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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1186623
審判番号 不服2006-2378  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-02-09 
確定日 2008-10-24 
事件の表示 特願2001-314662「III族窒化物膜の製造方法、III族窒化物膜の製造用下地膜、及びその下地膜の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月 9日出願公開、特開2002-222771〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年10月12日(優先権主張平成12年11月21日)の出願であって、平成16年7月8日付けの拒絶理由の通知に対して、同年9月7日付けで手続補正がされたが、平成17年12月19日付けで拒絶査定され、これに対し、平成18年2月9日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月9日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成18年3月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成18年3月9日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
1.本件補正の概略
本件補正は、特許請求の範囲について、補正前に、

「【請求項1】III族窒化物膜を製造する方法であって、平坦部の割合が50%以下の凹凸状の表面を有し、AlNからなる下地膜上に、前記III族窒化物膜を製造することを特徴とする、III族窒化物膜の製造方法。
【請求項2】前記下地膜の前記表面における前記平坦部の割合が10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項3】前記下地膜の前記表面における前記平坦部を除いた部分が、{101}ファセットを有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項4】前記下地膜を、サファイア単結晶基板又はSiC単結晶基板上に形成することを特徴とする、請求項1?3のいずれか一に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項5】前記サファイア単結晶基板の主面には表面窒化処理が施されることにより表面窒化層が形成され、前記下地膜は、前記サファイア単結晶基板上に前記表面窒化層を介して形成されていることを特徴とする、請求項4に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項6】前記下地膜を、平均粗さ(Ra)が10Å以下であり、X線ロッキングカーブにおける半値幅が90秒以下であって、少なくともAlを50原子%以上含む第2のIII族窒化物からなる表面層を有する基板上に形成することを特徴とする、請求項1?5のいずれか一に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項7】III族窒化物膜を製造するための下地膜であって、平坦部の割合が50%以下の凹凸状の表面を有し、AlNからなることを特徴とする、III族窒化物膜の製造用下地膜。
【請求項8】前記下地膜の前記表面における前記平坦部の割合が10%以下であることを特徴とする、請求項7に記載のIII族窒化物膜の製造用下地膜。
【請求項9】前記下地膜の前記表面における前記平坦部を除いた部分が、{101}ファセットを有することを特徴とする、請求項7又は8に記載のIII族窒化物膜の製造用下地膜。」

とあったものを、

「【請求項1】III族窒化物膜を製造する方法であって、平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面を有し、エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜上に、前記III族窒化物膜を製造することを特徴とする、III族窒化物膜の製造方法。
【請求項2】前記下地膜の前記表面における前記平坦部の割合が10%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項3】前記下地膜を、サファイア単結晶基板又はSiC単結晶基板上に形成することを特徴とする、請求項1又は2に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項4】前記サファイア単結晶基板の主面には表面窒化処理が施されることにより表面窒化層が形成され、前記下地膜は、前記サファイア単結晶基板上に前記表面窒化層を介して形成されていることを特徴とする、請求項1?3のいずれか一に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項5】前記下地膜を、平均粗さ(Ra)が10Å以下であり、X線ロッキングカーブにおける半値幅が90秒以下であって、少なくともAlを50原子%以上含む第2のIII族窒化物からなる表面層を有する基板上に形成することを特徴とする、請求項1?4のいずれか一に記載のIII族窒化物膜の製造方法。
【請求項6】III族窒化物膜を製造するための下地膜であって、平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面を有し、AlNからなることを特徴とする、III族窒化物膜の製造用下地膜。
【請求項7】前記下地膜の前記表面における前記平坦部の割合が10%以下であることを特徴とする、請求項6に記載のIII族窒化物膜の製造用下地膜。」

と補正しようとするものである。

そして、補正後の請求項4については、これに対応する補正前の請求項5がその直前の請求項4のみを引用していたのを、補正後の請求項1?3のいずれか一を引用するように補正し(以下、「本件補正事項1」という。)、また、補正後の請求項1については、これに対応する補正前の請求項1における「平坦部の割合が50%以下の凹凸状の表面」を「平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面」に補正するとともに、同じく補正前の請求項1における「AlNからなる下地膜」を「エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜」と限定するように補正したもの(以下、「本件補正事項2」という。)である。

2.本件補正の適否
以下、上記本件補正事項1、2を含む本件補正の適否について検討する。

(1)本件補正事項1について
本件補正後の請求項4には、「前記サファイア単結晶基板の主面には表面窒化処理が施されることにより表面窒化層が形成され・・・」と記載されている一方で、同請求項4には、「請求項1?3のいずれか一に記載のIII族窒化物膜の製造方法」とも記載されているが、補正後の請求項1、2には、「サファイア単結晶基板」との記載はなく、補正後の請求項4の内の請求項1又は請求項2を引用する部分についてみれば、「前記サファイア単結晶基板」が何を指示するのかが不明確であるといわざるを得ない。
してみると、本件補正事項1は、補正後の特許請求の範囲の記載を明りょうでないものに補正するものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項のいずれを目的とするものにも該当しないことは明らかである。

