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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01S
管理番号 1186630
審判番号 不服2006-9394  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-10 
確定日 2008-10-24 
事件の表示 特願2002-219026「表面発光型半導体レーザ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 2月26日出願公開、特開2004- 63707〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年7月29日の出願であって、平成18年4月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月10日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに同年6月7日に手続補正がなされたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成18年6月7日付け手続補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの、次のものである。

「【請求項1】 下部反射鏡と、活性領域と、前記下部反射鏡と共に共振器を構成する上部反射鏡とが積層された基板と、
前記上部反射鏡上に設けられ、且つ前記活性領域で発生したレーザ光の出射領域を画定する第1の開口部が形成された金属部と、
前記金属部と前記下部反射鏡との間に設けられ、且つレーザ光の発光領域を画定する第2の開口部を有する光閉じ込め領域とを備え、
前記光閉じ込め領域の前記第2の開口部の径は少なくとも12ミクロン以上であり、かつ前記第1の開口部の径が前記第2の開口部の径よりも1乃至5ミクロン小さく、前記出射領域から出射されるレーザ光は、所定の波長範囲内に選択された複数の次数のレーザ光を含むマルチモードである、表面発光型半導体レーザ。」

2.引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-210908号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、面発光半導体レーザ素子に関し、更に詳しくは、レーザ光の横モード発振を簡易な構成により正確に制御可能であり、しかも基本横モード発振を低い動作電圧で実現することのできる面発光半導体レーザ素子に関する。
【0002】
【関連する背景技術】近時、大容量光通信網の構築、また、光インターコネクションや光コンピューティングなどの光データ通信システムの構築を目指す研究が進められている。そして、これらの通信網や通信システムの光源として、レーザ光を基体に垂直な面方向に取り出す面発光半導体レーザ素子が注目を集めている。
【0003】このような面発光レーザ素子の基本的な層構造の一例を図11に示す。図11に示すレーザ素子Aは、基板1上に形成された層構造を備え、この層構造は、下部反射鏡層構造2、下部クラッド層3a、活性層(以下、発光層と称することがある)4、上部クラッド層3b、上部反射鏡層構造5及び層6を含む。この様に、層構造は、全体として基板面に垂直に形成され、レーザ光を垂直方向に出射する共振器を構成するものとなっている。
・・・(中略)・・・
【0007】上記構成のレーザ素子Aは、上部電極7aと下部電極7bとの間に電圧を印加することにより発光層4でレーザ発振を生じさせ、GaAs層6に設けた出射窓6aから、矢印で示すように、レーザ光を基板1の垂直上方に外部へ出射するものとなっている。」

(2)「【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、面発光半導体レーザ素子を光伝送システムの光源として組み込むためには、当該レーザ素子から出射されるレーザ光の発振横モードを制御することが必要である。空間伝搬を適用したボード間光伝送システムや単一モード光ファイバを用いた高速光伝送システムの場合には、基本横モード発振するレーザ素子が光源として必要である。」

(3)「【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、基板上に形成した上部反射鏡層構造と下部反射鏡層構造と両者間に配置される活性層とを含む半導体材料の層構造の前記上部反射鏡層構造の上面に上部電極およびレーザ光出射窓を設けた面発光半導体レーザ素子において、本発明は、前記活性層の近傍に口径が10μmよりも大きい電流注入経路を形成したことを特徴とする。
【0014】本発明によれば、電流注入経路の口径が10μmと十分に大きいので、低い動作電圧でのレーザ発振が実現される。また、以下の理由で、レーザ素子の発振横モードを制御可能である。本発明者は、レーザ素子の電流注入経路の口径のみならず出射窓の口径が活性層で発生するレーザ光の発振横モードに密接に関与するとの認識に基づいて、種々の口径のレーザ光出射窓を有するレーザ素子を製造してこれらのレーザ素子の特性を計測し、その結果、レーザ光出射窓の口径を所要値に制御することにより所要の横モードでレーザ光を発振させることができるとの結論を得た。
【0015】本発明は、上記の知見に基づいて創案されたものであり、レーザ光出射窓が所要の口径、好ましくは請求項2に記載の如く電流注入経路の口径よりも小さい口径を有するように、出射窓の口径を好ましくは請求項3、4に記載の如く上部電極もしくは金属膜で制御することにより、所要の発振横モードでレーザ光を発振させるものとなっている。すなわち、上部電極もしくは金属膜の直下では、上部反射鏡層構造の実効的な反射率が高くなるものの、上部電極や金属膜は光を通さないので、当該部分のみでレーザ発振が可能になる。
【0016】つまり、所要の横モードでのレーザ発振を実現するための制御手段として電流狭窄層を主として用いる従来技術ではレーザ素子の動作電圧を低減するために電流注入経路の口径を大きくすると、横モード(特に基本横モード)を制御できなくなるという問題が生じるが、本発明によれば、主たる横モード制御手段としてレーザ光出射窓を利用するので、発振横モードの制御のために電流注入経路の口径を正確に制御する必要がない。」

