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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 H01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01F
管理番号 1186321
審判番号 不服2006-13881  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-30 
確定日 2008-10-17 
事件の表示 特願2001-336030「非接触電力伝送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月18日出願公開、特開2002-305121〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年11月1日(優先権主張 平成12年11月6日、平成12年12月19日、平成13年1月30日)の出願であって、平成18年5月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月27日付けで手続補正がなされ、その後、当審において、平成20年2月12日付けで審尋がなされ、同年4月11日に回答書が提出されたものである。

第2 平成18年7月27日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
1 本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲と発明の詳細な説明を補正するものであり、このうち、特許請求の範囲については、以下のとおりである。
補正事項a
補正前の請求項1を、「【請求項1】 所定の距離を隔てて形成される空隙を介して互いに対向して配置され、且つそれぞれ所定の口径による空芯を有する一対のコーン型コイルから成ると共に、該一対のコーン型コイル間で電磁誘導作用を利用して非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置において、少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成ることを特徴とする非接触電力伝送装置。」と補正したこと。

2 本件補正についての検討
2-1 補正事項の整理
補正事項aについての補正は、補正前の請求項1の「前記一対のコーン型コイルの外側には、軟磁性材料による軟磁性体が配置され、前記軟磁性体は、前記一対のコーン型コイルの前記空芯の軸方向とは垂直な底面部近傍に隣接して独立配置されたものを含むこと」を、補正後の請求項1の「少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成ること」と補正したものである。

2-2 補正の目的の適否についての検討
補正事項aについての補正は、拒絶査定において、「本願の明細書「特許請求の範囲」請求項1の「底面部近傍」なる記載は、底面部の如何なる箇所を指しているのか不明であり、本願発明の構成が依然として不明である。」という備考があったので、この備考の指摘を解消するために、補正前の請求項1の「前記一対のコーン型コイルの外側には、軟磁性材料による軟磁性体が配置され、前記軟磁性体は、前記一対のコーン型コイルの前記空芯の軸方向とは垂直な底面部近傍に隣接して独立配置されたものを含むこと」を、補正後の請求項1の「少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成ること」と補正したものであり、補正事項aについての補正は、請求項1の記載を明りょうにするためになされたものであるから、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。
したがって、補正事項aについての補正は、特許法第17条の2第4項第4号に規定する要件を満たす。

第3 本願発明
平成18年7月27日付けの手続補正は、上記の「第2 2-2」のとおり適法であるから、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月27日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】 所定の距離を隔てて形成される空隙を介して互いに対向して配置され、且つそれぞれ所定の口径による空芯を有する一対のコーン型コイルから成ると共に、該一対のコーン型コイル間で電磁誘導作用を利用して非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置において、少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成ることを特徴とする非接触電力伝送装置。」

