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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K
管理番号 1186658
審判番号 不服2007-1276  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-01-15 
確定日 2008-10-24 
事件の表示 特願2002- 3477「回転電機およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月25日出願公開、特開2003-209944〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年1月10日の特許出願であって、平成18年11月15日付けで拒絶査定がなされ、平成19年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年1月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された、次の事項により特定されるとおりのものと認める(上記の補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除に該当するので、これを認める)。
「絶縁被覆された導線と、この導線と接合される接合端子を備え、前記接合端子は、導電性の金属の板材を管状に丸めて、その突合せ部を前記導線の絶縁皮膜の炭化温度よりも高い融点のロウ材を用いて接合し形成された切れ目の無い管状の穴部を有しており、かつ表面全面に前記導線の絶縁皮膜の炭化温度以下の溶融温度を有する接合助剤が装着されており、前記穴部内に挿入された前記導線が、前記突合せ部を接合するロウ材の融点以下の温度で、前記接合助剤を介して前記接合端子と溶接され、溶接後の前記接合端子の前記穴部の内面には、前記導線の外周に沿うような凹部が形成されていることを特徴とする回転電機。」

3.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-114450号公報(以下、「引用例1」という。)、同じく引用された特開平7-161448号公報(以下、「引用例2」という。)には、それぞれ図面と共に以下の事項が記載されている。

(1)引用例1
・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、絶縁被覆導線の接合方法及び接合体に係り、特にコイル状に形成された絶縁被覆導線の両端部と、その両端部を包み込む導体端子とを接合し、接合中に絶縁被覆を除去して導電性及び機械的強度、耐食性に優れた接合部を得る絶縁被覆導線の接合方法及び接合体に関する。」

・「【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の絶縁被覆導線の接合方法は、絶縁被覆導線を、並行する2つの側辺部材と該側辺部材の一端それぞれを一体に接続する半環部材とからなる略U字形状の導体端子の溝に挿入し、2つの側辺部材の外面から加圧すると共に通電して絶縁被覆導線と導体端子とを接合する絶縁被覆導線の接合方法において、少なくとも導体端子の開口側の溝面に接合助剤を予め付着させておき、加圧と通電により、まず絶縁被覆導線の絶縁被覆を炭化すると共に接合助剤を溶融して導体端子の開口端部の溝面に導体端子を構成する成分と接合助剤が含有する成分からなる合金層を形成し、その後炭化した絶縁被覆を導体端子の溝から排出すると共に開口側の溝面を合金層を介して金属接合することを特徴としている。」

・「【0009】接合助剤は、絶縁被覆の熱破壊温度より低い融点を有し、導体端子の材料と反応して接合助剤より高い融点の合金層を生成するものがよく、導体端子がCu又はFe系の材料から構成されている場合、接合助剤はSn又はZn、あるいはSn,Zn,Au,Ag,Pb,P,Pd,Cu及びBiのうちの2種類以上からなり450℃以下の融点を有するものを用いるのが好ましい。」

・「【0012】さらに、導体端子は上記のU字形状の溝を有するものに限らず、横長の貫通穴を有するものでもよく、さら横長の貫通穴を有する一体ものとしてもよいし、横長の貫通穴を形成する2つの辺部材から構成してもよく、横長の貫通穴の場合には、少なくとも導体端子の横長の貫通穴の一端部側の面に接合助剤を予め付着させておき、接合終了時に絶縁被覆導線の芯線を導体端子により十分締結するように、貫通穴の端部側の面を金属的接合できるものであればよい。
【0013】
【作用】本発明の絶縁被覆導線の接合方法を実施する接合装置として、加圧と通電加熱を行うことができる抵抗溶接機を用いるのが都合が良い。加熱と加圧が同時に出来、しかも、短時間で接合が出来ることによる。実際の接合作業では、大気中で接合出来るのが、量産、低コスト接合に好都合であり、この場合接合時間は短ければ短いほど酸素との反応が少ないため良好な継手が得られる。また、抵抗溶接機は接合部の信頼性をより高めるために、二段加熱、加圧方式を採用することが好ましい。
【0014】即ち、最初の一段目の加圧、通電では、絶縁被覆導線の絶縁被覆を炭化させることで、またこのとき接合助剤はその間絶縁被覆材より溶融温度が低いため溶融し、導体端子との反応が進み接合助剤と導体端子の母材との界面に合金層が形成される。その後二段目の加圧、通電で、炭化した絶縁被覆を接合面外へ排出させると同時に、端子界面に形成された合金層同士を介して加圧により端子を接触させて接合するものである。」

