ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
---|---|
管理番号 | 1186653 |
審判番号 | 不服2006-24088 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-10-25 |
確定日 | 2008-10-24 |
事件の表示 | 特願2003-177631「有限要素解析用モデルの自動作成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 1月13日出願公開、特開2005- 11292〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成15年6月23日の出願であって、平成18年8月31日に拒絶査定がされ、これに対して同年10月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年11月14日付けで手続き補正がなされたものである。 第2 平成18年11月14日付けの手続補正の却下について 1 補正却下の決定の結論 平成18年11月14日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1) 補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、以下のように補正された。 「【請求項1】 有限要素解析用モデルの作成方法であって、鋼橋についての計画・形式を選定し、桁配置、断面定数、材料、荷重を入力し、コンピュータの演算処理により、モデル化した骨組み構造に従って構造解析を行い、 その構造解析段階で得られた構造解析・設計モデルに関する格点の座標、断面寸法やヤング係数の物性値データを中間ファイルとして保存し、 この中間ファイルが示すデータを基に、自動的に各要素の節点の座標データを有する有限要素解析プログラム用入力ファイルを自動作成するようにしたことを特徴とする有限要素解析用モデルの自動作成方法。」 (この記載事項により特定される発明を以下、「本願補正発明」という。) 本件補正は、平成18年8月10日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「構造解析・設計モデルに関する格点の座標、断面寸法やヤング係数の物性値データ」を「その構造解析段階で得られた」ものと限定する補正であり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2) 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された特開2002-207778号公報(以下、「引用例1」という。)には次の事項が図面とともに開示されている。(引用箇所は段落番号等で表示) ア 「【請求項3】 解析モデルの作成方法であって、 骨組モデル作成のために用意された複数の骨組モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示し、 前記解析対象に対応する骨組モデル用テンプレートを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の骨組モデル用テンプレートから選択し、そして該選択された骨組モデル用テンプレートの形状を指定するパラメータを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより骨組モデルを作成し、 有限要素法モデル作成のために用意された複数の有限要素法モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示し、 前記解析対象に対応する有限要素法モデル用テンプレートを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の有限要素法モデル用テンプレートから選択し、そして該選択された有限要素法モデル用テンプレートの形状を指定するパラメータを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより有限要素法モデルを作成し、 前記骨組モデルと前記有限要素法モデルの断面諸元の定義及び入力のために用意された複数の断面諸元用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示し、 前記解析対象に対応する断面諸元用テンプレートを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の断面諸元用テンプレートから選択し、そして該選択された断面諸元用テンプレートの形状を指定するパラメータを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力するか、あるいは任意形状の断面を定義することにより断面形状を定義し、 前記定義された断面形状に基づいて断面諸元を自動的に計算し、 前記計算の結果を以後の構造解析で使用できるように保持する、というステップを備えることを特徴とする、解析モデルの自動作成方法。 …(中略)… 【請求項10】 請求項3から9のいずれか一項に記載の解析モデルの自動作成方法により作成された骨組モデル及び有限要素法モデルを汎用系有限要素法プログラムにより解析するようにし、この場合、前記作成された骨組モデル及び前記作成された有限要素法モデルと前記定義された断面諸元について、グラフィカル・ユーザ・インターフェースを使用して解析モデル形状用単位、断面諸元定義用単位、荷重定義用単位、及び解析結果表示用単位を任意に定義し、 境界条件、及び荷重の定義を前記グラフィカル・ユーザ・インターフェースを使用して行うことを特徴とする解析モデルの解析方法。」 イ 「・骨組モデルの作成 まず、ステップS1では、骨組モデル作成のために用意された複数の骨組モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示する。解析対象が橋梁解析の場合であれば解析対象となるトラス橋、アーチ橋、吊り構造形式などのそれぞれの形式について、骨組モデル作成のために用意された複数の骨組モデル用テンプレートが表示される。 