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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1185760
審判番号 不服2006-28178  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-14 
確定日 2008-10-10 
事件の表示 特願2001-332270「静電潜像現像用トナーとその製造方法、及び画像形成方法と画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 5月 9日出願公開、特開2003-131426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年10月30日の出願であって、平成18年10月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成19年2月28日付けで審判請求書の請求の理由に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項1乃至請求項4に係る発明は、明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであり、特に請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも樹脂粒子と着色剤粒子を水系媒体中で融着して着色粒子を生成させ、該着色粒子を水系媒体より濾別し、乾燥する静電潜像現像用トナーの製造方法において、
水系媒体中からの該着色粒子の濾別を、外側回転筒及び外側回転筒内に相対的に回転自在に設けられたスクリューコンベアを有するデカンタ型遠心分離機により行うことを特徴とする静電潜像現像用トナーの製造方法。」

3.引用例
3-1.引用文献1
・原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-194826号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。
《ア》
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも重合性単量体及び着色剤を含有する重合性単量体組成物を、媒体中で重合して着色樹脂粒子を生成させ、該着色樹脂粒子を媒体から濾別し、乾燥して重合法トナーを製造する方法であり、
媒体からの該着色樹脂粒子の濾別を、外側回転筒及び外側回転筒内に相対回転自在に設けられたスクリューコンベアを有するデカンタ型遠心分離機によって行うことを特徴とする重合法トナーの製造方法。」(特許請求の範囲・請求項1)、

《イ》
「【従来の技術】
…これら粉砕法によるトナーの問題点を克服するため、…懸濁重合法トナーを初めとして、各種重合法トナーやその製造方法が提案されている。…しかしながら、懸濁重合法トナーは媒体中で直接トナー粒子を生成させるため、トナー粒子を媒体から分離することが必要である。…連続式ベルトフィルター、サイホンピラー型セントリフュージ…これら、提案された装置を用いて、重合トナーの濾別を行うことは可能であるが、これらの装置は非常に大型の装置であり、かつ、濾別を行う際にフィルターを使用しており、このフィルターの目詰まりという問題が発生し、そのために繰り返して使用した際の処理量の低下が懸念される。…
また、乳化凝集法によってトナーを製造する場合においても、懸濁重合法の場合と同様に、トナー粒子を媒体から分離する必要があり、同様の問題を抱えている。」(6?10段落、従来の技術欄)、
《ウ》
「【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、媒体から重合法トナー粒子の濾別を効率的に行うことのできる製造方法を提供することにある。」(11段落、発明が解決しようとする課題欄)、

