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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1186440
審判番号 不服2007-8239  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-22 
確定日 2008-10-16 
事件の表示 特願2004- 48134「充電制御装置及び充電式電動工具セット」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月 8日出願公開、特開2005-245062〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成16年2月24日の出願であって、平成19年2月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月22日に拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、同年4月19日付で手続補正書が提出されたものである。

2.平成19年4月19日付手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「二次電池に対し所定電圧に達するまでは定電流充電を行い、所定電圧に達した後は定電圧充電を行う充電制御装置であって、二次電池に電流を供給する直流電源と、二次電池に流れる電流を検出する電流検出部と、二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池に対し所定電圧に達するまで定電流充電を行う定電流制御部と、前記電圧検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池が所定電圧に達した後に定電圧充電を行う定電圧制御部と、前記直流電源と二次電池とを結ぶ充電回路を開閉するスイッチ部と、定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを判別する充電モード判別部と、現在の充電モードを前記充電モード判別部により判別することによって定電流充電が行われていると判別された場合であって二次電池の電圧が所定値を超えた場合に前記スイッチ部を遮断して充電回路を開路するスイッチ制御部とを備えたことを特徴とする充電制御装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを検出する充電モード検出部」を「定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを判別する充電モード判別部」と訂正すると共に、「定電流充電が行われている場合」について「現在の充電モードを充電モード判別部により判別することによって定電流充電が行われていると判別された場合」と限定するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第3号の誤記の訂正及び同第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-38392号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0008】・・・本発明は、被充電電池を、所定電圧まで定電流充電または準定電流充電した後、定電圧充電を行う充電器において、被充電電池の残存容量を検出する残存容量検出手段と、この残存容量検出手段の検出結果に基づき、上記定電流充電または準定電流充電を強制的に終了するための定電流充電時間を設定する定電流充電時間設定手段とを備えたことを特徴とする。」

・「【0010】
【実施例】図1は本発明の一実施例を示すブロック回路図である。1はRAM、充電制御プログラムや種々の充電条件を記憶するROM、マイクロコンピュータ及びその他の周辺回路を備えた充電制御部、Bはリチウムイオン2次電池からなる被充電電池、2は商用電源(図示していない)からの交流を受け、被充電電池Bに1C?2Cの定電流または4.2Vの定電圧を供給する電源部である。この電源部2は、被充電電池Bが所定の電圧(4.2V)になるまで、被充電電池Bに定電流を供給し、所定電圧に到達後、被充電電池Bに定電圧を供給する。
【0011】尚、定電流に替えて、2Cから1Cの電流に漸減する準定電流を用いてもよいが、以下では定電流の場合について説明する。3は被充電電池Bの電圧Vを検出し、検出電圧Vを充電制御部1に入力する電圧検出部である。本実施例において、被充電電池Bはリチウムイオン2次電池であって、残存容量が電池電圧Vとほぼ比例する関係にある。従って、被充電電池Bの電圧Vを検出する電圧検出部3は、被充電電池Bの残存容量検出手段でもある。
【0012】4は充電中の被充電電池Bの充電電流Iを検出し、検出電流Iがほぼ0になった場合にそれを充電制御部1に入力する電流検出部、5は被充電電池Bの残存容量に応じた定電流充電時間T1及び保護タイマ時間T2が設定され、被充電電池Bの充電開始時点から定電流充電時間T1及び保護タイマ時間T2をカウントするタイマー回路である。斯る定電流充電時間T1及び保護タイマ時間T2は、被充電電池Bの残存容量と反比例するように関係付けられ、予め充電制御部1に記憶保持されている。そして、検出された被充電電池Bの残存容量に応じて適宜に選択され、タイマー回路5に設定される。6はLED及びその駆動回路からなり、被充電電池Bの充電終了または充電異常を表示する表示部である。」

