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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B05B
管理番号 1186432
審判番号 不服2007-4939  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-15 
確定日 2008-10-16 
事件の表示 特願2000-198971「蓄圧式噴霧器」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 1月15日出願公開、特開2002- 11389〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成12年6月30日の出願であって、平成18年4月20日付けで拒絶理由が通知され、平成18年6月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成18年12月21日付けで拒絶査定がされ、平成19年2月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1及び2に係る発明は、平成18年6月21日付けの手続補正書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】 内容物を充てんする容器の開口部分で、中空ステムの押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにてバルブを開閉させることによって、内容物を交互に吸引、加圧してノズルチップより噴霧する蓄圧式噴霧器であって、
前記蓄圧式噴霧器は、容器内の内容物を吸引する吸引口を有するシリンダと、該シリンダの吸引口にて一方向のみの流通を許容するチェック弁と、該シリンダの開口端より挿入され吸引口に向けてスライド可能な中空ステムと、この中空ステムの先端部分で嵌合し、かつ、シリンダの内壁面との間で液密状態を維持したまま中空ステムとともに往復移動可能なピストンと、中空ステムの復帰動作を導き初期状態を保持する復原用弾性部材からなり、
該ピストンに、吸引口よりシリンダ内に導入された内容物を中空ステムの貫通孔に流出させる通路を設け、
この通路に、圧力調整用弾性部材にて保持され、内容物の加圧によって該通路を開とするバルブを配置してなり、
該バルブは、中空ステムの最大押圧位置でチェック弁に当接して吸引口を確実に封印するステムを有する、ことを特徴とする蓄圧式噴霧器。」

2.引用文献記載の発明
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由に引用された実願昭49-89798号(実開昭51-17812号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、例えば、次の事項が記載されている。

ア.「下端へ吸上げ管4を嵌合させたシリンダ1の底部へ第1逆止弁3を設けると共に該シリンダ内へは上端部に噴霧ヘッド7を付設させた流路管9の下端部に形成された筒状ピストン8を上向きに付勢させて挿入させ、筒状ピストン8から噴霧ヘッドのノズル孔10にいたる流路途中に液体流出方向と逆向きに付勢させて第2逆止弁11を形成させたことを特徴とする手動式小型噴霧器。」(明細書第1頁第4行乃至同第11行)

イ.「本案は手動式の小型噴霧器に係る。
従来いわゆるエアゾール式の小型噴霧器が多用されているが、高価であること、又使用済後にあつても液体霧化用のガスが残存するため危険であること等の理由により再び手動式噴霧器が注目されている。
しかし手動式の場合は噴霧に際しての液圧を常に高くすることが困難であり、特に噴霧の始めと終りに液圧が低くなり、このため霧化不完全のまま、つまり水滴状態での排出となり易い。」(明細書第1頁第13行乃至同第2頁第2行)

ウ.「1は口部に外向きフランジ2を有するシリンダで、その内底部には第1逆止弁3を有する、該シリンダ端部には他端が容器体底部に達する長さとした吸上げ管4を嵌合させる。第1逆止弁のやゝ上方内面には後述の流路管押上げ用のコイルスプリング5用の載置段部6を設けておく。その上部へは流路形成子としての突部1aを設けるとよい。尚1bは容器体内の負圧化防止用孔である。
シリンダ1内へは、上端部に噴霧ヘッド7を付設させ、又下端部に筒状ピストン8を付設させた流路管9下端部を挿入させる。その挿入部たる筒状ピストン8はコイルスプリング5によつて上向きに付勢させる。筒状ピストン8から噴霧ヘッドのノズル孔10にいたる流路途中において液体流出方向とは逆向きに付勢させて第2逆止弁11を設ける。第1図実施例のように流路管下端と筒状ピストン8との間に設けてもよく、又第2図のように流路管上端と噴霧ヘッド7との間に設けてもよい。尚11aは溝である。弁体12の形状も図示例に限るものではなく、上記付勢に適するものであればその他どのようなものであつてもよい。13は弁体12付勢用のスプリングである。」(明細書第2頁第8行乃至同第3頁第9行、なお、明細書では漢字「尚」のしょうがしらは、「小」と表記されている。)