【0018】ステップS2では、解析対象に対応する骨組モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の骨組モデル用テンプレートから選択する。ステップS3では、該選択された骨組モデル用テンプレートの形状を指定するパラメータをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより骨組モデルを作成する。 …(中略)… 【0021】図2または図3において、橋脚など不足している部材は追加し、余分な部材がある場合は削除を行うことにより所望の骨組モデルを完成させる。」 ウ 「・有限要素法モデルの作成 ステップS4では有限要素法モデル作成のために用意された複数の有限要素モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示する。 【0022】ステップS5では解析対象に対応する有限要素法モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の有限要素法モデル用テンプレートから選択する。ステップS6では該選択された有限要素法モデル用テンプレートの形状を指定するパラメータをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより有限要素法モデルを作成する。 …(中略)… 【0027】なお、図1ではステップS1からステップS3で骨組モデルを最初に作成し、次にステップS4からステップS6で有限要素法モデルを作成しているが、この順序は逆でもよい。また、モデルによっては、骨組モデルのみ又は有限要素法モデルのみを作成した後に断面形状を定義する場合もあり得る。」 エ 「・断面諸元の定義 ステップS7において解析対象となる骨組モデルの断面諸元の定義及び入力のために用意された複数の断面諸元用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェイス操作画面上に表示する。 【0028】ステップS8では、作成しようとするモデルの断面形状は任意形状かテンプレートから選択すべき形状かを判断する。テンプレートから選択すべきと判断した場合は、ステップS9で解析対象に対応する断面諸元用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェイス操作画面場に表示された複数の断面諸元用テンプレートから選択する。 【0029】次いでステップS10では該選択された断面諸元用テンプレートの形状を指定するパラメータをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより断面諸元を定義する。ステップS8の判断で任意形状の断面を定義すると判断した場合は、ステップS11にて任意形状の断面のパラメータを入力することにより断面諸元を定義する。 【0030】ステップS7からステップS11までの具体例を図7から図9により説明する。構造解析対象となる骨組モデルの断面諸元(断面積、断面2次モーメント、重心位置、断面係数)は、上記のように、用意された複数の断面諸元用テンプレートのなかから該当するものを選択し形状を具体的に指定するパラメータを入力するか、あるいは任意形状の断面を定義することにより自動的に計算され、以後の構造解析で使用できるように保持される。作成すべきモデルの断面は、例えば、コンクリート系の矩体断面、鉄骨系の薄板断面及び板要素用断面から該当するものを選択する。 【0031】図7は本発明の実施の形態によりコンクリートの矩体断面の断面諸元計算に用いる断面形状の選択と断面寸法の定義画面を示す図である。メニュー画面(図示せず)上で断面諸元の定義を選択すると、断面の種類の選択画面71、操作画面75、アクション画面76が表示される。新たに断面形状を定義する場合は、操作画面75内の「追加」をクリックする。そして選択画面71の中からコンクリートを選択した場合は、図7に示すように、断面形状を示す複数のテンプレートからなるテンプレート群72(図示例では14個のテンプレート)が表示される。このテンプレート群72から例えば矩形断面のテンプレート(図示の第3行、第3列のテンプレート)を選択すると、断面諸元保持画面77に選択された断面の名前が表示されるとともに、矩形断面のパラメータ入力を援助するための画面73と入力部74が表示される。この画面73を見ながら、所望の断面形状になるようなパラメータを入力し、アクション画面76で「適用」ボタンをクリックすることにより、矩形断面の形状が確定すると共に、断面諸元保持画面77に断面諸元を保持する。 …(中略)… 【0035】以上により断面形状が決まると断面諸元の計算を行い、以後の構造解析において使用できるように記憶装置に保持する。以上の機能を用いることにより構造解析モデル作成の容易化及び断面諸元定義及び入力の容易化をはかることができる。入力されたパラメータまたは定義された形状に基づいて断面諸元を自動的に計算し、計算の結果を以後の構造解析で使用できるように保持する。 【0036】上記の実施の形態によりテンプレート機能を用いて自動作成したモデルに対し修正、追加、削除の機能を有するモデル編集機能を使用して所望のモデルを作成する。すでに計算済みの断面諸元について断面形状及びその断面諸元をファイルに格納し、必要に応じてファイルを読み出して使用する。これにより断面諸元の計算及び入力の手間を減少させる。また前記ファイルの更新機能を有し、保守性を向上させる。 【0037】図10は入力データと出力データ(計算結果)に対する単位設定画面を示す図である。図10の(a)に示す画面で、骨組モデルや有限要素モデルの構造における単位(構造)、断面における単位(断面)、温度荷重を行う場合の温度の単位(温度)、時間荷重を行う場合の時間の単位(時間)、単位体積重量の単位、荷重の単位等の、解析モデル形状用単位、断面諸元定義用単位、荷重定義用単位を入力し、既に説明した実施の形態でモデル作成及び断面諸元の定義を行う。 【0038】図10(a)の上側にある「出力データ」タブをクリックすると、図10の(b)に示す画面に切り替わり、図10の(a)のように設定して得られる解析結果の表示のための単位(変位、断面量、弾性係数/応力、角度)を設定する。これにより、骨組モデル作成、有限要素法モデル作成、及び断面諸元の定義で別々の単位を設定することが可能になる。」 オ 「【0039】図11は本発明の実施の形態による境界条件設定画面を示す図である。