(2)本件補正事項2について
ア 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正事項2は、上述のとおり、補正前の請求項1における「平坦部の割合が50%以下の凹凸状の表面」を「平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面」に補正するとともに、同じく補正前の請求項1における「AlNからなる下地膜」を「エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜」と限定するものであるから、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものである。
そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明1」という。)について以下に検討する。
本願補正発明1は、「第2〔理由〕1.」に補正後の請求項1として記載された事項により特定されるとおりのものである。

イ 引用例及びその摘記事項
(ア)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の他の出願であって、その優先権主張の日の後に出願公開された特願平11-376422号(特開2001-168045号公報参照)(以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、図1?図3と共に、以下の事項が記載されている。

〔先a〕「本発明は、III族元素とV族元素としての窒素(N)とを含む窒化物系III-V族化合物層の製造方法およびそれを用いた基板の製造方法に関する。」(【0001】)

〔先b〕「本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、品質を向上させることができ、かつ製造プロセスの簡易化を図ることができる窒化物系III-V族化合物層の製造方法およびそれを用いた基板の製造方法を提供することにある。」(【0010】)

〔先c〕「本発明の一実施の形態に係る窒化物系III-V族化合物層の製造方法は、III族元素としてガリウム(Ga),アルミニウム(Al),ホウ素(B)およびインジウム(In)からなる群のうちの少なくとも1種を含み、V族元素として少なくとも窒素(N)を含む窒化物系III-V族化合物層を製造する方法である。このような窒化物系III-V族化合物としては、例えば、GaN,InN,AlN,AlGaN混晶,GaInN混晶あるいはAlGaInN混晶がある。・・・
図1および図2は、本実施の形態に係る窒化物系III-V族化合物層の製造方法の一製造工程を表すものである。図1(B)および図2(B)は、それぞれ図1(A)および図2(A)の一部を表している。・・・
本実施の形態では、まず、図1に示したように、例えばサファイア(Al_(2)O_(3)),炭化ケイ素(SiC)あるいはスピネル(MgAl_(2)O_(4))よりなる成長用基体10を用意し、この成長用基体10を例えば有機溶剤により洗浄する。・・・
次いで、・・・この成長用基体10上(サファイアよりなる場合は、例えばc面上)に、例えばハイドライドVPE法を用いて、上述した窒化物系III-V族化合物を所望の厚さ(例えば、200μm)に達するまで成長させ、第1の成長層21を形成する(第1の成長工程)。このとき、成長面(ここでは、成長用基体10の表面)に対して垂直な方向の成長速度が、例えば10μm/hよりも大きくなるように成長させる。成長速度は、他に支障を及ぼさない範囲内においてできり限り大きくすることが好ましい。なお、第1の成長層21の結晶性を良好なものとするには、成長面に対して垂直な方向の成長速度が100μm/h以下となるように成長させることが好ましい。ここで、ハイドライドVPE法とは、ハロゲン水素化物を原料ガスとして用いた気相成長法のことを指す。・・・
この第1の成長層21の形成は、より具体的には、例えば以下のようにしてGaNを成長させることにより行う。すなわち、図示しない加熱手段(例えば、サセプタ)により成長用基体10を1000℃程度まで加熱し、窒素の原料としてアンモニアガス(NH_(3))を1リットル/分の流量で供給すると共に、ガリウムの原料として、850℃程度に加熱されたガリウム単体(金属ガリウム)上に塩化水素ガス(HCl)を0.03リットル/分(30ccm)の流量で流すことにより得られる塩化ガリウムガス(GaCl)を供給する。なお、キャリアガスには窒素ガス(N_(2))を用い、その流量を1リットル/分とする。ここでは、塩化水素ガスの供給量を調節することにより、窒化物系III-V族化合物の成長速度を制御することができる。このようにして例えば数時間成長を行うと、GaNよりなる厚さ200μm程度の第1の成長層21が形成される。・・・
図3は、上述した条件によりGaNを成長させて第1の成長層21を形成したのち、その表面を電子顕微鏡により観察した結果を示す写真である。図3からも分かるように、第1の成長層21の表面は、例えば山形に突起しており、粗くなっている。また、この第1の成長層21には、図1(B)において細線で示したように、積層方向に延びる転位Dが高濃度(例えば、10^(9)?10^(10)個/cm^(2)程度)に存在している。・・・
なお、ここでは、GaNを具体例に挙げて説明したが、他の窒化物系III-V族化合物を成長させる場合には、アルミニウムの原料としては例えばアルムニウム単体を用い、・・・また、インジウムの原料としては、例えばインジウム単体を用いる。・・・
第1の成長層21を形成したのち、図2に示したように、第1の成長層21の上に、例えば第1の成長層21を構成する窒化物系III-V族化合物と同一の窒化物系III-V族化合物を、第1の成長層21を形成した際の成長速度よりも小さい成長速度で成長させて、第2の成長層22を形成する(第2の成長工程)。この第2の成長層22を形成する際の成長速度は、成長面に対して垂直な方向の成長速度が、例えば10μm/h以下となるように成長させる。なお、良好な結晶性を有する窒化物系III-V族化合物を成長させるには、成長面に対して垂直な方向の成長速度を5μm/h程度とすることが好ましい。・・・
第2の成長層22は、例えば、ハイドライドVPE法、MOCVD法またはMBE法のいずれかの方法により、窒化物系III-V族化合物を成長させて形成する。」(【0015】?【0023】)