・「【0019】本発明が適用可能な絶縁被覆材は、加熱により溶融又は、炭化するものであれば全て該当する。すなわち、エナメル銅線(EW),ホルマ-ル銅線(PVF),ポリエステル銅線(PEW),及びアミドイミド銅線(AIW)など低耐熱性から高耐熱性まで適用できる。」

・「【0037】上記各実施例では端子の接合面全面に助剤を付着させたが、本質的には端子同士が接合する部分だけで良い。端子としては実施例1,2で用いた変形U字形状の端子の他に、図4に示す断面がレーストラック形状のもの、図5に示す断面が長方形環状のもの、図6に示すように断面が凹状で両端にフランジ部を有するフランジ付凹状片を一対にして構成した端子、図7に示すように短冊をレーストラック形状に巻いて両端部重ね合わせた端子、又は図8に示す様フランジ付凹状片と平板とを組み合わせた端子を用いても良い接合体が得られる。接合するべき導線として絶縁被覆付きのもの以外にも、予め被覆を剥離した導線と端子と組み合わせて用いても同様に耐熱性を有する接合体が得られる。また通電抵抗加熱の代りに超音波振動を付与することによっても、同様な被覆剥離及び端子部の合金層接合は達成することができる。」

・図4には、断面がレーストラック形状と称して切れ目の無い管状の穴部を有する導体端子が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「絶縁被覆導線と、この導線と接合される導体端子を備え、前記導体端子は、切れ目の無い管状の穴部を有しており、かつ接合面全面に前記導線の絶縁被覆の熱破壊温度より低い融点を有する接合助剤が装着されており、前記穴部内に挿入された前記導線が、前記接合助剤を介して前記導体端子と抵抗溶接されている接合体。」

(2)引用例2
・「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、金属の円筒体又は円柱体から圧着端子を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、特に強電用の配線に用いられる圧着端子としては、電線を挿入して圧着するための円筒部分と、この円筒部分の一端から延出されたリング状又はU字状のコンタクトとを有するものが用いられている。
【0003】このような圧着端子は、図3に示すような工程によって製造されている。すなわち、同図(a)に示すように、銅などの導電性の良好な金属板を打ち抜いてプレス加工することにより、両側部11、11を直角に折り曲げられた板部12と、この板部12に連接されたリング状のコンタクト13とを有する金属部材を成形する。
【0004】次に、同図(b)に示すように、この金属部材の上記両側部11、11を曲げ加工して円筒状に成形する。
【0005】更に、同図(c)に示すように、円筒状に曲げ加工された両側部11、11の突き合わせ部分を、銀ロウ14で溶接する。
【0006】最後に、同図(d)に示すように、さび止めのため、表面をスズメッキし、圧着端子15が完成する。」

・「【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明による圧着端子製造方法の1つは、所定長さに切断された金属の円筒体に、軸方向に対してほぼ直交する第1の切り込みを設ける工程と、前記円筒体の一方の端面から前記第1の切り込みに向けて、軸方向に沿って第2の切り込みを設ける工程と、前記第2の切り込みを開いて平板状にする工程と、この平板状部分を所定の大きさに圧延する工程と、この平板状部分を目的とするコンタクトの形状に打ち抜く工程とを含むことを特徴とする。」

・「【0013】また、本発明による圧着端子製造方法のもう1つは、所定長さに切断された金属の円柱体の一方の端面に、軸方向に沿って前記円柱体の途中まで孔を開ける工程と、前記円柱体の前記孔の開いていない部分を、軸方向に対してほぼ直交する方向から押し潰して、所定の大きさに圧延する工程と、この圧延された部分を目的とするコンタクトの形状に打ち抜く工程とを含むことを特徴とする。」

4.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「絶縁被覆導線」が前者の「絶縁被覆された導線」に相当し、同様に、
「導体端子」が「接合端子」に相当する。

(イ)後者の「接合面全面」が前者の「表面全面」に相当し、同様に、
「導線の絶縁被覆の熱破壊温度より低い融点を有する接合助剤」が「導線の絶縁皮膜の炭化温度以下の溶融温度を有する接合助剤」に、相当することから、
後者の「導体端子は、切れ目の無い管状の穴部を有しており、かつ接合面全面に導線の絶縁被覆の熱破壊温度より低い融点を有する接合助剤が装着されており」と
前者の「接合端子は、導電性の金属の板材を管状に丸めて、その突合せ部を導線の絶縁皮膜の炭化温度よりも高い融点のロウ材を用いて接合し形成された切れ目の無い管状の穴部を有しており、かつ表面全面に前記導線の絶縁皮膜の炭化温度以下の溶融温度を有する接合助剤が装着されており」とは、
「接合端子は、切れ目の無い管状の穴部を有しており、かつ表面全面に導線の絶縁皮膜の炭化温度以下の溶融温度を有する接合助剤が装着されており」なる概念で共通する。

