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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F21L
管理番号 1186480
審判番号 不服2005-21558  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-08 
確定日 2008-10-23 
事件の表示 特願2003-92344号「誘導電流懐中電灯」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開、特開2003-297101号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成15年3月28日(パリ条約による優先権主張2002年3月29日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年12月20日付けで手続補正された、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりの事項により特定されるものである。(以下「本願発明」という。)
「手動によるエネルギーを発生することが可能な機構を内蔵した懐中電灯であって、
磁界を有する磁石と、
メインハウジングと、
支持システムの第1端の方及び第2端の方へ向かう前記磁石の平行移動を支持するための前記第1端及び前記第2端を有する支持システム枠であって、前記メインハウジング内へ所定寸法の密封された移動物を迅速に挿入するための前記支持システム枠と、
前記支持システム枠の前記第1端及び第2端へ向けて前記磁石が平行移動運動を行う度に磁石ワイヤーの側を通過し、前記磁石の前記平行移動運動の際、前記磁石を介した前記磁界の通過から前記磁石ワイヤーがエネルギーを発生するように位置する磁石ワイヤーと、
電荷を貯蔵するためのコンデンサーと、
発光ダイオードと、
前記コンデンサー、前記発光ダイオード、前記磁石ワイヤーに接続される回路であって、この回路は、前記磁石ワイヤーの前記エネルギー供給を前記コンデンサーに保存される電荷へ変換し、前記発光ダイオードへ電力を供給するために前記コンデンサーに保存される前記電荷を供給するための回路と、
前記メインハウジング内の前記支持システムの第1端に固定される第1ダンパと、前記支持システムの第2端に固定される第2ダンパとからなり、
該第1ダンパと第2ダンパとが前記第1端と第2端に向かう前記磁石の移動により生ずる衝撃力を吸収することを特徴とする懐中電灯。」

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された米国特許第5,975,714号明細書(以下「引用刊行物」という。)には、RENEWABLE ENERGY FLASHLIGHT(再生可能なエネルギーの懐中電灯)の発明がFIG.1?6とともに記載されており、以下の事項が記載されている。なお、括弧内は当審による和訳。)
(ア)「The renewable energy flashlight of the present invention utilizes a magnet, which is oscillated through a coil of wire by shaking the flashlight, to generate electricity for charging a capacitor to power a light emitting diode.
The renewable energy flashlight comprises an elongated housing forming an opening at one end, a barrel assembly located within the housing which includes a hollow elongated barrel disposed within the housing, a wire coil wrapped around the barrel and disposed between the barrel and the housing, a magnet disposed within the barrel and sized to freely oscillate within the barrel when the barrel is shaken, two springs attached within the barrel and at either end of the barrel to cause the magnet to recoil when the magnet strikes the springs,wherein the magnet oscillates within the barrel when the barrel is shaken, whereby the magnet passes back and forth through the wire coil and causes current to flow within the coil.The flashlight also includes an electronics assembly located within the housing, including a capacitor for storing charge, a rectifier connected to the capacitor, means for conducting current flowing in the wire coil to the rectifier, which rectifies the current and provides rectified current to the capacitor, charging the capacitor, a light emitting diode (LED) located near the housing opening, and switch means for selectively connecting the charged capacitor to the LED, whereby the LED selectively lights up.
・・・(中略)・・・The wire coil is formed of magnet wire, and the housing and the barrel are formed of plastic. The springs are formed of stainless steel.
