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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1186780
審判番号 不服2005-19928  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-13 
確定日 2008-10-31 
事件の表示 特願2002-267293「住宅部材生産管理ネットワークシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004-102929〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1.手続の経緯
この出願(以下、「本願」という。)は、平成14年9月12日に出願されたものであって、平成17年4月13日付けで拒絶理由が通知され、これに対して同年6月20日付けで手続補正がなされたが、平成17年9月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年10月13日に拒絶査定不服審判が請求され、同年11月14日に手続補正がなされたものである。


第2.補正の却下
[補正却下の決定の結論]
平成17年11月14日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正の概要
本件補正は、原査定時の特許請求の範囲の請求項(以下「補正前の請求項」という。)1乃至6が、
「【請求項1】
記憶手段に保存された住宅の部材データと、住宅設計処理を行う住宅CAD処理手段とを備えた住宅CADサーバー装置と、
商品データベース、受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ、および受注可能な部材の部材データを記憶手段に保存し、部材の受注から生産管理までの処理を行う住宅部材生産管理手段を備えた住宅部材生産管理サーバー装置とが、ネットワークに接続されている住宅部材生産管理ネットワークシステムであって、
上記住宅CADサーバー装置と住宅部材生産管理サーバー装置とにそれぞれデータ連携処理手段を設けて、住宅CADサーバー装置のCADデータに生じたデータ更新状態を住宅部材生産管理サーバー装置のCADデータに反映させる同期処理を行わせ、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、部材と素材の長期と短期の需要を予測する処理手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記ネットワークには、さらに、少なくとも山林経営会社の木材生産設計処理を行うクライアント端末が接続され、上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計結果の情報を上記クライアント端末に提供する手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記山林経営会社の木材生産設計処理を行うクライアント端末は、上記住宅部材生産管理サーバー装置から提供される素材の長期と短期の需要情報に基づいて、素材の最適な生産計画および育林計画の作成を行なう処理手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材のプレカット加工管理を行なう手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材の規格外品をリユース管理する手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。」

であったものを、

「【請求項1】
住宅設計処理を行う住宅CAD処理手段を備えた住宅CADサーバー装置と、部材の受注から生産管理までの処理を行う住宅部材生産管理手段を備えた住宅部材生産管理サーバー装置とが、ネットワークに接続されている住宅部材生産管理ネットワークシステムであって、
上記住宅部材生産管理サーバー装置は、
上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータと、各種住宅部材の商品カタログ情報やプレカットデータ、見積・受発注データ、工期、在庫量、納期などの情報が含まれている部材情報データベースと、
各住宅部材ごとの素材の寸法、材質等の規格や、発注先、納期見通しなどの情報が格納されている素材情報データベースと
を記憶手段に保持し、
上記住宅部材生産管理手段は、部材生産管理機能手段と、素材生産管理機能手段と、受発注・納品管理機能手段とを有していて、
上記受発注・納品管理機能手段は、任意の住宅部材について見積りあるいは受発注処理を行なうとき、部材情報データベースにアクセスして商品カタログ情報と在庫量の情報を取り出して確認し、納期を決定する処理を行う手段であり、
上記部材生産管理機能手段は、さらに商品カタログ情報と在庫量の情報により今後の住宅部材の需要について見通しを立てて、現在の在庫量が不十分なものであれば、住宅部材の生産計画を立てる処理を行う手段であり、
上記素材生産管理機能手段は、素材情報データベースにアクセスして、住宅部材ごとの素材の情報に基づいて木材を発注し、木材の短期と長期の生産計画を作成する処理を行う手段であることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理部は、部材と素材の長期と短期の需要を予測する処理手段と、予測結果の需要情報を上記クライアント端末に提供する手段とを備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記ネットワークには、さらに、少なくとも山林経営会社の木材生産設計処理を行うクライアント端末が接続されていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記山林経営会社の木材生産設計処理を行うクライアント端末は、上記住宅部材生産管理サーバー装置から提供される素材の長期と短期の需要情報に基づいて、素材の最適な生産計画および育林計画の作成を行なう処理手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理部は、上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材のプレカット加工管理を行なう手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の住宅部材生産管理ネットワークシステムにおいて、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理部は、上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材の規格外品をリユース管理する手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。」

とするものである。(以下、「補正後の請求項」という。)

