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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02G
管理番号 1186713
審判番号 不服2006-13549  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-28 
確定日 2008-10-22 
事件の表示 平成 8年特許願第524247号「コールドシュリンクチューブ用サポートコアリボン」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月15日国際公開、WO96/24977、平成10年12月15日国内公表、特表平10-513337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、1995年12月26日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年2月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1ないし4に係る発明は、平成14年12月5日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された技術的事項により特定されるものと認められるところ、その請求項4は次のとおりである。(以下、「本願発明」という。)
「4. 第1および第2の主面と第1および第2の縁とを有し、縁同士で結合して螺旋状に巻回されたチューブを形成するリボンであって、
前記第1の主面から前記第2の主面の方に向かって延在し、前記第2の主面の手前に終端を有している第1の結合用突出部と、
前記第2の主面から前記第1の主面の方に向かって延在し、前記第1の主面の手前に終端を有している第2の結合用突出部と、
前記第1および前記第2の結合用突出部を受け入れるべく該突出部に隣接して前記リボンに形成された逃げ部であって、一方のリボン部分の前記第1の結合用突出部が他方のリボン部分の前記第2の結合用突出部と係合して前記リボン部分の主面同士を前記チューブの平坦な面を形成できるように揃えるための逃げ部とを備え、
前記第1および前記第2の結合用突出部は、該結合用突出部が連続面に沿って互いに係合できるように形成され、
前記逃げ部は該逃げ部に挿入される結合用突出部に対する輪郭を有し、前記結合用突出部同士の接触、および前記結合用突出部と前記逃げ部との接触とが、前記主面に対して直交する接触面が形成されないよう調節されるリボン。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された米国特許第3808352号明細書(以下、「刊行物1」という。)には、図面と共に次の記載がある。(翻訳は、当審による。)
(a)絶縁体20(3欄20行?33行)
「図1に示される絶縁体20は、ミシガン州、ミッドランドのダウ・コーニング社からNo.S55Uとして入手可能なシリコーンゴム組成物から作られ、円筒形の内孔21と、該絶縁体の両端間の外面に沿って長い表面通路を構成するのに寄与する多数のスカート或いはリング22が互いに軸線方向に離間した関係で配置されている円筒形の外面とを有する部材を画成するように成形されている。この絶縁体20は、最初に0.5インチ(1.27cm)の内径と0.1インチ(0.25cm)の厚さを有するように成形され、したがって、0.65?0.9インチ(1.65?2.23cm)の外径を有する絶縁スリーブを有する高圧電力ケーブルの周囲に配置されると、応力状態を有する。」

(b)ストリップ27により構成されるコア25(3欄40行?54行)
「絶縁体20は、強靱な可撓性材料からなる連続した狭幅の螺旋巻回されたストリップ27から構成される一体筒状の中空コア25の周りに密着するように、弾性的ストレスが与えられている。連続ストリップ27は、図2に示されるようにその縁に沿って溝が形成されており、コアの孔を通って、即ちコア25と絶縁スリーブ12との間から取り除くことができる。半径方向に膨れたあるいは伸ばされた弾性絶縁体20は、外径1.5インチ(3.8cm)と内径1.4インチ(3.5cm)を有するコア上に密着する。この絶縁体は、正常寸法の3倍まで伸ばされているので、ストリップ27の取り除きに伴って漸次、その正常位置へと弾性的に復帰して、絶縁スリーブ12上の絶縁体20に緊密に適合してしっかりと保持される。」

(c)ストリップ27の引出し(4欄48行?59行)
「ストリップ27は、終端コネクタ17の方向に孔を通って引き出される。これによって、絶縁体20は、コアが漸次引き出されるにしたがい、ブートの出口端と絶縁スリーブ12を弾性的に掴むようになる。コアからストリップ27を手で引き出すと、この溝を形成され互いに連結されているストリップは、巻き戻されて、絶縁体20はコアの上で弛緩するが、絶縁スリーブ12の直径が絶縁体20中の孔21の成形された内径より大きいために、該絶縁体20は絶縁スリーブを掴んで該スリーブに密着状態とされるだろう。」

(d)そして、図1および同図の2-2線に沿った断面図である図2には、「コア25」を構成する「ストリップ27」が、その両縁部側に形成された溝により、縁同士で結合して螺旋状に巻回された中空の筒状体、すなわちチューブを形成すること、そして該ストリップは第1および第2の主面を有し、該溝により、前記第1の主面から前記第2の主面の方に向かって延在し、前記第2の主面の手前に終端を有している第1の突出部と、前記第2の主面から前記第1の主面の方に向かって延在し、前記第1の主面の手前に終端を有している第2の突出部とを形成していること、該溝により形成されるストリップの両縁部の凹部は、それぞれ、前記第1および前記第2の突出部を受け入れるべく該突出部に隣接して前記ストリップに形成された箇所であって、一方のストリップ部分の前記第1の突出部が他方のストリップ部分の前記第2の突出部と係合して前記ストリップ部分の主面同士を前記コアの平坦な面を形成できるように揃えるための箇所となっていること、さらに、前記第1および前記第2の突出部は、該突出部が連続面に沿って互いに係合できるように形成され、前記凹部は該凹部に挿入される突出部に対する輪郭を有していることが、視認される。