第4 引用刊行物記載の発明
原審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張日前に頒布された国際公開第00/38202号パンフレット(2000)(以下、「刊行物1」という。)には、図1?図6とともに、
「無コネクタ型インターフェースを介してエネルギを転送する装置及び方法」(発明の名称の訳文)に関して、
「発明の属する技術分野 本発明は一般にエネルギ転送装置に関し、さらに詳しくは、無コネクタ型インターフェース装置を介してエネルギを転送する装置と方法とに関する。
発明の背景 データとパワーとを外部ソースから転送するのにパワー及びデータ用インターフェースが幾つかの装置において広く使われている。このようなインターフェースは、相当の期間にわたって保管され、使用に当たっては迅速に作動する必要のある装置と一緒に使うのが特に望ましい。このような装置としては、戦闘作戦で利用するミサイルが挙げられる。」(第1頁第1?14行の訳文)、
「発明の要約 以上のことから、苛酷な環境での状況に左右されることなく、無コネクタ型インターフェースを介してエネルギを高転送レートにて転送する方法が望まれているのは明らかである。本発明は、従来のエネルギ転送における諸問題点をほぼ解消、または、減少しうる、エネルギを無コネクタ型インターフェースを介して転送する装置と方法とを提供するものである。
ここにパワーとデータとを転送する装置を開示する。この装置は、一組の巻線を有する一次パワートランスと、一組の巻線を有する一次データトランスからなる一次転送装置を備えている。また、この装置には、一組の巻線を有する二次パワートランスと、一組の巻線を有する二次データトランスからなる二次転送装置をも備えている。二次転送装置は、二次パワートランスにおける巻線が一次データトランスにおける巻線とほぼ同心となり、二次データトランスにおける巻線が一次データトランスにおける巻線とほぼ同心となるように、一次転送装置に近接して配置されている。」(第3頁第1?25行の訳文)、
「図1は、コネクタのないインターフェースを介してエネルギを転送するための一次装置150と二次転送装置100の組立図を示している。本発明では、一次転送装置150はパワーとデータを二次転送装置100に転送する。パワーとデータの転送動作中に、二次転送装置100は一次転送装置150に挿入されたり、その内部に配置される。
二次転送装置100は基部102を備えている。基部102はアルミニウム製となっているが、他の実施の形態では、基部102は他の金属でもよい。二次転送装置100はまた、磁気コア材料104と巻線106を備えている。巻線106は磁気コア材料104上に直接巻き付けられている。二次転送装置100は、磁気コア材料114と巻線112をさらに備えている。巻線112はコア材料114上に直接巻き付けられている。巻線106,112は銅線でできているが、他の実施の形態では、巻線106,112は他の導電材料でもよい。磁気コア材料104,114は粉末状の鉄あるいは鋼でできている。他の実施の形態では、磁気コア材料104,114は、トランスに使用される他の材料でもよい。磁気コア材料104と磁気コア材料114との間にはスペーサ110が配設されている。スペーサ110はアルミニウムでできているが、他の実施の形態では、スペーサ110は非磁性金属製である。さらに、他の実施の形態では、スペーサ110は取り除かれている。
図1に示されるように、二次転送装置100は一次転送装置150の内部に配置されている。図2乃至図4は二次転送装置100と一次転送装置150の個々の部材を詳細に図示している。図2は本発明にかかる二次転送装置100の分解図を示している。上述したように、二次転送装置100は、基部102、磁気コア材料104,114、巻線106,112、及び、スペーサ110を備えている。これらの部材は、ねじ220により基部102に取り付けられている。二次パワートランス202は二次転送装置100の補助部品である。二次パワートランス202は、磁気コア材料104と巻線106を備えている。巻線112は磁気コア材料114に直接巻き付けられている。二次データトランス204は二次転送装置100の補助部品である。二次データトランス204は、磁気コア材料114と巻線112を備えている。巻線112は磁気コア材料114に直接巻き付けられている。
図3は本発明にかかる一次転送装置150の分解図を示している。上述したように、一次転送装置150はハウジング152と保持具154を備えている。一次転送装置はさらに、巻線304,310、磁気コア材料306,312、及び、スペーサ308を備えている。保持具154をハウジング152に取り付けるためにねじ316が挿入されている。一次パワートランス320は一次転送装置150の補助部品であり、巻線304と磁気コア材料306を備えている。一次データトランス330も一次転送装置150の補助部品であり、巻線310と磁気コア材料312を備えている。一次パワートランス320は、スペーサ308により一次データトランス330から分離してもよい。他の実施の形態では、スペーサ308は取り外されている。スペーサ308はアルミニウム製である。さらに、巻線304,310は銅線である。他の実施の形態では、巻線304,310は他の導電材料であってもよい。磁気コア材料306,312は粉末状の鉄あるいは鋼でできている。他の実施の形態では、磁気コア材料306,312は、トランスに使用される他の材料でもよい。
巻線310は磁気コア材料312内に配設される。巻線は磁気コア材料312の溝内に配置される。さらに、巻線304は一次パワートランス320の磁気コア材料306の溝内に配置される。
一次転送装置150の部品のすべては、ハウジング152に囲繞されている。図1を参照すると、二次転送装置100は、一次パワートランス320と一次データトランス330を収容している一次転送装置150に挿入されている。
個々の部品はハウジング152内で組み立てられて、一次転送装置150を形成している。図4は一次転送装置150の組み立て後の側面図である。保持具154は、ねじ316によりハウジング152に取り付けられている。ハウジング152は、一次パワートランス320、スペーサ308及び一次データトランス330を囲繞している。巻線304は、溝に収容されて磁気コア材料306に囲繞されている。巻線310は、溝に収容されて磁気コア材料312に囲繞されている。