(4)「【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による面発光半導体レーザ素子について説明する。図1に示すように、本実施形態の面発光半導体レーザ素子Bの基本構成は、図11に示した従来のレーザ素子Aのものと同一である。すなわち、レーザ素子Bは、下部反射鏡層構造2、下部クラッド層3a、発光層4、上部クラッド層3b、上部反射鏡層構造5及びGaAs層6を含む層構造を基板1上に形成したものであり、上部クラッド層3bの最下層3cは絶縁領域3dと電流注入経路3eとからなる。
・・・(中略)・・・
【0025】[実施例]
(1)レーザ素子の製造
図1で示したレーザ素子を次のようにして製造した。このレーザ素子の発振波長は850nmとなるように設計されている。n型GaAs基板1の上にMOCVD法で厚み40nmのn型Al_(0.2)Ga_(0.8)Asと厚み50nmのn型Al_(0.9)Ga_(0.1)Asとの薄層をヘテロ界面に厚み20nmの組成傾斜層を介在させながら交互に積層することにより、30.5ペアの多層膜からなる下部反射鏡層構造2を形成した。ついで、下部反射鏡層構造2の上にノンドープAl_(0.3)Ga_(0.7)Asから成る下部クラッド層3a(厚み90nm)、3層のGaAs量子井戸(各層の厚み7nm)と4層のAl_(0.2)Ga_(0.8)As障壁層(各層の厚み10nm)とで構成された量子井戸構造の発光層4、および、ノンドープAl_(0.3)Ga_(0.7)Asから成る上部クラッド層3b(厚み90nm)をこの順序で積層した。更に、上部クラッド層3bの上に、厚み40nmのp型Al_(0.2)Ga_(0.8)Asと厚み50nmのp型Al_(0.9)Ga_(0.1)Asとの薄膜をヘテロ界面に厚み20nmの組成傾斜層を介在させながら交互に積層することにより、25ペアの多層膜から成る上部反射鏡層構造5を形成した。
【0026】そして、上部反射鏡層構造5における最上層であるp型Al_(0.2)Ga_(0.8)As層の上にp型GaAs層6を積層した。なお、上部反射鏡層構造の最下層3cは、Al_(0.9)Ga_(0.1)Asではなく、厚み50nmのp型AlAsで構成した。そして、この最下層3cが後述する処理によって電流狭窄構造に転化する。
【0027】次に、p型GaAs層6の表面にプラズマCVD法でSiNx膜8aを成膜したのち、SiNx膜8aの上に通常のフォトレジストを用いたフォトリソグラフィーで直径約45μmの円形レジストマスク8bを形成した(図2)。ついで、CF_(4)を用いたRIE(反応性イオンエッチング)でレジストマスク8b直下のSiNx膜以外のSiNx膜8aを除去した。次に、レジストマスク8bを全て除去して平面視円形状のSiNx膜8aを得、GaAs層6の、SiNx膜8aの直下にない平面視円環状部分の表面を露出させた。
【0028】そして、SiNx膜8aをマスクとして用いると共にリン酸と過酸化水素と水の混合液から成るエッチャントを用いて、層構造のGaAs層6から下部反射鏡層構造2の上面近傍に至る部分をエッチング処理し、これにより柱状構造を形成した(図3)。そして、この層構造を水蒸気雰囲気中において温度400℃で約25分間加熱して、上部反射鏡構造5の最下層をなすp型AlAs層3cの外側のみを円環状に選択的に酸化し、層3cの中心部に直径D_(1)が約15μmの電流注入経路3eを形成した(図4)。
【0029】ついで、RIEによってSiNx膜8aを完全に除去したのち、柱状構造の外面および下部反射鏡構造2の上面をプラズマCVD法によりSiNx膜8で被覆し、続いて、直径約45μmのGaAs層6の上面に形成されているSiNz膜8の中央部分を、直径25μmの円形状に除去してGaAs層6の表面を露出させた。
【0030】ついで、GaAs層6の表面に外径25μm、内径15μmの円環状の上部電極7aを形成し、更に、柱状構造の表面に電極引き出し用のパッドとして機能する金属膜9を形成した。このとき、上部電極7aの内側にも金属膜を成膜して、直径D_(0)が10μmの開口を出射窓6Aとして形成した(図5)。そして、基板1の裏面を研磨して全体の厚みを約100μmとしたのち、その研磨面にAuGeNi/Auを蒸着して下部電極7bを形成した。
【0031】(2)レーザ素子の特性
このレーザ素子の電流-光出力特性を図6に実線で示し、また、その電流-電圧特性を図6に破線で示す。図6から明らかなように、このレーザ素子ではしきい値電流4mAでレーザ発振が生じ、注入電流が約15mAになるまでは光出力の飽和は起こらない。また、注入電流が15mAであるときの動作電圧は2.0Vであり、充分に低い値になっている。
【0032】一方、このレーザ素子の発振スペクトル図を図7に、発光遠視野像を図8にそれぞれ示す。図7と図8から明らかなように、このレーザ素子では、電流注入経路3eの口径が15μmであるにもかかわらず、単一波長でレーザ発振が生起し、また発光遠視野像も単峰性であることから、単一横モードで発振するレーザ素子であることがわかる。」

