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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B02C
管理番号 1186449
審判番号 不服2007-15054  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-05-24 
確定日 2008-10-16 
事件の表示 特願2001-383391「繊維質材料の粉砕方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 2日出願公開、特開2003-181312〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年12月17日の出願であって、平成18年11月20日付けで拒絶理由通知がなされ、それに対して平成19年1月29日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年4月19日付けで拒絶査定がなされ、平成19年5月24日に審判請求がなされたものであって、請求項1に係る発明は、平成19年1月29日付けで提出された手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】繊維を含む繊維質材料を粉砕する繊維質材料の粉砕方法であって、
互いに接近する方向に付勢されながら、付勢力により当接した状態で回転する一対の金属製ロールの間に、前記繊維質材料を投入して圧縮粉砕するロール圧縮粉砕工程を備え、前記一対の金属性ロールは、100MPa以上の圧力で粉砕することを特徴とする繊維質材料の粉砕方法。」
(以下、「本願発明」という。)

2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特公平7-79968号公報(以下、「引用文献」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、植物の葉や茎等の植物繊維質を、その品質を損なわずに常温中にて微細に粉砕する植物繊維質原料の微粉末化方法及び該方法に直接使用する加圧ロール装置に関する。」

イ.「【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明による植物繊維質原料の微粉末化方法は、断面波形の歯及び歯底を有する1対の加圧ロールを具備し、一方の加圧ロールの歯を他方の加圧ロールの歯底に臨ませ、両加圧ロールを微小間隙をもって対向させかつ同期回転する加圧ロール装置を用意し、植物繊維質原料を加圧ロール装置に加圧供給する工程と、加圧ロール装置によって前記原料を破砕する破砕工程と、該破砕工程を複数回繰返えした後、破砕工程で生じたフレーク状原料をフレークブレーカにより粉砕して微粉末化する工程とからなるものであり、また上記微粉末化方法に使用する加圧ロール装置は、断面波形の歯及び歯底を有する1対の加圧ロールを具備し、一方の加圧ロールの歯を他方の加圧ロールの歯底に臨ませ、かつ一方の加圧ロールを他方の加圧ロールに対して近接離反可能に支持する手段と、一方の加圧ロールへの背圧付与手段と、一対の加圧ロールを同期回転する同期回転手段を有するものである。本発明によれば、冷凍工程を要することなく、常温にて簡素でかつ安価に、植物繊維質原料を微粉末化することができ、また発熱及びコンタミネーションが少なく良質の微粉末を製造することができる。」

ウ.「【0011】次に加圧ロール装置6の具体的構成について、図2乃至図4に基づいて説明する。スタンド6Cには、固定軸受6Dを介して下側の加圧ロール6Bが回転自在に支持される。スタンド6Cの上方には長溝6Eが形成され、該長溝6E内には、軸受6Fを介して上側の加圧ロール6Aを回転自在に支持するフロート6Gが摺動自在に嵌合されている。フロート6Gは油圧ラム6Hにより、約18tの高圧の背圧力を受ける。油圧ラム6Hの油圧回路には、アキュムレータ6Kを配置し、背圧力に対する緩衝機能をもたせている。
【0012】上下の加圧ロール6A,6Bは、加圧ロール本体に形成された断面波形歯6T及び歯底6Uを有する。2つの加圧ロール6A,6Bの回転方向位置関係は、一方のロールの歯6Tの頂上が他方のロールの歯底6Uに対向するように調整し、同加圧ローラは、同期回転手段(不図示)により同期回転させる。加圧ロール6Aと6Bとは、静止状態で半径Rの仮想外周円間の隙間Cをもって対向される。なお、隙間Cはシム6Jによって調整することができる。加圧ロール6A,6Bの波形歯6T及び歯底6Uは、その側面視において、図4の(a)乃至(c)に示す如く、すぐ歯歯車状、はす歯歯車状、湾曲はす歯歯車状等の形状とされる。加圧ロール6A,6Bの寸法の一例は、直径6吋、歯数72、ピッチ0.2618吋、歯の深さ0.063吋、歯先及び歯底r3/64吋、幅38mm、隙間C0.4mmである。
【0013】図1に示されるフレークブレーカ7は、複数の衝撃羽根を有し、これらの羽根を周速10?60m/secで回転することにより、フレーク状即ち薄片状の原料から微粉末を製造する。」