エネルギを転送するために、二次転送装置100は一次転送装置150内に配置される。配置されると、一次転送装置150は励起され、二次転送装置100を励起する。図5は、二次パワートランス202に配列された一次パワートランス320と、二次データトランス204に配列された一次データトランス330の側面図である。配列されると、パワーやデータのようなエネルギは、機械的な接続がなくても一次転送装置150から二次転送装置100に転送される。他の実施の形態では、パワーあるいはデータのみ転送される。一次パワートランス320と一次データトランス330は、二次パワートランス202と二次データトランス204とそれぞれ同心状に配置されている。特に、一次転送装置150の巻線304と巻線310は、二次転送装置100の巻線106と巻線112とそれぞれ同心状に配置されている。巻線106,112は低電圧巻線であり、巻線304,310は高電圧巻線である。一次転送装置150内の二次転送装置100の配列は重要ではない。二次転送装置100は、巻線が同心状に配列されていれば、一次転送装置150内のどの位置に配置されてもよい。二次転送装置100は一次転送装置150に対し回転するが、エネルギ転送操作への影響は無視できる。
例えば、一次転送装置150は、二次転送装置100を収容したミサイルの円錐部に配置されるヒューズ取付装置に設けられる。ミサイルは、エネルギ転送プロセスをだめにすることなく、ヒューズ取付装置内で回転する。
エネルギ転送操作の開始時、一次転送装置150は二次転送装置100の上に配置される。次に、一次転送装置150が励起されることで、二次転送装置100が励起され、一次転送装置150からパワーとデータを受け取る。パワーは一次パワートランス320から二次パワートランス202に転送される。さらに、データは一次データトランス330から二次データトランス204に転送される。データはまた、二次データトランス204から一次データトランス330に転送するようにしてもよい。パワーとデータが一次転送装置150から二次転送装置100に転送されると、一次転送装置150は除去される。別の二次転送装置100が一次転送装置150に配設され、上記プロセスは繰り返される。このようにして、一次転送装置150は複数の二次転送装置100にエネルギを転送する。
本発明によれば、巻線304が巻線106と略同心状に配置された状態で、一次パワートランス320は二次パワートランス202にパワーを転送する。一次パワートランス320は、交流の電位差あるいは電圧により励起される。一次パワートランス320と二次パワートランス202を電磁結合すると、電圧が二次パワートランス202に誘発される。この電圧も交流であるが、DC電圧に変換することもできる。したがって、機械的な接続がなくても、パワーは一次パワートランス320から二次パワートランス202に転送される。さらに、ノーズコーン510に取り付けられた電子回路あるいはバッテリは、機械的接続に必要な時間を費やすことなく、DCパワーを素早く受け取ることができる。」(第5頁第23行?第10頁第13行の訳文)、
「二次転送装置100は通常ミサイル上に配置され、発射前に一次転送装置150からエネルギを受け取る。二次転送装置100はミサイルのノーズコーンに配置される。他の実施の形態においては、二次転送装置100は、一次転送装置150内の何処かに配置されている。図6はノーズコーン510と二次転送装置100の部分分解図を示している。基部102により二次転送装置100はノーズコーン510に取り付けられる。ケーシング502と先端部504は二次転送装置100の周囲に配置され、腐食や外部に対する露出から二次転送装置100を保護している。ケーシング502は、大きな影響を与えることなくエネルギを一次転送装置150から転送することができる材料でできている。ノーズコーン510は、二次パワートランス202がパワーを受け取ると起動するバッテリ514を収容している。バッテリ514はある期間休止した後起動される化学バッテリである。さらに、ノーズコーン510は、二次データトランス204が受け取った信号電圧パターンを、ノーズコーン510内でGPS装置が使用するDC信号に変換する回路を収容している。」(第12頁第1?21行の訳文)、
「1.パワーとデータとを転送する装置であって、
巻線を一組有する少なくとも一つのトランスを備えた一次転送装置と、
巻線を一組有する少なくとも一つのトランスを備えた二次転送装置とからなり、
該二次転送装置が、前記一次トランスにおける巻線が前記二次トランスにおける巻線とほぼ同心配置となるように、前記一次転送装置に近接して配置されてなる転送装置。
2.請求項1に記載のものであって、前記一次トランスが、パワートランスとデータトランスとからなる転送装置。」(特許請求の範囲、第20頁第1?16行の訳文)、
「4.請求項1に記載のものであって、前記一次転送装置が磁気コアを備えており、前記一次転送装置の巻線がこの磁気コアに配置されてなる転送装置。
5.請求項1に記載のものであって、前記二次トランスが、パワートランスとデータトランスとからなる転送装置。」(特許請求の範囲、第20頁第23?30行の訳文)、
「7.請求項1に記載のものであって、前記二次転送装置が磁気コアを備えており、前記二次転送装置の巻線がこの磁気コアに配置されてなる転送装置。」(特許請求の範囲、第21頁第7?10行の訳文)、
「12.一組の巻線を有する一次パワートランスと一組の巻線を有する一次データトランスとを有する一次転送装置からデータとパワーを送受する装置であって、
磁気コアと、パワーが一次転送装置から装置へと転送されるときに一次パワートランスの巻線とほぼ同心的に位置決めされる一組の巻線とからなるパワートランスと、
磁気コアと、データが一次転送装置から装置へと転送されるときに一次データトランスの巻線とほぼ同心的に位置決めされる一組の巻線とからなるデータトランスとからなる装置。」(特許請求の範囲、第22頁第1?15行の訳文)、
が、記載されている。
また、「他の実施の形態では、パワーあるいはデータのみ転送される。」(第8頁第24?25行の訳文)という記載によれば、「データ」は「転送」されず、「パワー」「のみ転送される」ことが、開示されている。
また、「一次転送装置150は、二次転送装置100を収容したミサイルの円錐部に配置されるヒューズ取付装置に設けられる。」(第9頁第8?10行の訳文)と記載されているように、図1、図2、図5に示される、二次転送装置100における二次パワートランス202の巻線106は、ミサイルの円錐部の形状に倣って、円錐台状に巻回されており、また、図3及び図4に示されるように、一次転送装置150における一次パワートランス320の巻線304も、同様に、円錐台状に巻回されている。

