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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1186674
審判番号 不服2007-10788  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-04-13 
確定日 2008-10-24 
事件の表示 特願2005-247754「ファクシミリ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月15日出願公開、特開2007- 67520〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成17年8月29日の出願であって、平成18年12月7日付け拒絶理由通知に応答して平成19年2月7日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、平成19年3月16日に拒絶査定がされ、これに対して平成19年4月13日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成19年4月13日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成19年4月13日付けの補正を却下する。

[理由]

(1)補正後の本願特許請求の範囲
当該補正は特許請求の範囲の記載を、次のとおりとするものである。

【請求項1】
ファクシミリ通信を行う際に必要となる情報を予め記憶手段に記憶しておくことができるファクシミリ装置において、
前記記憶手段の記憶内容を一括消去することができる消去手段と、
前記消去手段による処理の終了後に、前記記憶手段の記憶内容が消去されていることを示すために、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を初期化レポートとして印字出力させる制御手段とを含むことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記消去手段による処理の終了後に画像形成手段に印字出力させる用紙に、前記記憶手段の記憶内容とともに、ユーザ署名欄を記載させることを特徴とする請求項1記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記消去手段は、通常は操作されない予め定めるキーの組合わせ操作で消去モードとなる入力手段と、前記入力手段からの出力に応答し、前記消去モードとなると前記記憶手段の記憶内容を消去するメモリアクセス手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項1または2記載のファクシミリ装置。
(下線部は補正箇所)


(2)当該補正前の特許請求の範囲
これに対し、当該補正前の特許請求の範囲の記載は、出願当初の特許請求の範囲を平成19年2月7日付けで補正したものであって、その請求項1から3は以下のとおりである。

「 【請求項1】
ファクシミリ通信を行う際に必要となる情報を予め記憶手段に記憶しておくことができるファクシミリ装置において、
前記記憶手段の記憶内容を一括消去することができる消去手段と、
前記消去手段による処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を初期化レポートとして印字出力させる制御手段とを含むことを特徴とするファクシミリ装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記消去手段による処理の終了後に画像形成手段に印字出力させる用紙に、前記記憶手段の記憶内容とともに、ユーザ署名欄を記載させることを特徴とする請求項1記載のファクシミリ装置。
【請求項3】
前記消去手段は、通常は操作されない予め定めるキーの組合わせ操作で消去モードとなる入力手段と、前記入力手段からの出力に応答し、前記消去モードとなると前記記憶手段の記憶内容を消去するメモリアクセス手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項1または2記載のファクシミリ装置。 」

(3)当該補正の適否

当該特許請求の範囲についてする補正が平成18年改正前第17条の2第4項各号の規定に掲げる条件を満たすものであるか検討する。

「前記記憶手段の記憶内容が消去されていることを示すために、」は、「?ために」という文章から明らかなように、これは単に目的を示すものである。
そして、目的を示すことを付加する補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に規定する次の、
第36条第5項に規定する請求項の削除
二 特許請求の範囲の減縮
(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)
三 誤記の訂正
四 明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)
の何れの要件をも目的とするものではない。

したがって、当該補正は平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものである。
よって、本件補正は、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明の認定

平成19年4月13日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成19年2月7日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から請求項3までに記載した事項により特定されるとおりのものと認められる。
そのうち、請求項1に係る発明は、下記のとおりである。

【請求項1】
ファクシミリ通信を行う際に必要となる情報を予め記憶手段に記憶しておくことができるファクシミリ装置において、
前記記憶手段の記憶内容を一括消去することができる消去手段と、
前記消去手段による処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を初期化レポートとして印字出力させる制御手段とを含むことを特徴とするファクシミリ装置。
(以下、これを本願発明とする。)

2.引用例に記載の発明

原査定の拒絶理由に引用された刊行物1(特開平11-234447号公報)には、請求項1に次の発明が図面とともに記載されている。

(ア)「【請求項1】
ワンタッチダイヤル及び短縮ダイヤルに対応して送信先電話番号等のダイヤル情報を記憶するダイヤル情報記憶手段と、自局の電話番号、自局名称等の自局情報及び読取濃度情報等の各種設定情報を記憶する設定情報記憶手段と、前記ダイヤル情報及び前記設定情報の登録操作、変更操作及び削除操作等の各種操作を行う操作手段と、前記操作手段の操作内容に応じて前記ダイヤル情報記憶手段及び前記設定情報記憶手段への前記ダイヤル情報及び前記設定情報の登録、登録内容の変更及び削除を行う制御手段と、前記ダイヤル情報記憶手段の前記登録内容を一括して削除するダイヤル情報一括削除処理機能のオン/オフを選択するダイヤル情報一括削除選択手段と、を備え、前記制御手段は、前記操作手段により前記自局情報の変更操作あるいは削除操作が行われると、前記自局情報の変更あるいは削除を行うとともに、前記ダイヤル情報一括削除選択手段の選択状態に応じて、前記ダイヤル情報一括削除処理の制御を行うことを特徴とするファクシミリ装置。」
(以下、引用発明という。)