〔先d〕「すなわち、大きな成長速度で成長した第1の成長層21,31の表面は荒れたものとなるが、それよりも小さな成長速度で第2の成長層22,32を成長させることにより、第1の成長層21,31の表面の窪みが埋められ、第2の成長層22,32の表面を平坦にすることができる。更に、第1の成長層21,31の表面の窪みを埋めるように横方向に成長が起こるため、第1の成長層21,31から引き継がれた転位Dが横方向に屈曲し、第2の成長層22,32の表面まで伝搬される転位Dの密度が大きく低減する。従って、得られた窒化物系III-V族化合物層20(窒化物系III-V族化合物基板30)は、その上に、結晶性に優れた窒化物系III-V族化合物半導体を成長させることができる良質なものとなる。」(【0041】)

〔先e〕「上記実施の形態では、第1の成長層21,31および第2の成長層22,32として、同一の窒化物系III-V族化合物をそれぞれ成長させるようにしたが、異なる窒化物系III-V族化合物をそれぞれ成長させるようにしてもよい。」(【0043】)

(イ)上記先願明細書の摘記事項〔先a〕?〔先e〕及び図1?図3を総合勘案すると、上記先願明細書には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されていると認められる。

「サファイアなどよりなる成長用基板10上に、ハイドライドVPE法を用いて窒化物系III-V族化合物を200μmの厚さに達するまで成長させ、表面が山形に突起しており、粗くなっている第1の成長層21を形成したのち、該第1の成長層21の上に窒化物III-V族化合物を、第1の成長層21を形成した際の成長速度よりも小さい成長速度で成長させて、第2の成長層22を形成する、窒化物系III-V族化合物層の製造方法において、該窒化物系III-V族化合物をAlNとした、窒化物系III-V族化合物層の製造方法。」

ウ 対比・判断
そこで、本願補正発明1と先願発明とを対比する。
先願発明の「窒化物系III-V族化合物」、「窒化物系III-V族化合物層」及び「第2の成長層22」は、本願補正発明1の「III族窒化物」乃至「III族窒化物膜」に相当する。
そして、先願発明の「サファイアなどよりなる成長用基板10上に、ハイドライドVPE法を用いて窒化物系III-V族化合物を200μmの厚さに達するまで成長させ、表面が山形に突起しており、粗くなっている第1の成長層21」であって、上記「窒化物系III-V族化合物」がAlNであるものについては、上記「ハイドライドVPE法」が気相エピタキシャル成長法の一種であること、「表面が山形に突起しており、粗くなっている」点は、「凹凸状の表面を有し」ている点に相当すること、及びその上に形成される「第2の成長層22」の下地膜となっていることから、本願補正発明1の「凹凸状の表面を有し、エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜」に対応するものといえるし、さらに、その凹凸状の表面が、「平坦部の割合が50%以下で存在する」か否かの点においても、以下に述べるとおり、本願補正発明1の「エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜」と相違するものではない。

本件明細書には、「平坦部」について、「『平坦部』とは、平均粗さRaが10Å以下の場合をいうものである。」(【0020】参照)と記載されていることに鑑みれば、本願補正発明1の「平坦部の割合が50%以下で存在する」とは、「平均粗さRaが10Å以下の部分の割合が50%以下で存在する」ことを意味すると解すべきである。
一方、先願発明における下地膜の表面については、「山形に突起しており、粗くなっている」と記載されており、図3の図面代用写真から明らかなように、数μm程度の凹凸が全面に形成されている。よって、上記下地膜の表面全体に10Åを超える程度の凹凸乃至荒れが実際に形成されているものといえる。そして、そのような凹凸乃至荒れが表面全体に形成されているものであれば、その表面全体での「平均粗さRa」が10Åを超えるものとなることは明らかであり、上記表面に「平均粗さRaが10Å以下の部分」、即ち、「平坦部」は存在しないといえる。このことは、「平坦部の割合が0%」であることに他ならず、したがって、本願補正発明1の「下地膜」と、先願発明の「下地膜」とは、その表面において「平坦部の割合が50%以下で存在する」点で実質的に相違するものではない。