以上の記載から、刊行物1の「パワーあるいはデータのみ転送される。」(第8頁第24?25行の訳文)という「実施の形態」における、「パワー」「のみ転送される」という「実施の形態」に着目すると、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「円錐台状に巻回された巻線を有する一次パワートランスを備えた一次転送装置と、円錐台状に巻回された巻線を有する二次パワートランスを備えた二次転送装置とからなり、前記一次転送装置の前記一次パワートランスが磁気コアを備えており、前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されており、前記二次転送装置の前記二次パワートランスが磁気コアを備えており、前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されており、前記二次転送装置が、前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線とほぼ同心配置となるように、前記一次転送装置に近接して配置されてなる無コネクタ型インターフェースを介してエネルギを転送する転送装置。」(以下、「引用発明」という。)

第5 本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
(a)引用発明の「円錐台状に巻回された巻線」において、一般に、「円錐」は「コーン」のことであり、「円錐台」も「コーン」の一種であり、また、「巻線」は「コイル」のことであるから、引用発明の「円錐台状に巻回された巻線」は、本願発明の「コーン型コイル」に相当する。そして、引用発明では、「前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線とほぼ同心配置」となっているので、引用発明の「ほぼ同心配置」となっている「前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線」と「前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線」は、本願発明の「所定の距離を隔てて形成される空隙を介して互いに対向して配置され」る「一対のコーン型コイル」に相当する。
(b)引用発明は、「円錐台状に巻回された巻線を有する一次パワートランスを備えた一次転送装置と、円錐台状に巻回された巻線を有する二次パワートランスを備えた二次転送装置」の間で、「パワー」を「転送する転送装置」であり、引用発明の「パワー」は、本願発明の「電力」に相当し、また、引用発明の「円錐台状に巻回された巻線を有する一次パワートランス」と「円錐台状に巻回された巻線を有する二次パワートランス」が、その作用として、本願発明のごとく「電磁誘導作用を利用して非接触で電力を伝送する」ことは、明らかであるから、引用発明の「円錐台状に巻回された巻線を有する一次パワートランスを備えた一次転送装置と、円錐台状に巻回された巻線を有する二次パワートランスを備えた二次転送装置とからな」る「無コネクタ型インターフェースを介してエネルギを転送する転送装置」は、本願発明の「該一対のコーン型コイル間で電磁誘導作用を利用して非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置」に相当する。
(c)引用発明の「前記一次転送装置の前記一次パワートランスが磁気コアを備えており、前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されており、前記二次転送装置の前記二次パワートランスが磁気コアを備えており、前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されて」いることにおいて、「磁気コア」は、本願発明の「軟磁性材料による軟磁性体」に相当するので、引用発明の「前記一次転送装置の前記一次パワートランスが磁気コアを備えており、前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されており、前記二次転送装置の前記二次パワートランスが磁気コアを備えており、前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されて」いることは、本願発明の「少なくとも前記対向する一対のコーン型コイル」の「外側部分」に「軟磁性材料による軟磁性体」が「配置されて成ること」に相当する。
すると、本願発明と引用発明とは、
「所定の距離を隔てて形成される空隙を介して互いに対向して配置された一対のコーン型コイルから成ると共に、該一対のコーン型コイル間で電磁誘導作用を利用して非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置において、少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルの外側部分に、軟磁性材料による軟磁性体が配置されて成ることを特徴とする非接触電力伝送装置。」である点で一致し、
本願発明は、「それぞれ所定の口径による空芯を有する一対のコーン型コイル」を備えるのに対して、引用発明は、「前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線」と「前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線」とを有するものの、「前記円錐台状に巻回された巻線」が、本願発明の「それぞれ所定の口径による空芯を有する」かどうか、不明である点(以下、「相違点1」という。)、
本願発明は、「少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成る」との構成を備えているのに対して、引用発明は、本願発明の「軟磁性材料による軟磁性体」に相当する「磁気コア」を有するものの、本願発明の「少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成る」との構成を備えていない点(以下、「相違点2」という。)、で相違している。

