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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1186564
審判番号 不服2007-8053  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-19 
確定日 2008-10-22 
事件の表示 特願2003-326193「ケミカルメカニカルポリシングの操作をインシチュウでモニタするための装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月12日出願公開、特開2004- 48051〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯と本願の発明
本願は、平成15年9月18日の出願(特許法第44条第2項の規定による出願日の遡及平成8年3月28日、パリ条約による優先権主張平成7年3月28日、アメリカ合衆国)であって、平成18年9月13日付の手続補正を経て、平成18年12月12日付で拒絶査定がなされ、平成19年3月19日に拒絶査定を不服とする審判請求がなされたものである。
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし20に係る発明は、平成18年9月13日付の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし20に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりである。
「ウェーハの機械化学的ポリッシング(CMP)装置において、
(a)ポリッシングパッドを保持する為の回転可能なプラーテンと、
(b)前記ポリッシングパッドにウェーハを保持する為のポリッシングヘッドと、
(c)終点検出器であって:
(c1)前記ポリッシングパッドに接触する前記ウェーハの表面から前記ウェーハの方に光ビームを向ける為の固定された光源;
(c2)ポリッシングパッドと共に移動するウィンドウであって、前記ウェーハが前記ウィンドウの上にあるとき少なくとも一部の時間中、前記光ビームが前記ウェーハに衝突する為に断続的に光路を提供する前記ウィンドウ;
(c3)前記ウィンドウを通って前記ウェーハから前記光ビームの反射を受ける為の固定された検出器;を備える、前記終点検出器と、
を備える、前記装置。」(以下、「本件発明」という。)

2.刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に国内で頒布された次の刊行物には、以下の事項が記載されていると認められる。
刊行物: 特開平7-52032号公報