The flashlight also includes a lens affixed within the housing opening adjacent to the LED, for collecting and projecting light from the LED into a beam. The lens and the housing are hermetically sealed. This forms a hermetically sealed compartment containing the electronics assembly and the barrel assembly, making the flashlight explosion proof.」(第1欄第45行?第2欄第23行 和訳:本発明の再生可能なエネルギーの懐中電灯は、発光ダイオードに電力を供給するコンデンサーに充電するための電気を起こすために、懐中電灯を振ることによりワイヤーのコイルを通り抜けて振動する磁石を利用する。
再生可能なエネルギーの懐中電灯は、一方の端部で開口が形成されている細長いハウジングと、ハウジング内に置かれた、バレル(樽、円筒)の組み立て部品とから成り、それは、ハウジング内に配置された中空の細長いバレルと、バレルの周りに巻かれ、バレルとハウジングの間に配置されたワイヤー・コイルと、バレル内に配置され且つバレルが振られる時バレル内を自由に振動する寸法とされた磁石と、磁石がスプリングに衝突する時磁石をはね返らせるためにバレルの内で且つバレルの両方の端に取り付けられた2つのスプリングとを含み、そこではバレルが振られる時磁石はバレルの内で振動し、それによって磁石はワイヤー・コイルを前後に通り抜け、そしてコイル内に流れる電流を起こす。懐中電灯は、また、それらが電流を整流しコンデンサーへ整流された電流を供給しコンデンサーを充電する、電荷を蓄えるためのコンデンサーとコンデンサーへ接続された整流器と整流器へワイヤー・コイルで流れる電流を導電するための手段と含む、ハウジング内に置かれた電子装置組み立て部品と、ハウジングの開口近くに置かれた発光ダイオード(LED)と、それによって選択的にLEDを点灯するそのLEDに充電されたコンデンサーを選択的に接続するスイッチ手段とを含んでいる。
・・・(中略)・・・ワイヤー・コイルはマグネット・ワイヤーから作られ、ハウジングとバレルはプラスチックから作られる。スプリングはステンレス鋼から作られる。
懐中電灯は、さらに、LEDからの光を集光しビームに投射するための、LEDに隣接するハウジングの開口に添付されたレンズを含んでいる。レンズとハウジングは密閉的に密封される。これは、懐中電灯を防爆形にするための、電子装置組み立て部品とバレル組み立て部品を含んでいる、密閉して密封した区画を形成する。)
(イ)「Electricity is generated when flashlight 100 is shaken longitudinally, which causes charging magnet 12 to slide back and forth inside barrel 14, and thus through wire coil 18, which is wound around barrel 14. Magnet 12 bounces between springs 16, which conserve energy while changing the direction of magnet 12. As magnet 12 passes through wire coil 18, a sinusoidal voltage wave is created between two wires 19 exiting coil 18, as shown in FIG. 4a, thus generating an alternating current. Each sinusoidal wave is converted into a pair of positive going waves by bridge rectifier 20, as shown in FIG. 4b. These positive waves charge gold capacitor 22, which accumulates charge with each pass of magnet 12, as shown in FIGS. 4b and 4c. Charged gold capacitor 22 supplies energy to high intensity light emitting diode (LED) 23, coupled via a reed switch 26.・・・(中略)・・・
Housing 10 is sized to contain the mechanical, electrical, and optical components of flashlight 100. Housing 10 is preferably formed of plastic with an inside diameter of 1.270 inches and a wall thickness of 0.100 inches. It is nonmetallic to prevent eddy currents from forming in housing 10, which would slow charging magnet 12 during its travel through barrel 14. A means for sealing lens 36 and capping the end opposite lens 36 is provided to maintain a watertight and explosion proof seal (i.e. flashlight 100 can be used in an explosive environment, as it will not generate sparks which could ignite natural gas, for example).」