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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する H01R 審判 訂正 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 訂正する H01R |
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管理番号 | 1186278 |
審判番号 | 訂正2008-390042 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2008-04-15 |
確定日 | 2008-07-10 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3786400号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3786400号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、特許第3786400号の明細書を、審判請求書に添付された訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものである。 2.訂正事項 2-1 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「該加圧部材は、上記開口部へフラットケーブルを挿入可能とする挿入空間を開放する開位置と、挿入空間を閉じて上記フラットケーブルを接触部へ圧する閉位置との間で変位自在である」を「該加圧部材は、上記開口部へフラットケーブルを挿入可能とする挿入空間を開放する開位置と、挿入空間を閉じて上記フラットケーブルを接触部へ圧する閉位置との間で回動自在である」と訂正する。 2-2 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、「加圧部材は、ハウジングに保持された端子に形成された支持部によって変位自在に支持可能とされており」を「加圧部材を貫通するスリット内に設けられた軸部が、ハウジングに保持された端子に形成された凹湾曲した支持部によって変位自在に支持可能とされており」と訂正する。 3.当審の判断 3-1 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項1は、加圧部材について、「変位自在」とあったものを、その下位概念の「回動自在」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、この訂正は、特許明細書の段落【0025】、【図1】等の記載に基くものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 また、上記訂正事項2は、「加圧部材は、・・・支持部によって変位自在に支持可能」とあったものを、「加圧部材を貫通するスリット内に設けられた軸部が、・・・凹湾曲した支持部によって変位自在に支持可能」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。そして、この訂正は、特許明細書の段落【0020】、【0025】、【図1】、【図2】等の記載に基くものであるから、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 3-2 独立特許要件 前記3-1のように、特許請求の範囲の請求項1の訂正は特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するので、訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下に検討する。 (1)本件訂正発明 訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1?8に係る発明(以下、「本件訂正発明1」?「本件訂正発明8」という。)は次のとおりのものである。 