a.(特許請求の範囲、請求項4)
「【請求項4】 回転装置により回転する定盤と、定盤の表面に張り付けられた研磨布と、定盤の中心と周縁との間の研磨布に対面し軸方向移動可能に配置され、回転装置により回転するウエハ支持板と、定盤の中心と周縁との間の研磨布張り付け面に半径方向に延長して設けた溝と、該溝と一致させ研磨布に設けた研磨布窓と、定盤の前記溝内に設けた貫通孔と、該貫通孔を閉じる透明窓材と、定盤の前記溝を有する面の反対側で貫通孔の回転路に臨ませ配置した、前記の透明窓材を通して光をウエハ支持板に固定したウエハの研磨面に照射しその反射光を受光するプローブと、該プローブに接続した光ケーブルと、光ケーブルに接続した光ケーブルへの光供給装置と反射光観察又は評価装置とを備えているウエハ研磨装置。」
b.(明細書、段落【0006】)
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、研磨途中でウエハを定盤から離すことなく研磨中の膜の厚さを知ることができ、研磨の高精度な制御が効率よくできるウエハの研磨方法及び装置を提供することを課題とする。」
c.(明細書、段落【0013】)
「【0013】
【作用】本発明方法において、定盤及び研磨布の回転中心と周縁との間に設けた窓からウエハの研磨面の光の反射状態を見て研磨状態を判定すれば、研磨を中断せずに研磨状態の終点を知ることが出来るので、研磨処理の時間を短くでき、装置も簡単で済む。光の反射状態は、光ケーブルでウエハの研磨面に光を照射してその反射光をビデオカメラに用いられている電荷結合素子(CCD)を用いた撮像装置で取り、これをブラウン管などの撮像表示装置で表示せしめ、撮像表示装置に現れた干渉縞により厚さを判断する。膜厚の場合、2μm以下では旧型の蛍光灯や白熱灯で縞が見え、1μm以下では白色灯では虹色の縞が見える。」
d.(明細書、段落【0022】?【0027】)
「【0022】
【実施例】図1、図2に示した実施例について説明する。定盤1は直径300mm、厚さ10mmのアルミニウム製の円盤で、その中心の片面に定盤1を回転するための軸が固定してある。定盤1の軸を固定した面の反対側の面には、中心から放射状に伸びる近接した2本の直線で囲まれ、中心付近から周縁近くまで伸びた溝2が設けてある。溝2の中心側の幅は5mmで周縁側の幅は15mm、深さ1mmとなっている。溝2の長手方向中央には、直径10mmの貫通孔3が設けられ、溝2の反対側では円錐状に拡大している。貫通孔3の溝2側にはパイレックス透明ガラス製の透明窓材4が嵌め込まれ、研磨液が漏れないようにしてある。
【0023】定盤1の溝2を有する面には、定盤1と同形の厚さ0.7mmのローデルニッタ社製、商品名suba-500ウレタン含浸ポリエステル不織布からなる研磨布5が張り付けられ、溝2に相当する部分は溝2と同形に切り抜かれて、研磨布窓6が形成されている。透明窓材4は定盤1の表面より約0.5mm突出するが、研磨布5の弾性を考慮しても研磨布5の表面より十分低くなっている。
【0024】定盤1の溝2の反対側には透明窓材4の回転路に面して研磨するウエハ7の研磨面に光を照射しその反射光を受光するプローブ9が配置されている。プローブ9はピント調節用レンズを内蔵し、光ケーブル10に接続され、その他端は二股に別れ図示していない分光反射率測定装置と測定用光源に接続されている。
【0025】片面に回転用の軸が固定された直径110mm、厚さ10mmの円盤状のアルミニウム製のウエハ支持板8に、表面に熱酸化膜を形成した2枚のシリコンウエハを、熱酸化膜を接せしめて接着し、一方のウエハを平面研削して厚さ15μmのシリコン膜として直径100mmのSOIウエハを、平面研削加工していない面をワックスで張り付けた。
【0026】粒径が0.01μm以下のシリカ粉末を含むアルカリ性溶液からなるローデルニッタ社製、商品名NALCO-2350を20倍に希釈した研磨液を定盤1の研磨布5の表面に滴下しつつ、定盤1を毎分50回転させながら、ウエハ支持板8に張り付けたウエハ7を、自転速度毎分40回転で回転させつつ、研磨布5に、回転中心が透明窓材4の上に位置するように、研磨荷重10kgfで押し付けて目標膜厚を1μmにして研磨を開始した。
【0027】この条件では、透明窓材4の移動線速度は約500mm/秒なので、直径10mmの透明窓材4を通してウエハ7の中心を測定出来る時間は、1回の通過に付き約10m秒である。この時間は、波長範囲680?800nm、分解能1nmで行う分光反射率測定に対して十分であった。測定の参照基準には、同じ条件に置いたシリコンウエハを用いた。」
e.(図1)
プローブ9が、定盤1には固定されていないことが看取される。

摘記事項dのうち、とくに段落【0026】から、ウエハ研磨装置がウエハを化学機械的に研磨するCMP研磨装置であり、ウエハ支持板がウエハを研摩布に対して保持することは容易に理解されるところである。また、摘記事項a及びcからは、光供給装置、貫通孔、透明窓材及び研摩布窓並びに反射光観察又は評価装置が研磨状態の終点を検知する終点検出器を構成することも、当業者であれば容易に理解し得るものである。
そこで、上記の摘記事項の内容を本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物には、
「ウエハの機械化学的研磨(CMP)装置において、
研摩布を保持する為の回転可能な定盤と、
前記研摩布にウエハを保持する為のウエハ支持板と、
終点検出器であって:
前記研摩布に接触する前記ウエハの表面から前記ウエハの方に光を向ける為の光供給装置;
研摩布と共に移動する貫通孔、透明窓材及び研摩布窓であって、前記ウエハが前記貫通孔の上にあるとき少なくとも一部の時間中、前記光が前記ウエハに衝突する為に光路を提供する前記貫通孔、透明窓材及び研摩布窓;
前記貫通孔、透明窓材及び研摩布窓を通って前記ウエハから前記光の反射を受ける為の反射光観察又は評価装置;を備える、前記終点検出器と、
を備える、前記装置。」(以下、「刊行物記載の発明」という。)
が記載されていると認められる。

