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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200419113 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1186315
審判番号 不服2006-1774  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-30 
確定日 2008-10-15 
事件の表示 平成 8年特許願第536741号「親水性及び疎水性薬剤の組合せによる薬剤の制御放出のための改良処方物」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月 5日国際公開、WO96/38174、平成11年 6月 8日国内公表、特表平11-506450〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯・本件発明
本願は、平成8年5月31日(優先権主張1995年6月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成18年8月17日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「生物分解性硝子体内医薬デリバリー装置であって:
眼の硝子体腔内に移植される特定のサイズ及び形状を有する生物分解性硝子体内インプラントを含み、ここで、当該インプラントは、生物分解性PLGAコポリマーとステロイドを含み、当該ステロイドは、上記硝子体腔内に移植された後少なくとも3日間、上記インプラントから上記硝子体内に放出される、前記医薬デリバリー装置。」

2.引用例の記載事項
これに対して、前置審査において拒絶の理由に引用した特開平5-17370号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。
(1) 網膜・硝子体疾患の手術又は緑内障手術後に眼内に適用する徐放性製剤であって、少なくとも一の抗炎症剤又は細胞増殖抑制剤を生分解性高分子に均一に分散し一定形状に成形してなることを特徴とする、徐放性眼内埋込み用製剤。(特許請求の範囲の請求項1)
(2) 本発明の徐放性眼内埋込み用製剤に用いられる薬物は、抗炎症剤………であり、これらには例えば、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸ヒドロコルチゾン、フルオロメトロンその他のステロイド剤……を挙げることができる。 本発明の徐放性眼内埋込み用製剤に用いられる生分解性高分子は、………ポリ乳酸であり………。(【0010】、【0011】)
(3) 本発明に係る眼内埋込み用製剤の形状は短棒状若しくは針状又はフィルム状であり、溶剤を用いた鋳型法、溶融法、加圧法又は加圧加熱溶融法等の一般的な成形方法で製造することができる。(【0013】)
(4) ……メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウムとポリ乳酸とを……機械的に混合し、内径 0.8mmのテフロンチューブに充填後、約80℃に加熱し両端からステンレス棒で加圧することにより、直径 0.8mm、長さ5mmの短棒状に成形した。
メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウムとポリ乳酸とを……混合し、メタノール-アセトニトリル混液(4:1)50mLに溶解した。これをテフロン容器に流延し、室温下乾燥してシート状に成形した。次いでこのシート状形成物をローラーで圧延成形し、厚さ約600μmのフィルムを得た。(【0016】?【0017】)
(5) ……実施例1で製した各短棒状製剤を家兎硝子体内に挿入し薬物の放出性能を評価した。その結果、試験開始4週間後における製剤中のメタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウムの残存量は、初期量に対し……、それぞれ0%、13%、15%、50%及び82%であった。(【0023】)
同じく引用された特開平2-117号公報(以下、「引用例2」という。)には、活性物質放出用の埋込可能な生分解性組成物と題して、次の事項が記載されている。
(6) 本発明の目的は活性物質をかなり長時間に亘って実質的に一定の速さで放出し合理的な時間内で分解される活性物質放出用の埋込可能な生分解性組成物を提供することである。(2頁右下欄8行?11行)
(7) 本発明の目的は一定量の添加剤を含有するポリ-D,L-ラクチド系担体物質の埋込物によって達成される。……好ましい実施態様においては、本発明による埋込物の担体物質はポリ-D,L-ラクチドからなる。別の実施態様においては、本発明による埋込物はポリ-D,L-ラクチドとポリグリコライドとのコポリマーからなるが、ポリマー中のグリコライドの割合は50重量%を越えるべきでない。(2頁右下欄13行?3頁左上欄14行)

3.対比・判断
引用例1には、少なくとも一の抗炎症剤を生分解性高分子に均一に分散し一定形状に成形した、網膜・硝子体疾患の手術又は緑内障手術後に眼内に適用する徐放性眼内埋込み用製剤が記載されており(上記 (1))、薬物として、メタスルホ安息香酸デキサメタゾンナトリウム、酢酸コルチゾン、フルオロメトロンその他のステロイド剤を用いること(上記 (2))、製剤の形状は短棒状若しくは針状又はフィルム状など一定形状であること(上記(3)及び(4))、該製剤を家兎の硝子体に挿入すると、挿入4週間後でも初期量に対してステロイドであるデキサメタゾンが0?82%残存していたこと(上記(2)(5))が記載されている。
そうすると、引用例1には、「ステロイドを生分解性高分子に均一に分散し一定形状に成形した、網膜・硝子体疾患の手術又は緑内障手術後に眼内に適用する徐放性眼内埋込み用製剤」(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

本願発明と引用発明を対比する。
引用発明の一定形状とは、製剤の形状は短棒状若しくは針状又はフィルム状など一定形状であることであり、引用発明の製剤は、特定のサイズ及び形状を有するものである。また、引用発明は眼の硝子体に挿入される徐放性眼内埋込み用製剤であり、眼の硝子体腔内に移植される硝子体内インプラントとであり、薬物を硝子体内に放出しているのであるから医薬デリバリー装置といえる。さらに、引用発明の徐放性眼内埋込み用製剤を硝子体に移植4週間後に82%薬物が残存していることは、徐放性眼内埋込み用製剤から少なくとも3日間硝子体内で薬物が放出されていることを意味する。生分解性高分子とは生分解性ポリマーのことである。また、引用発明は適用対象を網膜・硝子体疾患の手術又は緑内障手術後に眼内に適用すると特定し、ステロイドが生分解性高分子に均一に分散しているものに特定するものであるが、本願発明は適用対象、分散状態に関する特定はない。
そうすると、両者は、生物分解性硝子体内医薬デリバリー装置であって、眼の硝子体腔内に移植される特定のサイズ及び形状を有する生物分解性硝子体内インプラントを含み、ここで、当該インプラントは、生物分解性ポリマーとステロイドを含み、当該ステロイドは、上記硝子体腔内に移植された後少なくとも3日間、上記インプラントから上記硝子体内に放出される、前記医薬デリバリー装置である点で一致し、生物分解性ポリマーを、前者はPLGAコポリマーと特定しているのに対して、後者は生物分解性ポリマーを特定していない点で相違する。

そこで、この相違点について検討する。
引用例1では、生分解性高分子として、具体的にはポリ乳酸が記載されている(上記(2))。
一方、引用例2には、長期に亘って薬物を放出する生分解性インプラントに使用する生分解性組成物に関する発明が記載され(上記 (6))、その担体物質はポリ-D,L-ラクチド系担体物質であり、具体的には、ポリ-D,L-ラクチド(すなわちポリ乳酸)及びポリ-D,L-ラクチドとポリグリコライドとのコポリマー(すなわちPLGA)が記載されている(上記(7))。
そして、引用発明において、生分解性高分子として、引用例1に具体的に記載されているポリ乳酸に代えて、引用例2にポリ乳酸と同等に生物分解性インプラントに用いることが示されているPLGAを用いることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願明細書をみても、本願発明は、生分解性ポリマーとしてPLGAを採用したことによって、当業者が予想できない効果を奏したものとも認められない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-16 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-04 
出願番号 特願平8-536741
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長部 喜幸  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
井上 典之
発明の名称 親水性及び疎水性薬剤の組合せによる薬剤の制御放出のための改良処方物  
代理人 西山 雅也  
代理人 福本 積  
代理人 古賀 哲次  
代理人 石田 敬  
代理人 青木 篤  

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