(第2欄第47行?第3欄第9行 和訳:バレル14の内部で、充電用磁石12を前後に滑らせように、懐中電灯100が長さ方向に振られる時、電気が起こされ、したがってバレル14に巻きつけられた、ワイヤー・コイル18に電気が発生させられる。磁石12はスプリング16の間に弾み、磁石12の方向を変更する間にエネルギーを保存している。磁石12がワイヤー・コイル18のそばを通過するたびに、図4aで示されるように、正弦波の電圧波がコイル18を出る2つのワイヤー19間で作成され、このように交流を生成する。図4bで示されるように、各々の正弦波はそれぞれブリッジ整流器20によって1対の正方向の波に変換される。図4bおよび4cで示されるように、磁石12の通過の度に電荷を蓄積するように、これらの正の波はゴールドコンデンサー22を充電する。充電されたゴールドコンデンサー22は、リード・スイッチ26によって連結された、高輝度の発光ダイオード(LED)23にエネルギーを供給する。・・・(中略)・・・
ハウジング10は、懐中電灯100の機械的、電気的および光学的な構成要素を収容できる大きさである。ハウジング10は、好ましくは、1.270インチの内径および0.100インチの肉厚を備えたプラスチックから作られる。バレル14を通過するその移動の間、充電用磁石12を遅くするであろう、ハウジング10への渦電流の発生を防ぐために、それは非金属である。レンズ36を密閉し、レンズ36の反対側の端部を蓋する手段は、防水と防爆形の密封をするようにできる(つまり、例えば、天然ガスに点火するような火花を生成しないので、懐中電灯100は爆発性の環境の中で使用することができる。)。)
(ウ)「FIG. 3 shows barrel 14 and electronics assembly 21. Electronics assembly 21 may be disposed within barrel 14, as shown, or may be located within housing 10, beyond barrel 14. Barrel 14 is made from a hard nonmetallic substance such as plastic. It forms a spool 34 for winding wire coil 18, serves as a guide for magnet 12, and houses the electronic components. Spool 34 for winding wire coil 18 is created by reducing the outside diameter of barrel 14 midway along magnet 12's travel path. Barrel 14 has a longitudinal bore having a diameter slightly larger than that of magnet 12, to reduce air compression and reduce friction by minimizing wall contact with magnet 12. ・・・(中略)・・・
Springs 16 are preferably formed of stainless steel, and have enough resiliency to prevent "bottoming" of magnet 12. 」(第3欄第48行?第4欄第1行 和訳:図3はバレル14および電子装置組み立て部品21を示す。図示されるように、電子装置組み立て部品21はバレル14の内に配置されるかもしれないし、あるいはバレル14を越えてハウジング10の内に位置されるかもしれない。バレル14は、プラスチックのような硬い非金属材料から作られます。それは、ワイヤー・コイル18を巻くために巻き枠34を形成し、磁石12のためのガイドとして役立ち、そして電子部品を収容する。ワイヤー・コイル18を巻くための巻き枠34は、磁石12の移動通路に沿った中途でバレル14の外径を縮小することにより作成される。バレル14は、空気圧縮を縮小しかつ磁石12への壁の接触を最小化により摩擦を縮小するために、磁石12のそれよりわずかに大きな直径を持っている長手方向の穴を有している。・・・(中略)・・・
スプリング16は、好ましくはステンレス鋼から作られ、磁石12の「底打ち」を防ぐために十分な弾性を持っている。)
(エ)「FIG. 5 shows electronics assembly 21 in greater detail. Wires 19 connect wire coil 18 to bridge rectifier 20. Wires 19 may simply be the same wire used in coil 18, extended beyond the coil and terminated at bridge rectifier 20 during assembly.
Bridge rectifier 20 is a conventional bridge rectifier with four diodes 29. The AC inputs are connected to wires 19 from coil 18, and the DC outputs are connected to capacitor 22 in the standard configuration, rectifier positive to capacitor positive and rectifier negative to capacitor negative. Bridge rectifier 20 may be built using discrete diodes 29, or a conventional modular bridge rectifier may be used.