【請求項1】 「略箱状のハウジングに側方から対応収容溝へ挿入され配列保持された複数の端子が接触部をハウジングの開口部に臨む位置に有し、該開口部には、上記接触部上に配置されるフラットケーブルに対して接触部と反対側に位置して加圧部材が設けられ、該加圧部材は、上記開口部へフラットケーブルを挿入可能とする挿入空間を開放する開位置と、挿入空間を閉じて上記フラットケーブルを接触部へ圧する閉位置との間で回動自在である電気コネクタにおいて、加圧部材を貫通するスリット内に設けられた軸部が、ハウジングに保持された端子に形成された凹湾曲した支持部によって変位自在に支持可能とされており、上記端子は、金属板の平面を維持して形成され、上記加圧部材が開位置にあるとき、上記端子の支持部をなす部分の上縁がハウジングの上壁部の内面よりも上方に位置しており、ハウジングの上壁部と下壁部に沿って、収容溝へ圧入されることにより固定される固定縁部が形成されている基部と、該基部から開口部に向けハウジングの上壁部に沿って延びる上腕部と下壁部に沿って延びる下腕部と、上記基部から下腕部の延出方向と逆方向にハウジング外に突出して下壁部下面レベルに位置する接続部とを備え、上腕部と下腕部の少なくとも一方が可撓性を有し、該上腕部には上記支持部がそして下腕部には上記接触部が形成されており、加圧部材が閉位置にあるときに該加圧部材でフラットケーブルを上記接触部に押圧せしめることを特徴とするフラットケーブル用電気コネクタ。」 【請求項2】 「加圧部材は、端子を収容可能なスリットが形成されていると共に、開位置へ回動する際に該ハウジングの上壁部の切欠部へ該加圧部材の一部が進入可能であることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。」 【請求項3】 「ハウジングは下壁部がコネクタの取付対象たる回路基板上へ配置可能に下面の略全域にわたり形成されていることとする請求項1又は請求項2に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。」 【請求項4】 「固定縁部は、基部の上縁と下縁に形成されていることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。」 【請求項5】 「端子は下腕部の下縁が先端に向け上方へ傾斜していることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。」 【請求項6】 「下腕部の接触部は上腕部の支持部よりも可撓性が大きく設けられていることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。」 【請求項7】 「請求項1のコネクタの製造方法において、下腕部と上腕部の少なくとも一方を撓ませながら、上腕部をハウジングの上壁部内面、下腕部を下壁部内面にそれぞれ沿って案内されるようにして端子を収容溝内へ挿入し、所定位置までの挿入時に、原形に向け撓みを解除することを特徴とするフラットケーブル用電気コネクタの製造方法。」 【請求項8】 「請求項1又は請求項5のコネクタの製造方法において、下腕部の傾斜部分が下壁部内面と平行となるように端子を下方に傾けた後、該傾斜部分を下壁部内面に案内されるようにして端子を収容溝内へ挿入開始し、しかる後上記下腕部の下方への傾きをなくして挿入を所定位置まで続行することを特徴とするフラットケーブル用電気コネクタの製造方法。」 (2)刊行物、刊行物に記載された事項 刊行物1:特開平9-283237号公報 刊行物2:特開2000-48886号公報 (2-1)本件の出願前に頒布された刊行物である刊行物1には、「フレキシブル基板用電気コネクタ」について、図面とともに次の事項が記載されている。 ア.「図1において、符号1は、絶縁材料から成るハウジングであり、左半分が上方に向け開口している。該ハウジング1は図8の公知のコネクタと同様に、その長手方向(図1の紙面に直角な方向)にて上記開口部の両端位置に上方に延出するフランジ状の保持部を有しており、該保持部の奥側の端面に円筒面もしくはその一部をもつ軸支部(図示せず)が形成されている。また、上記ハウジング1は、図8の場合と同様に、両端の保持部間に上記長手方向の複数位置に等ピッチで接触子を収容保持する保持溝が形成されている。 上記各接触子2は導電体、例えば板状金属材を打ち抜いた後に一部を曲げ加工して作られており、図1にも見られるように、U字状をなす接触フィンガー部3と、腕状部の先端に設けられた回動案内部4と、両部3,4を下述の接続部5Aと一体に連結する連結部5とを有している。・・・連結部5の左方には、ハウジング外に突出し、該ハウジング1の底面と略同一の高さレベルに位置する接続部5Aが設けられていて、上記ハウジング1の底面が回路基板(図示せず)上に配されたときに、該接続部5Aが回路基板の所定の回路部に接触し後の半田結線に備えるようになっている。上記接触フィンガー部3の先端には突起状に弾性接触部3Aが形成され上記回動案内部4とほぼ対向して位置している。 かかる板状の接触子2は紙面に直角な方向に重なって櫛歯状に複数配されているが、本例では好ましい形態として、接触子2が一つおきにその弾性接触部3Aの位置を左右にずらしたものとなっている。又、上記接続部5Aも交互にハウジング1の左方そして右方に突出するように設けられている。 