位置よりパラメータOだけずれて停止し、これによりこの実施例による合焦位置と人間の目による合焦位置とのずれが補正される。 【0012】さらに、この実施例では使用する移動台25のバックラッシュ量以上になるようにバックラッシュ除去動作量Bを設定し、焦点調節動作時に移動台25のバックラッシュを除去するような動作を行なう。しかも、焦点調節動作は焦点粗調整と焦点微調整との2段階の動作を行う。図9に示すように電源がオンした時には光学系27は位置が不定(任意)であるので、(1).現在位置Aから焦点調節用原点より上側の位置Bまで一旦戻り、(2).それから焦点調節用原点より右側の位置Cに戻ることにより移動台25のバックラッシュに影響されずに正確に原点より右側の位置Cに戻る。次に、被写体22の着脱時には(3).光学系27が位置Cから被写体挿入位置より一定量だけ右側の位置に退避され、その後(4).元の位置Cに戻る。焦点調節時には(5).粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピントが合わされる。この場合、光学系27は合焦位置よりも(O+ B)ユニットだけ右側の位置Eに一旦戻り、それから合焦位置よりOユニットだけ右側の位置Fまで移動して停止することにより移動台25のバックラッシュに影響されずに正確に合焦位置よりOユニットだけ右側の位置Fに停止する。被写体22が前と異なる新しいものである場合には、光学系27は(6).一旦位置Cに戻り、それから上記動作(5)を行う。また、同一の被写体22に再度焦点調節を行う場合には、(7).細かい移動ピッチでのピント合わせのみが行われる。このように、光学系27は必ず右側にBユニットだけ余分に移動してから左側にBユニットだけ移動することにより移動台25のバックラッシュに影響されなくなる。 【0013】図10に示すように原点センサORGは移動台25が原点に位置することを検知し、焦点調節用原点AFORGは光学系27が焦点調節用原点に位置することを検知する。原点センサORGの検知位置と焦点調節用原点AFORGの検知位置とは一定の距離だけ離れており、また、リミットセンサL1,L2は移動台25が移動範囲の上限位置,下限位置に達したことを検知する。図12に示すように上記(1)の動作では、電源がオンした時には光学系27は位置が不定(任意)であるので、右方向(図2で上側),左方向(図2で下側)のいずれか一方に動かされ、移動台25が原点に戻ったことが原点センサORGにより検知されて光学系27が現在位置Aから焦点調節用原点よりBユニットだけ右側の位置Bまで一旦戻される。この場合、図11に示すように移動台25が原点とは反対の方向へ移動してもリミットスイッチL1,L2のいずれかが移動台25を検知することにより移動台25の移動方向が反転され、移動台25が原点に戻ったことが原点センサORGにより検知される。上記(2)の動作では、上記のように、原点センサORGを用いてもよいし、移動台25の原点と焦点調節用原点との間の距離が実験により予め分かっている場合には、移動台25がその距離だけ移動することにより光学系27が位置Cに移動する。上記(3)の動作では、光学系27が位置Cから予め定められた被写体挿入位置より一定量だけ右側の位置に退避され、上記(4)の動作では、光学系27が元の位置Cに戻る。 【0014】上記(5)の動作では、被写体22にピントが合わせられるが、まず、パラメータJ,Sとして焦点粗調整用パラメータJP,SPを用いて被写体22にピントが合わせられ、しかる後、パラメータJ,Sとして焦点微調整用パラメータJF,SFを用いて被写体22にピントが合わせられる。この場合、光学系27が位置Cから焦位置検索範囲SPのユニット数だけ離れた位置Dまで移動させながらカメラ28からの映像信号がJP個のパルスがステッピングモータ30へ出力される毎にサンプリングされる。そして、このサンプリングされた映像信号から光学系27のピントが最も合う合焦位置が計算され、光学系27が上記位置Dから合焦位置よりも(OP+BP)ユニットだけ右側の位置Eに一旦戻され、それから合焦位置よりもOユニットだけ右側の位置Fまで移動させられて停止する。次に、光学系27は位置Fから焦位置検索範囲SFのユニット数/2だけ離れた位置Hより更にBFユニットだけ右側の位置Gまで一旦戻され、それから位置Hに移動させられる。そして、光学系27が位置Hから焦位置検索範囲SFのユニット数だけ離れた位置Iまで移動させながらカメラ28からの映像信号がJF個のパルスがステッピングモータ30へ出力される毎にサンプリングされる。このサンプリングされた映像信号から光学系27のピントが最も合う合焦位置が計算され、光学系27が上記位置Iから合焦位置よりも(OF+BF)ユニットだけ右側の位置Kに一旦戻され、それから合焦位置よりもCFユニットだけ右側の位置Lまで移動させられて停止する。