・「【0015】ステップS4において、電源部2から1C?2Cの定電流が、被充電電池Bに供給され、被充電電池Bの定電流充電が開始される。この時、定電流充電時間T1及び保護タイマ時間T2のカウントも同時に開始される。ステップS5及びS6において、タイマー回路5における定電流充電時間T1のカウント中に、被充電電池Bの電圧Vが4.2Vに到達したか否かが、電圧検出部3の検出結果に基づいて判断される。もし、4.2Vに達しなかった場合、被充電電池Bの異常あるいは充電器の異常であると判断し、ステップS7において、定電流充電時間T1のカウント終了に伴って、直ちに定電流充電が停止されると共に、表示部6に充電異常が表示される。」

・図1には、電流検出部4及び電圧検出部3から出力される信号に基づいて電源部2を制御する充電制御部1を備えた充電器のブロック図が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「2次電池に対し所定電圧に達するまでは定電流充電を行い、所定電圧に達した後は定電圧充電を行う充電器であって、2次電池に定電流または定電圧を供給する電源部と、2次電池の充電電流を検出する電流検出部と、2次電池の電圧を検出する電圧検出部と、電流検出部及び電圧検出部から出力される信号に基づいて電源部を制御する充電制御部と、定電流充電が行われている場合であって定電流充電時間T1経過時点で2次電池が前記所定電圧に達しない場合に、定電流充電を停止する手段とを備えた充電器。」

(2-2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-164490号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【0007】ここで、このような充電装置を用いて電池パツクに収納されている二次電池を充電する充電制御方法を図17に示す。充電装置1及び電池パツク2は、接続端子T1、T2を介して電気的に接続されることにより電池パツク2の二次電池BTに対して充電を開始する。
【0008】充電装置1は、定電圧定電流回路3を有しており、入力端子A及びBを介して直流電源として接続されたACアダプタ(図示せず)からの入力電圧及び入力電流を使用して、定格値以下の出力電流及び定格値以下の出力電圧を電池パツク2の二次電池BTに供給する。」

・「【0013】保護回路9は、電圧検出回路10からの電圧検出結果が過充電状態又は過放電状態であつた場合、制御回路12によつてスイツチング回路13をオフ状態にすることにより、電池パツク2の電気経路を遮断して二次電池BTに対する充電及び放電を停止する。これにより、電池パツク2は保護回路9によつて二次電池BTの損傷が防止されるようになされている。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、その機能・作用からみて、後者における「2次電池」が前者における「二次電池」に相当し、以下同様に、「充電器」が「充電制御装置」に、「2次電池に定電流または定電圧を供給する電源部」が「二次電池に電流を供給する直流電源」に、「2次電池の充電電流」が「二次電池に流れる電流」に、それぞれ相当している。
そして、後者の「電流検出部及び電圧検出部から出力される信号に基づいて電源部を制御する充電制御部」は、「2次電池(二次電池)に対し所定電圧に達するまでは定電流充電を行い、所定電圧に達した後は定電圧充電を行う」制御を前提とするものであるから、前者の「電流検出部から出力される検出信号に基づいて直流電源を制御することにより二次電池に対し所定電圧に達するまで定電流充電を行う定電流制御部」と「電圧検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池が所定電圧に達した後に定電圧充電を行う定電圧制御部」とに相当するといえる。
さらに、後者において、「2次電池に対し所定電圧に達するまでは定電流充電を行い、所定電圧に達した後は定電圧充電を行う」ものである以上、定電流充電の状態と定電圧充電の状態とを互いに識別する手段を備えていると解されるため、前者の「定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを判別する充電モード判別部」を実質的に備えているといえると共に、後者の「定電流充電が行われている場合」は、前者の「現在の充電モードを充電モード判別部により判別することによって定電流充電が行われていると判別された場合」に相当するといえる。
また、後者の「定電流充電時間T1経過時点で2次電池が所定電圧に達しない場合に、定電流充電を停止する手段」と前者の「二次電池の電圧が所定値を超えた場合にスイッチ部を遮断して充電回路を開路するスイッチ制御部」とは、「二次電池の電圧が異変状態となった場合に充電回路を停止する制御部」との概念で共通している。