(5)「【0038】
【発明の効果】請求項1に係る発明では、基板上に形成した半導体材料の層構造の上部反射鏡層構造の上面に上部電極及びレーザ光出射窓を設けた面発光半導体レーザ素子において、活性層の近傍に口径が10μmよりも大きい電流注入経路を形成したので、低い動作電圧でのレーザ発振を実現でき、レーザ素子の発振横モードを制御可能である。
【0039】請求項2に係る発明では、レーザ光出射窓が電流注入経路の口径よりも小さい口径を有するので、電流注入経路の口径を大きくした場合にもレーザ光出射窓により横モード制御が可能であり、所要の発振横モードでレーザ光を発振させることができる。また、電流注入経路の口径を比較的大きくすることができるので、レーザ素子の抵抗の増大ひいてはレーザ素子の動作電圧の増大を抑制できる。また、高次の横モードでのレーザ発振を抑制でき、レーザ光のスペクトル幅や発光ビーム幅の増大を抑制できる。従って、低い動作電圧で基本横モード発振するレーザ素子を提供できる。また、レーザ光のスペクトル幅や発光ビーム幅を狭くすることができるので、光ファイバとの光結合が容易であって高速光データ伝送システムの光源として有用なレーザ素を提供できる。」

よって、これらを総合すると、引用刊行物には、
「大容量光通信網や光データ通信システムの光源としての面発光半導体レーザ素子であって、当該レーザ素子は、
n型GaAs基板1の上に形成された層構造を備え、当該層構造が、下部反射鏡層構造2と、下部クラッド層3aと、発光層4と、上部クラッド層3bと、上部反射鏡層構造5と、p型GaAs層6を含み、
前記層構造は、全体として基板面に垂直に形成され、レーザ光を垂直方向に出射する共振器を構成するものとなっており、
前記上部反射鏡層構造5の最下層3cは、p型AlAsで構成され、前記上部反射鏡構造5の最下層をなすp型AlAs層3cの外側のみが円環状に選択的に酸化されて、前記p型AlAs層3cの中心部に直径D_(1)が約15μmの電流注入経路3eが形成されており、
前記GaAs層6の表面に外径25μm、内径15μmの円環状の上部電極7aが形成され、更に、電極引き出し用のパッドとして機能する金属膜9が形成され、前記上部電極7aの内側にも前記金属膜9を成膜して、前記金属膜9に直径D_(0)が10μmの開口が出射窓6Aとして形成されており、
発振波長が850nmとなるように設計され、単一横モードで発振し、
前記出射窓6Aの口径(D_(0))を前記電流注入経路3eの口径(D_(1))よりも小さく形成したので、所望の発振横モードでレーザ光を発振させることができる、
面発光半導体レーザ素子。」
との発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.対比
本願発明と引用発明とを以下に対比する。
(1)引用発明の「下部反射鏡層構造2」、「発光層4」、「上部反射鏡層構造5」、「n型GaAs基板1」、「出射窓6A」、「金属膜9」及び「面発光半導体レーザ素子」は、それぞれ、本願発明の「下部反射鏡」、「活性領域」、「上部反射鏡」、「基板」、「出射領域」、「金属部」及び「表面発光型半導体レーザ」に相当する。
(2)引用発明において、「下部反射鏡層構造2」及び「上部反射鏡層構造5」を含む層構造は、「全体として基板面に垂直に形成され、レーザ光を垂直方向に出射する共振器を構成するもの」となっているから、引用発明の「下部反射鏡層構造2」及び「上部反射鏡層構造5」は、本願発明の「共振器」を構成する。
(3)引用発明において、金属膜9に「『出射窓6Aとして形成され』た『開口』」は、本願発明の「活性領域で発生したレーザ光の出射領域を画定する第1の開口部」に相当する。
(4)引用発明において、「電流注入経路3e」及び「『p型AlAs層3cの外側』の『円環状に選択的に酸化された』領域」は、それぞれ、本願発明の「レーザ光の発光領域を画定する第2の開口部」及び「光閉じ込め領域」に相当する。
(5)引用発明の「直径D_(1)が約15μm」である「電流注入経路3e」及び「直径D_(0)が10μm」である「『出射窓6Aとして形成され』た『開口』」は、それらの直径からみて、本願発明の「光閉じ込め領域の前記第2の開口部の径は少なくとも12ミクロン以上であり、かつ前記第1の開口部の径が前記第2の開口部の径よりも1乃至5ミクロン小さく」との特定事項を備える。
(6)引用発明は、出射窓6Aからレーザ光を出射することが明らかであって、当該レーザ光が「発振波長が850nmとなるように設計され、単一横モードで発振」することは、本願発明の「出射領域から出射されるレーザ光は、所定の波長範囲内に選択された複数の次数のレーザ光を含むマルチモードである」ことと、「出射領域から出射されるレーザ光は、所定の波長範囲内に選択された次数のレーザ光を含むモードである」点で一致する。