3. 対比・判断

本願発明と引用発明を対比する。

本願発明も引用発明も共にファクシミリ装置であり、引用発明における「ワンタッチダイヤル及び短縮ダイヤルに対応する送信先電話番号等のダイヤル情報」は「ファクシミリ通信を行う際に必要となる情報」に他ならないから、両者は、次の(カ)の点において一致し、(キ)の点において相違がある。

一致点
(カ)ファクシミリ通信を行う際に必要となる情報を予め記憶手段に記憶しておくことができるファクシミリ装置において、
前記記憶手段の記憶内容を一括消去することができる消去手段を含むことを特徴とするファクシミリ装置。

相違点
(キ)本願発明が、「消去手段による処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を初期化レポートとして印字出力させる制御手段とを含む」のに対し、引用発明はそのような印字出力のための制御手段を備えていない点。

当該相違点について検討する。

原査定の拒絶理由に引用された刊行物2(特開2001-186237号公報)には、その段落0074?0078の記載から明らかなように、宛先情報をワンタッチキーに対応付けた登録情報の登録一覧を記録出力することが可能な通信装置の発明が記載されている。
なお、出願人(審判請求人)は、平成19年2月7日付け提出の意見書において、そのような登録情報の一覧の印字出力はファクシミリ装置に適宜備えられている機能であることを認めている。

そして、引用発明に、刊行物2に記載の登録情報の一覧の印字出力機能を設けることは、単にそのような機能を付加することにすぎないから、本願発明は、引用発明および刊行物2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に想考できたことといえる。

詳細を論ずる。
本願発明の、「消去手段による処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を初期化レポートとして印字出力させる制御手段とを含む」については、以下のように判断される。

(ク)本願発明は、「消去手段による処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を印字出力させる制御手段とを含む」ものであって、そのような「制御手段」を含むものではあるが、消去手段による処理の終了後に「自動的に」印字出力をするものではない。請求項1は自動的に印字出力することを構成要件としていない。(請求項2、3においても要件ではない。)
あくまで、「消去手段による処理の終了後」に印字出力が可能な「制御手段」を具備しているにすぎない。

そして、刊行物2に記載の登録情報の一覧の印字出力機能は、そのような印字出力をするための制御手段は当然有しているものであり、そのような制御手段は一括消去操作とは無関係のものであるから、登録情報の一覧の印字出力機能を設けた引用発明における該制御手段は、当然、消去手段による処理の終了後にも動作するものである。

してみれば、刊行物2に記載の登録情報の一覧の印字出力機能を設けた引用発明は、当然「消去手段による処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を印字出力させる制御手段とを含む」ことになる。

(ケ)本願発明は、「画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を初期化レポートとして印字出力させる制御手段とを含む」において、「初期化レポート」とは何であるか、請求項1では定義されていない。
発明の詳細な説明を参酌するに、図4あるいは図5に例示されている内容のものが「初期化レポート」である。
そして、図4は、宛先とFAXNoが全て空欄になっている登録リストを示すにとどまる。
したがって、「初期化レポートとして印字出力させる」とは、単に「宛先とFAXNoが全て空欄になっている登録リストを印字出力」することに他ならない。
(本願発明における初期化レポートは図5に示されているものには限定されない。)

してみれば、登録情報の一覧の印字出力機能を設けた引用発明において、消去手段による一括消去処理の終了後に、画像形成手段に、前記記憶手段の記憶内容を印字出力させれば、宛先情報が全て空欄になった登録情報が印字出力されることは自明であって、これは一括消去、すなわち初期化した後の登録情報を印字出力したものであるから、これは「初期化レポート」に他ならない。
(初期化レポートがユーザ署名欄を設けたものであることは、本願発明(請求項1)においては構成要件とはなっていない。ユーザ署名欄を設けたものであることは請求項2に係る発明の構成要素である。

なお、参考までに付記すれば、「宛先とFAXNoが全て空欄になっている登録リストを印字出力」することは、「前記記憶手段の記憶内容が消去されていることを示す」(平成19年4月13日付け手続補正)ことになる。平成19年4月13日付け手続補正書が却下されない場合であっても、上記判断が異なるものではない。)

したがって、これら(ク)(ケ)刊行物2に記載の発明を付加した引用発明は、本願発明の構成を実質的に全て包含するものである。

よって、本願発明は、引用発明および刊行物2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願の発明は、刊行物1および刊行物2に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとした拒絶査定は妥当なものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-19 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-08 
出願番号 特願2005-247754(P2005-247754)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 日下 善之  
特許庁審判長 板橋 通孝
特許庁審判官 廣川 浩
原 光明
発明の名称 ファクシミリ装置  
代理人 小谷 悦司  
代理人 樋口 次郎  
代理人 伊藤 孝夫  

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