上記(6)の動作では、光学系27が一旦位置Cに戻され、次の被写体22の挿入(セット)の準備が行われる。(7)の動作は同一の被写体22に再度焦点調節を行う場合に行われ、(5)の動作における焦点微調整が行われる。 【0015】図13はマイクロコンピュータを用いて構成された焦点調節部32の処理フローを示す。焦点調節部32は操作者によってホストコンピュータ33から与えられる信号により上記パラメータJP,SP,OP,BPが移動台25の移動ピッチ,バックラッシュ量や光学系27の焦点深度、この実施例による合焦位置と人間の目による合焦位置とのずれ等に応じて設定されてこれらを不揮発性のメモリ41に格納する。焦点調節部32はパラメータJP,SP,OP,BPの設定後に焦点粗調節動作を開始し、モータ駆動回路31を介してステッピングモータ30を駆動して移動台25を移動させることによって光学系27を現在位置Aから原点より(SP/2+B)ユニットだけ右側の位置Bまで一旦戻し、それから原点よりSP/2ユニットだけ右側の位置Cに戻す。次に、焦点調節部32は光学系27を原点よりP/2ユニットだけ右側の位置Cから焦点位置検索範囲SPのユニット数だけ離れた位置Dまで移動させながらカメラ28からの映像信号をJP個のパルスがステッピングモータ30へ出力される毎にサンプリングして取り込む。そして、焦点調節部32はその取り込んだ映像信号から光学系27のピントが最も合う合焦位置を計算する。次に、焦点調節部32は光学系27を上記位置Dから合焦位置よりも(O+B)ユニットだけ右側の位置Eに一旦戻し、それから合焦位置よりもOユニットだけ右側の位置Fまで移動させて停止させる。 【0016】次に、焦点調節部32は操作者によってホストコンピュータ33から与えられるコマンドにより上記パラメータJF,SF,OF,BFが移動台25の移動ピッチ,バックラッシュ量や光学系27の焦点深度、この実施例による合焦位置と人間の目による合焦位置とのずれ等に応じて設定されてこれらを不揮発性のメモリ41に格納する。ここに、OF,BFは焦点微調整用のパラメータである。焦点調節部32はパラメータJP,SP,OF,BFの設定後に焦点微調節動作を開始し、モータ駆動回路31を介してステッピングモータ30を駆動して移動台25を移動させることによって光学系27を現在位置Fから位置Gまで一旦戻し、それから位置Hに移動させる。次に、焦点調節部32は光学系27を位置Hから焦点位置検索範囲SFのユニット数だけ離れた位置Iまで移動させながらカメラ28からの映像信号をJF個のパルスがステッピングモータ30へ出力される毎にサンプリングして取り込む。そして、焦点調節部32はその取り込んだ映像信号から光学系27のピントが最も合う合焦位置を計算する。次に、焦点調節部32は光学系27を上記位置Iから合焦位置よりも(O+B)ユニットだけ右側の位置Kに一旦戻し、それから合焦位置よりもOユニットだけ右側の位置Lまで移動させて停止させる。 【0017】この実施例では、パラメータJ,Sにより移動台25の移動範囲、焦位置検索範囲を任意に設定できるので、光学系27の倍率や移動台25の移動ピッチが変わってもパラメータJ,Sの変更で対応することができ、各用途に柔軟に対応することが可能になる。また、パラメータOをこの実施例による合焦位置と人間の目による合焦位置とのずれに応じて設定してその分だけ光学系27をずらせるようにしたので、この実施例による合焦位置と人間の目による合焦位置とを合わせることが可能となる。また、パラメータBを任意に設定して移動台25のバックラッシュによる影響を除去するようにしたので、移動台25のバックラッシュに影響されなくなる。さらに、焦点粗調整,焦点微調整を2段階に行うので、焦点調節をすばやく行うことができる。例えば、焦点深度1μm程度の光学系を用い、被写体の挿入バラツキが200μm程度で移動台の最小分解能が0.1μmの場合は、粗い移動ピッチで広い範囲にわたって合焦位置を検索し(例えばJP=40,SP=50に設定して4μmのピッチで200μmの範囲にわたって合焦位置を検索し)、更にその中でコントラストが高いところを中心に細かい移動ピッチで合焦位置を検索すれば(例えばJF=2,SF=50に設定して0.2μmのピッチで10μmの範囲にわたって合焦位置を検索すれば)、約2秒でピントを合わせることができる。なお、上記パラメータOは正負の値を設定でき、上記パラメータBはO以上の値を設定できる。また、上記実施例では光学系27およびカメラ28を移動させたが、光学系27およびカメラ28を固定して基台21をステッピングモータ30で移動させるようにしてもよい。 