エ.「【0014】次に上記微粉末化装置によって行う、本発明による微粉末化方法の一実施例について説明する。植物繊維質原料としてヨモギを用いた。ヨモギは収穫後、自然乾燥、粗砕、殺菌、水洗、水分含有10%以下の乾燥、以上の処理を施した原料を、原料タンク1に投入する。この際原料は、前記粗砕工程により、約1?3cm程度まで粉砕されている。予め供給バルブ3Aは開き、取出しバルブ3Bは閉じておく。而して原料タンク1に投入した原料を、リサイクルコンベヤ2により、供給バルブ3Aを経てホッパ4内に送給する。ホッパ4内に送給した原料は、加圧供給手段であるスクリューフィーダ5によって、加圧ロール装置6に高圧で加圧供給する。加圧ロール装置においては、波形歯を有し同期回転する1対の加圧ロールにより、原料を高圧圧縮してこれに剪断力を与え疲労させ、繊維原料を破砕する。破砕された原料は、加圧ロールにより圧縮されて、波形のフレーク状となって加圧ロール間から原料タンク1に排出される。加圧ロール装置6による1回の破砕工程では、原料は破砕が十分でなく、粒度の小さい微粉末とはならない。そこで、フレーク状の原料は、原料タンク1からリサイクルコンベヤ2により再度ホッパ4に供給し、そこからスクリューフィーダ5により加圧ロール装置6に加圧供給し、加圧ロール装置6により2回目の破砕工程を行う。以下同様にして、原料が十分小さな粒度となるまで前記破砕工程を繰返えす。上記破砕工程における微粉末化装置の制御方法としては、スクリューフィーダ回転数による制御方法とリサイクル時間による制御方法が考えられる。前者の制御方法は、加圧ロール回転数を一定にすると、リサイクル回数が増すに従って原料の嵩密度は高くなる為、スクリューフィーダ回転数は、低くさせる必要があるので、スクリューフィーダ回転数が、ある設定値以下になった時に、バルブ3A閉、バルブB開となる様にする方法であって、この場合、スクリューフィーダ回転数は、加圧ロールの駆動トルクつまり電流値を一定とさせて無段変速にて制御することが好ましい。また後者の方法は、リサイクル時間をあらかじめ設定しておき、その時間経過後、バルブ3A閉、バルブ3B開となる様にする方法である。
【0015】以上のようにして、破砕工程を複数回繰返えし、原料が十分に破砕されたと判断される時点で、供給バルブ3Aを閉じ、取出バルブ3Bを開として、圧縮されたフレーク状原料をフレークブレーカ7に供給する。フレークブレーカ7において、フレーク状原料を高速回転する羽根により破砕することにより、微粉末を製造する。微粉末化した原料はフルイ分け装置8により、フルイ分けて、出口10から所望の微粉末を排出する。残渣はフルイ上成分として、出口9から排出し、必要に応じて、原料タンク1に戻して、破砕工程にかける。」

オ.上記ア.ないしウ.の記載及びエ.に記載された「而して原料タンク1に投入した原料を、リサイクルコンベヤ2により、供給バルブ3Aを経てホッパ4内に送給する。ホッパ4内に送給した原料は、加圧供給手段であるスクリューフィーダ5によって、加圧ロール装置6に高圧で加圧供給する。」からみて、「加圧ロール装置6の間に植物繊維質原料を投入している」ことが分かる。

カ.上記ア.ないしウ.の記載及びエ.に記載された「そこで、フレーク状の原料は、原料タンク1からリサイクルコンベヤ2により再度ホッパ4に供給し、そこからスクリューフィーダ5により加圧ロール装置6に加圧供給し、加圧ロール装置6により2回目の破砕工程を行う。以下同様にして、原料が十分小さな粒度となるまで前記破砕工程を繰返えす。」からみて、「加圧装置6は、植物繊維質原料を加圧破砕する加圧破砕工程を備えている」ことが分かる。

(2)引用文献記載の発明
上記ア.ないしカ.及び図面からみて、引用文献には、次の発明が記載されている。
「植物繊維質原料を微粉末化する植物繊維質原料の微粉末化方法であって、
回転する一対の加圧ロール装置6の間に、植物繊維質原料を投入して加圧破砕する加圧破砕工程を備えた、植物繊維質原料の微粉末化方法。」
(以下、「引用文献記載の発明」という。)

3.対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「植物繊維質原料」は、その機能・作用からみて、本願発明における「繊維質材料」に相当する。同様に、引用文献記載の発明における「微粉末化」、「植物繊維質原料の微粉末化方法」、「加圧破砕」及び「加圧破砕工程」は、それぞれ本願発明における「粉砕」、「繊維質材料の粉砕方法」、「圧縮粉砕」及び「ロール圧縮粉砕工程」に相当する。
また、引用文献記載の発明における「加圧ロール装置6」は、本願発明における「金属製ロール」と「ロール」に限り相当する。
したがって、両発明は、
「繊維を含む繊維質材料を粉砕する繊維質材料の粉砕方法であって、
回転する一対のロールの間に、前記繊維質材料を投入して圧縮粉砕するロール圧縮粉砕工程を備えた繊維質材料の粉砕方法」
である点で一致し、次の点において相違している。

(1)相違点1
本願発明は、ロールが「金属製」であり、「互いに接近する方向に付勢されながら、付勢力により当接した状態で回転する」のに対して、引用文献記載の発明のロールは素材が不明であり、互いに接近する方向に付勢されながら、付勢力により当接した状態で回転しない点。

(2)相違点2
本願発明は、「金属性ロールは、100MPa以上の圧力で粉砕する」のに対して、引用文献記載の発明は、ロールの圧力の値が不明な点。

4.判断
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
1対のロール間に繊維を供給し粉砕する装置において、ロールを金属製とすることは、周知技術(以下、「周知技術1」という。必要であれば、特開平11-217233号公報【0019】参照。)にすぎない。また、一対のロールのクリアランスが粉砕力に影響を与えることも同じく周知技術(以下、「周知技術2」という。必要であれば、特開平11-217233号公報【0021】参照。)である。そして、より粉砕力を得るために、「互いに接近する方向に付勢されながら、付勢力により当接した状態で回転する」とした、上記相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者であるならば容易になし得たものと認められる。

(2)相違点2について
破砕装置において、ローラの60?100MPaの圧力により材料を粉砕することは周知技術(以下、「周知技術3」という。必要であれば、特表平11-508484号公報特許請求の範囲3参照。)であり、ローラの圧力が増せばそれだけ粉砕力が上がることは自明の事項であるから、より粉砕力を得るために、「金属性ロールは、100MPa以上の圧力で粉砕する」とした上記相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者であるならば容易になし得たものと認められる。

(3)まとめ
また、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-01 
出願番号 特願2001-383391(P2001-383391)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B02C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 見目 省二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 荘司 英史
柳田 利夫
発明の名称 繊維質材料の粉砕方法  
代理人 木下 實三  
代理人 中山 寛二  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 石崎 剛  
代理人 特許業務法人樹之下知的財産事務所  
代理人 木下 實三  
代理人 中山 寛二  
代理人 石崎 剛  

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