エ.「上記構成において噴霧ヘッド7を押下げすると筒状ピストン8の下降によつてシリンダ1内が加圧され、該圧力が弁体12に対するスプリング13の付勢力を超えたとき、第2逆止弁11が開いてシリンダ内の加圧液体はノズル孔10から噴出する。シリンダ下部内面へ突部1aを設けた場合は筒状ピストン8が下限近くまで下降したときピストン下部周壁が突部1a上へ乗り上げ、その突部両側へ隙間が形成されてシリンダ室内の高圧状態は解消される。尚凸部1aは縦溝に代えても同様となる。すると第2逆止弁11は閉じ、噴霧ヘッドを離すとコイルスプリング5の押上げ力で筒状ピストンは上昇し、該上昇によるシリンダ室内の負圧化により第1逆止弁3が開いて容器体内液体が流入する。」(明細書第3頁第10行乃至同第4頁第3行)

オ.「第1図は、本案噴霧器の要部を示す断面図、第2図は他実施例の要部を示す断面図である。」(明細書第4頁第13行乃至同第14行)

(2)ここで、上記ア.?オ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献1には以下の点が記載されていることが分かる。
図面及び上記オ.の記載から、噴霧器の要部は容器体の開口部分に設けられていることは明らかである。この開口部分で、噴霧ヘッド7を付設させた流路管9の押圧動作とこれに続くコイルスプリング5の押し上げ力で筒状ピストン8は上昇し、上昇による負圧によって容器体内液体は吸引されており、筒状ピストン8の下降によつてシリンダ1内が加圧され、圧力が弁体12に対するスプリング13の付勢力を超えたとき、第2逆止弁11が開いてシリンダ1内の加圧液体はノズル孔10から噴出することから、流路管9の押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにて第2逆止弁11を開閉させることによって、容器体内液体を交互に吸引、加圧してノズル孔10より噴霧する手動式小型噴霧器である。
吸上げ管4からの容器体内液体は、シリンダ1、筒状ピストン8及び流路管9を通ってノズル10で噴霧されることから、各部材には流路あるいは孔が形成されていることは明らかであり(以下、シリンダ1の内底部の孔を「流路A」と、筒状ピストン8の流路を「流路B」と、流路管9の流路を「流路C」という。)、容器体内の容器体内液体を吸引する流路Aを有するシリンダ1と、シリンダ1の流路Aにて一方向のみの流通を許容する第1逆止弁3と、筒状ピストン8に、流路Aよりシリンダ1内に導入された容器体内液体を流路管9の流路Cに流出させる流路Bを設け、この流路Bに、スプリング13にて保持され、容器体内液体の加圧によって該流路Bを開とする第2逆止弁11を配置している。
シリンダ1の口部より挿入され流路Aに向けてスライド可能な流路管9と、この流路管9の下端部を挿入させ、流路管9とともに往復移動可能な筒状ピストン8と、流路管9を復帰させるコイルスプリング5からなることから、筒状ピストン8は流路管9の先端部分で嵌合し、かつ、シリンダ1の内壁面との間で液密状態を維持したまま流路管9とともに往復移動可能であり、コイルスプリング5は、流路管9の復帰動作を導き初期状態を保持している。

(3)引用文献1記載の発明
上記2.(1)及び(2)の記載から、引用文献1には次の発明が記載されているといえる(以下、「引用文献1記載の発明」という。)。

「容器体内液体を充てんする容器体の開口部分で、流路管9の押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにて第2逆止弁11を開閉させることによって、容器体内液体を交互に吸引、加圧してノズル孔10より噴霧する手動式小型噴霧器であって、
前記手動式小型噴霧器は、容器体内の容器体内液体を吸引する流路Aを有するシリンダ1と、該シリンダ1の流路Aにて一方向のみの流通を許容する第1逆止弁3と、該シリンダ1の口部より挿入され流路Aに向けてスライド可能な流路管9と、この流路管9の先端部分で嵌合し、かつ、シリンダ1の内壁面との間で液密状態を維持したまま流路管9とともに往復移動可能な筒状ピストン8と、流路管9の復帰動作を導き初期状態を保持するコイルスプリング5からなり、
該筒状ピストン8に、流路Aよりシリンダ1内に導入された容器体内液体を流路管9の流路Cに流出させる流路Bを設け、
この流路Bに、スプリング13にて保持され、容器体内液体の加圧によって該流路Bを開とする第2逆止弁11を配置してなる手動式小型噴霧器。」