本件補正によって、以下の点が補正されているといえる。
(1)請求項1について
補正後の請求項1は、審尋に対する平成20年1月21日付け回答書での主張から、補正前の請求項1に対応し、「需要を予測する処理手段」についての補正前の請求項2の構成の一部を組み込んだものと解される。
してみると、請求項1について以下の点が補正されているといえる。
(あ)「住宅CADサーバー装置」について、補正前は、「記憶手段に保存された住宅の部材データと、住宅設計処理を行う住宅CAD処理手段」を備えるように記載されていたが、補正後は「住宅設計処理を行う住宅CAD処理手段」のみ備えるように記載され、「記憶手段に保存された住宅の部材データ」についての記載がなくなった点。
(い)「データ連携処理手段」について、補正前は、「上記住宅CADサーバー装置と住宅部材生産管理サーバー装置とにそれぞれデータ連携処理手段を設けて、住宅CADサーバー装置のCADデータに生じたデータ更新状態を住宅部材生産管理サーバー装置のCADデータに反映させる同期処理を行わせ、」と記載されていたが、補正後は、該記載が削除され、住宅CADサーバー装置と住宅部材生産管理サーバー装置のそれぞれの「データ連携処理手段」及び「同期処理」についての記載がなくなった点。
(う)「住宅部材生産管理サーバー装置」の「記憶手段」について、補正前は、「商品データベース、受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ、および受注可能な部材の部材データを記憶手段に保存し」と記載されていたのに対して、補正後は、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータと、各種住宅部材の商品カタログ情報やプレカットデータ、見積・受発注データ、工期、在庫量、納期などの情報が含まれている部材情報データベースと、
各住宅部材ごとの素材の寸法、材質等の規格や、発注先、納期見通しなどの情報が格納されている素材情報データベースと
を記憶手段に保持し」と記載されており、記憶手段が保存もしくは保持する(実質的に同義と解される。)情報が変更された点。
(え)「住宅部材生産管理サーバー装置」の「最適設計を行なう処理手段」について、補正前は、「上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段」は、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」を備えるように記載されていたのに対して、補正後は、「住宅部材生産管理サーバー装置」の「住宅部材生産管理手段」には、該「最適設計を行なう処理手段」についての記載がなくなり、また、「材料取りの全体の最適設計」を行う点についての記載がなくなった点。
(お)「住宅部材生産管理サーバー装置」について、補正前にはなかった、「部材生産管理機能手段」と、「素材生産管理機能手段」と、「受発注・納品管理機能手段」という手段が補正によって追加され、また、これらの追加された手段について、
「上記受発注・納品管理機能手段は、任意の住宅部材について見積りあるいは受発注処理を行なうとき、部材情報データベースにアクセスして商品カタログ情報と在庫量の情報を取り出して確認し、納期を決定する処理を行う手段であり、
上記部材生産管理機能手段は、さらに商品カタログ情報と在庫量の情報により今後の住宅部材の需要について見通しを立てて、現在の在庫量が不十分なものであれば、住宅部材の生産計画を立てる処理を行う手段であり、
上記素材生産管理機能手段は、素材情報データベースにアクセスして、住宅部材ごとの素材の情報に基づいて木材を発注し、木材の短期と長期の生産計画を作成する処理を行う手段である」という記載が追加された点。

(2)請求項2について
補正前の請求項2と補正後の請求項2は、いずれも「住宅部材生産管理サーバー装置」における「部材と素材の長期と短期の需要を予測する処理手段」についての記載を含むことから、補正後の請求項2は、補正前の請求項2に対応するものと解される。
してみると、請求項2について以下の点が補正されているといえる。
(か)「部材と素材の長期と短期の需要を予測する処理手段」を備えるものが、補正前は、「住宅部材生産管理手段」であったのが、補正後は「住宅部材生産管理部」となり、末尾が「手段」から「部」になっている点。
(き)補正後は、「住宅部材生産管理サーバー装置」の「住宅部材生産管理部」が「予測結果の需要情報を上記クライアント端末に提供する手段」を備えるという記載が追加されている点。

(3)請求項3について
補正前の請求項3と補正後の請求項3は、いずれも「山林経営会社の木材生産設計処理を行うクライアント端末」についての記載を含むことから、補正後の請求項3は、補正前の請求項3に対応するものと解される。
してみると、請求項3について以下の点が補正されているといえる。
(く)補正前の請求項3には、「上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計結果の情報を上記クライアント端末に提供する手段を備えている」との記載があったが、補正後の請求項3には、対応する記載がない点。
(け)補正前の請求項3は、請求項1及び2を択一的に引用していたのに対して、補正後の請求項3は請求項2のみを引用している点。

2.補正の適否
特許請求の範囲についてされた上記補正(あ)?(け)のそれぞれが、特許法第17条の2第4項の各号が定める事項を目的とするものであるか、補正の適否を判断する。
まず、各補正が、同項第3号の特許請求の範囲の減縮に該当するか検討する。

(1)請求項1の「住宅CADサーバー装置」について
上記補正(あ)、(い)は、補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項である、「住宅CADサーバー装置」についての、「記憶手段に保存された住宅の部材データ」、及び、同期処理を行う「データ連携処理手段」を削除するものである。したがって、これらの補正は、請求項1から「住宅CADサーバー装置」についての限定を解除するものといえ、限定の解除により特許請求の範囲は拡大するから、この補正は特許請求の範囲の減縮には該当しない。