《エ》
「【発明の実施の形態】
一般に、スラリーからの固体粒子の分離方法は、主に減圧濾過、遠心分離、加圧濾過に分類されるが、本願発明者等は、これらの中で、遠心分離の一種であるデカンタ法を用いることが、適していることを見出した。…減圧濾過や加圧濾過もすぐれた濾過方法であるが、濾材として、濾布または濾紙を使用することが必須であり、そのため、どうしても目詰まりによる効率低下が避けられない。
これを改善するために、適宜、濾布及び濾紙を洗浄することが有効であるが、前述した如く、多量の洗浄水が必要になり、コストアップの要因になる。また、遠心分離法であっても、濾布を使用する方式では同様の問題が発生してしまう。さらには、これらの方式は、一般的にバッチ方式で行われており、生産効率が低く、大容量処理には向かないという問題がある。連続式で行う方式も提案されているが、その場合、過剰な設置スペースが必要となり、多大な投資が必要となる。これに対して、本発明方法では、濾材を使用しないデカンタ方式を用いることで、かかる問題点を改善している。
すなわち、本願発明のトナーの製造方法は、連続処理が可能であり、設置スペースを低減でき、非常に効率の良い生産方式である。」(14?18段落、発明の実施の形態欄)、
《オ》
「本発明の懸濁重合法トナーの製造方法は、具体的には、以下のように行われる。少なくとも重合性単量体中に着色剤を加え、更に必要に応じて低軟化点物質からなる離型剤,荷電制御剤,重合開始剤その他の添加剤を加え、ホモジナイザー・超音波分散機等によって均一に溶解又は分散せしめた単量体組成物を、分散安定剤を含有する水等の媒体中に通常の撹拌機またはホモミキサー,ホモジナイザーにより分散せしめる。
懸濁重合法においては、通常、単量体組成物100質量部に対して媒体100?2000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。好ましくは単量体組成物からなる液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように撹拌速度・時間を調整し、造粒する。
その後は分散安定剤の作用により、粒子状態が維持され、且つ粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えば良い。重合温度は40℃以上、一般的には50?90℃の温度に設定して重合を行う。」(27?30段落、発明の実施の形態欄)
《カ》
「スラリー懸濁液11を…デカンタ型遠心分離機10で固液分離を行うことによって、湿潤トナー17と媒体濾液12に分離される。湿潤トナー17は、デカンタ型遠心分離機のスクリュー羽根部で解砕された状態で排出され、次工程、例えば乾燥工程に送られる。…内部にスクリューを有するようなデカンタ型遠心分離機を用いた場合には、濾別された湿潤トナーがケーキ状に固く締まっていないため、洗浄液を加えることにより良好な洗浄が可能である。」(32?36段落、発明の実施の形態欄)
《キ》
「本発明方法においては、重量平均粒径が3?10μmである着色樹脂粒子が好適に製造…される。デカンタ型遠心分離装置の外側回転筒とスクリューコンベアとのクリアランスを1?5mmと設定した場合には、特に重量平均粒径が3?10μmである粒子を濾過するのに好適となる。この場合には、粒子の劣化が極めて抑制され、また効率のよい濾過が行われる。」(46段落、発明の実施の形態欄)、

《ク》
実施例1
イオン交換水に燐酸ナトリウム、燐酸カルシウムなどを溶解させた1218質量部の水系媒体中に、
スチレン170質量部、青色着色剤10質量部、重合開始剤8質量部などを含む重合性単量体組成物275質量部を投入し、
撹拌・分散・造粒させて、加熱重合の後、減圧、冷却して得られた、着色樹脂粒子を含む水系媒体スラリーについて、
デカンタ型遠心分離機を用いて、
外側回転筒内壁とスクリューコンベアとのクリアランス:1.5mm、
遠心力:3100G、スクリューコンベアとの差速:10rpm、
懸濁スラリー液供給量:100リットル/時間の運転条件で、
水系媒体中から着色樹脂粒子を濾別して、乾燥させると、重量平均粒径:7.0μmで、シャープな粒度分布を有する、着色樹脂トナー粒子が得られたこと、
該樹脂トナー粒子に疎水性シリカを外添して現像トナーとして静電潜像現像方式の画像形成装置に入れてテストすると、画像濃度が高くカブリも抑制された良好な出力画像が得られたこと
(84?93段落、実施例1欄)。
・上記の事項をまとめると、引用文献1には、以下の発明が開示されていると認められる。
(以下、「引用文献1発明」という。)
「着色剤を含む単量体組成物を、トナー粒子サイズの油滴として水系媒体中に分散させて、これを水系媒体中で懸濁重合することにより、着色樹脂粒子を生成させ、水系媒体中からの該着色樹脂粒子の濾別を、外側回転筒及び外側回転筒内に相対的に回転自在に設けられたスクリューコンベアを有するデカンタ型遠心分離機により行う静電潜像現像用トナーの製造方法。」

3-2.引用文献2
・原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-228653号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の記載がある。
《ケ》
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも樹脂成分と着色剤粒子とを含む静電荷像現像用イエロートナーにおいて、透過型電子顕微鏡により測定されたトナー内部での着色剤粒子の分散状態が、以下の2つの条件を満たすことを特徴とする静電荷像現像用イエロートナー。
(1)着色剤粒子の分散平均粒子径が100nm以下。
(2)着色剤粒子全体における400nm以上の粗大側粒子の含有量が5個数%以下。