(4)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された特公昭42-7428号公報(以下、「引用文献2」という。)には、例えば、次の事項が記載されている。

ア.「本発明は手動式噴霧器、特に該噴霧器のポンプ装置に関する。」(公報第1頁左欄第24行乃至同第25行)

イ.「噴霧器ポンプ装置は一体として容器に取付けできる。びんのねじ付き頸部(図示せず)に取付けできるようになつたキヤツプ11を図面に示す。このキヤツプ11はびんのねじと係合できる内部ねじのある部品12,13を有する。
前記キヤツプ11は孔のあいた上壁14を有し、この壁14の下にびんの唇部と係合するようにシール15が配置されている。垂下状フランジ16が壁14の中央孔をとりまきかつシリンダ42を支持している。このシリンダ42は重力調整方式弁43を支持した小径の下部弁部分42aを有する。弁座43aを有する前記弁部分42aによつてサイホン管42bが支持されている。
ピストン41の管状シヤンク部40によつて支持される管状体39がポンププランジヤを形成する。前記ピストン41はシリンダ42の中を摺動し、上昇した非作動位置から、該ピストン41がシリンダ42の下部に降下した位置まで移動する。
ピストン復帰スプリング40aは通常前記ピストン41を図示の上昇位置に可撓的に保持しており、前記スプリング40aの底端部は前記シリンダの肩部42cと係合している。
ノズル39bを持つた噴霧頭39aが前記プランジヤ39に取付けられている。前記頭39aとノズル39bはピストンシヤンク部40の孔と連通して液体を入れる排出通路を有する。
前記シヤンク部40の上端にある弁座と係合する弁45は前記シヤンク部40と噴霧頭39aを通つて出る排出流動を調整する。
ピストン41が下部位置に下降したとき前記シリンダの下部にある接衝物例えば球弁43と係合する接衝板46aに対し弁45がロツト46によつて連結されている。ロツト46が移動することによつて球弁43が接衝板46aと係合すれば弁45がその弁座から外れて液体はこの弁45を通つて上昇できる。またスプリング40aが図示の位置において前記接衝板46aと係合し、かくしてピストン41が上昇されると弁45を閉さ位置に保持する。」(公報第1頁左欄第31行乃至同右欄第29行)

ウ.「本発明はシリンダに設けられた側部通気孔44に関係がある。この通気孔44はピストン41が図示の上昇位置にあるときこのピストンによつて閉さされている。ピストン41が下降するとき前記孔44が開かれる。またピストン41が下降位置にあるとき前記プランジヤ39とシリンダ42の上部側壁との間に隙間ができる。前記通気44とピストン41とが通気弁装置を形成する。
前記ピストン41が下降しているとき空気はプランジヤ39をすぎ孔44を通りびんの中に入る。この空気は、前記ピストンの作用によつてびんからから排出される液体にとつて代り前記びんの中に真空ができるのを防止する。
前記ピストン41が通常の上昇位置にあるとき孔44はふさぎびんから液体が漏れるのを防止する。ピストンがシリンダに摺動嵌合しておりさらに孔44がピストンと協同作用するので漏洩防止だけでなくびんに必要な空気を入れる簡単にして効果的な作動確実な通気弁を構成することになる。」(公報第1頁右欄第32行乃至同第2頁左欄第7行)