(2)請求項1の「住宅部材生産管理サーバー装置」の「データ連携処理手段」及び「住宅部材生産管理手段」について
上記補正(い)によって、補正前の請求項1における「住宅部材生産管理サーバー装置」が備える「データ連携処理手段」の記載が削除された
一方、上記補正(お)によって、「住宅部材生産管理サーバー装置」の「住宅部材生産管理手段」が備えるものとして、「部材生産管理機能手段」と、「素材生産管理機能手段」と、「受発注・納品管理機能手段」が追加された。
そして、補正前の請求項1における「住宅部材生産管理サーバー装置」が備える「データ連携処理手段」に関し、CADデータの同期処理を行うことに関する記載は、追加された「部材生産管理機能手段」と、「素材生産管理機能手段」と、「受発注・納品管理機能手段」の3つの手段のいずれにもないから、補正前の請求項1における「データ連携処理手段」は、上記追加された新たな3つの手段のいずれにも対応していないことは明らかである。
そして、補正後の請求項1における「同期」に関する記載は、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータと...部材情報データベース」とあるのみで、該記載は「同期した」という結果のみが特定されており、同期を行う構成についてはなんら記載されていない。
してみれば、上記補正(い)によって、「住宅部材生産管理サーバー装置」からCADデータの同期処理を行う「データ連携処理手段」が削除され、対応する構成は補正後の請求項1にはないといえる。
したがって、この補正(い)は、「住宅部材生産管理サーバー装置」についての限定を解除するものといえ、特許請求の範囲を拡大するものであるから、この補正は特許請求の範囲の減縮には該当しない。

(3)請求項1の「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」について
上記補正(え)で記載が削除された、補正前の請求項1における「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」に関し、補正後の請求項1には、「最適設計」に関する機能を有する手段はなんら記載されておらず、補正前の請求項1における「最適設計を行う処理手段」と、補正後の請求項1における、「住宅部材生産管理手段」が備える、「部材生産管理機能手段」、「素材生産管理機能手段」、「受発注・納品管理機能手段」との対応関係は明確ではない。
そこで、「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計」に関する発明の詳細な説明及び図面の記載を参酌すると、段落0039の
「(3)図8(3)のフロー:
住宅部材生産管理サーバー装置21の住宅部材生産管理部24は、住宅部材の受発注データやCADデータ等の蓄積情報の分析から、住宅の部材から木材までの材料取りの全体最適解を計算し、仕掛品や素材のサイズや、木材の育林計画の参考情報を提供する。山林経営会社は、端末からこの情報にアクセスして、素材の生産計画を立てることができる。部材メーカーが、製品のサイズや需要数の情報等を山林経営会社などの関連会社と共有することにより、素材の規格の見直しを行うことも容易になり、歩留まりを考えて最適な素材の製造、木材の生産をすることができる。」
との記載が対応すると解される。してみると、「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計」は、「素材の生産計画」を立てることと関係すると解されることから、補正後の請求項1における、「素材生産管理機能手段」が対応すると考えられる。
一方、補正後の請求項1における「素材生産管理機能手段」についての記載は、「上記素材生産管理機能手段は、素材情報データベースにアクセスして、住宅部材ごとの素材の情報に基づいて木材を発注し、木材の短期と長期の生産計画を作成する処理を行う手段である」というものである。
ここで、「素材生産管理機能手段」について詳細に検討するに、補正後の請求項1における「素材生産管理機能手段」がアクセスする「素材情報データベース」は、「住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータ」を格納するものではない(補正後の請求項1では、「素材情報データベース」とは別の「部材情報データベース」に「住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータ」の情報が含まれるように記載されている)点で、補正前の請求項1における「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」が「住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて」行う構成と相違している。
また、補正後の請求項1における「木材を発注」、「木材の短期と長期の生産計画を作成」する処理に関し、補正前の請求項1における「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう」ことについての記載はなんらない。
してみると、補正後の請求項1における、「素材生産管理機能手段」が、補正前の「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」に対応するとしても、「住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータ」を用いる点、及び、「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう」点についての具体的記載はされていないから、補正後の請求項1には、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」は記載されておらず、上位概念化したものが記載されているといえる。
してみれば、上記補正(え)及び(お)は、補正前の請求項1に記載された発明を特定する事項である、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」を限定するものとはいえず、「住宅部材生産管理サーバー装置」の「住宅部材生産管理手段」についての限定を解除し、特許請求の範囲を拡大するものといえる。
以上のことから、この補正(え)及び(お)は、特許請求の範囲の減縮には該当しない。

(4)請求項1の「住宅部材生産管理サーバー装置」の「記憶手段」について
補正(う)では、補正前の請求項1において「記憶手段」に保存されるデータ(情報)は、「商品データベース」、「受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ」、および「受注可能な部材の部材データ」であったものが、補正後の請求項1では、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータと、各種住宅部材の商品カタログ情報やプレカットデータ、見積・受発注データ、工期、在庫量、納期などの情報が含まれている部材情報データベース」、「各住宅部材ごとの素材の寸法、材質等の規格や、発注先、納期見通しなどの情報が格納されている素材情報データベース」となっている。
そこで、この補正が、特許請求の範囲の減縮に該当するかそれぞれ検討する。

(a)「CADデータ」に関し、補正前の請求項1では、「受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ」という記載で「受注する部材を抽出するため」という用途及び「住宅の」という対象についての限定がされていたのに対して、補正後の請求項1では、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータ」という記載で、上記用途及び対象についての限定が削除されている。なお、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータ」との記載は、補正前の請求項1では、「最適設計を行う手段」で用いられるデータとして記載されており、また、「データ連携処理手段」によって同期処理されるデータであると解されるところ、補正後の請求項1では、どちらも削除されており(上記(1)及び(2)を参照。)、この点においても、「CADデータ」についての限定が削除されているといえる。
したがって、この「CADデータ」に関する補正は、限定を解除することで特許請求の範囲を拡大するものであり、特許請求の範囲の減縮にはあたらない。