【0018】 【発明の効果】 以上のように本発明によれば、支持体にセットされた被写体を光学系を介して撮像して映像信号を出力する撮像手段と、前記支持体と前記光学系との一方を移動させる駆動手段と、焦点粗調整用の合焦位置検索範囲および移動ピツチと,焦点微調整用の合焦位置検索範囲および移動ピツチとを任意に設定する設定手段と、前記撮像手段からの映像信号を前記設定手段で設定された焦点粗調整用の移動ピツチに対応した部分だけ抽出してこの映像信号より前記設定手段で設定された焦点粗調整用の合焦位置検索範囲内で被写体の合焦位置を検出しこの検出結果により前記駆動手段を作動させて焦点粗調整を行う焦点粗調整手段と、この焦点粗調整手段の焦点粗調整後に前記撮像手段からの映像信号を前記設定手段で設定された焦点微調整用の移動ピッチに対応した部分だけ抽出してこの映像信号より前記設定手段で設定された焦点微調整用の合焦位置検索範囲内で被写体の合焦位置を検出しこの検出結果により前記駆動手段を作動させて焦点微調整を行う焦点微調整手段とを備えたので、焦点調節を2段階の焦点粗調整,焦点微調整ですばやく行うことができ、焦点調節に要する時間を短縮することができる。」 また、図4から、焦点調節部(マイクロコンピュータ)32内の制御部40と合焦位置検出部42との間でデータのやり取りを行っていること、そして、制御部40へはメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータが送られることが見て取れる。 上記記載事項から、顕微鏡システムに関し、 ア 「基台21には被写体22がセットされ」ること、(【0006】) イ 「テレビジョンカメラ28は基台21上に載置された被写体22を対物レンズ26を介して(光学系27を介して)撮像して映像信号に変換する」こと、(【0006】) ウ 「ステッピングモータ30は顕微鏡27を光軸方向(Z軸方向)へ移動させてその焦点調節を行い得るように固定台24に取り付けられ、モータ駆動回路31により駆動されて光学系27及びテレビジョンカメラ28をZ軸方向へ移動させる」こと、(【0006】) エ 「合焦位置検出部42はバックラッシュによる影響及びオフセットが除去された映像信号から被写体22の合焦位置を検出する」こと、(【0008】) オ 「テレビジョンカメラ28からの映像信号は・・・ピークが検出されて保持されることにより高周波成分の量が検出され、A/D変換器39によりA/D変換されて焦点調節部32へ出力される」こと、(【0007】) カ 「コントラストが高いところを中心に細かい移動ピッチで合焦位置を検索」していること、(【0017】) キ 「合焦位置検索範囲内で被写体の合焦位置を検出しこの検出結果により前記駆動手段を作動させて」いること、(【0018】) ク 「電源がオンした時には光学系27は位置が不定(任意)であるので、(1).現在位置Aから焦点調節用原点より上側の位置Bまで一旦戻り、(2).それから焦点調節用原点より右側の位置Cに戻ることにより移動台25のバックラッシュに影響されずに正確に原点より右側の位置Cに戻る」こと、(【0012】) ケ 「焦点調節時には(5).粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピントが合わされる。この場合、光学系27は合焦位置よりも(O+ B)ユニットだけ右側の位置Eに一旦戻り、それから合焦位置よりOユニットだけ右側の位置Fまで移動して停止することにより移動台25のバックラッシュに影響されずに正確に合焦位置よりOユニットだけ右側の位置Fに停止する。」こと、(【0012】) コ 「被写体22の着脱時には(3).光学系27が位置Cから被写体挿入位置より一定量だけ右側の位置に退避され、その後(4).元の位置Cに戻る」こと、(【0012】) サ 「また、同一の被写体22に再度焦点調節を行う場合には、(7).細かい移動ピッチでのピント合わせのみが行われる」こと、(【0012】) が引用例1の記載事項として抽出されている。 上記記載事項オ及びカから、合焦位置は、テレビジョンカメラからの映像信号のコントラスト値に基づいて検出されているといえる。 また、上記記載事項キから、検出された合焦位置が記憶部に記憶されていることは、技術常識から明らかである。 また、上記記載事項ク及び【図4】の記載から、「電源がオン」されることによって、制御部40を介して合焦位置検出部42へメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータが送られて合焦位置検出部の動作が開始されるものと認められる。 また、上記記載事項ケから、合焦位置検出部は、粗い移動ピッチでピントを合わせた後に細かい移動ピッチでピントを合わすものであり、細かい移動でのピント合わせは、粗い移動でのピント合わせによって検出され記憶された合焦位置を基準にして光学系の移動範囲を設定して合焦位置を検出するものであるといえる。