上記回動案内部4の中心4Aと上記ハウジング1の軸支部の中心とは同一直線(紙面に直角な直線)上に位置している。かかる接触子2は交互にハウジングの後(図1にて右部)及び前部からハウジングの保持溝に圧入され、所定位置まで圧入されたときに爪状の突起5Bにてその位置が維持される。」(段落【0018】?【0021】) イ.「上記ハウジング1の開口部には、紙面に直角な方向に長く延びる蓋状の加圧部材6が回動自在に設けられている。該加圧部材6は加圧部7を有し、長手方向の両端部には、該加圧部材6の同方向に突出する軸部(図示せず)がそれぞれ設けられており、該軸部は上記ハウジング1の半円状の上記軸支部により回動自在に支持されている。また、上記加圧部材6は加圧部7が設けられている側とは反対の側に、上記軸部がハウジング1の軸支部に収められた際、一連の接触子2の回動案内部4と係合する円弧部を有する回動被案内部8が形成されている。したがって、上記一連の接触子2が上記ハウジング1の保持溝に挿入されると、回動案内部4は、櫛歯状に配列された軸状をなし、ここで上記加圧部材6の回動被案内部8が回動案内される。その結果、加圧部材6の回動の際の支持力は金属製の上記回動案内部4により支持されその強度がきわめて高くなる。」(段落【0023】) ウ.「上記接触子2の回動案内部4は、図3に見られるように、金属板を打抜いて型取られた接触子2の一部をU字状に折り曲げてその下端面を半円形にすることにより回動案内面4Bが形成されている。すなわち、上記回動案内部4は、従来の接触子の寸法よりも高さ方向に大きくすることなく、隣接せる接触子との間の空間に収まる範囲内で板厚方向に突出することにより設けられている。」(段落【0024】) エ.「かかる本実施形態例の電気コネクタにあっては、フレキシブル基板は次の要領で結線される。 先ず、図1に示すごとく、加圧部材7を上方へ向け回動して開放位置にもたらし、ハウジング1の開口部を大きく開放し、ここからフレキシブル基板Fをその結線部が下面となるようにして、上記加圧部材6と接触子2の接触部3Aとの間の挿入空間に挿入する。この状態にあっては、上記挿入空間はフレキシブル基板Fの厚みに対し十分大きいものとなっており、該フレキシブル基板Fは容易に上記挿入空間に入り込み、その先端部はハウジング1の受部1Bにより若干もち上げられた位置で支持される。 しかる後、図1の二点鎖線で示すごとく上記加圧部材6を下方に回動し、図2の位置までもたらす。すると、該加圧部材6の加圧部7がフレキシブル基板Fに当接するようになり、接触子2の弾性接触部3Aとハウジング1の受部1Bで支持されている上記フレキシブル基板Fを、下方に圧する。その結果、フレキシブル基板Fは比較的大きく撓み弾性変形を生じ、当接圧をもって接触部3Aと接触するようになる。」(段落【0026】?【0028】) オ.「さらには、上記図5の形態とは逆に、図6のごとく加圧部材6の側に軸部16Aを回動被案内部として設けることが可能である。この場合、回動被案内部は図2そして図4の場合は異なり横壁部を有せずに縦壁部16のみでよい。そして各縦壁部16に上記軸部16Aを一体に形成すればよい。その際、接触子2は均一に平坦なものでよく、回動案内部は単なる孔部17として形成される。 上記軸部は加圧部材6に一体的に形成しなくとも、図7のごとく別体とすることもできる。図7においては、軸体はピン体18として設けられ、複数の接触子2の孔部17に、貫通される。その場合、加圧部材6の縦壁部19には該ピン体18が嵌合する孔20が穿設されている。」(段落【0032】、【0033】) カ.【図1】、【図2】には、接触子2の回動案内部4の上縁がハウジング1の上壁部の内面より上方に位置すること、接触子2が、ハウジングの上壁部と下壁部に沿って保持溝に圧入されることにより固定される固定縁部が上縁と下縁に形成されている連結部5を備えること、加圧部材6が、開放位置に回動する際に上壁部の切欠部へ加圧部材の一部が進入することが図示されている。 キ.【図6】、【図7】には、加圧部材6の縦壁部16間に端子を収容可能なスリットが形成されたことについて図示されている。 ク.【図8】には、略箱状のハウジング51について図示されている。 ケ.上記アの記載事項、及び【図1】、【図2】によると、接触子2が2つの弾性接触部3Aのうち、前部に存在する弾性接触部3Aを、ハウジング1の左半分の開口部に臨む位置に有したこと、同じく、接触子2が先端に回動案内部4を設け、基部から開口部に向けてハウジングの上壁部に沿って延びる腕状部を有したことが示されている。 コ.上記ア、イ、オの記載事項、及び【図6】、【図7】によると、加圧部材6の縦壁部16を貫通するスリット内に設けられた軸部16Aがハウジング1に収容保持された接触子2の孔部17を有する回動案内部4に回動自在に支持されたことが示されている。 サ.