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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1186302 |
審判番号 | 不服2005-25106 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-27 |
確定日 | 2008-10-14 |
事件の表示 | 平成10年特許願第326023号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 5月16日出願公開、特開2000-135315〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明の認定 本願は、平成10年10月31日の出願であって、平成17年12月7日付けで拒絶の査定がされたため、これに対し、同月27日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。 本件補正前後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。 <本件補正前の特許請求の範囲> 【請求項1】 遊技価値を決定する遊技価値判定用乱数を生成し、特定入賞口への入賞に基づいて所定個数まで前記遊技価値判定用乱数を抽出記憶するとともに、判定時に前記抽出された遊技価値判定用乱数と予め設定された判定値とを比較判定し、この判定結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与する可変表示ゲームを行う特別図柄表示装置を備えた遊技機において、 前記特別図柄表示装置にて行われる可変表示ゲームの内容を判断する遊技ゲーム判断手段と、 前記遊技ゲーム判断手段の判断結果に基づいて、該判断結果に係わる可変表示ゲームの予告を、当該可変表示ゲームの最中に前記特定入賞口への入賞を条件に、該入賞の入賞音として報知するか否かを決定する音報知判断手段と、 前記音報知判断手段の出力に基づいて所定の音を発生する音発生手段と、 を備えたことを特徴とする遊技機。 【請求項2】 前記音報知判断手段は、 前記可変表示ゲームの内容がリーチ発生、大当たり発生である場合に対応して音の発生率を変える処理を行うことを特徴とする請求項1記載の遊技機。 【請求項3】 前記遊技価値判定用乱数の抽出記憶がオーバーフローしたときでも、当該可変表示ゲームの最中に前記特定入賞口への入賞を条件に、該入賞の入賞音として報知することを特徴とする請求項1又は2記載の遊技機。 <本件補正後の特許請求の範囲> 【請求項1】 遊技価値を決定する遊技価値判定用乱数を生成し、特定入賞口への入賞に基づいて所定個数まで前記遊技価値判定用乱数を抽出記憶するとともに、判定時に前記抽出された遊技価値判定用乱数と予め設定された判定値とを比較判定し、この判定結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与する可変表示ゲームを行う特別図柄表示装置を備えた遊技機において、 前記特別図柄表示装置にて行われる可変表示ゲームの内容を判断する遊技ゲーム判断手段と、 前記遊技ゲーム判断手段の判断結果に基づいて、該判断結果に関わる可変表示ゲームの予告を、当該可変表示ゲームの最中に前記特定入賞口への入賞を条件に、該入賞の入賞音として報知するか否かを決定する音報知判断手段と、 前記音報知判断手段の出力に基づいて所定の音を発生する音発生手段と、を備え、 前記音報知判断手段は、 前記可変表示ゲームの内容がリーチ発生、大当り発生である場合に対応して音の発生率を変える処理を行うことを特徴とする遊技機。 【請求項2】 前記遊技価値判定用乱数の抽出記憶がオーバーフローしたときでも、当該可変表示ゲームの最中に前記特定入賞口への入賞を条件に、該入賞の入賞音として報知することを特徴とする請求項1記載の遊技機。 本件補正は、形式的には請求項1、2を限定し請求項3を削除したものであるが、実質的には請求項1を削除し請求項2、3をそれぞれ繰り上げたものである。したがって、本件補正は、実質的に、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とする補正に該当するといえる。 仮に、本件補正が、同法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、補正前の請求項2に係る発明と補正後の請求項1に係る発明とは明らかに同一であるから、両発明が進歩性を欠くならば、後者が独立特許要件を欠くことで本件補正は却下され、前者が進歩性を欠くことで本願は特許を受けることができないこととなる。 したがって、補正は却下せず、後者を本願発明と認め、本願発明の進歩性を検討する。 第2 当審の判断 1.