この点について、【請求項1】にも同様の事項が記載されている。 そして、上記記載事項コ及びサから、被写体の着脱時、粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピントが合わされ、同一の被写体22に再度焦点調節の場合は、細かい移動ピッチでのピント合わせのみが行われる。さらに、上記記載事項ク及びケ並びに【図4】の記載を合わせて読めば、上記のピント合わせは、合焦位置検出部42へメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを読み取った制御部40が、合焦位置検出部42へデータを送り、その都度、光学系の移動範囲を設定して行われるものであると認められる。 上記記載事項及び図面の記載からみて、引用例1には、 「被写体22をセットする基台21と、 基台21上に載置された被写体22を撮像して映像信号に変換する光学系27と、 光学系27及びテレビジョンカメラ28をZ軸方向へ移動させることにより焦点調節を行うステッピングモータ30と、 被写体22を撮像するテレビジョンカメラ28と、 ステッピングモータによって移動された光学系27及びテレビジョンカメラ28によって、テレビジョンカメラからの映像信号のコントラスト値に基づいて合焦位置を検出する合焦位置検出部と、 合焦位置検出部によって検出された合焦位置を記憶する記憶部と、 電源がオンされることによって、合焦位置検出部の動作のための、メモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを読み取って、合焦位置検出部42へデータを送る制御部40とを有し、 合焦位置検出部は、被写体の着脱の場合は、粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピント合わせを行い、同一の被写体22の再度焦点調節の場合は、細かい移動ピッチでのピント合わせのみを行い、また、上記のピント合わせは、合焦位置検出部42へメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを制御部40が読み取り、制御部40から合焦位置検出部42へデータが送られて来る毎に、光学系の移動範囲を設定して行われる顕微鏡システム」の発明(以下、「引用発明」という。)の記載が認められる。 また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前の平成14年4月26日に頒布された刊行物である特開2002-122773号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面の記載とともに以下の事項が記載されている。 「【0030】図2は、本電子カメラにおける合焦処理の基本的な動作例を示したフローチャートである。 【0031】まず、連写撮影モードが選択されているか或いは通常の静止画撮影モードが選択されているかの判断がなされる(S1)。静止画撮影モードが選択されている場合には、合焦レンズの駆動範囲(走査範囲)が通常の駆動範囲、すなわち合焦位置を検出するための通常の焦点調整可能範囲に設定され(S2)、通常のAF処理が行われる(S3)。 【0032】連写撮影モードが選択されている場合には、まず連写の1枚目か否かが判断され(S4)、1枚目である場合には通常と同じ合焦処理が行われる。2枚目以降であれば、合焦レンズの駆動範囲(走査範囲)が通常の駆動範囲(焦点調整可能範囲)内で且つそれよりも狭い範囲に設定される(S5)。連写では短い時間間隔で連続的に撮影が行われるため、連続する撮影間では一般に被写体が大きく移動するとは考え難い。そこで、連写撮影モードの場合には、合焦レンズの駆動範囲を通常の駆動範囲よりも狭く設定し、合焦処理時間が短くなるようにしている。具体的には、図3に示すように、現在の合焦位置(その前の撮影の合焦位置)を中心として、駆動範囲を両側の狭い範囲に振り分けるようにしている。駆動範囲は、例えば焦点深度の4倍程度とする。」 (2)対比 ここで、引用発明と本願補正発明とを対比する。 引用発明の「被写体22をセットする基台21」は本願補正発明の「標本を搭載するステージ」に相当する。 引用発明の「基台21上に載置された被写体22を撮像して映像信号に変換する光学系27」は、本願補正発明の「前記標本の標本像を形成する光学系」に相当する。 引用発明の「光学系27及びテレビジョンカメラ28をZ軸方向へ移動させることにより焦点調節を行うステッピングモータ30」と、本願補正発明の「前記標本上の観察位置を変更するため、XY方向に前記ステージを駆動すると共に、前記ステージをZ方向に駆動する駆動部」とは、「標本上の観察位置を変更するため、前記ステージと光学系のZ方向の相対位置を変更させる駆動部」である点で一致している。 