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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1186733
審判番号 不服2007-28924  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-10-25 
確定日 2008-11-13 
事件の表示 特願2006-348614「カメラシステムおよびカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 7月26日出願公開、特開2007-188492、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成5年12月27日に出願した特願平5-330452号の一部を新たな出願とした特願2003-176178号の一部を更に平成18年12月25日に新たな特許出願としたものであって、平成19年6月21日付けで拒絶理由が通知され、同年8月27日付けで手続補正がなされたものの、同年9月14日付けで拒絶査定がなされた。その後、同年10月25日に拒絶査定不服審判請求がなされ、当審より平成20年7月7日付けで拒絶理由が通知され、同年9月8日付けで手続補正がなされと共に意見書が提出され、更に、同年10月7日付け拒絶理由に対し、同年10月15日付けで誤記を訂正する手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1,2に係る発明は、平成20年10月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】
カメラと書換え装置とからなるカメラシステムであって、
前記カメラは、
マイクロコンピューターと、
前記マイクロコンピューターの作動を指示する制御プログラムを格納する電気的消去書換えの可能な大容量メモリと、
接続された装置と各種データの授受を行う端子と、
前記端子と接続された装置が、前記マイクロコンピューターと前記端子を介して通信可能な書換え装置か、又は前記マイクロコンピューターと前記端子を介してデータ交信可能な制御部を有する前記書換え装置とは異なる装置かを接続された装置から前記端子を介して受信した受信データに基づいて判定する判定部と、
前記判定部の判定により前記端子に接続された装置が書換え装置であると判定されると、通常処理へ移行せず前記大容量メモリの消去書換えのための処理へ移行するカメラ制御部と、
前記端子に接続される書換え装置から前記端子を介して受信した前記大容量メモリへ書き込まれる制御プログラムデータを一旦記憶させる一時記憶メモリと、
撮影画像を記憶する記憶媒体を装填するための装填部と、
前記消去書換え処理へ移行した際に、前記書換え装置の指示により前記大容量メモリ内の制御プログラムデータの消去処理を実行し、該消去処理の完了に応じて消去完了情報を前記端子を介して前記書換え装置に送信する消去制御部と、
前記消去処理の完了に応じて前記書換え装置による制御により前記書換え装置から前記端子を介して転送されてくる制御プログラムを前記マイクロコンピューターの制御により受信して前記一時記憶メモリに記憶し、該一時記憶メモリに記憶された制御プログラムデータを前記マイクロコンピューターの制御により前記大容量メモリに書き込むよう制御する書換え処理制御部と
を有し、
前記書換え装置は、
接続された前記カメラと各種データの授受を行う書換え端子と、
前記書換え端子に接続された前記カメラに、書換え装置であることを示すデータを前記書換え端子を介して送信する制御部と、
前記書換え端子と接続された前記カメラに前記書換え端子を介して消去指示を送信するし、前記カメラから消去完了情報を受信する消去指示制御部と、
前記消去完了情報の受信に応じて、前記接続されている前記カメラに、前記書換え端子を介して制御プログラム送信する処理プログラム送信制御部と
を有することを特徴とするカメラシステム。

【請求項2】
マイクロコンピューターと、
前記マイクロコンピューターの作動を指示する制御プログラムを格納する電気的消去書換えの可能な大容量メモリと、
接続された装置と各種データの授受を行う端子と、
前記端子と接続された装置が、前記マイクロコンピューターと前記端子を介して通信可能な書換え装置か、又は前記マイクロコンピューターと前記端子を介してデータ交信可能な制御部を有する前記書換え装置とは異なる装置かを接続された装置から前記端子を介して受信した受信データに基づいて判定する判定部と、
前記判定部の判定により前記端子に接続された装置が書換え装置であると判定されると、通常処理へ移行せず前記大容量メモリの消去書換えのための処理へ移行するカメラ制御部と、
前記端子に接続される書換え装置から前記端子を介して受信した前記大容量メモリへ書き込まれる制御プログラムデータを一旦記憶させる一時記憶メモリと、
撮影画像を記憶する記憶媒体を装填するための装填部と、
前記消去書換え処理へ移行した際に、前記書換え装置の指示により前記大容量メモリ内の制御プログラムデータの消去処理を実行し、前記消去処理の完了に応じて前記書換え装置による制御により前記書換え装置から前記端子を介して転送されてくる制御プログラムを前記マイクロコンピューターの制御により受信して前記一時記憶メモリに記憶し、該一時記憶メモリに記憶された制御プログラムデータを前記マイクロコンピューターの制御により前記大容量メモリに書き込むよう制御する消去書換え処理制御部と
を有することを特徴とする書換え可能なメモリを有するカメラ。」