上記アの記載事項、及び【図1】、【図2】によると、ハウジング1は下壁部が回路基板上に配置可能に下面の全領域にわたり形成されていることが示されている。 これらの記載事項及び図示内容を総合勘案すると、刊行物1には、次の発明が記載されている。 「略箱状のハウジング1に後部から保持溝に圧入され収容保持された複数の接触子2が弾性接触部3Aをハウジング1の左半分の開口部に臨む位置に有し、開口部には、弾性接触部3A上に支持されるフレキシブル基板Fに対して弾性接触部3Aと対向して位置する加圧部材6が設けられ、加圧部材6は、開口部へフレキシブル基板Fを挿入可能とする開放位置と、フレキシブル基板Fを下方の弾性接触部3Aへ圧する当接位置との間で回動自在である電気コネクタにおいて、加圧部材6を貫通するスリット内に設けられた軸部16Aがハウジング1に収容保持された接触子2の孔部17を有する回動案内部4に回動自在に支持され、接触子2は板状金属材を打ち抜いて作られ、ハウジングの上壁部と下壁部に沿って、保持溝に圧入されることにより固定される固定縁部が形成されている連結部5と、連結部から開口部に向けてハウジングの上壁部に沿って延びる腕状部と接触フィンガー部3とを備え、接触フィンガー3は弾性を有し腕状部には回動案内部4がそして接触フィンガー3には弾性接触部3Aが形成されており、加圧部材6が当接位置にあるときにフレキシブル基板Fを当接圧をもって弾性接触部3Aに当接させるようにしたフレキシブル基板用電気コネクタ。」 (2-2)本件の出願前に頒布された刊行物である刊行物2には、「FPC用電気コネクタ」について、加圧部材を支持する端子に形成された支持部を凹湾曲された形状とした発明について記載されている。 (3)対比・判断 本件訂正発明1と刊行物1及び刊行物2に記載された発明とを対比する。 刊行物1及び刊行物2に記載された発明は、本件訂正発明1の「加圧部材を貫通するスリット内に設けられた軸部が、ハウジングに保持された端子に形成された凹湾曲した支持部によって変位自在に支持可能とされており、加圧部材が開位置にあるとき、端子の支持部をなす部分の上縁がハウジングの上壁部の内面よりも上方に位置しており、ハウジングの上壁部と下壁部に沿って、収容溝へ圧入されることにより固定される固定縁部が形成されている基部と、該基部から開口部に向けハウジングの上壁部に沿って延びる上腕部と下壁部に沿って延びる下腕部と、基部から下腕部の延出方向と逆方向にハウジング外に突出して下壁部下面レベルに位置する接続部とを備え」るなる発明特定事項を有していない。 そして、本件訂正発明1は、上記発明特定事項を有することにより、「回動支持部の強度を低下することなく低背化を可能とするフラットケーブル用電気コネクタを提供することを目的とする。」なる課題を解決し、「本発明のコネクタによれば、加圧部材の変位あるいは回動案内を行う端子の支持部をハウジングの切欠部内にて該ハウジングの上壁の下面よりも上方に位置せしめたので、上壁の厚み範囲内を回動支持部のための有効的に利用でき、その結果、上記上壁の厚さの分だけは低背化が可能となる。しかも、支持部及びその周辺の強度は、上記範囲を利用するので、支持部を高さ方向で小寸法とする必要もなく、低下しない。しかも、支持部を形成している端子は金属材で作られるので、ハウジング上壁にくらべ高い強度を確保できる。又、本発明方法によるならば、一時的に、上腕部と下腕部の少なくとも一方の弾性変形により、端子の高さ寸法を小さくできるので、ハウジング寸法を大きくすることなく、上記コネクタの組立が容易に行うことが可能となる。さらに、可撓性が上腕部よりも下腕部の方が大きいので、下腕部が弾性変形し、そこに設けられた接触部の接触が確実となる。」なる効果を奏するものである。 したがって、本件訂正発明1は、刊行物1及び2に記載された発明ということができないとともに、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることがでたきたものということもできない。 そして、本件訂正発明1について、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである、とする他の理由も発見しない。 