【請求項3】 請求項1または2に記載の静電荷像現像用イエロートナーの製造方法であって、少なくとも1種の樹脂粒子分散液と、少なくとも1種の着色剤分散液と、少なくとも1種の離型剤分散液と、凝集剤とを混合添加して凝集粒子を形成する凝集・付着工程と、前記樹脂粒子のガラス転移点以上の温度に加熱して前記凝集粒子を融合してトナー粒子を形成する融合工程と、を含むことを特徴とする静電荷像現像用イエロートナーの製造方法。」(特許請求の範囲・請求項1、請求項3)、
《コ》
「近年、カラー画像の普及が盛んで高画質化への要求が高まってきている。デジタルフルカラー複写機やプリンターにおいては、色画像原稿をB(ブルー)、R(レッド)、G(グリーン)の各フイルターで色分解した後、オリジナルの原稿に対応した20?70μmのドット径からなる潜像を、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、BK(ブラック)の各現像剤を用い、減色混合作用を利用して現像する。そのため、各色の現像剤中の着色剤が画質に大きな影響を与えることとなる。
トナー中に添加される着色剤(Y,M,C)の重要な要素としては、透明性が良好であること、着色力が強いこと等が挙げられる。…イエロー顔料を含むイエロートナーにおいて、透明性が良好であるためには、イエロー顔料自体の結晶径が小さいこと、また、トナー中での着色剤平均粒子径が小さいことが重要である。」(5?6段落、従来の技術欄)、
《サ》
「高画質と高信頼性とを同時に実現するためには、トナーの粒度分布をシャープ化し、小径化かつ粒子径均一化することが要求される。そのためには、従来の混練粉砕法よりは、近年行われるようになった湿式製法による乳化凝集法等が有利である。乳化凝集法等の湿式製法の場合、トナーの粒度分布をシャープ化し、小径化かつ粒子径均一化することが可能であり、かつ形状制御性も良好である。本発明の静電荷像現像用トナーを乳化凝集法により製造する方法としては、少なくとも樹脂粒子を分散させた樹脂粒子分散液中で該樹脂粒子を凝集させて(凝集工程)なる凝集粒子を加熱し融合する(融合工程)か、または、少なくとも微粒子を分散させた微粒子分散液中で該微粒子を前記凝集粒子に付着させて(付着工程)なる付着粒子を加熱し融合する(融合工程)。…前記第1の工程(凝集工程)では、分散液中に、少なくとも樹脂粒子を分散させるが、その他、着色剤粒子や離型剤微粒子、その他の粒子を分散させることができる。着色剤粒子や離型剤微粒子等を分散させるには、予め樹脂粒子分散液と、着色剤分散液や離型剤分散液等を調製しておき、前記樹脂粒子分散液と、前記着色剤分散液および/または前記離型剤分散液等とを混合させ、凝集剤を添加して凝集粒子を形成する。」(39?42段落、発明の実施の形態欄)、
《シ》
「第3の工程(融合工程)における加熱は、樹脂粒子のTg以上の温度に上げ、その温度で撹拌を継続することにより、凝集粒子は融合される。次いで、乳化凝集法で得られたトナー液は、遠心分離または吸引濾過によりトナー粒子を分離して、イオン交換水にて1回または複数回洗浄する。その後トナー粒子を濾別し、乾燥することによって、本発明の静電荷像現像用イエロートナーを得ることができる。…前記乳化凝集法において、前記樹脂粒子分散液、前記着色剤分散液および前記その他の成分(粒子)を分散させてなる各分散液における分散媒としては、例えば水系媒体等が挙げられる。…前記樹脂粒子分散液と前記着色剤分散液とを混合する場合における、前記樹脂粒子の含有量としては、…2?20重量%程度であるのが好ましい。また、前記着色剤の含有量としては、…2?40重量%程度であるのが好ましい。」(60?67段落)、
《ス》
実施例1
乳化重合したスチレン系コポリマー(Tg:60℃)樹脂粒子の水系分散液:200g(うち60gは追加投入分)、
C.I.Pig.Yellow74の50%粒子径93nmの着色剤粒子の水系分散液:40g、
パラフィンワックスの中心粒子径160nmの離型剤粒子の水系分散液:40g、
カチオン界面活性剤:1.5gを、
丸型フラスコに投入し、撹拌しつつ徐々に加熱して59℃で、粒子径5.5μmに凝集した着色樹脂粒子を確認、
95℃まで加熱して凝集粒子を融合してから、冷却して得られた、着色樹脂粒子を含む水系媒体スラリーを濾過、洗浄、乾燥すると、体積平均粒子径:5.5μmで、シャープな粒度分布を有する、着色樹脂トナー粒子が得られたこと、
着色剤粒子は着色樹脂トナー粒子中に良好に分散されており、分散平均粒子径は94nmであったこと、
該樹脂トナー粒子に疎水性シリカを外添し、キャリアに混合して現像トナーとして静電潜像現像方式の画像形成装置に入れてテストすると、画像濃度が高くOHP出力画像の透明性も良好であったこと。(98?106段落、実施例1欄)。
・上記の事項をまとめると、引用文献2には、以下の発明が開示されていると認められる。
(以下、「引用文献2発明」という。)
「少なくとも樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で凝集・融合、すなわち、融着して着色粒子を生成させ、該着色粒子を水系媒体より濾別し、乾燥する静電潜像現像用トナーの製造方法。」