3.当審の拒絶理由
平成20年7月7日付けで当審より通知された拒絶理由は以下の通りである。

「 本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献
1.特開平5-110976号公報
2.特開平4-125531号公報
3.特開平5-241816号公報
4.特開平5-142639号公報

引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

カメラに備えられているICメモリカードコネクタに、制御データ調整用の外部制御装置を接続すると、カメラのCPUが前記外部制御装置から読み取った属性情報に基づいてICメモリカードコネクタに接続されたものと判別し、制御データ調整用の外部制御装置であると判断したら、回路調整用作業用プログラムを実行し、外部制御装置から調整用の制御データを受信して、得られた最適制御データによって不揮発性メモリを書き換えるカメラ

請求項1に係る発明(以下、本願発明」という。)と引用発明とを比較すると、
引用発明は、制御データ調整用の外部制御装置であると判断したら、不揮発メモリの書き換え処理を行うものであるから、外部制御装置が接続された際には、通常のカメラ動作に関する処理を行わないことは当然であり、次の点で相違するが、その他の点では一致している。

(相違点1)
本願発明が、制御プログラムの書き換えであるのに対し、引用発明は、制御データの書き換えである点
(相違点2)
本願発明が、消去書換えに関するコマンドおよび/またはプログラムデータを一旦記憶させる一時記憶メモリを有するものであるのに対し、引用発明は、消去書換えに関するコマンドおよび/またはプログラムデータを一時記憶メモリに記憶するものではない点
(相違点3)
本願発明は、記憶媒体を装填する装填部及び端子を共に覆う蓋部を有するものであるのに対し、引用発明では蓋部を有するかどうか明記されていない点

上記相違点について検討する。
相違点1について
引用文献1において【0031】には、「また、書き換えるデータは、調整用制御データに限るものではなく、例えば露光量を制御するためのプログラム線図のようなものでもよい。」とされており、プログラム線図の場合はデータは外部から転送され、不揮発性メモリに格納されている。また、不揮発性メモリに記憶された制御プログラムによって動作を制御される機器は周知のものであり、このような制御プログラムに対しては製品完成後に制御プログラムの書換えの要請が生じている(引用文献2,3)。従って、引用発明における不揮発性メモリの書換え手法を制御プログラムの書換えに適用することは当業者が容易に為し得ることであり、この相違点1を格別のものと言うことはできない。

相違点2について
引用文献3には、EEPROMに記憶された制御プログラムで動作する機器の制御プログラムの書き換えを行う時に、外部のホストコンピュータから受信した書換え対象の制御プログラムを一旦RAMに格納し、その後でEEPROMに転送して書き込むことが記載されており(特に、30?32段落と図7,8を参照のこと)、受信した書換え対象のデータを不揮発性メモリに直接書き込むのではなく、RAM経由で書き込むことも必要に応じて行われる形態であるから、この相違点2を格別のものと言うことはできない。
なお、[付記]で記すように、請求項1の記載において、一時記憶メモリに一旦記憶される「プログラムデータ」については不明な点があるが、上記相違点2に対する判断では、実施例に則して解釈し、前記プログラムデータは大容量メモリに書き込まれる「制御プログラム」であると考えて議論している。

相違点3について
引用文献4に見られるように、撮影画像を記憶する記憶媒体であるフィルムを装填する部分は蓋で覆われており、また、引用文献に明記されていないもののデジタルカメラにおいては画像を記憶するICメモリカードの収納部分を蓋で覆うことは通常の形態に過ぎないものであるから、相違点3を格別のものと言うことはできない。