同様に、本件訂正発明1を引用する本件訂正発明2乃至8についても、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである、とする理由を発見しない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号乃至第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項乃至5項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 フラットケーブル用電気コネクタ及びその製造方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】略箱状のハウジングに側方から対応収容溝へ挿入され配列保持された複数の端子が接触部をハウジングの開口部に臨む位置に有し、該開口部には、上記接触部上に配置されるフラットケーブルに対して接触部と反対側に位置して加圧部材が設けられ、該加圧部材は、上記開口部へフラットケーブルを挿入可能とする挿入空間を開放する開位置と、挿入空間を閉じて上記フラットケーブルを接触部へ圧する閉位置との間で回動自在である電気コネクタにおいて、加圧部材を貫通するスリット内に設けられた軸部が、ハウジングに保持された端子に形成された凹湾曲した支持部によって変位自在に支持可能とされており、上記端子は、金属板の平面を維持して形成され、上記加圧部材が開位置にあるとき、上記端子の支持部をなす部分の上縁がハウジングの上壁部の内面よりも上方に位置しており、ハウジングの上壁部と下壁部に沿って、収容溝へ圧入されることにより固定される固定縁部が形成されている基部と、該基部から開口部に向けハウジングの上壁部に沿って延びる上腕部と下壁部に沿って延びる下腕部と、上記基部から下腕部の延出方向と逆方向にハウジング外に突出して下壁部下面レベルに位置する接続部とを備え、上腕部と下腕部の少なくとも一方が可撓性を有し、該上腕部には上記支持部がそして下腕部には上記接触部が形成されており、加圧部材が閉位置にあるときに該加圧部材でフラットケーブルを上記接触部に押圧せしめることを特徴とするフラットケーブル用電気コネクタ。 【請求項2】加圧部材は、端子を収容可能なスリットが形成されていると共に、開位置へ回動する際に該ハウジングの上壁部の切欠部へ該加圧部材の一部が進入可能であることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。 【請求項3】ハウジングは下壁部がコネクタの取付対象たる回路基板上へ配置可能に下面の略全域にわたり形成されていることとする請求項1又は請求項2に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。 【請求項4】固定縁部は、基部の上縁と下縁に形成されていることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。 【請求項5】端子は下腕部の下縁が先端に向け上方へ傾斜していることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。 【請求項6】下腕部の接触部は上腕部の支持部よりも可撓性が大きく設けられていることとする請求項1に記載のフラットケーブル用電気コネクタ。 【請求項7】請求項1のコネクタの製造方法において、下腕部と上腕部の少なくとも一方を撓ませながら、上腕部をハウジングの上壁部内面、下腕部を下壁部内面にそれぞれ沿って案内されるようにして端子を収容溝内へ挿入し、所定位置までの挿入時に、原形に向け撓みを解除することを特徴とするフラットケーブル用電気コネクタの製造方法。 【請求項8】請求項1又は請求項5のコネクタの製造方法において、下腕部の傾斜部分が下壁部内面と平行となるように端子を下方に傾けた後、該傾斜部分を下壁部内面に案内されるようにして端子を収容溝内へ挿入開始し、しかる後上記下腕部の下方への傾きをなくして挿入を所定位置まで続行することを特徴とするフラットケーブル用電気コネクタの製造方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明はフラットケーブル用電気コネクタ及びその製造方法に関する。 【0002】 【従来の技術】 この種の電気コネクタは回路基板上に取りつけられて使用されるものであり、特開平9-35828に開示されている形式のものが知られている。 【0003】 この公知のコネクタでは、添付図面の図3に見られるように、フラットケーブル(フレキシブル基板)51は、ハウジング52の開口部53に臨んで多数配列された端子54の接触部54A上に配置されるように、該フラットケーブルの面の方向Aに上記開口部の挿入空間へ挿入される。図において、端子は紙面に平行な金属板を打ち抜き加工して作られており、紙面に直角方向に所定間隔をもって多数配列されている。 【0004】 ハウジング52の開口部53には、該開口部を開閉する加圧部材55が回動自在に支持された状態で設けられている。該加圧部材55は図示の開位置で、上記挿入空間を開放してフラットケーブル51の挿入を可能とし、下方へ回動された閉位置では、挿入されたフラットケーブル51を圧して端子の接触部54Aに接続する。 