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-700号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0014】第1実施例 図1は、本発明に係る遊技機の一例のパチンコ遊技機の遊技盤面の構成を示す正面図である。パチンコ遊技機の遊技盤1の前面には、遊技領域3が形成されている。……」 「【0015】遊技領域3の中央には、複数種類の識別情報を可変表示して表示状態が変化可能な可変表示装置4が設けられている。……」 「【0016】……この始動口9に入賞した始動入賞玉は始動玉検出器21により検出され、その検出出力に基づいて可変表示装置4が可変開始される。」 「【0018】この可変表示装置4が可変停止された状態で、識別情報が、予め定められた特定の識別情報の組合せ(たとえば777)となり、表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生して可変入賞球装置10が第1の状態に制御されて所定の遊技価値が付与可能な大当り状態となる。……」 「【0021】可変表示装置4が可変表示中に打玉が再度始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その始動入賞玉が記憶される。この始動入賞記憶の上限は、たとえば『4』と定められている。……」 「【0043】……C RND1は、大当りを発生させるか否かを事前決定するために用いられ、0からカウントアップしてその上限である224までカウントアップし、再度0からカウントアップし直すように構成されている。……」 「【0048】次に、C RND YOKは、大当り予告決定用に用いられ、0からカウントアップしてその上限である899までカウントアップした後、再度0からカウントアップし直される。……」 「【0050】……この実施例においては、大当り予告の報知が、特別の音、特定のキャラクタ、あるいはその両方を用いる3種類のいずれかの方法により行なわれる。特別の音による予告報知は、音出力装置52によって行なわれ、特定のキャラクタによる予告報知は、可変表示装置4において行なわれる。……」 「【0051】打玉が始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その時点におけるC RND1の値を抽出し、その抽出値が『3』のときには、大当りを発生させることが事前決定される。……さらに、C RND YOKの抽出値により大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定が行われる。この決定は、後述する大当り予告テーブルを用いて行なわれる。」 「【0056】次に、図5において説明した大当り予告テーブルの内容を詳細に説明する。図6は、大当り予告テーブルの内容を示す説明図である。この図6に示される大当り予告テーブルにおいては、各種の遊技状態ごとにC RND YOKの抽出値と、大当り予告の報知方法との関係が予め定められている。」 「【0058】『大当り以外』の場合は、C RND YOKの抽出値と、『報知方法』との関係が以下のように定められている。抽出値が『0』?『3』である場合には、特別の音による大当り予告の報知を行なう。……」 「【0059】遊技状態が『大当り・始動記憶2以上』である場合には、C RND YOKとの抽出値、『報知方法』との関係が以下のように定められている。抽出値が『0』?『99』の場合には、特別の音による真の大当り予告の報知を行なう。……」 「【0060】遊技状態が『大当り・始動記憶1以下』の場合には、C RND YOKと、『報知方法』との関係が以下のように定められている。抽出値が『0』?『224』の場合には、特別の音による真の大当り予告の報知を行なう。……」 前記摘示の記載及び図面によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明> 「0からカウントアップしてその上限である224までカウントアップし、再度0からカウントアップし直すように構成されているC RND1を、大当りを発生させるか否かを事前決定するために用い、 打玉が始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その時点におけるC RND1の値を抽出し、その抽出値が『3』のときには、大当りを発生させることが事前決定され、 可変表示装置4が可変表示中に打玉が再度始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その始動入賞玉を記憶し、この始動入賞記憶の上限を『4』と定め、 遊技領域3の中央に、複数種類の識別情報を可変表示して表示状態が変化可能な可変表示装置4が設けられ、 始動口9に入賞した始動入賞玉を始動玉検出器21により検出し、その検出出力に基づいて可変表示装置4が可変開始され、 この可変表示装置4が可変停止された状態で、識別情報が、予め定められた特定の識別情報の組合せとなり、表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生して可変入賞球装置10が第1の状態に制御されて所定の遊技価値が付与可能な大当り状態となるパチンコ遊技機において、 C RND YOKの抽出値により、大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定が、大当り予告テーブルを用いて行なわれ、 大当り予告テーブルにおいては、各種の遊技状態ごとにC RND YOKの抽出値と、大当り予告の報知方法との関係が予め定められており、 大当り予告の報知を、特別の音、特定のキャラクタ、あるいはその両方を用いる3種類のいずれかの方法により行い、 特別の音による予告報知は音出力装置52によって行い、 『大当り以外』の場合は、C RND YOKの抽出値が『0』?