そうすると、本願補正発明1と先願発明とは、次の点で一致する。

「III族窒化物膜を製造する方法であって、平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面を有し、エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜に、前記III族窒化物膜を製造する、III族窒化物膜の製造方法。」

よって、本願補正発明1は、先願発明と同一であり、しかも、本願補正発明1の発明者が上記先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人は上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願補正発明1は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

エ 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、上記先願明細書に関し、「成長用基体10上に均一なGaN成長層22を形成することが開示されているのみであって、本願発明で規定しているような特に平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面を有するAlN層については何ら開示していません。」、「段落[0015]の記載にはAlNを用いることが出来る旨例示されており、同じIII族窒化物材料であるという観点から、GaN材料で実現されている結果からAlN材料においても当然に同様の結果が得られるとの考え方もあります。しかし、このような考え方は、当業者においては到底認められるものではありません。」と主張している。
しかしながら、以下の参考例に記載されるように、SiCやサファイアからなる基板の上に、ハイドライドVPE法により200μm程度の厚さのAlNをエピタキシャル成長させた場合、その表面粗さは、「平均粗さRaが10Å」を大きく超えるものとなる蓋然性が極めて高いと考えられることから、先願明細書の記載から、下地膜の材料がAlNである場合についても、GaNの場合と同様、その表面が山形に突起しており、粗くなっていると認定することはできるというべきである。
したがって、上記請求人の主張は採用しない。

参考例:Kovalenkov O. et al., "Thick AlN layers grown by HVPE," Journal of Crystal Growth (2005), Vol.281, pp.87-92

〔参a〕「AlN layers were grown by HPVE.・・・The substrate temperature was varied from 900 to 1200℃.」(第88頁左欄第5?10行)

〔参b〕「As-grown surface of AlN layer deposited on SiC and sapphire substrates is shown in Fig.2. Pyramids with lateral size ranging from 0.1 to 50 μm and height of about 0.1μm are clearly seen. Fig.3 shows AFM 10μm ×10μm scan for a 30μm thick AlN layer. Surface roughness, rms ranged from 20 to 70 nm for different samples. The size of the pyramids and surface roughness increased with the layer thickness.」(第89頁右欄第5?13行)

3.本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正事項1は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするもののいずれにも該当しないので、本件補正事項1を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしておらず、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
また、本願補正発明1は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、これに係る本件補正事項2を含む本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件も満たさないものでもあり、同様に、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1.本願発明
平成18年3月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?9に係る発明は、平成16年9月7日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2〔理由〕1.」で補正前の請求項1として記載された事項により特定されるとおりのものである。

2.引用例及びその摘記事項
原査定の拒絶の理由で引用された、先願明細書及びその記載事項は、上記「第2〔理由〕2.(2)イ」に記載したとおりである。

3.当審の判断
本願発明は、上記「第2〔理由〕2.(2)」で検討した本願補正発明1の「平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面」を「平坦部の割合が50%以下の凹凸状の表面」とし、さらに上記本願補正発明1の「エピタキシャル成長されたAlNからなる下地膜」から、「エピタキシャル成長された」との限定を解除したものに相当する。
上記「平坦部の割合が50%以下の凹凸状の表面」と、上記「平坦部の割合が50%以下で存在する凹凸状の表面」とは実質的に異なるものではないから、本願発明の構成要件を実質的に全て含み、さらに他の要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、上記「第2〔理由〕2.(2)ウ」に記載したとおり先願発明と同一であるとすれば、本願発明も、同様の理由により、先願発明と同一であるといえる。
そして、本願発明の発明者が上記先願発明の発明者と同一であるとも、また、本願の出願時に、その出願人は上記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29の2の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-20 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-10 
出願番号 特願2001-314662(P2001-314662)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 161- Z (H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 加藤 浩一  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 岡 和久
粟野 正明
発明の名称 III族窒化物膜の製造方法、III族窒化物膜の製造用下地膜、及びその下地膜の製造方法  
代理人 来間 清志  
代理人 杉村 憲司  
代理人 岡島 伸行  
代理人 藤谷 史朗  
代理人 杉村 興作  

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