(b)「部材データ」に関し、補正前の請求項1では、「受注可能な部材の部材データ」であったのに対し、補正後の請求項1では、「各種住宅部材の商品カタログ情報やプレカットデータ、見積・受発注データ、工期、在庫量、納期などの情報が含まれている部材情報データベース」という記載が対応すると解され、「在庫量」、「納期」といった情報が「受注可能」かどうかということに関係すると解されるから、「部材データ」についての補正は、請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものと解される。

(c)「各住宅部材ごとの素材の寸法、材質等の規格や、発注先、納期見通しなどの情報が格納されている素材情報データベース」について、補正前の請求項1には対応する記載はない。また、「素材」について、補正前の請求項1には「最適設計を行う処理手段」に「素材の木材までの?」という記載はあるものの、どのような情報をどのように用いる等の具体的記載はないから、この「素材の木材までの?」という記載をもって、「素材」に関する情報が記憶手段に格納されていて該情報を用いて処理することが記載されているとはいえない。
また、補正前の請求項2における「部材と素材の長期と短期の需要を予測する処理手段」との記載は、単に処理の結果が特定されているのみで、それがどのような情報のいかなる処理加工によって「予測する」のかなんら記載されていないから、この記載をもって、素材に関する情報が記憶手段に格納されていて該情報を用いて処理することが記載されているとはいえない。
してみると、「各住宅部材ごとの素材の寸法、材質等の規格や、発注先、納期見通しなどの情報が格納されている素材情報データベース」を記憶手段に保持するという構成を追加するこの補正は、対応する構成が補正前の請求項にはないから、発明を特定するために必要な事項を追加するものであるといえ、請求項に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。

以上のとおり、補正(う)は、上記(a)及び(c)の点で、特許請求の範囲の減縮には該当しない。

(5)請求項2について
補正(か)は、「住宅部材生産管理手段」の誤記、あるいは、新たに「住宅部材生産管理部」という要素を追加するものと解される。
新たな要素を追加する補正は、請求項に記載された発明を特定する事項を限定するものとはいえない。
次に、補正(き)のうち、補正後の「上記クライアント端末」との記載について、「上記」と記載されているのに、先行する「クライアント端末」の記載がないのは、誤記と解される。
そして、補正(き)の残りの部分に関し、補正前の請求項2には、「クライアント端末」、及び、「予測結果の需要情報」を「クライアント端末に提供する手段」についての記載はない。
してみると、請求項2における補正(き)は、「予測結果の需要情報を上記クライアント端末に提供する手段」という、発明を特定するために必要な事項を追加するものであるといえ、請求項に記載された発明を特定する事項を限定するものとはいえない。
また、上記補正(き)で、「予測結果の需要情報を上記クライアント端末に提供する手段」という、発明を特定するために必要な事項を新たに追加するように記載されているから、補正(か)が誤記あるいは新たな要素の追加のいずれにしても、請求項2についての補正全体としては、請求項に記載された発明を特定する事項を限定するものとはいえない。
したがって、請求項2についての補正(か)、(き)は、特許請求の範囲の減縮には該当しない。

(6)請求項3について
補正(け)は、択一的に引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮にあたる。
一方、補正(く)は、補正前の請求項3にあった「上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計結果の情報を上記クライアント端末に提供する手段」という、発明を特定するために必要な事項を削除するものであるから、補正(く)は、発明を特定するために必要な事項を限定するものとはいえない。
したがって、請求項3についての補正は、全体としては特許請求の範囲の減縮には該当しない。

上記(1)?(6)のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第4項第3号が規定する特許請求の範囲の減縮には該当しない。

また、原査定の拒絶理由において、請求項の記載が明りょうでない旨の拒絶理由は通知されていないから、この補正が、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明であるともいえない。
また、請求項の削除、誤記の訂正にも該当しない。

以上のとおり、この補正は、特許法第17条の2第4項各号のいずれにも該当しない。

3.審判請求人の主張
この補正について、審判請求人は、平成17年12月21日付け手続補正書で補正した審判請求の理由(以下、単に「審判請求の理由」という。)で以下のように述べている。
「(1)本願請求項の補正
上記拒絶査定の趣旨を考慮して、本願発明と引用文献発明との差異及びソフトウエアとハードウエア資源との協働構成をより明確なものにするため、審判請求時に提出した平成17年11月14日付け手続補正書において、本願の請求項を以下のように補正しました。(後略)」
「(2)補正の根拠
上記補正された請求項1の発明の構成は、補正前の請求項1の発明の構成に対して、住宅部材生産管理サーバー装置の内部構成を詳細化したものであり、部材情報データベースと、素材情報データベースと、住宅部材生産管理手段とを備えるものであることを明示し、さらに住宅部材生産管理手段は、部材生産管理機能手段と、素材生産管理機能手段と、受発注・納品管理機能手段とを有することと、各手段が備える機能とを具体的に規定しています。これらの構成は、本願の出願当初の図面「図1」?「図4」と、明細書中の対応する説明の記述によってサポートされています。特に、部材生産管理機能手段と素材生産管理機能手段の構成については、それぞれ、図4の素材生産計画管理機能51と素材需要予測処理機能52のフローによって明示されています。
なお、部材情報データベースと素材情報データベースがサーバー装置のハードウエアである記憶手段に保持されていることは、たとえば図1において、部材情報データベース7と素材情報データベース8が、それぞれサーバー装置内にファイルのブロック記号で表示されていることから、明白であり、同様に住宅部材生産管理手段が、サーバー装置内の処理機能として、ハードウエアのCPUがプログラムを実行することにより実現されるものであることは自明であります。」