したがって、両者は、
「下部反射鏡と、活性領域と、前記下部反射鏡と共に共振器を構成する上部反射鏡とが積層された基板と、
前記上部反射鏡上に設けられ、且つ前記活性領域で発生したレーザ光の出射領域を画定する第1の開口部が形成された金属部と、
前記金属部と前記下部反射鏡との間に設けられ、且つレーザ光の発光領域を画定する第2の開口部を有する光閉じ込め領域とを備え、
前記光閉じ込め領域の前記第2の開口部の径は少なくとも12ミクロン以上であり、かつ前記第1の開口部の径が前記第2の開口部の径よりも1乃至5ミクロン小さく、前記出射領域から出射されるレーザ光は、所定の波長範囲内に選択された次数のレーザ光を含むモードである、表面発光型半導体レーザ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
出射領域から出射されるレーザ光が、本願発明では、「複数の次数」のレーザ光を含む「マルチモード」であるのに対し、引用発明では、「単一横モード」である点。

4.判断
引用発明の目的について、引用刊行物には、「単一モード光ファイバを用いた高速光伝送システムの場合には、基本横モード発振するレーザ素子が光源として必要である」(前記2.(2)参照)、「レーザ素子の動作電圧を低減するために電流注入経路の口径を大きくすると、横モード(特に基本横モード)を制御できなくなるという問題」(前記2.(3)の【0016】参照)と記載されており、これらの記載からみて、引用発明の「所望の発振横モード」として、基本横モードが含まれることは明らかであるが、基本横モード以外のモードが排除されるとは認められない。
しかるところ、光通信ネットワークや光データ・リンクにマルチモード型光ファイバを用いる場合、その光源に、マルチモードで発振する表面発光型半導体レーザを使用することは周知である(例.特開平7-170231号公報(【0001】、【0010】、【0017】-【0019】参照)、特開平8-271768号公報(【0004】、【0005】及び【0015】参照)、Hahn, K. H., "Large area multitransverse-mode VCSELs for modal noise reduction in multimode fibre systems", Electronics Letters, Vol.29, No.16, 1993, pp.1482-1483("Introduction"の第1文及び第2文参照)、特開2000-277844号公報(【0027】参照))。
一方、表面発光型半導体レーザにおいて、注入電流を増加することにより、出射されるレーザ光がシングルモード動作からマルチモード動作に移行することも周知であるから(例.特開平10-56233号公報(【0003】及び【0004】参照)、特表2002-514016号公報(【0020】参照)、特開平9-260765号公報(【0010】及び【0011】参照))、基本横モード発振するレーザ素子をマルチモード発振することは、当業者が適宜なし得た程度のことと認められる。
そうすると、引用発明は、「大容量光通信網や光データ通信システムの光源」として使用するレーザ素子であって、「出射窓6Aの口径(D_(0))を前記電流注入経路3eの口径(D_(1))よりも小さく形成したので、所望の発振横モードでレーザ光を発振させることができる」ものであるから、マルチモード型光ファイバーを用いる通信網や通信システムの光源に使用する際、レーザ光のモードを光ファイバーのモードに合わせてマルチモードとすることは、上記周知技術に基づいて当業者が適宜なし得たことと認められる。
よって、引用発明に上記周知技術を適用して本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得たことと認められる。

さらに、本願発明によって得られる効果は、引用発明および上記周知技術から当業者が容易に予測できた程度であり、格別とはいえない。

5.むすび
したがって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-26 
結審通知日 2008-08-27 
審決日 2008-09-09 
出願番号 特願2002-219026(P2002-219026)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橿本 英吾  
特許庁審判長 吉野 公夫
特許庁審判官 岩本 勉
小牧 修
発明の名称 表面発光型半導体レーザ  
代理人 片寄 恭三  
代理人 片山 修平  

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