(ウ)後者の「抵抗溶接」が前者の「溶接」に相当することから、
後者の「穴部内に挿入された導線が、接合助剤を介して導体端子と抵抗溶接され」と
前者の「穴部内に挿入された導線が、突合せ部を接合するロウ材の融点以下の温度で、接合助剤を介して接合端子と溶接され」とは、
「穴部内に挿入された導線が、接合助剤を介して接合端子と溶接され」なる概念で共通する。

(エ)前者において、「回転電機」は導線と接合端子を接合する方法を適用する対象として用途を限定したものにすぎず、前者の「回転電機」は導線と接合端子を接合した「接合体」をその実質的内容とするものと解されることから、
後者の「接合体」と
前者の「回転電機」とは、
「接合体」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「絶縁被覆された導線と、この導線と接合される接合端子を備え、前記接合端子は、切れ目の無い管状の穴部を有しており、かつ表面全面に前記導線の絶縁皮膜の炭化温度以下の溶融温度を有する接合助剤が装着されており、前記穴部内に挿入された前記導線が、前記接合助剤を介して前記接合端子と溶接されている接合体。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
接合端子が有する切れ目のない管状の穴部に関し、本願発明では「導電性の金属の板材を管状に丸めて、その突合せ部を導線の絶縁皮膜の炭化温度よりも高い融点のロウ材を用いて接合し形成された」ものであるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点2]
導線が接合端子と溶接される態様に関し、本願発明では「突合せ部を接合するロウ材の融点以下の温度で」溶接されているものであるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点3]
本願発明では「溶接後の接合端子の穴部の内面には、導線の外周に沿うような凹部が形成されている」ものであるのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

[相違点4]
接合体の用途が、本願発明では「回転電機」であるのに対し、引用発明では特定されていない点。

5.判断
[相違点1及び2]について
例えば、引用例2には、導電性(導電性)の金属の板材(金属板)を管状(円筒状)に丸めて、その突合せ部をロウ材(銀ロウ)を用いて接合(溶接)し形成された接合端子(圧着端子)が開示されている。このように、導電性の金属の板材を管状に丸めて、その突合せ部をロウ材を用いて接合し形成することで接合端子における切れ目の無い管状の穴部を得ることは単なる周知慣用技術にすぎないから、引用発明における切れ目のない管状の穴部を有する導体端子に上記周知慣用技術を適用することに格別の技術的困難性は見当たらない。
一方、ロウ材により接合したものを溶接する際に、溶接の温度以上の融点を持つロウ材の材料を選定しないと接合部の強度が維持できないことは自明の技術常識にすぎない。
そうすると、引用発明において金属の板材を管状に丸めてロウ材により接合した接合端子を採用した場合において、強度を確保することは当然に要求されるべき課題といえるから、かかる課題の下に溶接の温度以上の融点を持つロウ材を選定し、相違点1及び2に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって単なる設計事項にすぎず、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

[相違点3]について
例えば、特開平11-176552号公報には、接合助剤(メッキ材)を介して導線(撚線)と導体端子(端子)とを抵抗溶接するものにおいて、溶接後(熱圧着)の接合端子(端子)の穴部(図2参照)の内面には、導線(撚線)の外周に沿うような凹部(図2cの端子の凹部参照)が形成されている態様が開示されている。このように、溶接後の接合端子の穴部の内面に、導線の外周に沿うような凹部が形成されている態様は、接合助剤を介して導線と導体端子とを抵抗溶接すれば当然生じる結果にすぎない。
そうすると、引用発明においても、接合助剤を介して導線と導体端子とを抵抗溶接しているので、溶接後の接合端子の穴部の内面には、導線の外周に沿うような凹部が形成されていることは自明のことである。
したがって、相違点3は実質的な相違点3であるとは認められない。

[相違点4]について
例えば、本願の出願当初の明細書に従来例として示されている特開平4-168952号公報の第2頁左上欄12行から同頁右上欄2行に開示されているように、回転電機において接続部の信頼性が優れた(断線が防止できる)ものとするために、接合端子を用いることは、単なる周知慣用技術にすぎない。
そうすると、引用発明において、上記周知慣用技術を踏まえることにより、相違点4に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって単なる設計事項にすぎず、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本願発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明及び上記周知慣用技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。

6.むすび
以上のとおりであって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-18 
結審通知日 2008-08-19 
審決日 2008-09-04 
出願番号 特願2002-3477(P2002-3477)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 天坂 康種  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 大河原 裕
谷口 耕之助
発明の名称 回転電機およびその製造方法  
代理人 中鶴 一隆  
代理人 村上 加奈子  
代理人 高橋 省吾  
代理人 稲葉 忠彦  

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