引用発明の「被写体22を撮像するテレビジョンカメラ28」は、本願補正発明の「前記光学系により形成された前記標本像を撮像する撮像部」に相当する。 引用発明の「ステッピングモータによって移動された光学系27及びテレビジョンカメラ28によって、テレビジョンカメラからの映像信号のコントラスト値に基づいて合焦位置を検出する合焦位置検出部」は、本願補正発明の「前記駆動部により変更された前記標本の観察位置において、前記撮像部が撮像した画像のコントラスト値に基づいて、前記標本の合焦位置を検出する合焦位置検出部」に相当する。 引用発明の「合焦位置検出部によって検出された合焦位置を記憶する記憶部」は、本願補正発明の「前記合焦位置検出部によって検出された前記合焦位置を記憶する記憶部」に相当する。 引用発明の「電源がオンされることによって、合焦位置検出部の動作のための、メモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを合焦位置検出部42へ送る制御部40」については、「電源がオンされること」は、ユーザの操作により行われることであり、また、「メモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを合焦位置検出部42へ送る」ことが、「合焦位置検出部の動作を指示する」ことに他ならないから、引用発明の上記「電源がオンされることによって、合焦位置検出部の動作のための、メモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを合焦位置検出部42へ送る制御部40」は、本願補正発明の「ユーザーの操作により、前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部」に相当する。 最後に、引用発明の「合焦位置検出部は、被写体の着脱の場合は、粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピント合わせを行い、同一の被写体22の再度焦点調節の場合は、細かい移動ピッチでのピント合わせのみを行い、また、上記のピント合わせは、合焦位置検出部42へメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを制御部40が読み取り、制御部40から合焦位置検出部42へデータが送られて来る毎に、光学系の移動範囲を設定して行われる」に関して、本願補正発明との対応関係を検討する。 上記「被写体の着脱の場合は、粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピント合わせを行い、同一の被写体22の再度焦点調節の場合は、細かい移動ピッチでのピント合わせのみを行い」の記載から、被写体着脱の場合でも、同一被写体の再度焦点調節の場合でも、「細かい移動ピッチでのピント合わせ」が行われることがわかる。そして、「細かい移動でのピント合わせ」は、粗い移動でのピント合わせによって検出され記憶された合焦位置を基準にして光学系の移動範囲を設定して合焦位置を検出するものであり、また、その際の移動範囲は光学系が移動可能な全範囲より狭い範囲であることは言うまでもないことである。この点については、引用例1の【0017】欄の 「例えば、焦点深度1μm程度の光学系を用い、被写体の挿入バラツキが200μm程度で移動台の最小分解能が0.1μmの場合は、粗い移動ピッチで広い範囲にわたって合焦位置を検索し(例えばJP=40,SP=50に設定して4μmのピッチで200μmの範囲にわたって合焦位置を検索し)、更にその中でコントラストが高いところを中心に細かい移動ピッチで合焦位置を検索すれば(例えばJF=2,SF=50に設定して0.2μmのピッチで10μmの範囲にわたって合焦位置を検索すれば)、約2秒でピントを合わせることができる。」 の記載からも裏付けられるところである。 よって、引用発明の「細かい移動でのピント合わせ」は、本願補正発明の「前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定し、設定した前記サーチ範囲で前記ステージを移動して新たに前記合焦位置を検出する」に相当するものである。また、上記の「合焦位置検出部42へメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを制御部40が読み取り、制御部40から合焦位置検出部42へデータが送られて来る毎に」は、本願補正発明の「前記検出指示操作部の指示動作が入る毎に」に相当する。