3.対比
本件発明と刊行物記載の発明とを比較すると、後者の「ウエハ」、「研磨装置」、「研摩布」、「定盤」、「ウエハ支持板」、「光」、「光供給装置」、「貫通孔、透明窓材及び研摩布窓」及び「反射光観察又は評価装置」が、前者の「ウェーハ」、「ポリッシング装置」、「ポリッシングパッド」、「プラーテン」、「ポリッシングヘッド」、「光ビーム」、「光源」、「ウィンドウ」及び「検出器」にそれぞれ相当することは明白であるから、両者は次の以下の点において一致及び相違するものと認められる。
【一致点】
「ウェーハの機械化学的ポリッシング(CMP)装置において、
ポリッシングパッドを保持する為の回転可能なプラーテンと、
前記ポリッシングパッドにウェーハを保持する為のポリッシングヘッドと、
終点検出器であって:
前記ポリッシングパッドに接触する前記ウェーハの表面から前記ウェーハの方に光ビームを向ける為の光源;
ポリッシングパッドと共に移動するウィンドウであって、前記ウェーハが前記ウィンドウの上にあるとき少なくとも一部の時間中、前記光ビームが前記ウェーハに衝突する為に光路を提供する前記ウィンドウ;
前記ウィンドウを通って前記ウェーハから前記光ビームの反射を受ける為の検出器;を備える、前記終点検出器と、
を備える、前記装置。」である点。
【相違点】
終点検出器は、前者では固定された光源と固定された検出器とを備え、ウィンドウが断続的に光路を提供するのに対し、後者では光源と検出器とが固定されてウィンドウが断続的に光路を提供するのか、明らかでない点。

4.当審の判断
上記相違点について検討する。
摘記事項dのうち、段落【0027】には、「この条件では、透明窓材4の移動線速度は約500mm/秒なので、直径10mmの透明窓材4を通してウエハ7の中心を測定出来る時間は、1回の通過に付き約10m秒である。」との記載がある。
透明窓材はウィンドウの一部を構成するものであるから、上記記載から、刊行物記載の発明においてもウィンドウが断続的に光路を提供することは当業者であれば容易に理解し得るものであり、さらに透明窓材の移動線速度約500mm/秒と直径10mmとに基づいて測定出来る時間が約10m秒と求められることから考えると、回転するプラーテンとウィンドウに対して、光源と検出器とは不動に固定されているものと見ることが相当である。
したがって、刊行物には、終点検出装置が固定された光源と固定された検出器とを備え、ウィンドウが断続的に光路を提供するものが記載されていることは、当業者が容易に理解し得るというべきである。

なお、審判請求人は審判請求理由において、刊行物の明細書段落【0020】を引用して、刊行物記載の発明では「ウエハの自転速度と同じ速度でプローブ9を光通過窓と同じ回転路において往復運動をさせなければなりません(引用文献1の段落0020参照)。 よって、請求項1に係る発明の構成要件(c1)、(c3)を満足しておりません。」と主張している。
上記段落【0020】には、「光をウエハの研磨面に照射しその反射光を受けるプローブは、研磨を停止して観察又は評価を行う場合は問題はないが、研磨中に観察又は評価を行う場合、定盤の光通過窓は回転しており、ウエハも自転しているので、ウエハの特定場所を正確に観察又は評価するのに時間を必要とするときは、ウエハの自転速度と同じ速度でプローブを光通過窓と同じ回転路において往復運動させればよい。」(下線は当審にて付与した。)と記載されている。この記載からは、ウエハの自転速度と同じ速度でプローブを光通過窓と同じ回転路において往復運動させるのは、ウエハの特定場所を正確に観察又は評価するのに時間を必要とする特定の場合に限られ、その他の場合においては段落【0027】の「この時間は、波長範囲680?800nm、分解能1nmで行う分光反射率測定に対して十分であった。」との記載に示されるようにプローブを往復運動させる必要はなく、プローブは固定されていることが明白であるため、上記主張を採用することはできない。

本件発明には、刊行物記載の発明に基いて普通に予測される作用効果を上回る、格別のものを見出すこともできないため、本件発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるため、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし20に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-22 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-06-09 
出願番号 特願2003-326193(P2003-326193)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野田 達志  
特許庁審判長 前田 幸雄
特許庁審判官 尾家 英樹
豊原 邦雄
発明の名称 ケミカルメカニカルポリシングの操作をインシチュウでモニタするための装置及び方法  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 山田 行一  

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