3-3.引用文献3
・原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-137131号公報(以下、「引用文献3」という。)には、次の記載がある。
《セ》
「近年、電子写真方式の複写機、プリンターの高解像度化、画質の向上に伴い、トナーの粒径をより小さくする傾向がある。そのため、従来の乾式法に代わって、トナーを水性媒体中で作製する湿式法が注目されてきた。この湿式法で作製されたトナーを上記の乾式法で分級するためには、トナーを乾燥した後分級する必要がある。上記の湿式法で作製されたトナーは、造粒時にサブミクロンの微粒子が副生するが、これを乾燥させるとトナー表面に微粒子が付着し、上記の乾式分級法では微粒子を十分に取り除くことができない。微粒子が付着したトナーは、現像器内でキャリアと混合されて機械的な摩擦力や剪断力を受け、トナーに付着した微粒子は徐々に剥がれ落ちたり、キャリアに付着して、流動性、現像性さらには転写性を悪化させるという問題があった。そこで、水性媒体中で作製されたトナーは、液中で微粒子を除きトナー粒子分散液として回収することが望まれた。」(3?5段落、従来の技術欄)、
《ソ》
「本発明者等は、水性媒体中で作製したトナー粒子から副生する微粒子を除去する方法を検討する中で、円筒型遠心分級機の一種であるスクリューデカンタ型連続遠心沈降機に着目し、トナー粒子と微粒子を遠心力で分離し、沈降したトナー粒子を比較的少量の洗浄水で洗浄しながら、最終的にトナー粒子を洗浄水中に分散した状態で回収することにより、微粒子の除去を確実にし、かつ、トナーの損傷を回避することに成功した。」(10段落、作用欄)、
《タ》
実施例1
ヒドロキシプロピルメチルセルロース10kgを溶解したイオン交換水90kgに、ポリエステル樹脂30kg、シアン顔料1kgを溶解した有機溶媒溶液61kgを投入し、混合撹拌して、水系媒体中に体積平均粒径9μmの油滴が乳化分散したスラリーとし、さらに2.5%ジエチレントリアミン水溶液100kgを追加して撹拌を続け、90℃に加温して3時間後に、体積平均粒径9μmの着色樹脂トナー粒子を含むトナー原液を調製。
該トナー原液をデカンタ型遠心分離機の回転軸内管から360リットル/時間の流量で供給し、同時に、イオン交換水をデカンタ型遠心分離機の回転軸環状部から720リットル/時間の流量で供給し、遠心効果が350Gになるように高速回転し、回収口から、水系媒体の介在(分散液状態)で物理的損傷を回避しつつトナー粒子を回収し、排出口から、副生した微粒子を多量に含む微粒子含有液を排出。
トナー原液の段階では、5μm以下の粒子が個数分布で50%あったが、デカンタ型遠心分離機から回収されたトナー粒子では、10%まで減少。
トナー粒子の体積分布による平均粒径は9μmであったこと。