Gold capacitor 22 is preferably a microcomputer CMOS memory backup gold capacitor. In the preferred embodiment, capacitor 22 is 1.0 Farad with a rated voltage of 5.5 WVDC (working volts D.C.). 」(第4欄第33?48行 和訳:図5は、電子装置組み立て部品21をより非常に詳しく示す。ワイヤー19はブリッジ整流器20にワイヤー・コイル18を接続する。ワイヤー19は、単にコイル18の中で使用され、コイルを越えて延長され、そして組み立て部品の中でブリッジ整流器20に終端された、同じワイヤーかもしれない。
ブリッジ整流器20は4つのダイオード29を備えた従来のブリッジ整流器ある。AC入力はコイル18からのワイヤー19に接続され、また、DCの出力は、標準構成のコンデンサー22に、整流器の正極はコンデンサーの正極に、そして整流器の負極はコンデンサー負極に接続される。ブリッジ整流器20は個別のダイオード29を使用して、構築されるかもしれず、あるいは、従来のモジュールのブリッジ整流器が使用されてもよい。
ゴールドコンデンサー22は、好ましくはマイクロコンピュータのCMOSメモリ・バックアップ用ゴールドコンデンサーである。好ましい実施例では、コンデンサー22は、5.5 WVDC(使用電圧D.C.)の定格電圧で1.0ファラドです。)
(オ)「Reed switch 26 is single pole single throw with low resistance contacts made for low voltages at low currents. It is placed in series with the load to provide a means of connecting LED 23 to capacitor 22 to generate light. Reed switch 26 disconnects LED 23 from capacitor 22 when light is not required, conserving energy in capacitor 22. ・・・(中略)・・・
Reed switch 26 is mounted in barrel 14 in a position very close to the inside wall of housing 10 when barrel 14 is installed. 」(第4欄第61行?第5欄第6行 和訳:リード・スイッチ26は、低い電流において低電圧のためになされた低い抵抗接触を備えた単極単投である。光を生成するためにコンデンサー22へLED23を接続する手段を提供するために、それは負荷に直列に置かれる。光が必要でない時、リード・スイッチ26はコンデンサー22からLED 23を切り離し、コンデンサー22のエネルギーを保存する。・・・(中略)・・・
リード・スイッチ26は、バレル14が取り付けられている時、ハウジング10の内壁に非常に接近した位置に、バレル14に取り付けられます。)
(カ)FIG.1及び3には、一端にレンズ36を有し、他は全て連続したハウジング10内に、バレル14が配置される態様、及び、バレル14は、中に磁石12を配置する長手方向の細長い穴を有し、その一端にスプリング16を、その中間の外周にワイヤー・コイル18を配置するとともに、ワイヤー19、ブリッジ整流器20、ゴールドコンデンサー22、リード・スイッチ26、(電子装置組み立て部品21)、発光ダイオード(LED)23等が取り付けられている態様が図示され、バレル14の長手方向の細長い穴の他端の内側に位置するように、ハウジング10の他端の内側に、スプリング16を取り付けた態様も図示されている。
上記(ア)?(オ)の記載事項及び上記(カ)の図示内容を総合すると、引用刊行物には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「懐中電灯100を振ることにより磁石12がワイヤー・コイル18に電気を起こす再生可能なエネルギーの懐中電灯100であって、
磁石12と、
ハウジング10と、
バレル14は、磁石12への壁の接触を最小化により摩擦を縮小するために、磁石12のそれよりわずかに大きな直径を持っている、磁石12のためのガイドとして役立つ長手方向の穴を有し、懐中電灯100が長さ方向に振られる時、バレル14の内部である上記長手方向の穴で磁石12を前後に滑らせ、バレル14の一端及び他端に位置する2つのスプリング16ではね返らせて、自由に振動させるものであり、