この主張における「上記補正された請求項1の発明の構成は、補正前の請求項1の発明の構成に対して、住宅部材生産管理サーバー装置の内部構成を詳細化したものであり...」との記述から、本件補正が、特許請求の範囲に記載された発明を特定する事項を限定する、特許請求の範囲の減縮を目的とした補正であることを審判請求人は主張していると解されるが、上記のとおり、本件補正は特許請求の範囲の減縮には該当しない。

また、審判請求人は、「素材情報データベース」を追加する補正について、審尋に対する平成20年1月21日付けの回答書において、「誤記の訂正ないしは釈明的事項に該当する」旨主張しているが、誤字・脱字等ではなく、そもそも「素材情報データベース」全体を記載しなかったことが明らかな誤記であるとはいえず、また、明りょうでない旨の拒絶理由は通知されていないから、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明にも該当しない。

したがって、これらの審判請求人の主張は採用できない。

4.むすび
よって、平成17年11月14日付けでした手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項において準用する同法第53条項の規定により、却下すべきものである。



第3.本願発明について
1.本願発明
平成17年11月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成17年6月20日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至6に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
記憶手段に保存された住宅の部材データと、住宅設計処理を行う住宅CAD処理手段とを備えた住宅CADサーバー装置と、
商品データベース、受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ、および受注可能な部材の部材データを記憶手段に保存し、部材の受注から生産管理までの処理を行う住宅部材生産管理手段を備えた住宅部材生産管理サーバー装置とが、ネットワークに接続されている住宅部材生産管理ネットワークシステムであって、
上記住宅CADサーバー装置と住宅部材生産管理サーバー装置とにそれぞれデータ連携処理手段を設けて、住宅CADサーバー装置のCADデータに生じたデータ更新状態を住宅部材生産管理サーバー装置のCADデータに反映させる同期処理を行わせ、
上記住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段は、上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段を備えていることを特徴とする住宅部材生産管理ネットワークシステム。」

2.引用例・周知例
(1)引用例1
これに対し、原査定の拒絶理由において引用文献2として引用した、特開2002-197126号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
(あ)「(57)【要約】
【課題】 設計変更等を効率良く、正確に行ない得る建築設計施工管理システムを提案すること。
【解決手段】 建築設計施工管理システム100の作図用端末9等において、カスタマイズされた三次元CADソフトを起動して三次元の基本設計図を作成すると、二次元の平面図、平面詳細図、矩計図等の一般設計図を作成でき、別の画層に、設計図と連動して生成できる躯体図、平面詳細図、断面詳細図、部屋展開図を含む施工図を作成できる。施工図から、部分詳細図を作成できる。部分詳細図の作成に当たっては、建材データベースから建材部品(図形、属性)データを取得し、その建材詳細をもとに、部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成できる。部分詳細図から、建材表、部品表、各建材メーカの製造ラインのコンピュータに直接に入力可能な建材部品データを作成して、建材メーカに提供可能である。」

(い)「【0009】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、本発明の建築設計図作成用プログラムは、コンピュータに、建物の基本設計図を三次元図面として作成する三次元のオブジェクト機能を持った三次元作図機能と、前記基本設計図に基づき、二次元の平面図、平面詳細図、矩計図を含む一般設計図を作成する二次元作図機能と、当該二次元作図機能による前記一般設計図の作成に連動して、躯体図、平面詳細図、断面詳細図、部屋展開図、電気工事・設備工事施工図を含む施工図を作成する施工図作成機能と、前記二次元作図機能による前記一般設計図の作成に連動して、部分平面詳細図、部分断面詳細図、姿図、部品表を含む部分詳細図を作成する部分詳細図作成機能を実現させる事を特徴としている。
【0010】ここで、前記部分詳細図作成機能は、インターネット上において予め用意されている建材データベースをウエブ検索する建材データベース検索機能と、この建材データベース検索機能によって検索された該当建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報に基づき、各部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成する詳細納まり図作成機能と、作成された前記部分詳細図から、建材表、部品表、および建材および部品メーカーの製造ラインのコンピュータ制御システムに入力可能な建材部品製造に必要な建材部品製造データを作成する機能とを含むようにすることができる。」

(う)「【0025】本発明では、インターネットを介して前記システム管理装置のウエブサーバにアクセス可能な建材データベース資料提供メーカの側に設置されている建材メーカ側コンピュータ端末を有しており、当該建材メーカ側コンピュータ端末は、前記ウエブサーバによってインターネット上に公開されている該当物件の詳細納まり図をダウンロードする機能と、当該詳細納まり図を訂正・編集する編集機能と、訂正・修正後の詳細納まり図を前記データサーバに送信する送信機能とを備えており、前記システム管理サーバは、前記建材メーカ側コンピュータ端末から前記詳細収まり図を受信すると、当該データによって、前記データサーバの詳細納まり図ホルダの内容を更新することを特徴としている。」