そこで、上記相違点1及び2について検討する。
a.相違点1について
引用発明の「前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線」と「前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線」とは、いずれも、「巻線」の「円錐台状に巻回された」部分に「芯」を有することは明らかである。
そして、上記の「芯」は、本願発明の「所定の口径による空芯」に相当するので、相違点1は、実質的に相違しない。
また、仮に、引用発明においては、「円錐台状に巻回された巻線」の「芯」の部分に、磁気コアの一部が入り込んでいるので、引用発明が、磁気コアの一部が入り込んでいない空芯とは相違するとしても、一般に、コイルにおいて、「芯」の部分に、磁気コア等の軟磁性材料を入れるか入れないかは、当業者が必要に応じて適宜選択できた程度のことと認められる。

b.相違点2について
刊行物1には、引用発明の「無コネクタ型インターフェースを介してエネルギを転送する転送装置」を、「戦闘作戦で利用するミサイル」(第1頁第13?14行)に適用することが示されているが、刊行物1には、他に、「パワーあるいはデータのみ転送される。」(第8頁第24?25行)という「実施の形態」が記載されており、この「実施の形態」によれば、「データ」は「転送」されず、「パワー」「のみ転送される」ことが、開示されている。
すると、「パワー」「のみ転送される」という「実施の形態」に着目して、パワーの転送部分だけ取り出して、一般の「無コネクタ型インターフェースを介してエネルギを転送する転送装置」に転用することは、当業者が容易になし得たことであり、また、引用発明は、「前記一次転送装置の前記一次パワートランスが磁気コアを備えており、前記一次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されており、前記二次転送装置の前記二次パワートランスが磁気コアを備えており、前記二次パワートランスの前記円錐台状に巻回された巻線が前記磁気コアに配置されて」いるので、本願発明の「軟磁性材料による軟磁性体」に相当する「磁気コア」を有している。
そして、如何なる場所に「軟磁性材料による軟磁性体」を配置するかは、コイル間の磁気結合などを考慮して当業者が適宜決定し得る設計事項であるから、引用発明の「磁気コア」の代わりに、「軟磁性材料による軟磁性体」の配置として、本願発明のごとく、少なくとも前記対向する一対のコーン型コイルにより形成される前記空芯の軸方向とは垂直な端部における外側部分をそれぞれ覆うように、一対の軟磁性材料による軟磁性体が対向して所定の距離を隔てて配置されて成るように構成することは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

よって、本願の請求項1に係る発明は、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物1に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明についての検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-08-20 
審決日 2008-09-03 
出願番号 特願2001-336030(P2001-336030)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01F)
P 1 8・ 574- Z (H01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 正文  
特許庁審判長 橋本 武
特許庁審判官 北島 健次
近藤 幸浩
発明の名称 非接触電力伝送装置  
代理人 山本 格介  
代理人 池田 憲保  
代理人 福田 修一  

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