構造物の解析モデルを作成する場合は、その構造物が設置される場所等に応じて固定される点と固定方向とを設定する必要がある。このために、例えばある橋の解析モデルについてメニュー画面(図示せず)で境界条件の設定を選択すると、図11に示す画面が表示され、固定すべき点を設定することができる。固定された点は画面上で三角形で表示され、図ではX方向およびY方向が固定されていることを示している。」 カ 「【0040】図12は本発明の実施の形態による荷重設定画面を示す図である。図において、「要素の種類」から「Beam」を選択して表示されるテンプレート群121の中から、等分布荷重を示すテンプレート(2行1列目)を選択し、その状態で、「追加」ボタンをクリックすると、荷重値の入力を援助する画面122が表示される。この画面122を見ながら、荷重がかかる位置に荷重値を設定する。こうして、図示下側に表示されているように、矢印の付されている位置に荷重がかかるようにして、画面で荷重の定義を行う。 【0041】図13は本発明の実施の形態による道路橋示方書に準じた自動車荷重設定を行うための画面を示す図である。橋梁にかかる荷重のケースとしては、橋自体の荷重である影響線死荷重、橋の付属物によるその他の死荷重、自動車が橋の上を走行している場合の自動車荷重、群集が橋の上にいる場合の群集荷重、その他の活荷重がある。この中で自動車荷重を選択すると、活荷重の設定画面が表示される。その画面内で、センタラインL1の設定、主桁/ラインの開始と終了の設定、横桁の開始と終了の設定、中央分離帯の開始と終了の設定、手段同荷重地の設定を行う。図示例では、センタラインは図示のモデルのC2のラインと同じL1であり、主桁/ラインの開始と終了はG1とG3であり、横桁の開始と終了はC1とC9である。このようにして道路橋示方書が規定する自動車荷重を載荷して、最も不利な状態のときの変位、反力、断面力を求める。 【0042】図14は本発明の実施の形態による断面力図の描画を示す図である。これまでに記載した方法で単位を定義し、骨組モデル、有限要素法モデル、及び断面諸元を定義し、境界条件を定義し、荷重ケースを定義し、荷重を定義し終わると、メニュー画面にて解析の実行を命令する。そして、解析結果を表示させると、図14に示したような画面が表示される。図14では、橋の骨組とこれにかかる断面力の分布が示されている。」 前掲ア?カの記載によると、引用例1には、 「トラス橋、アーチ橋、吊り構造形式などの橋梁を解析対象とする有限要素法プログラムによる解析モデルの作成方法であって、骨組モデル作成のために用意された複数の骨組モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示し、前記解析対象に対応する骨組モデル用テンプレートを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の骨組モデル用テンプレートから選択し、そして該選択された骨組モデル用テンプレートの形状を指定するパラメータを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより骨組モデルを作成し、有限要素法モデル作成のために用意された複数の有限要素法モデル用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示し、前記解析対象に対応する有限要素法モデル用テンプレートを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の有限要素法モデル用テンプレートから選択し、そして該選択された有限要素法モデル用テンプレートの形状を指定するパラメータを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力することにより有限要素法モデルを作成し、前記骨組モデルと前記有限要素法モデルの断面諸元の定義及び入力のために用意された複数の断面諸元用テンプレートをグラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示し、前記解析対象に対応する断面諸元用テンプレートを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に表示された複数の断面諸元用テンプレートから選択し、そして該選択された断面諸元用テンプレートの形状を指定するパラメータを前記グラフィカル・ユーザ・インターフェース操作画面上に入力するか、あるいは任意形状の断面を定義することにより断面形状を定義し、前記定義された断面形状に基づいて断面諸元を自動的に計算し、前記計算の結果を以後の構造解析で使用できるように更新機能を有するファイルに格納する、とともに境界条件と荷重ケースを設定入力するというステップを備える有限要素法プログラムによる解析モデルの自動作成方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (3) 対比 本願補正発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「有限要素法プログラムによる解析モデル」は、本願補正発明の「有限要素解析用モデル」に相当することは明らかであり、また、引用発明は、解析対象となるトラス橋、アーチ橋、吊り構造形式などの橋梁(「鋼橋」を含む)の計画・形式について、「骨組モデル」作成のために用意された複数の骨組モデル用テンプレートを選択し、その形状を指定するパラメータを入力するとともに、「有限要素法モデル」作成のために用意された用意された複数の有限要素法モデル用テンプレートを選択し、その形状を指定するパラメータを入力した後、「骨組モデル」と「有限要素法モデル」の「断面諸元」作成のために、用意された複数の断面諸元用テンプレートを選択し、断面形状を指定するためのパラメータを入力するものであり、かつ、「境界条件」や「荷重ケース」を入力して、有限要素法プログラム(コンピュータの演算処理)による解析を行うものであるから、引用発明と本願補正発明は、「有限要素解析用モデルの作成方法であって、鋼橋についての計画・形式を選定し、解析に必要なパラメータを入力し、コンピュータの演算処理により、モデル化した骨組み構造に従って構造解析を行う」という点で共通する。 