(え)「【0026】前記システム管理サーバは、前記二次元図面ホルダのデータが承認されると、これに対応する物件建材データベースの内容を確定し、当該物件建材データベースに含まれているデータに基づき、前記建材メーカ側コンピュータ端末に送信するための送信用データを作成し、インターネットを介して当該建材メーカ側コンピュータ端末に向けて送信することを特徴としている。」

(お)「【0028】図1は本例の建築設計施工管理システムの全体構成図である。この図に示すように、建築設計施工管理システム100は、システム管理装置18と、このシステム管理装置18にイントラネット16を介して接続されている建築主の所に設置された建築主端末1、設計事務所に設置された設計事務所端末2、建築現場事務所に設置された現場事務所端末3、設備業者の所に設置された設備業者端末4、電気業者の所に設置された電気業者端末5、および建設会社に設置された建設会社端末6とを備えている。これら建築主、設計事務所、建築現場事務所、設備業者、電気業者および建設業者にはイントラネットあるいはインターネット経由でシステム管理装置18にアクセス可能なアクセス権が付与されている。また、建材メーカー販売代理店の所に設置した建材メーカー販売代理店端末7を備えており、これに対しても予めアクセス権が付与されている。
【0029】なお、本例ではイントラネットおよびインターネットにより端末相互の通信を行うようにしているが、システム全体をインターネットにより接続する構成としてもよいことは勿論である。
【0030】システム管理装置18は、物件管理サーバ8と、作図用パソコン端末9と、リモートアクセスサーバ20と、データサーバ10と、ウエブサーバ11とを備えており、ターミナルアダプタ21およびリモートアクセスサーバ20を介して、上記の各端末1ないし7のそれぞれが物件管理サーバ8およびウエブサーバ11にアクセス可能である。
【0031】一方、アクセス権を有していない一般建設会社に設置された一般建設会社端末12、一般設計事務所に設置された一般設計事務所端末13、一般建築主の所に設置された一般建築主端末14、および下請け企業に設置された下請け企業端末15は、インターネット17を経由して、ウエブサーバ11にアクセス可能となっている。
【0032】システム管理装置18の物件管理サーバ8には、建築設計図作成用プログラムを含む図面管理プログラム、データ更新チェックプログラムを含む物件管理プログラムがインストールされている。物件管理サーバ8、データサーバ10およびウエブサーバ11には、物件毎に図面、建材データなどを保持している物件データベースおよび物件建材データベース等の各種のデータホルダーが保存されている。また、データサーバ10には、建材メーカ販売代理店端末7に対して送信される建材送信データを自動生成するための建材送信データ作成プログラムがインストールされている。
【0033】これに対して、設計事務所端末2、電気業者端末5、および設備業者用端末4には、CADソフト(建築設計図作成用プログラム)と、図面承認機能を除く物件管理プログラムがインストールされている。建築現場端末3には、CADソフト(建築設計図作成用プログラム)と、物件管理プログラムがインストールされている。建材メーカ販売代理店端末7は、データサーバ10で自動生成されて送られてくる建材送信データを受信可能であり、受信した建材データをメーカ製造ラインの制御コンピュータに入力可能なデータに変換して、当該制御コンピュータ(図示せず)に送信する機能が備わっている。」

(か)「【0034】図2は、本例の建築設計施工管理システム1における生産設計図作成手順を示す説明図である。この図を参照して説明すると、基本設計に必要な資料等を用意した後に、作図用パソコン端末9あるいは設計事務所端末2において、三次元のオブジェクト機能を備えたCADソフト(建築設計図作成用プログラム)を起動する。
【0035】このCADソフトはカスタマイズされており、建物の基本設計図を三次元図面として作成し、その基本図面から二次元の平面図、平面詳細図、矩計図等の一般設計図を作成できる。同時に、これらの図面とは別の画層に、一般設計図と連動して、躯体図、平面詳細図、断面詳細図および部屋展開図を含む施工図を作成でき、更に、この施工図から、部分詳細図(平面、断面、姿図、部品表)を作成できる。さらには、種類の異なるCADソフトで生成された平面詳細図をDXFファイル、IFCファイル形式で取り込み、それらに基づき部分詳細図(平面、断面、姿図、部品表)の作成も支援する。
【0036】ここで、部分詳細図の作成にあたっては、端末装置2、9からインターネット17を経由して、予めインターネット上に公開されている各建材メーカーの建材データベース31を検索して、当該建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報を取得し、当該建材部品情報に基づき、各部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成する。
【0037】作成された部分詳細図から、建材表、部品表、および建材および部品メーカーの製造ラインのコンピュータ制御システムに入力可能な建材部品製造に必要な建材部品製造データが作成される。また、作成された各図面は、図3、4に示すように、建物毎に保存された物件建材データベースとして作成される。」

(き)「【0049】上記のようにして図面内容が確定すると、物件建材データベースの内容が確定し、データサーバ10上の建材送信データ作成プログラムが作動して、建材メーカ販売代理店端末7への送信用データが自動生成されて、建材データベース資料提供メーカに当該データが自動メール送信される。ここで、送信用データには、作成された部分詳細図に基づき作成された建材表および部品表と、各建材メーカの製造ラインのコンピュータ制御システムに直接入力可能な建材部品データが含まれている。」