【0005】 上記端子54は、上腕部57と下腕部58とを有し、ハウジング52の上壁52Aの内面で支持される上腕部57の先端に回動支持部59が、そして上記下腕部58の先端に接触部54Aがそれぞれ設けられており、多数の端子54の回動支持部59の円弧状端面にて上記加圧部材55が回動自在に支持される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】 この種のコネクタは、コネクタが組み込まれる電子機器の小型化のために低背化、すなわち、図3にて高さ方向寸法を小さくすることが要請される。 【0007】 しかしながら、図3のものにあっては、ハウジングの上壁52Aが回動力を受ける回動支持部59を支持しているので、この上壁52Aをあまり薄くできない。又、回動支持部59が上壁52Aの下に位置してあり、しかも下方に円弧部分が突出しているので、全体として高い寸法となってしまう。 【0008】 本発明は、かかる事情に鑑み、回動支持部の強度を低下することなく低背化を可能とするフラットケーブル用電気コネクタ及びその製造方法を提供することを目的とする。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明に係るフラットケーブル用電気コネクタは、略箱状のハウジングに側方から対応収容溝へ挿入され配列保持された複数の端子が接触部をハウジングの開口部に臨む位置に有し、該開口部には、上記接触部上に配置されるフラットケーブルに対して接触部と反対側に位置して加圧部材が設けられ、該加圧部材は、上記開口部へフラットケーブルを挿入可能とする挿入空間を開放する開位置と、挿入空間を閉じて上記フラットケーブルを接触部へ圧する閉位置との間で変位自在である。 【0010】 かかる電気コネクタにおいて、本発明では加圧部材は、ハウジングに保持された端子に形成された支持部によって変位自在に支持可能とされており、上記加圧部材が開位置にあるとき、上記端子の支持部をなす部分の上縁がハウジングの上壁部の内面よりも上方に位置しており、上記端子は、金属板の平面を維持して形成され、ハウジングの上壁部と下壁部に沿って、収容溝へ圧入されることにより固定される固定縁部が形成されている基部と、該基部から開口部に向けハウジングの上壁部に沿って延びる上腕部と下壁部に沿って延びる下腕部と上記基部から下腕部の延出方向と逆方向にハウジング外に突出して下壁部下面レベルに位置する接続部とを備え、上腕部と下腕部の少なくとも一方が可撓性を有し、該上腕部には上記支持部がそして下腕部には上記接触部が形成されており、加圧部材が閉位置にあるときに該加圧部材でフラットケーブルを上記接触部に押圧せしめることを特徴としている。 【0011】 本発明によれば、このように端子の支持部を有する部分の上縁がハウジングの上壁部の内面よりも上方に位置するので、上記上壁部の厚さの範囲を有効に使用して、端子は高さ方向に寸法が小さくなる。その際、上記範囲で支持部周辺が削られる訳でもなく、支持部の強度の低下はない。又、本発明では、加圧部材の変位(移動)の形態は、特には限定されないが、一例として回動とすることができる。 【0012】 本発明において、ハウジングは下壁部がコネクタの取付対象たる回路基板上へ配置可能に下面の略全域にわたり形成されていることが好ましい。 【0014】 上記端子は下腕部の下縁が先端に向け上方へ傾斜していることが好ましい。こうすることにより、端子をハウジングの収容溝へ側方から挿入する場合、挿入先端側となる上腕部と下腕部の先端同士間距離が小さくなり、挿入し易くなる。その際、下腕部は上腕部よりも可撓性が大きいことが好ましい。 【0015】 このような本発明のコネクタを製造するには、下腕部を上腕部の少なくとも一方を撓ませながら、上腕部を上壁部内面、下腕部を下壁部内面にそれぞれ沿って案内されるようにして端子を収容溝内へ挿入し、所定位置までの挿入時に、原形を向け撓みを解除することによりコネクタを得る。 【0016】 又、下腕部が先端に向け上方へ傾斜している部分を有している場合には、下腕部の傾斜部分が下壁部内面と平行となるように端子を下方に傾けた後、該傾斜部分を下壁部内面に案内されるようにして端子を収容溝内へ挿入開始し、しかる後上記下腕部の下方への傾きをなくして挿入を所定位置まで続行することにより製造できる。 【0017】 【発明の実施の形態】 以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。 【0018】 図1(A)?(C)に示される本発明の第一実施形態のフラットケーブル用電気コネクタにおいて、略箱型状のハウジング1に複数の端子2が保持されている。端子2は金属板の抜き加工等により作られ、紙面に平行な平らな面を維持しており、複数の端子2が紙面に直角な方向に所定間隔をもって配列されている。かかる端子2は、図にて左方からハウジング1の対応する紙面に平行なスリット状の収容溝3内へ圧入されている。 