『3』である場合に、特別の音による大当り予告の報知を行ない、 遊技状態が『大当り・始動記憶2以上』である場合には、C RND YOKの抽出値が『0』?『99』の場合に、特別の音による真の大当り予告の報知を行ない、 遊技状態が『大当り・始動記憶1以下』の場合には、C RND YOKの抽出値が『0』?『224』の場合に、特別の音による真の大当り予告の報知を行なうパチンコ遊技機。」 2.対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「始動口9」は本願発明の「特定入賞口」に相当し、同様に、「パチンコ遊技機」は「遊技機」に、「大当り予告」は「可変表示ゲームの予告」に、「音出力装置52」は「音発生手段」に、それぞれ相当する。 また、引用発明について、以下のことがいえる。 ア.引用発明の「C RND1」は、「大当りを発生させるか否かを事前決定するために用い」られるから「遊技価値を決定する」ものといえる。また、「C RND1」は「0からカウントアップしてその上限である224までカウントアップし、再度0からカウントアップし直すように構成されて」おり、かつ、引用発明は「打玉が始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その時点におけるC RND1の値を抽出」するのであるから、「C RND1」は、どの値が抽出されるか予測できず、実質的に「乱数」であるといえる。 したがって、引用発明の「C RND1」は、本願発明の「遊技価値を決定する遊技価値用乱数」に相当し、引用発明は、「遊技価値を決定する遊技価値判定用乱数を生成」するものであるといえる。 イ.引用発明においては、「可変表示装置4が可変表示中に打玉が再度始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出されれば、その始動入賞玉を記憶し、この始動入賞記憶の上限を『4』と定め」ており、該検出の時点におけるC RND1等の値を抽出している。そして、「その始動入賞玉を記憶」するとは、「打玉が再度始動口9に入賞して始動玉検出器21により検出」された時点におけるC RND1等の値を記憶することであることが当業者にとって自明である。 したがって、引用発明は、「特定入賞口への入賞に基づいて所定個数まで前記遊技価値判定用乱数を抽出記憶する」ものであるといえる。 ウ.引用発明においては、「遊技領域3の中央に、複数種類の識別情報を可変表示して表示状態が変化可能な可変表示装置4が設けられ」ており、「この可変表示装置4が可変停止された状態で、識別情報が、予め定められた特定の識別情報の組合せとなり、表示結果が予め定められた特定の表示態様となった場合には、特定遊技状態が発生して可変入賞球装置10が第1の状態に制御されて所定の遊技価値が付与可能な大当り状態となる」から、引用発明は、「遊技者に遊技価値を付与する可変表示ゲームを行う特別図柄表示装置を備えた」ものであるといえる。 また、引用発明においては、「大当り状態となる」のは、C RND1の「抽出値が『3』のとき」に「大当りを発生させることが事前決定され」ることに基づくから、引用発明の可変表示ゲームは、「判定時に前記抽出された遊技価値判定用乱数と予め設定された判定値とを比較判定し、この判定結果に基づいて」いるといえる。 したがって、引用発明は、「判定時に前記抽出された遊技価値判定用乱数と予め設定された判定値とを比較判定し、この判定結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与する可変表示ゲームを行う特別図柄表示装置を備えた」ものであるといえる。 エ.引用発明においては、「C RND YOKの抽出値により、大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定が、大当り予告テーブルを用いて行なわれ」るが、ここで、「大当り予告テーブルにおいては、各種の遊技状態ごとにC RND YOKの抽出値と、大当り予告の報知方法との関係が予め定められて」いるから、引用発明では、「各種の遊技状態」に基づいて、「大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定」が行われるといえる。