4.対比・判断
・そこで、本願発明と引用文献1発明とを対比すると、引用文献1発明における「着色樹脂粒子」は、 本願発明における「着色粒子」に相当するから、両者は、
「水系媒体中で着色粒子を生成させ、該着色粒子を水系媒体より濾別し、乾燥する静電潜像現像用トナーの製造方法において、
水系媒体中からの該着色粒子の濾別を、外側回転筒及び外側回転筒内に相対的に回転自在に設けられたスクリューコンベアを有するデカンタ型遠心分離機により行う静電潜像現像用トナーの製造方法。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点]
水系媒体中での着色粒子の生成が、
本願発明では、「水系媒体中で少なくとも樹脂粒子と着色剤粒子を融着して成される」のに対して、
引用文献1発明では、「着色剤等を含む単量体組成物を、トナー粒子サイズの油滴として水系媒体中に分散させて、これを水系媒体中で懸濁重合して成される」点。

・相違点について検討する。
引用文献1には、水系媒体中で生成した着色粒子を水系媒体から濾別するのに、スクリューコンベア付デカンタ型遠心分離機で行うことのメリットが下記のとおり幾つも示されている。
a.濾材を用いないので目詰まり無く連続処理が可能であること(前掲《エ》参照)
b.装置の外側回転筒とスクリューコンベアとのクリアランスを1?5mmと設定すると、
重量平均粒径が3?10μmで現像用トナーに好適な着色粒子が、
効率的に濾過、分離できること(前掲《カ》参照)
c.水系媒体から分離される着色粒子は、濾材ろ過時の様なケーキ状固まりにはならず、
スクリュー羽根部で解砕されてほぐれた状態で排出されるので、
着色粒子そのものがほぼ劣化されずに取り出せること (前掲《カ》、《キ》参照)

そして、引用文献2には、「樹脂粒子と着色剤粒子とを水系媒体中で融着して着色粒子を生成させる」点を含む「着色粒子を水系媒体より濾別し、乾燥する静電潜像現像用トナーの製造方法」が記載されており、水系媒体中からの粒子の濾別を要するものであるから、スクリューコンベア付デカンタ型遠心分離機での濾別の適用が望ましいこと、また、適用により上記した引用文献1の発明のようなメリット期待できることは当業者にとって明らかである。
してみると、引用文献1の発明において、水系媒体中での着色粒子の生成を懸濁重合から、引用文献2に示される様な、樹脂粒子と着色剤粒子との融着に替えることは当業者であれば当然に試みることであり、現像用トナーに好適な粒径の着色粒子が連続運転で効率的にほぼ劣化されず取り出せるとの効果も、当然予測されることに過ぎないと認められる。

・なお、請求人は、水系媒体中で生成した着色粒子の濾別をスクリューコンベア付デカンタ型遠心分離機で行うことで、水系媒体中に残存する微粒子を、トナー用着色粒子に取り込まず濾液とともに廃棄できるので、耐久性の優れたトナーが得られる点につき、各引用文献に記載も示唆もない特段の効果である旨主張するので、以下に検討結果を付言する。
水系媒体中で生成した着色粒子の濾別をスクリューコンベア付デカンタ型遠心分離機で行えば、水系媒体中の微粒子を、トナー用着色粒子に取り込まず濾液とともに廃棄できる点は、例えば、引用文献3で具体的に詳述されているし(前掲《セ》?《タ》参照)、引用文献1でも「現像用トナーに好適な重量平均粒径:3?10μmの着色粒子が、効率的に濾過、分離できる」旨の記載箇所(前掲《カ》参照)で示唆されているので、請求人が主張する効果は、水系媒体中で生成した着色粒子の濾別をスクリューコンベア付デカンタ型遠心分離機で行うことにより当然に予測できることであり、特段の効果とはおよそ認められない。

・結局、本願発明は、引用文献1?引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用文献1?引用文献3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである
以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、この特許出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-22 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-22 
出願番号 特願2001-332270(P2001-332270)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 菅野 芳男  
特許庁審判長 木村 史郎
特許庁審判官 淺野 美奈
伏見 隆夫
発明の名称 静電潜像現像用トナーとその製造方法、及び画像形成方法と画像形成装置  

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