【0019】 端子2は、上腕部(支持腕部)4と下腕部5そして接続部6を有しており、上腕部4と下腕部5はハウジングの溝3を形成する上壁部7と下壁部8の内面に沿って位置し、接続部6は上記下壁部8と逆方向にハウジング外へ突出している。上記上腕部4は基部領域の上縁に係止突起4A,4Bを有し、左方からの端子2の所定位置までの挿入時にハウジングの上壁部7の内面に喰い込んで抜けの防止を図っている。該上腕部4は、紙面内での撓みに関し、比較的剛性が高く、特に下腕部4との比較において剛性が高い。この上腕部4の先端部9は、高さ方向に幅広となっており、その上縁9Aは上記ハウジングの上壁部7の下面(内面)よりも上方(外側)に位置している。又、上記上縁9Aから上腕部4への移行部は、なだらかな斜面による肩部10が形成され、次第に上壁部7の下面に沿って延びている。 【0020】 上記先端部9の下部には凹湾曲した溝状の回動支持部11が形成されている。この回動支持部11は、後述する加圧部材を回動可能に支持するためのもので軸受の機能を有する。この回動支持部11の溝底と上縁9Aとの距離は、上縁9Aがハウジングの上壁部7の下面より上方にあり、上面近傍にまで及んでいるため、十分な高さ方向の幅を確保しており、この周辺での強度は十分なものとなっている。 【0021】 端子2の下腕部5は、上腕部4に比し幅(図での高さ寸法方向)が狭くなっていて、紙面に平行な面での可撓性を有している。該下腕部5の下縁、特に先端寄りの部分では上方に傾斜した斜部5Aを有している。そして、先端には、上記上腕部5の回動支持部11の方に突出した接触部12が形成されている。 【0022】 ハウジング1は、既述したように、金属板から形成されその板面を維持している上記端子2を左方から挿入するためのスリット状の収容溝3が紙面に平行に端子の数だけ形成されている。収容溝3の上端そして下端を規制するハウジング1の上壁部7そして下壁部8は上記端子2の挿入位置を定める。下腕部5の基部が下壁部8の内面に接し、既述のごとく、上腕部4の係止突起4A,4Bがハウジングの上壁部7に喰い込んで、端子位置を確保すると共に抜けを防止する。又、上記下壁部8はハウジング下面全域に及んでおり、コネクタが回路基板上に配置される際、全面的に回路基板と接面する。 【0023】 上記ハウジング1には、フラットケーブルCを右方からハウジング1内へ挿入するためのケーブル溝13が形成されている。該ケーブル溝13はフラットケーブルCの幅(紙面に直角な方向の寸法)、すなわち複数の端子の配列範囲の距離にほぼ等しい幅をもって、両端壁間で上記複数の収容溝3を貫くように連通している。 【0024】 又、上記ハウジング1の上壁部7の右部が切欠部となっていて、上記ケーブル溝13の上方が開口されており、開口部14を形成している。すなわち、該開口部14は、左右方向では、右方に開放され左方はハウジング1の上壁部7の端部にまで及び、上下方向では、上述のごとくケーブル溝13より上方が開放されている。 【0025】 上記ハウジング1の開口部14には、絶縁材で作られた加圧部材15が配置されている。該加圧部材15は、図1(A)の開位置と図1(C)の閉位置との間を回動自在に、端子2の上記回動支持部14により支持されている。該加圧部材15は、図1(A)のごとく、開位置では上記上壁部の切欠部の領域への入込みを深める方向に回動している。上記加圧部材15は、先端側の操作部16と、逆側の溝部17とを有している。操作部16は加圧部材15に回動力を与えるための部分であり、溝部17は端子2の先端部9を収めるためのものである。したがって、溝部17は端子2に対応して櫛歯状にスリットを形成している。そして、該溝部17内に軸部18が設けられていて、該軸部18が端子2の回動支持部11によって回動自在に支持されている。上記溝部17は、その底面17Aと軸部18の中心18A(回動軸線)との間の距離が、図1(A)の開位置で、上記溝部17の底面17Aが端子2の肩部10と強く係止し合うように形成されている。この底面17Aと肩部10とは、加圧部材の開位置で、互いに係止部を形成し、その係止力により加圧部材15を開位置に留めておく。 【0026】 以上のごとくの本実施形態のコネクタは、次の要領で使用される。 ▲1▼先ず、コネクタを回路基板(図示せず)上の所定位置へ配置し、端子2の接続部6を回路基板の対応回路部と半田等により接続する。 ▲2▼次に、加圧部材15を、図1(A)に示される開位置にまで上方へ回動する。この開位置では、加圧部材15は、互いに係止部を形成する該加圧部材15の溝17の底面17Aと端子2の肩部10との間の係止力により、閉位置への戻りが阻止されてこの開位置状態に維持される。 ▲3▼加圧部材15が開位置にあると、開口部14は右方に大きく開放された状態が確保される。