(く)「【0053】ここにおいて、このような変更が発生した場合には、作成された各図面は相互に連携しているので、基本設計の部分で変更するだけで、該当する各図の部分が自動的に修正されることになる。また、建材部品に変更が発生した場合には、変更により更新された建材部品データが建材メーカ販売代理店端末7に自動送信される。従って、建材メーカ側では提供された建材部品データの更新データに基づき、変更に対して迅速かつ正確に対応できる。」

(け)「【0055】一方、建材表および部品表の生成にあたっては、図7、8に示すように、建材部品詳細の入力時に生成された建材部品管理データベースと、姿図とに基づき、選択された建材表および部品表が自動生成される。また、建材部品詳細の入力時に生成された建材部品管理データベースに基づき、選択された物件の建材部品データが各建材メーカのコンピュータのデータ形式に合わせた形式で自動生成される。通常は、XMLデータを自動生成するようになっている。」

(こ)「【0066】(5)部材リスト入力
(Excelを利用した部材(基礎・柱・梁・壁・スラブ・建具)リストの簡易入力、壁・スラブ・建具に関しては、符号に対するスタイルを選択できるようにする。)
計算ソフトで作成した躯体入力標準フォーマットで、躯体の各要素を数値入力することによって、各階の躯体要素を同時にそれぞれの階のファイルに自動生成する。
各節点アンカーに柱の寄り寸法も入力できる入力フォーマットが作成されるので、必要となる寄り寸法を数値入力することによって、柱と梁の寄り寸法も処理された状態で柱、梁が自動生成される。
単独で柱梁の寄り寸法を変更する場合は、オブジェクトプロパティ管理のアンカー寸法を変更することで編集が可能となる。
表示されるそれぞれの躯体要素の符号は、標準フォーマットの符号入力セルと断面入力セルに構造図面の符号と要素断面寸法を入力し、部材要素にアンカーされているタグに符号と断面寸法を表示する。
要素断面寸法が入力されているセルと寸法オブジェクトがリンクできる実行モジュールを作成して、躯体要素のそれぞれの寸法が自動生成できるようにし、要素断面が変更されたときは、寸法も追随して変更できるようにする。
壁、スペース、建具はスタイル設定をしてある基本図面から、新規起動図面の各階ファイルに初期設定の標準フォーマットに仕様を入力することによって自動的に読み込んで使用できるようにする。基本図面には、予め十分なスタイルを登録しておき、読み込みの入力フォーマットと関連付けさせておく。」(審決注:文中の丸数字を省略した。)

(さ)「【0069】(8)建具入力
(入力された部材リストから建具を作成する。)
建具はプロトタイプの標準スタイルをスタイル登録しておき、その他に予想できる多くの組み合わせの建具をスタイル登録して、基本図面から読み込んで使用する。
建具入力標準フォーマットに数値入力して設計寸法で自動表示して、変更に伴って、寸法の自動追随機能によって開口寸法を変更する。
建具寸法は物件建材データベースに登録されて、メーカーに送信されるWH寸法の基本寸法となるので、内法寸法で表示し、タグをアンカーして開口寸法の大きな順に建具の符号を自動生成して、同時に物件建材データベースに保存する。
建具の姿図は建具コンテンツを利用して、建具画層のデータから作成して、建具詳細図システムの建具表作成時に外部参照図面として表示される。」(審決注:文中の丸数字を省略した。)

(し)「【0075】(サーバ/クライアント間の状態遷移)次に、図9?図21を参照して、本例の建築設計管理システム1による処理動作の流れ(サーバ/クライアント間の状態遷移)について説明する。
【0076】まず、図9に示す設計段階(1)においては、設計事務所端末2(設計側コンピュータ端末)によって図面が作成される。作成された図面を設計事務所端末2の物件ホルダ101に保存されると、当該設計事務所端末1の通信ソフトウエアが自動起動して、保存された図面データ(物件管理データ)を管理装置側の管理サーバ8に送信する。
【0077】管理サーバ8は、設計事務所端末2から送られた物件管理データを当該同一名称の物件ホルダ102に保存する。本例では、管理装置側のデータサーバ10は、物件毎に物件管理データを保存するための複数の管理サーバ側物件ホルダ102を備えている。すなわち、管理サーバ8は、設計事務所端末1から物件管理データを受信すると、当該物件管理データが物件管理サーバ側ホルダ102に保持されている内容と比較して更新されているか否かを判別し、更新されている場合には、当該物件管理データが記憶保持されている管理サーバ側物件ホルダ102の内容を更新する。」

(す)「【0095】また、建材部品メーカの製造ラインに入力可能な建材部品データを生成して建材メーカに提供するようにしているので、建材部品の発注、製造、取付け作業を効率良く行なうことが可能になる。」