上記記載及び図1、2を参照すると、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。
「第1および第2の主面と第1および第2の縁とを有し、縁同士で結合して螺旋状に巻回されたチューブを形成するストリップであって、
前記第1の主面から前記第2の主面の方に向かって延在し、前記第2の主面の手前に終端を有している第1の突出部と、
前記第2の主面から前記第1の主面の方に向かって延在し、前記第1の主面の手前に終端を有している第2の突出部と、
前記第1および前記第2の突出部を受け入れるべく該突出部に隣接して前記ストリップに形成された凹部であって、一方のストリップ部分の前記第1の突出部が他方のストリップ部分の前記第2の突出部と係合して前記ストリップ部分の主面同士を前記チューブの平坦な面を形成できるように揃えるための凹部とを備え、
前記第1および前記第2の突出部は、該突出部が連続面に沿って互いに係合できるように形成され、
前記凹部は該凹部に挿入される突出部に対する輪郭を有するストリップ。」(以下、「刊行物1発明」という。)

3.対比・検討
(1)一致点・相違点
本願発明と上記刊行物1発明とを対比すると、刊行物1発明の「ストリップ」は本願発明の「リボン」に相当する。そして、刊行物1発明の「突出部」は、互いに係合するものであるから、本願発明の「結合用突出部」に相当し、また、刊行物1発明のストリップに形成された「凹部」は、前記第1および第2の突出部に対する作用からみて、本願発明の「逃げ部」に相当するので、両者は、
(一致点)
「第1および第2の主面と第1および第2の縁とを有し、縁同士で結合して螺旋状に巻回されたチューブを形成するリボンであって、
前記第1の主面から前記第2の主面の方に向かって延在し、前記第2の主面の手前に終端を有している第1の結合用突出部と、
前記第2の主面から前記第1の主面の方に向かって延在し、前記第1の主面の手前に終端を有している第2の結合用突出部と、
前記第1および前記第2の結合用突出部を受け入れるべく該突出部に隣接して前記リボンに形成された逃げ部であって、一方のリボン部分の前記第1の結合用突出部が他方のリボン部分の前記第2の結合用突出部と係合して前記リボン部分の主面同士を前記チューブの平坦な面を形成できるように揃えるための逃げ部とを備え、
前記第1および前記第2の結合用突出部は、該結合用突出部が連続面に沿って互いに係合できるように形成され、
前記逃げ部は該逃げ部に挿入される結合用突出部に対する輪郭を有するリボン。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明では、「前記結合用突出部同士の接触、および前記結合用突出部と前記逃げ部との接触とが、前記主面に対して直交する接触面が形成されないよう調節される」ものであるのに対し、刊行物1には、前記結合用突出部同士の接触、および前記結合用突出部と前記逃げ部との接触とが、前記主面に対して直交する接触面が形成されないよう調節されることについては記載がない点。

(2)相違点についての検討
刊行物1発明は、第1および第2の突出部が、それぞれ対応する凹部(逃げ部)に挿入されて両突出部が互いに係合するものであるが、一般に、結合用突出部を該結合用突出部に対応する輪郭を有する凹部に挿入して係合する際、結合用突出部が挿入方向に対して先細りになるようなテーパを有する、例えば台形状を有し、かつ該凹部の開口形状もそれに対応して結合用突出部が挿入される方向に台形の形状のものとして、両者の挿入係合を容易にすることは、結合用突出部とそれに対応する輪郭を有する凹部との係合における周知の手段にすぎない(例えば、特開平1-178659号公報、第4図参照)。また、結合用突出部を該結合用突出部に対応する輪郭を有する凹部に挿入して係合する際、ロック形状とするために、結合用突出部が挿入方向に対して広がるようなテーパを有する形状とし、かつ該凹部の開口形状もそれに対応して結合用突出部が挿入される方向に広がる形状のものとすることも周知の手段にすぎない(例えば、特開平5-326045号公報、図2、3参照)。
そうすると、結合用突出部同士の接触、および結合用突出部と該結合用突出部が挿入されて係合される凹部である逃げ部との接触とが、縁同士で結合して螺旋状に巻回されたチューブを形成するために必要な刊行物1発明のストリップ(リボン)において、結合させる縁の形状として、主面に対して直交する接触面が形成されない結合用突出部と、そのような結合用突出部に対応する輪郭を有する逃げ部(凹部)を採用して、前記主面に対して直交する接触面が形成されないようにすることは、当業者が適宜選択する設計的事項と認められる。

請求人は、審判請求書で、「本願出願人らは『垂直面はこれらの部分で望ましくない上に予測もできない状態で溶接または接着されること』(明細書第4頁第23?25行目)を見出し、『特に上述した垂直面における望ましくない溶接、接着の実態に鑑み、図2、3に示すような垂直面(主要平面に直交する面)を有する縁(22、24)を排除し・・・中略・・・接合部の接着をより一層均一にし』(同、第3頁第1?2行目)、安定した、予測可能な溶接、接着特性が得られるリボンを提供しようとするものである。垂直面が強度のバラツキの原因となり得るとの知見に基づいて初めて垂直面を排除した接合面を設けることとしたものであり、このような知見に基づくことなく係合面を非垂直面としようとする動機付けはない。」(審判請求書第6頁第5?14行)と主張している。
しかし、本願発明には、結合用突出部同士の係合面において、或いは、結合用突出部と逃げ部との係合面において、溶接或いは接着を行うことは記載されておらず、本願発明は請求人の主張する前提構成を備えていないものであるから、請求人の主張は採用することができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、上記刊行物1発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、請求項1?3に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-21 
結審通知日 2008-05-27 
審決日 2008-06-09 
出願番号 特願平8-524247
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 赤川 誠一清田 健一  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 田邉 英治
信田 昌男
発明の名称 コールドシュリンクチューブ用サポートコアリボン  
代理人 青山 葆  
代理人 山田 卓二  

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