そうすると、引用発明が、「各種の遊技状態に基づいて、大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定を行う手段」を備えることは明らかであり、「各種の遊技状態を判断する手段」が必要なことも明らかである。 ここで、「各種の遊技状態」とは、具体的には、「大当り以外」「大当り・始動記憶2以上」「大当り・始動記憶1以下」であるから、本願発明の「特別図柄表示装置にて行われる可変表示ゲームの内容」に相当する。してみると、「各種の遊技状態を判断する手段」は、本願発明の「特別図柄表示装置にて行われる可変表示ゲームの内容を判断する遊技ゲーム判断手段」に相当し、「各種の遊技状態に基づいて」は、「遊技ゲーム判断手段の判断結果に基づいて」ということができる。 さらに、引用発明においては、「大当り予告の報知を、特別の音、特定のキャラクタ、あるいはその両方を用いる3種類のいずれかの方法により行」うのであるから、「大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定を行う」は、「可変表示ゲームの予告を、音として報知するか否かを決定する」ものであるといえる。ここで、予告の対象となる「可変表示ゲーム」は、遊技ゲーム判断手段の判断結果に関わるものであることは自明である。してみると、「大当り予告を実行するか否かの決定および大当り予告の種類の決定を行う手段」は、「判断結果に関わる可変表示ゲームの予告を、音として報知するか否かを決定する音報知判断手段」ということができる。 以上のとおりであるから、引用発明は、「前記特別図柄表示装置にて行われる可変表示ゲームの内容を判断する遊技ゲーム判断手段」及び「前記遊技ゲーム判断手段の判断結果に基づいて、該判断結果に関わる可変表示ゲームの予告を、音として報知するか否かを決定する音報知判断手段」に相当する構成を備える点で、本願発明と共通するものであるといえる。 オ.引用発明においては、「『大当り以外』の場合は、C RND YOKの抽出値が『0』?『3』である場合に、特別の音による大当り予告の報知を行ない、遊技状態が『大当り・始動記憶2以上』である場合には、C RND YOKの抽出値が『0』?『99』の場合に、特別の音による真の大当り予告の報知を行ない、遊技状態が『大当り・始動記憶1以下』の場合には、C RND YOKの抽出値が『0』?『224』の場合に、特別の音による真の大当り予告の報知を行な」うものである。ここで、C RND YOKの抽出値の範囲によって、大当り予告の発生率が変わることは、自明である。してみると、引用発明は、「可変表示ゲームの内容が大当り以外、大当り・始動記憶2以上、大当り・始動記憶1以下である場合に対応して音の発生率を変える処理を行う」ものであるということができる。そしてこの処理を行う手段が前記「エ」で引用発明が備えると認定した「音報知判断手段」に相当する構成であることは、明らかである。 したがって、引用発明は、「前記音報知判断手段は、前記可変表示ゲームの内容に対応して音の発生率を変える処理を行う」点で、本願発明と共通するものであるといえる。 そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致並びに相違するものと認められる。 <一致点> 「遊技価値を決定する遊技価値判定用乱数を生成し、特定入賞口への入賞に基づいて所定個数まで前記遊技価値判定用乱数を抽出記憶するとともに、判定時に前記抽出された遊技価値判定用乱数と予め設定された判定値とを比較判定し、この判定結果に基づいて遊技者に遊技価値を付与する可変表示ゲームを行う特別図柄表示装置を備えた遊技機において、 前記特別図柄表示装置にて行われる可変表示ゲームの内容を判断する遊技ゲーム判断手段と、 前記遊技ゲーム判断手段の判断結果に基づいて、該判断結果に関わる可変表示ゲームの予告を、音として報知するか否かを決定する音報知判断手段と、 前記音報知判断手段の出力に基づいて所定の音を発生する音発生手段と、を備え、 前記音報知判断手段は、 前記可変表示ゲームの内容に対応して音の発生率を変える処理を行う遊技機。」 である点。 <相違点1> 音報知判断手段が、可変表示ゲームの予告を報知するか否かを決定する際に、本願発明では、「当該可変表示ゲームの最中に前記特定入賞口への入賞を条件に」決定するのに対し、引用発明ではそのように構成されていない点。 <相違点2> 音報知判断手段が、可変表示ゲームの予告を音として報知する際に、本願発明では、「入賞の入賞音」として報知するのに対し、引用発明ではそのように構成されていない点。 <相違点3> 「音の発生率を変える処理」を、本願発明では、「可変表示ゲームの内容がリーチ発生、大当り発生である場合に対応して」行うのに対し、引用発明では、「可変表示ゲームの内容が大当り以外、大当り・始動記憶2以上、大当り・始動記憶1以下である場合に対応して」行う点。 3.判断 (1)相違点1についての判断 止め打ち防止のために、止め打ちが発生し得る状態で遊技者が打球した場合に、遊技者に有利な特典を付与することは、例えば、特開平9-140868号公報(以下、「引用文献3」という。