また、引用発明の「断面諸元」は一種の「物性データ」であり、入力された各種パラメータから、自動的に計算されるものであって、引用発明はこの「断面諸元(計算結果)」を以後の構造解析で使用できるようにファイルに格納するものである(該「ファイル」は更新機能を有するため、「(以前の)構造解析段階」で得られた(修正、更新された)データを含むといえる)。そして、以後の構造解析に使用できるように格納されたデータファイルは、ある処理と他の処理との「中間」で生成されるという意味で「中間ファイル」であるということができるから、引用発明と本願補正発明は、「構造解析段階で得られた物性値データを中間ファイルとして保存する」という点で一致する。 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 【一致点】 「有限要素解析用モデルの作成方法であって、鋼橋についての計画・形式を選定し、解析に必要なパラメータを入力し、コンピュータの演算処理により、モデル化した骨組み構造に従って構造解析を行い、 その構造解析段階で得られた物性値データを中間ファイルとして保存するようにしたことを特徴とする有限要素解析用モデルの自動作成方法。」 【相違点】 相違点1:入力する「解析に必要なパラメータ」として、本願補正発明は、「桁配置、断面定数、材料、荷重」 を用いるのに対して、引用発明は、「骨組モデル」、「有限要素法モデル」の形状及び断面形状を指定するパラメータ、並びに「境界条件」及び「荷重ケース」を用いる点。 相違点2:「中間ファイル」に保存される「物性値データ」が、本願補正発明においては、「構造解析・設計モデルに関する格点の座標、断面寸法やヤング係数」であるのに対して、引用発明においては、「断面諸元(断面積、断面2次モーメント、重心位置、断面係数等)」である点。 相違点3:本願補正発明は、「中間ファイルが示すデータを基に、自動的に各要素の節点の座標データを有する有限要素解析プログラム用入力ファイルを自動作成する」のに対して、引用発明において、そのようなファイルを自動作成するかどうかは明確でない点。 (4) 当審の判断 a 相違点1について 構造解析等の「解析に必要なパラメータ」は、その解析対象や解析手法に応じて適宜選定されるものであり、引用発明においても「鋼橋」の設計における「有限要素解析」を行うために、どのようなパラメータを設定入力すべきかについては、当業者であれば容易に想到し得たことである。 b 相違点2について 以後の解析に利用可能な「物性値データ」として、どのようなデータを「中間ファイル」として保存すべきかについては、その解析対象や解析手法に応じて適宜選定されるものであり、当業者であれば容易に想到し得たことである。 c 相違点3について 引用発明はファイルに格納された「断面諸元」と入力された各種パラメータを用いて「有限要素法プログラム」による構造解析を自動的に行うものであって、「有限要素法」による解析を自動的に行うためには「各要素の節点の座標データ」を有する有限要素解析プログラム用入力データを自動作成する必要があることは、当業者にとって自明のことであり、プログラムに入力するデータをファイル化して、一括読み込み可能とすることは、コンピュータプログラムの技術分野において常套手段であるから、引用発明においても、「中間ファイルが示すデータを基に、自動的に各要素の節点の座標データを有する有限要素解析プログラム用入力ファイルを自動作成する」ことは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことにすぎない。 これらの相違点を総合的に考慮しても当業者が容易に想到し得ることといえ、また、本願補正発明の奏する効果を検討してみても、引用例1に記載された発明及び前記常套手段から想定される範囲を超える格別のものとはいえない。 したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び前記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5) むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 第3 本願発明について 1 平成18年11月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月10日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項から特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 有限要素解析用モデルの作成方法であって、鋼橋についての計画・形式を選定し、桁配置、断面定数、材料、荷重を入力し、コンピュータの演算処理により、モデル化した骨組み構造に従って構造解析を行い、 構造解析・設計モデルに関する格点の座標、断面寸法やヤング係数の物性値データを中間ファイルとして保存し、 この中間ファイルが示すデータを基に、自動的に各要素の節点の座標データを有する有限要素解析プログラム用入力ファイルを自動作成するようにしたことを特徴とする有限要素解析用モデルの自動作成方法。」 2 引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。 3 対比・判断 本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、「構造解析・設計モデルに関する格点の座標、断面寸法やヤング係数の物性値データ」を「その構造解析段階で得られた」ものとする限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 2」で判断したとおり、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び前記常套手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-19 |
結審通知日 | 2008-08-26 |
審決日 | 2008-09-09 |
出願番号 | 特願2003-177631(P2003-177631) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加舎 理紅子 |
特許庁審判長 |
原 光明 |
特許庁審判官 |
伊藤 隆夫 西山 昇 |
発明の名称 | 有限要素解析用モデルの自動作成方法 |
代理人 | 特許業務法人コスモス特許事務所 |