したがって、引用発明の「合焦位置検出部は、被写体の着脱の場合は、粗い移動ピッチでピントが合わされた後に細かい移動ピッチでピント合わせを行い、同一の被写体22の再度焦点調節の場合は、細かい移動ピッチでのピント合わせのみを行い、また、上記のピント合わせは、合焦位置検出部42へメモリ41内のデータやバックラッシュ除去部43やオフセット補正部44のデータを制御部40が読み取り、制御部40から合焦位置検出部42へデータが送られて来る毎に、光学系の移動範囲を設定して行われる」と、本願補正発明の「前記合焦位置検出部は、前記標本の観察位置が変更されて、前記検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定し、設定した前記サーチ範囲で前記ステージを移動して新たに前記合焦位置を検出する」とは、「前記合焦位置検出部は、前記検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定し、設定した前記サーチ範囲で前記ステージを移動して新たに前記合焦位置を検出する」の点で一致する。 したがって、本願補正発明と引用発明は、 「標本を搭載するステージと、 前記標本の標本像を形成する光学系と、 前記標本上の観察位置を変更するため、前記ステージと光学系のZ方向の相対位置を変更させる駆動部と、 前記光学系により形成された前記標本像を撮像する撮像部と、 前記駆動部により変更された前記標本の観察位置において、前記撮像部が撮像した画像のコントラスト値に基づいて、前記標本の合焦位置を検出する合焦位置検出部と、 前記合焦位置検出部によって検出された前記合焦位置を記憶する記憶部と、 ユーザーの操作により、前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し、 前記合焦位置検出部は、前記検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定し、設定した前記サーチ範囲で前記ステージを移動して新たに前記合焦位置を検出する顕微鏡システム。」の点で一致し、次の各点で相違する。 ア 相違点1; 標本上の観察位置を変更するため、ステージと光学系のZ方向の相対位置を変更させる駆動部に関して、本願補正発明が「ステージを駆動する」ものであるのに対して、引用発明は「光学系及びテレビジョンカメラを移動させる」ものである点。 イ 相違点2; 標本上の観察位置を変更するため、前記ステージと光学系のZ方向の相対位置を変更させる駆動部に関して、本願補正発明が「XY方向に」も移動させるものであるのに対して、引用発明には、その点の限定がない点。 ウ 相違点3; 本検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定する、合焦位置検出部において、本願補正発明が「標本の観察位置が変更されて」サーチ範囲を設定するのに対して、引用発明には、その限定がない点。 (3)当審の判断 次に、各相違点について検討する。 ア 相違点1について ステージと光学系のZ方向の相対位置を変更させるのに、ステージを移動して相対位置を変更するか、光学系を移動して相対位置を変更するかは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る事項であり、また、試料搭載ステージを移動させる顕微鏡についても、例えば、 ・特開平11-271623号公報(【0018】) ・特開平6-337357号公報(【0010】) にも記載されているように周知の技術であるから、引用発明においても、光学系を移動することに換えてステージを移動するようにして、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 イ 相違点2について 顕微鏡システムにおいて、ステージ又は光学系を、Z方向だけでなくXY方向にも移動させることは、例えば、 ・特開平11-271623号公報(【0018】) ・特開2000-266995号公報(【0006】) にも記載されているように周知の技術であるから、引用発明においても、ステージ又は光学系のXY方向移動機構を採用して、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 ウ 相違点3について 引用例2には「2枚目以降であれば、合焦レンズの駆動範囲(走査範囲)が通常の駆動範囲(焦点調整可能範囲)内で且つそれよりも狭い範囲に設定される(S5)。連写では短い時間間隔で連続的に撮影が行われるため、連続する撮影間では一般に被写体が大きく移動するとは考え難い。