バレル14は密閉されるハウジング10内に配置され、
磁石12が、バレル14の長手方向の穴の一端及び他端をはね返って振動し、そのそばを磁石12が通過する度に交流を生成する、磁石12の移動通路に沿った中途に設けられるワイヤー・コイル18と、
磁石12の通過の度に電荷を蓄積するように充電されるゴールドコンデンサー22と、
発光ダイオード(LED)23と、
ワイヤー19がワイヤー・コイル18をブリッジ整流器20に接続し、ワイヤー・コイル18が発生した交流は1対の正方向の波に変換され、ブリッジ整流器20のDCの出力はゴールドコンデンサー22に接続され、ゴールドコンデンサー22を充電し、ゴールドコンデンサー22は、リード・スイッチ26によって連結された発光ダイオード(LED)23にエネルギーを供給し、
バレル14にワイヤー19、ブリッジ整流器20、ゴールドコンデンサー22、リード・スイッチ26、(電子装置組み立て部品21)、発光ダイオード(LED)23等が取り付けられ、
ハウジング10内に配置されるバレル14の一端にスプリング16を取り付け、バレル14の長手方向の細長い穴の他端の内側に位置するように、ハウジング10の他端の内側にスプリング16を取り付け、
スプリング16は、磁石12の『底打ち』を防ぐために十分な弾性を持っている、
懐中電灯100。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「磁石12」は、その機能・構成からみて、前者の「磁界を有する磁石」に相当し、以下同様に、後者の「ハウジング10」は前者の「メインハウジング」に、後者の「ワイヤー・コイル18」は前者の「磁石ワイヤー」に、後者の「ゴールドコンデンサー22」は前者の「コンデンサー」に相当する。
後者のバレル14は、「磁石12への壁の接触を最小化により摩擦を縮小するために、磁石12のそれよりわずかに大きな直径を持っている、磁石12のためのガイドとして役立つ長手方向の穴を有し、懐中電灯100が長さ方向に振られる時、バレル14の内部である上記長手方向の穴で磁石12を前後に滑らせ、バレル14の一端及び他端に位置する2つのスプリング16ではね返らせて、自由に振動させるものであ」るから、前者の「支持システム枠」に対応するものであって、後者のバレル14の「一端及び他端」は前者の「支持システム枠の」「第1端及び第2端」に対応し、後者のバレル14の「長手方向の穴」は「磁石12への壁の接触を最小化により摩擦を縮小するために、磁石12のそれよりわずかに大きな直径を持って」おり、「磁石12のためのガイドとして役立つ」ものであるから、前者の「第1端の方及び第2端の方へ向かう磁石の平行移動を支持するための第1端及び第2端を有する支持システム枠」に対応するといえる。なお、本願発明の「第1端及び第2端」について、支持システム枠は支持システムの第1端及び第2端を有するとしており、「支持システム」とともに「支持システム枠」にも第1端及び第2端が存在しているといえ、その構成からみて、磁石は、「支持システム」の第1端と第2端の間を移動運動するとともに「支持システム枠」の第1端と第2端の間をも移動運動するものであるから、磁石の移動運動における方向や移動範囲、懐中電灯におけるそれぞれの第1端と第2端の位置に関して、ほぼ同様のものであるといえ、上記のように対応しているといい得る。
また、バレル14はその「長手方向の穴」に磁石12を配置するとともに、「一端にスプリング16を取り付け」、さらにワイヤー19、ブリッジ整流器20、ゴールドコンデンサー22、リード・スイッチ26、(電子装置組み立て部品21)、発光ダイオード(LED)23等が取り付けられ、」「バレル14は密閉されるハウジング10内に配置され」ているから、ハウジング10内へ、一端のスプリング16、ワイヤー19、ブリッジ整流器20、ゴールドコンデンサー22、リード・スイッチ26、(電子装置組み立て部品21)、発光ダイオード(LED)23等とともに挿入され、密閉されるものである。
後者のワイヤー・コイル18は「磁石12が、バレル14の長手方向の穴の一端及び他端をはね返って振動し、そのそばを磁石12が通過する度に交流を生成する、磁石12の移動通路に沿った中途に設けられる」ものであるから、前者の磁石ワイヤーついての、「支持システム枠の第1端及び第2端へ向けて磁石が平行移動運動を行う度に磁石ワイヤーの側を通過し、前記磁石の前記平行移動運動の際、前記磁石を介した前記磁界の通過から前記磁石ワイヤーがエネルギーを発生するように位置する」との事項を実質的に有しているといえる。
後者のゴールドコンデンサー22は「磁石12の通過の度に電荷を蓄積するように充電される」ものであるから、前者の「電荷を貯蔵するためのコンデンサー」に相当する。