したがって、フラットケーブルCの挿入側からケーブル溝13の入口(挿入空間)が良く見出される。作業者は、フラットケーブルCを、接続面が下面となるようにして、このケーブル溝13へ挿入し、ケーブル先端が溝奥壁と当接するまで挿入する。 ▲4▼所定位置までケーブルを挿入した後、係止力に抗して加圧部材15を時計まわりに回動して係止を解除し、加圧部材15を図1(B)の位置を経てず1(C)の閉位置へもたらす。加圧部材15はその加圧部15AでフラットケーブルCを接触部12へ強く圧し、両者は電気的に接続される。 【0027】 又、上記コネクタにおいて、端子2は図2(A)?(D)に示される手順でハウジング内へ挿入される。 (a)先ず、図2(A)に実線で示されているごとく、端子2の上腕部4と下腕部5とを、両者の先端間距離を狭めるように、弾性撓み変形させながら、ハウジング1のスリット状の収容溝3へ側方(図では左方)から挿入する。 (b)上記上腕部4と下腕部5との距離を狭めた状態で、挿入を進行せしめる(図2(B),(C)参照)。 (c)さらに、挿入を進めると、上腕部4の先端部9が上壁部7の切欠部(開口部14の上部)領域に入り込み、弾性撓み変形から解放されて、端子は原形をもって所定挿入位置に達する(図2(D))。このときに端子2は、基部側(図中左側)にてハウジング1に固定される。 【0028】 又、本発明では、下腕部5が先端寄りの下縁に斜部5Aを有しているので、この斜部5Aが下壁部8の内面に沿うように、図2(A)の二点鎖線のごとくに端子を傾けて挿入開始するならば、両腕部間の弾性撓み変形量が小さくても挿入ができる。尚、回動支持部の形状は、凹湾曲に限られるものではなく、凸湾曲状であってもよい。 【0029】 【発明の効果】 以上のように、本発明のコネクタによれば、加圧部材の変位あるいは回動案内を行う端子の支持部をハウジングの切欠部内にて該ハウジングの上壁の下面よりも上方に位置せしめたので、上壁の厚み範囲内を回動支持部のための有効的に利用でき、その結果、上記上壁の厚さの分だけは低背化が可能となる。しかも、支持部及びその周辺の強度は、上記範囲を利用するので、支持部を高さ方向で小寸法とする必要もなく、低下しない。しかも、支持部を形成している端子は金属材で作られるので、ハウジング上壁にくらべ高い強度を確保できる。又、本発明方法によるならば、一時的に、上腕部と下腕部の少なくとも一方の弾性変形により、端子の高さ寸法を小さくできるので、ハウジング寸法を大きくすることなく、上記コネクタの組立が容易に行うことが可能となる。さらに、可撓性が上腕部よりも下腕部の方が大きいので、下腕部が弾性変形し、そこに設けられた接触部の接触が確実となる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の一実施形態のコネクタの断面図であり、(A)は加圧部材が開位置、(B)は中間位置、(C)は閉位置にある。 【図2】図1のコネクタの組立方法を示し、(A)?(D)はハウジングへ端子を挿入する様子をその進行度順に示しており、(A)が挿入開始、(D)が挿入終了、(B),(C)が挿入途中である。 【図3】従来のコネクタの断面図である。 【符号の説明】 1 ハウジング 2 端子 4 上腕部 5 下腕部 7 上壁部 8 下壁部 9A 上縁 11 回動支持部 12 接触部 14 開口部 15 加圧部材 18A 回動軸線 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2008-06-30 |
出願番号 | 特願2001-83962(P2001-83962) |
審決分類 |
P
1
41・
856-
Y
(H01R)
P 1 41・ 851- Y (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 栗田 雅弘 |
特許庁審判長 |
岡本 昌直 |
特許庁審判官 |
長崎 洋一 長浜 義憲 |
登録日 | 2006-03-31 |
登録番号 | 特許第3786400号(P3786400) |
発明の名称 | フラットケーブル用電気コネクタ及びその製造方法 |
代理人 | 佐竹 勝一 |
代理人 | 市川 英彦 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 竹内 麻子 |
代理人 | 竹内 麻子 |
代理人 | 西島 孝喜 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 高石 秀樹 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 市川 英彦 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 佐竹 勝一 |
代理人 | 高石 秀樹 |