そこで、連写撮影モードの場合には、合焦レンズの駆動範囲を通常の駆動範囲よりも狭く設定し、合焦処理時間が短くなるようにしている。具体的には、図3に示すように、現在の合焦位置(その前の撮影の合焦位置)を中心として、駆動範囲を両側の狭い範囲に振り分けるようにしている。」(【0032】)と記載されている。上記における「2枚目以降であれば、合焦レンズの駆動範囲(走査範囲)が・・・設定される」ことより、2枚目以降各枚毎に合焦レンズの駆動範囲設定の指示動作入り、その度に駆動範囲(サーチ範囲)が設定されるものと認められる。また、合焦レンズの駆動範囲の設定について「現在の合焦位置(その前の撮影の合焦位置)を中心として、駆動範囲を両側の狭い範囲に振り分けるようにしている」と記載されていることより、「現在の合焦位置」が記憶されるものと認められる。したがって、AF機構に関して、「本検出指示操作部の指示動作が入る毎に、前記記憶部に記憶された前記合焦位置を中心としたサーチ範囲(前記駆動部が、前記ステージをZ方向に駆動できるサーチ可能な全範囲より狭い前記サーチ範囲)を設定する合焦位置検出部」において、「標本(被写体)の観察位置が変更されて」サーチ範囲を設定することは、引用例2に記載された事項であるといえる。 そして、引用発明において、合焦位置検出という同じ技術分野に属する引用例2に記載された上記技術を採用し、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到し得た事項である。 そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用発明、引用例2に記載された発明及び上記の周知技術から当業者が予測し得る程度のものである。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び、上記の周知技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び上記の周知技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成19年12月20日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年10月1日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2 平成19年12月20日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」において記載したとおりのものである。 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の記載事項は、上記「第2 平成19年12月20日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」の「(1)引用例」に記載したとおりのものである。 3 対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 平成19年12月20日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「1 本件補正について」で述べた、「前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し」を「ユーザーの操作により、前記合焦位置検出部の動作を指示する検出指示操作部とを有し」とする補正による限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 平成19年12月20日付の手続補正についての補正の却下の決定について」の「2 独立特許要件違反についての検討」において記載したとおり、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様に、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-01 |
結審通知日 | 2008-08-05 |
審決日 | 2008-08-26 |
出願番号 | 特願2002-221520(P2002-221520) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B) P 1 8・ 575- Z (G02B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉川 陽吾 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
森林 克郎 越河 勉 |
発明の名称 | 顕微鏡システム |
代理人 | 特許業務法人湘洋内外特許事務所 |