エ.「噴霧頭部39aが押し下げられるとピストン41が下降する。接衝板46aが球弁43に係合するまでロツド46が下降し、さらにそれ以上ロツド46は移動できず、かつ弁45はその弁座ににくつついておることができずにはなれる。しかし、球弁43は閉さしたままである。シリンダ42の中の流体または液体はピストン41とシヤンク40を通り噴霧頭39aとノズル39bから出て行く。通気孔44はピストン41によつて開かれかつ大気中の空気がびんに入り液体にとつて代り真空の発生をなくす。
噴霧頭39aから力が除かれるとスプリング40が前記頭とピストン41を上昇させ、かつ弁45が上昇行程時に閉さしシリンダの中に吸込作用を生ずる。弁43が開き液体が管42bとびんから前記シリンダの中に吸い込まれて次の下降行程時に排出する準備ができる。
スプリング40aが板46と係合することによつて前記頭39aが上昇位置にあるとき弁45は閉さされたままでありかつ通気孔44がピストン41によつて閉さされるのでびんからの漏洩が防止される。」(公報第2頁左欄第8行乃至同右欄第1行)

(5)ここで、上記ア.?エ.の記載及び図面を参酌すると、引用文献2には以下の点が記載されていることが分かる。
液体を充てんするびんのねじ付き頸部で、プランジヤ39の押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにて弁45を開閉させることによって、液体を交互に吸引、加圧してノズル孔10より噴霧する手動式噴霧器である。
手動式噴霧器は、びん内の液体を吸引する小径の下部弁部分42aを有するシリンダ42と、該シリンダ42の小径の下部弁部分42aにて一方向のみの流通を許容する球弁43と、該シリンダ42の小径の下部弁部分42aに向けてスライド可能なプランジヤ39と、このプランジヤ39と嵌合し、かつ、シリンダ42の内壁面との間で液密状態を維持したままプランジヤ39とともに往復移動可能なピストン41と、プランジヤ39の復帰動作を導き初期状態を保持するピストン復帰スプリング40aから構成されている。
液体はピストンシャンク部40の孔、プランジヤ39及び噴霧頭39aを通りノズル39bから出ていくことから、プランジヤ39には液体が通過する孔(以下、「通孔D」という。)があり、ピストン41に、小径の下部弁部分42aよりシリンダ42に導入された液体をプランジヤ39の通孔Dに流出させるピストンシヤンク部40の孔が設けられている。
このピストンシヤンク部40の孔に、弁45を配置してなり、球弁43に係合するまでロツド46が下降して、球弁43を閉ざしたままとしていることから、該弁45は、プランジヤ39の押圧で球弁43に当接して小径の下部弁部分42aを確実に封印するロツド46を有している。

(6)引用文献2記載の発明
上記2.(4)及び(5)の記載から、引用文献2には次の発明が記載されているといえる(以下、「引用文献2記載の発明」という。)。

「液体を充てんするびんのねじ付き頸部で、プランジヤ39の押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにて弁45を開閉させることによって、液体を交互に吸引、加圧してノズル39bより噴霧する手動式噴霧器であって、
前記手動式噴霧器は、びん内の液体を吸引する小径の下部弁部分42aを有するシリンダ42と、該シリンダ42の小径の下部弁部分42aにて一方向のみの流通を許容する球弁43と、該シリンダ42の小径の下部弁部分42aに向けてスライド可能なプランジヤ39と、このプランジヤ39の先端部分で嵌合し、かつ、シリンダ42の内壁面との間で液密状態を維持したままプランジヤ39とともに往復移動可能なピストン41と、プランジヤ39の復帰動作を導き初期状態を保持するピストン復帰スプリング40aからなり、 該ピストン41に、小径の下部弁部分42aよりシリンダ42に導入された液体をプランジヤ39の通孔Dに流出させるピストンシヤンク部40の孔を設け、
このピストンシャンク部40の孔に、弁45を配置してなり、
該弁45は、プランジャ39の押圧で球弁43に当接して小径の下部弁部分42aを確実に封印するロツド46を有する手動式噴霧器。」