後者は「ワイヤー19がワイヤー・コイル18をブリッジ整流器20に接続し、ワイヤー・コイル18が発生した交流は1対の正方向の波に変換され、ブリッジ整流器20のDCの出力はゴールドコンデンサー22に接続され、ゴールドコンデンサー22を充電し、ゴールドコンデンサー22は、リード・スイッチ26によって連結された発光ダイオード(LED)23にエネルギーを供給」するものであるから、前者の「磁石ワイヤーのエネルギー供給をコンデンサーに保存される電荷へ変換し、発光ダイオードへ電力を供給するためにコンデンサーに保存される電荷を供給するための回路」を有しているといえ、当該回路はゴールドコンデンサー22、発光ダイオード(LED)23、ワイヤー・コイル18を接続しているから、「コンデンサー、発光ダイオード、磁石ワイヤーに接続される回路」であるといえる。
後者は「懐中電灯100を振ることにより磁石12がワイヤー・コイル18に電気を起こす再生可能なエネルギーの懐中電灯100」であって、電気を起こす磁石12やワイヤー・コイル18、磁石12をガイドしワイヤー・コイル18を設けられるバレル14等を有するものであるから、前者と同様に「手動によるエネルギーを発生することが可能な機構を内蔵した懐中電灯」であるといえる。
そうすると、両者は、「手動によるエネルギーを発生することが可能な機構を内蔵した懐中電灯であって、
磁界を有する磁石と、
メインハウジングと、
第1端の方及び第2端の方へ向かう前記磁石の平行移動を支持するための前記第1端及び前記第2端を有する支持システム枠と、
前記支持システム枠の前記第1端及び第2端へ向けて前記磁石が平行移動運動を行う度に磁石ワイヤーの側を通過し、前記磁石の前記平行移動運動の際、前記磁石を介した前記磁界の通過から前記磁石ワイヤーがエネルギーを発生するように位置する磁石ワイヤーと、
電荷を貯蔵するためのコンデンサーと、
発光ダイオードと、
前記コンデンサー、前記発光ダイオード、前記磁石ワイヤーに接続される回路であって、この回路は、前記磁石ワイヤーの前記エネルギー供給を前記コンデンサーに保存される電荷へ変換し、前記発光ダイオードへ電力を供給するために前記コンデンサーに保存される前記電荷を供給するための回路とからなる懐中電灯。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点A:支持システム枠について、本願発明は「メインハウジング内へ所定寸法の密封された移動物を迅速に挿入するための」ものであるのに対して引用発明はそのようなものとはしておらず、また、本願発明は「支持システムの第1端の方及び第2端の方へ向かう前記磁石の平行移動を支持するための前記第1端及び前記第2端を有する支持システム枠」としているのに対して、引用発明はバレル14について、「バレル14の一端及び他端に位置する2つのスプリング16ではね返らせて、自由に振動させるもの」としているのみである点。
相違点B:本願発明は「メインハウジング内の支持システムの第1端に固定される第1ダンパと、前記支持システムの第2端に固定される第2ダンパとからなり、該第1ダンパと第2ダンパとが前記第1端と第2端に向かう前記磁石の移動により生ずる衝撃力を吸収する」としているのに対して、引用発明は「ハウジング10内に配置されるバレル14の一端にスプリング16を取り付け、バレル14の長手方向の細長い穴の他端の内側に位置するように、ハウジング10の他端の内側にスプリング16を取り付け、スプリング16は、磁石12の『底打ち』を防ぐために十分な弾性を持っている」ものの、上記のような第1及び第2ダンパではない点。

そこで、上記相違点について検討する。
(1)相違点Aについて
引用発明のバレル14は、密閉されるハウジング10内に配置されるものであって、FIG.1の図面や(カ)の図示内容を参照すると、ハウジング10の一端のレンズ36の部分から挿入されるものといえ、また、バレル14は、ワイヤー19、ブリッジ整流器20、ゴールドコンデンサー22、リード・スイッチ26、(電子装置組み立て部品21)、発光ダイオード(LED)23等が取り付けられ、長手方向の穴に磁石12を位置させるとともに、一端にスプリング16を取り付けられているのであって、これらのものとともにハウジング10に挿入され、密閉されるものといえる。そしてこれらのものは、設計された、所定の寸法を有するものである。
そうすると、引用発明のバレル14は、その構成からみて、実質的に、本願発明の支持システム枠と同様のハウジング10(メインハウジング)内へ所定寸法の密封された移動物を迅速に挿入するための構成を有しているといえる。