【請求項1】、【請求項4】、段落【0007】-【0013】参照。)、特開平9-276495号公報(以下、「周知技術文献」という。【請求項1】、【請求項2】、段落【0008】-【0014】参照。)に記載されているように、周知技術である。 なお、請求人は、審判請求書の中で、本願発明と、引用文献3及び周知技術文献に記載された技術(すなわち、前記周知技術)とは、遊技者に付与される特典が異なり、また、止め打ちを抑制するための構成若しくは課題を解決するための技術的アプローチ方法が異なる旨を主張する。しかしながら、本願発明と前記周知技術とは、遊技者に付与される具体的な特典(「止め打ち」で得られるものよりも、遊技者にとって有利なもの)が「可変表示ゲームの予告」であるか否かで異なるものの、止め打ち防止という課題を解決するために、止め打ちが発生しうる状態であっても遊技者が打球した場合には、遊技者に有利な特典を付与するという技術的アプローチを採用する点で共通している。特に、「可変表示ゲームの予告」をすることは本願発明と引用発明の一致点でもあるから、それをもって、本願発明の進歩性は肯定されない。 また、原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-135950号公報(以下、「引用文献2」という。)の段落【0025】には、「この場合、※2のとき、即ち始動口入賞による記憶が1以上ある場合には、変動パターンAでの変動時間が1.500秒に短縮される。」と記載されている。「始動口入賞による記憶」は、可変表示ゲームの最中に特定入賞口へ遊技球が入賞することで記憶されることは技術常識である。ここで、変動時間が短縮されることは、遊技者にとって有利な特典の一つである。したがって、引用文献2には、変動時間を短縮するという遊技者に有利な特典を付与する条件として、可変表示ゲームの最中に特定入賞口へ入賞することを採用することが記載されている。 以上のとおり、止め打ち防止のために、止め打ちが発生し得る状態で遊技者が打球した場合に、遊技者に有利な特典を付与することは周知技術であり、遊技者に有利な特典を付与する条件として、可変表示ゲームの最中に始動入賞口へ入賞することを採用することが引用文献2に記載されているから、引用発明において、音報知手段が可変表示ゲームの予告を報知するか否かを決定する際に、「可変表示ゲームの最中に特定入賞口への入賞を条件に」決定するようになすことは、当業者が容易に想到できたものである。 (2)相違点2についての判断 引用発明において、大当りの予告の報知を特別の音により行うに際し、「特別の音」として具体的にどのようなものを選択するかは、当業者が適宜選択しうる設計上の事項である。また、遊技機の技術分野において、特定入賞口に打球が入賞したことに基づいて入賞音を発生させることは、例えば、特開平5-137838号公報(【請求項1】参照。)、特開平8-103543号公報(段落【0057】参照。)に記載されているように、周知技術である。したがって、引用発明において、「特別の音」として、「入賞の入賞音」を選択することは、当業者にとって想到容易である。 (3)相違点3についての判断 引用発明において、可変表示ゲームの内容に対応して音の発生率を変える処理を行うのに際し、具体的にどのような可変表示ゲームに対応して音の発生率を変えるかは、当業者が適宜選択しうる設計上の事項である。また、引用発明は、大当りに対応して音の発生率を変えることを示唆しており、予告を行う際に、リーチ発生・大当り発生に応じて予告の発生率を変えることも、例えば、特開平9-56893号公報(段落【0025】-【0027】参照。)、特開平10-127877号公報(段落【0063】参照。)に記載されているように、周知技術である。したがって、引用発明において、可変表示ゲームがリーチ発生、大当り発生である場合に対応して、音の発生率を変える処理を行うようにすることは、当業者にとって想到容易である。 (4)進歩性の判断 相違点1-3に係る本願発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易であり、この構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載された技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第3 むすび 本願発明が特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-12 |
結審通知日 | 2008-08-18 |
審決日 | 2008-09-01 |
出願番号 | 特願平10-326023 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 澤田 真治 |
特許庁審判長 |
小原 博生 |
特許庁審判官 |
太田 恒明 川島 陵司 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 鹿嶋 英實 |