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「容器体」は、本願発明における「容器」に相当し、同様に引用文献記載の発明における、「容器体内液体」、「流路管9」、「ノズル孔10」、「手動式小型噴霧器」、「流路A」、「シリンダ1」、「シリンダ1の口部」、「第1逆止弁3」、「筒状ピストン8」、「流路C」、「流路B」、「コイルスプリング5」、「スプリング13」及び「第2逆止弁11」は、本願発明における「内容物」、「中空ステム」、「ノズルチップ」、「蓄圧式噴霧器」、「吸引口」、「シリンダ」、「シリンダの開口端」、「チエック弁」、「ピストン」、「貫通孔」、「通路」、「復原用弾性部材」、「圧力調整用弾性部材」及び「バルブ」に各々相当する。よって、
本願発明と引用文献1記載の発明とは「内容物を充てんする容器の開口部分で、中空ステムの押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにてバルブを開閉させることによって、内容物を交互に吸引、加圧してノズルチップより噴霧する蓄圧式噴霧器であって、
前記蓄圧式噴霧器は、容器内の内容物を吸引する吸引口を有するシリンダと、該シリンダの吸引口にて一方向のみの流通を許容するチェック弁と、該シリンダの開口端より挿入され吸引口に向けてスライド可能な中空ステムと、この中空ステムの先端部分で嵌合し、かつ、シリンダの内壁面との間で液密状態を維持したまま中空ステムとともに往復移動可能なピストンと、中空ステムの復帰動作を導き初期状態を保持する復原用弾性部材からなり、
該ピストンに、吸引口よりシリンダ内に導入された内容物を中空ステムの貫通孔に流出させる通路を設け、
この通路に、圧力調整用弾性部材にて保持され、内容物の加圧によって該通路を開とするバルブを配置してなる蓄圧式噴霧器。」の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点)
本願発明においては、バルブは、中空ステムの最大押圧位置でチェック弁に当接して吸引口を確実に封印するステムを有しているのに対して、引用文献1記載の発明においてはそのように特定されていない点。

4.判断
上記相違点について、検討する。
本願発明と引用文献2記載の発明とを対比すると、引用文献2記載の発明における「ねじ付き頸部」は、本願発明における「開口部分」に相当し、同様に引用文献2記載の発明における「液体」、「プランジヤ39」、「ノズル39b」、「手動式噴霧器」、「小径の下部弁部分42a」、「シリンダ42」、「球弁43」、「ピストン41」、「ピストン復帰スプリング40a」、「通孔D」、「ピストンシャンク部40の孔」、「弁45」及び「ロツド46」は、本願発明における「内容物」、「中空ステム」、「ノズルチップ」、「蓄圧式噴霧器」、「吸引口」、「シリンダ」、「チエック弁」、「ピストン」、「復原用弾性部材」、「貫通孔」、「通路」、「バルブ」及び「ステム」に各々相当する。よって、引用文献2には、本願と同様の「内容物を充てんする容器の開口部分で、中空ステムの押圧動作とこれに続く復帰動作の繰り返しにてバルブを開閉させることによって、内容物を交互に吸引、加圧してノズルチップより噴霧する蓄圧式噴霧器であって、
前記蓄圧式噴霧器は、容器内の内容物を吸引する吸引口を有するシリンダと、該シリンダの吸引口にて一方向のみの流通を許容するチエック弁と、該シリンダの吸引口に向けてスライド可能な中空ステムと、この中空ステムの先端部分で嵌合し、かつ、シリンダの内壁面との間で液密状態を維持したまま中空ステムとともに往復移動可能なピストンと、中空ステムの復帰動作を導き初期状態を保持する復原用弾性部材からなり、
該ピストンに、吸引口よりシリンダに導入された内容物を中空ステムの貫通孔に流出させる通路を設け、
この通路にバルブを配置してなり、
該バルブは、中空ステムの押圧でチエック弁に当接して吸入口を確実に封印するステムを有する蓄圧式噴霧器。」なる構成が開示されている。
そして、引用文献1及び引用文献2記載の発明は、本願発明と同様に噴霧器の構造に関するものであって、引用文献1記載の発明に引用文献2記載の発明における上記構成を適用することに困難性はなく、適用するにあたって中空ステムの最大押圧位置でチェック弁に当接するように特定することは、当業者が設計にあたって適宜なし得るものにすぎないことから、相違点に係る本願発明のように特定することは当業者が容易に推考し得るものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1記載の発明及び引用文献2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-01 
出願番号 特願2000-198971(P2000-198971)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田口 傑  
特許庁審判長 小谷 一郎
特許庁審判官 西本 浩司
柳田 利夫
発明の名称 蓄圧式噴霧器  
代理人 杉村 興作  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 憲司  
代理人 澤田 達也  
代理人 藤谷 史朗  

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