請求項2に係る発明に対して、引用文献1-4
引用文献3(特に、36段落及び図9)には、外部ホスト機器から指令を受けて制御プログラムの書き換えを行う点が記載されている。」

5.当審の判断
請求人は、平成20年9月8日付け意見書において、
(1) 引用例1では、書換え処理に移行するか否かは検査結果によって判断するものであり、接続された機器が書換え装置であるか否かによって判断されるものではありません。
(2)引用例3における一実施例のプリンタ装置では、RS?232Cインターフェース10とデータローディングスイッチ14を含むI/Oポート12がもうけられています。データローディングスイッチ14が外部の操作によってONに状態にある場合に、はRS?232Cインターフェース10に書換え用データを有する機器が装着されていなくともEE・PROMの内容が消去されてしまいます。これでは誤ってデータローディングスイッチ14ON状態として電源を投入しただけで、EE・PROMの内容が消去されてしまい、通常動作が動作しなくなってしまう可能性があります。
として、引用文献との相違を主張している。
しかしながら、引用文献1(特開平5-110976号公報)には、【0031】?【0033】段落に、書き換えるデータとしては、調整用制御データに限るものではなく、露光量を制御するためのプログラム線図についても記載され、それによれば、ICメモリカードのアトリビュートメモリの情報を使用して接続されている外部装置、データを判別し、ICカードに記憶されているデータを読み出してカメラ側のEEPROMを書き換えるものも示されているから、請求人の上記(1)の主張は失当である。
また、引用文献3(特開平5-241816号公報)には、【0036】段落および図9に、他の実施例として、ローディング・スイッチ14に代わりに外部ホスト機器からの指令に基づくものが記載されている。従って、請求人の上記(2)の主張も、また失当である。

平成20年9月8日付けの手続補正により請求項1,2に係る発明には、
「前記消去書換え処理へ移行した際に、前記書換え装置の指示により前記大容量メモリ内の制御プログラムデータを消去処理を実行し、前記消去処理の完了に応じて前記書換え装置による制御により前記書換え装置から前記端子を介して転送されてくる制御プログラムを前記マイクロコンピューターの制御により受信して前記一次記憶メモリに記憶し、該一次記憶メモリに記憶された制御プログラムデータを前記マイクロコンピューターの制御により前記大容量メモリに書き込む」構成が付け加えられた。

引用文献3の 【0036】段落および図9には、他の実施例として、ローディング・スイッチ14に代わりに外部ホスト機器からの指令に基づくものが記載されている。 ここにおいては、書き込みコマンドと共に書込みデータ、アドレス情報、誤り検出コードが外部ホスト機器からプリンタ装置に送られ、送信データの検査の後でEEPROMへの書き込みが行われている。
カメラが一時記憶メモリを有するのであれば、引用文献3のように書き込みコマンドと書き込みデータを同時に転送し、転送されたデータをチェックし、書き込みの準備が正常に整ったことを確認した上でEEPROMの消去、書き換えを行うことが合理的と思われるが、本願発明においては、一時記憶メモリを有するにもかかわらず書換え装置の指示による消去処理完了に応じて制御プログラムが転送されてくる点を要点としており(このような手順では、消去が完了した後で転送されてくる制御プログラムにエラーが生じても既に消去した制御プログラムの修復はできない。)、このような手順は引用文献3に記載された事項から容易に想到できるものではない。
そして、前述の消去、書き換えの手順は他の引用文献および周知技術に基づいても容易に想到できるものではないから、他の構成については詳細に検討するまでもなく、本願発明を上記の引用例1-4から容易に発明することができたものということはできない。
また、請求項1に係る発明は、請求項2に係る発明を更に限定するものであるから、引用例1-4から発明をすることができたものとすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明については、原査定の拒絶理由及び当審から通知した拒絶理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2008-10-29 
出願番号 特願2006-348614(P2006-348614)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 毅  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 吉田 美彦
鈴木 匡明
発明の名称 カメラシステムおよびカメラ  

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