したがって、両者は、
「二次電池に対し所定電圧に達するまでは定電流充電を行い、所定電圧に達した後は定電圧充電を行う充電制御装置であって、二次電池に電流を供給する直流電源と、二次電池に流れる電流を検出する電流検出部と、二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池に対し所定電圧に達するまで定電流充電を行う定電流制御部と、前記電圧検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池が所定電圧に達した後に定電圧充電を行う定電圧制御部と、定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを判別する充電モード判別部と、現在の充電モードを前記充電モード判別部により判別することによって定電流充電が行われていると判別された場合であって二次電池の電圧が異変状態となった場合に充電回路を停止する制御部とを備えた充電制御装置。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願補正発明は、「直流電源と二次電池とを結ぶ充電回路を開閉するスイッチ部」を備えているのに対し、引用発明は、このような構成を備えていない点。
[相違点2]
二次電池の電圧が「異変状態となった場合」に関し、本願補正発明は、「所定値を超えた場合」であるのに対し、引用発明は、「定電流充電時間T1経過時点で2次電池が所定電圧に達しない場合」としている点。
[相違点3]
「充電回路を停止する制御部」に関し、本願補正発明は、「スイッチ部を遮断して充電回路を開路するスイッチ制御部」であるのに対し、引用発明は、単に「定電流充電を停止する手段」としている点。

(4)判断
上記相違点について以下検討する。

・相違点1及び3について
例えば、引用例2に開示されているように、二次電池の損傷防止のために、直流電源と二次電池とを結ぶ充電回路を開閉するスイッチ部(「スイツチング回路13」が相当)を遮断して充電回路を開路する(「オフ状態にする」が相当)スイッチ制御部(「制御回路12」が相当)を設けることは、充電制御の分野における周知技術であるといえる。
そうすると、引用発明において、二次電池の損傷防止という課題の下に、かかる周知技術を採用して相違点1及び3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

・相違点2について
二次電池の電圧が異変状態となった場合として、該電圧が所定値を超えた場合を対象とすることは、例えば、引用例2に「電圧検出結果が過充電状態であった場合」として開示されているように、充電制御の分野における技術常識であるといえる。
一方、引用発明において、何等かの不具合が原因で、二次電池の電圧が所定値を超えるという異変状態が生ずる可能性のあることは、当然に想定されるところである。
そうすると、引用発明において、かかる技術常識を踏まえることにより、相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たものというべきである。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も、引用発明、上記周知技術及び上記技術常識から当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は、引用発明、上記周知技術及び上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものであるから、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願の発明について
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成19年1月15日付手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、次のとおりのものと認められる。
「二次電池に対し所定電圧に達するまでは定電流充電を行い、所定電圧に達した後は定電圧充電を行う充電制御装置であって、二次電池に電流を供給する直流電源と、二次電池に流れる電流を検出する電流検出部と、二次電池の電圧を検出する電圧検出部と、前記電流検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池に対し所定電圧に達するまで定電流充電を行う定電流制御部と、前記電圧検出部から出力される検出信号に基づいて前記直流電源を制御することにより二次電池が所定電圧に達した後に定電圧充電を行う定電圧制御部と、前記直流電源と二次電池とを結ぶ充電回路を開閉するスイッチ部と、定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを判別する充電モード判別部と、定電流充電が行われている場合であって二次電池の電圧が所定値を超えた場合に前記スイッチ部を遮断して充電回路を開路するスイッチ制御部とを備えたことを特徴とする充電制御装置。」
なお、上記手続補正書の特許請求の範囲の請求項1には「定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを検出する充電モード検出部」と記載されているが、これは「定電流充電が行われているか定電圧充電が行われているかを判別する充電モード判別部」の誤記と認められる(前記「2.(1)」参照。)ため、本願発明を上記のように認定した。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、実質的に、前記「2.(1)」で検討した本願補正発明から「定電流充電が行われている場合」について「現在の充電モードを充電モード判別部により判別することによって定電流充電が行われていると判別された場合」との限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)及び(4)」に記載したとおり、引用発明、上記周知技術及び上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明、上記周知技術及び上記技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないため、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-01 
出願番号 特願2004-48134(P2004-48134)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
P 1 8・ 575- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高野 誠治  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 小川 恭司
大河原 裕
発明の名称 充電制御装置及び充電式電動工具セット  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 樋口 次郎  
代理人 小谷 悦司  

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