一方、本願発明の第1端及び第2端は支持システムのものとされるとともに、支持システム枠はその第1端及び第2端を有するとしている。また、支持システムの第1端及び第2端に、それぞれ第1及び第2ダンパを固定しているから、その間で磁石が移動するものである。
また、引用発明は「バレル14の一端及び他端に位置する2つのスプリング16ではね返らせて、自由に振動させる」から、磁石はバレル14の一端及び他端の間で移動するものである。そしてバレル14は本願発明の支持システム枠に対応するから、バレル14 の一端及び他端は支持システム枠の第1端及び第2端に対応するといえる。さらに、引用発明は、ハウジング10内に配置されて密閉され、バレル14を含み、その間で磁石が移動する一端及び他端を有するものを具備するといえるから、本願発明と同様に支持システムの第1端及び第2端を有しているともいえる。
したがって、引用発明のものにおいて、バレル14に関する構成を「支持システムの第1端の方及び第2端の方へ向かう磁石の平行移動を支持するための前記第1端及び前記第2端を有する支持システム枠」との構成とすることは当業者に容易である。
なお、付言すると、本願発明の支持システムの第1端及び第2端、支持システム枠の第1端及び第2端及び引用発明のバレル14の一端及び他端は、磁石の移動に関して同様の位置であり、さらに本願発明は端部というのみであってそれ以上の具体的形状を特定するものではない。

(2)相違点Bについて
引用発明のスプリング16は「磁石12の『底打ち』を防ぐために十分な弾性を持っている」ものであり、磁石への衝撃を防ぐものといえる。
一方、例えば、特開昭64-39256号公報や特開2000-308327号公報等に示されるように、衝撃を吸収緩和する部材を磁石が移動する両端に設けることは、当該技術分野において周知であり、ダンパ部材のみを設けることも上記特開昭64-39256号公報に示されている。
そうすると、引用発明のスプリング16に換えてダンパを用いることは、当業者が格別の困難性を要することなくなし得たことといえる。
また、引用発明はバレル14の一端にスプリング16を取り付けるものであるから、上記のようにスプリング16に換えてダンパを用いるに際して、バレル14つまり支持システムの一部である支持システム枠の第1端と第2端の一方に固定することは当業者が通常なすことといえる。
ところで、引用発明の他端においては、バレル14の長手方向の細長い穴の他端の内側に位置するようにハウジング10の他端の内側にスプリング16を取り付けるものである。しかしながら、密閉構造をとる照明装置において、密閉する外側のハウジング内に配置する装置について、外側のハウジングとは別の、つまりその部品の一部がハウジングに固定されることなく、1つの部品とすることは、例えば、実公昭46-31166号公報や実願昭50-89161号(実開昭52-1789号)のマイクロフイルム、実公昭59-5317号公報等に示されるように周知であるから、また、引用発明も一端においてはバレル14にスプリング16を取り付けるものであることから、他端におけるダンパもバレル14(支持ハウジング)に固定することは当業者が適宜なし得たことといえる。
そして、バレル14は密閉されるハウジング10内に配置されるものであるから、引用発明及び上記周知の事項から、相違点Bに係る本願発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易になし得たことといえる。

そして上記相違点A及びBを合わせ考えても、本願発明の効果が格別であるとはいえない。

したがって、本願発明は、周知の事項を考慮すれば、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そうすると、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-30 
結審通知日 2008-06-02 
審決日 2008-06-13 
出願番号 特願2003-92344(P2003-92344)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F21L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 柿崎 拓  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 平上 悦司
岸 智章
発明の名称 誘導電流懐中電灯  
代理人 清原 義博  

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