引用例1の記載(あ)によれば、「建築設計施工管理システム」では、「三次元の基本設計図」を作成すると、「二次元の平面図、平面詳細図、矩計図等の一般設計図」を作成でき、「設計図と連動して生成できる躯体図、平面詳細図、断面詳細図、部屋展開図を含む施工図」を作成でき、「施工図」から、「部分詳細図」を作成できること、「部分詳細図」の作成に当たっては、「建材データベース」から「建材部品(図形、属性)データ」を取得し、その建材詳細をもとに、部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成できること、及び、「部分詳細図」から、「建材表、部品表、各建材メーカの製造ラインのコンピュータに直接に入力可能な建材部品データ」を作成して、「建材メーカに提供可能」であることが記載されているといえる。

引用例1の記載(い)の段落0009によれば、「建築設計図作成用プログラム」は、「建物の基本設計図を三次元図面として作成する三次元のオブジェクト機能を持った三次元作図機能」と、「前記基本設計図に基づき、二次元の平面図、平面詳細図、矩計図を含む一般設計図を作成する二次元作図機能」と、「当該二次元作図機能による前記一般設計図の作成に連動して、躯体図、平面詳細図、断面詳細図、部屋展開図、電気工事・設備工事施工図を含む施工図を作成する施工図作成機能」と、「前記二次元作図機能による前記一般設計図の作成に連動して、部分平面詳細図、部分断面詳細図、姿図、部品表を含む部分詳細図を作成する部分詳細図作成機能」をコンピュータに実現させるものであることが記載されているといえる。
また記載(い)の段落0010によれば、上記「建築設計図作成用プログラム」の「部分詳細図作成機能」は、「インターネット上において予め用意されている建材データベースをウエブ検索する建材データベース検索機能」と、「この建材データベース検索機能によって検索された該当建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報に基づき、各部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成する詳細納まり図作成機能」と、「作成された前記部分詳細図から、建材表、部品表、および建材および部品メーカーの製造ラインのコンピュータ制御システムに入力可能な建材部品製造に必要な建材部品製造データを作成する機能」を含むことが記載されているといえる。

引用例1の記載(う)によれば、「建材メーカ側コンピュータ端末」が、「建材データベース資料提供メーカの側」に設置されており、「インターネットを介して前記システム管理装置のウエブサーバにアクセス可能」となっていること、
当該「建材メーカ側コンピュータ端末」は、「前記ウエブサーバによってインターネット上に公開されている該当物件の詳細納まり図をダウンロードする機能」と、「当該詳細納まり図を訂正・編集する編集機能と、訂正・修正後の詳細納まり図を前記データサーバに送信する送信機能」とを備えていること、及び、「システム管理サーバ」は、「前記建材メーカ側コンピュータ端末から前記詳細収まり図を受信すると、当該データによって、前記データサーバの詳細納まり図ホルダの内容を更新する」機能を有していることが記載されているといえる。

引用例1の記載(え)によれば、「システム管理サーバ」は、二次元図面ホルダのデータが承認されると、「当該物件建材データベースに含まれているデータ」に基づき「送信用データ」を作成して「当該建材メーカ側コンピュータ端末に向けて送信する」ことが記載されているといえる。

引用例1の記載(お)及び引用する図1によれば、「建築設計施工管理システム」は、「システム管理装置18」と、このシステム管理装置18にイントラネット16を介して接続されている「設計事務所に設置された設計事務所端末2」及び他の端末とを備えていること、イントラネットとインターネットを併用して接続された「建材メーカー販売代理店の所に設置した建材メーカー販売代理店端末7」を備えていること、アクセス権を有していない一般建設会社に設置された一般建設会社端末12等の端末は、インターネット17を経由して、ウエブサーバ11にアクセス可能となっていること、「システム管理装置18の物件管理サーバ8」には、「建築設計図作成用プログラムを含む図面管理プログラム」、データ更新チェックプログラムを含む物件管理プログラムがインストールされていること、物件管理サーバ8、データサーバ10およびウエブサーバ11には、「物件毎に図面、建材データなどを保持している物件データベース」および「物件建材データベース」等の「各種のデータホルダー」が保存されていること、また、データサーバ10には、「建材メーカ販売代理店端末7に対して送信される建材送信データを自動生成するための建材送信データ作成プログラム」がインストールされていること、「設計事務所端末2」には、「CADソフト(建築設計図作成用プログラム)」と、「図面承認機能を除く物件管理プログラム」がインストールされていること、「建材メーカ販売代理店端末7」は、データサーバ10で自動生成されて送られてくる「建材送信データ」を受信可能であり、「受信した建材データ」を「メーカ製造ラインの制御コンピュータに入力可能なデータに変換して、当該制御コンピュータ(図示せず)に送信する機能」が備わっていることが記載されているといえる。

引用例1の記載(か)によれば、作図用パソコン端末9あるいは設計事務所端末2において、三次元のオブジェクト機能を備えたCADソフト(建築設計図作成用プログラム)を用いて、「建物の基本設計図」、「一般設計図」、「施工図」、「部分詳細図(平面、断面、姿図、部品表)」、「建材表、部品表、および建材および部品メーカーの製造ラインのコンピュータ制御システムに入力可能な建材部品製造に必要な建材部品製造データ」等が作成されること、作成された各図面は、「建物毎に保存された物件建材データベース」として作成されることが記載されているといえる。
また、引用例1の記載(か)の段落0036によれば、部分詳細図の作成にあたっては、端末装置2、9からインターネット17を経由して、予めインターネット上に公開されている各建材メーカーの建材データベース31を検索して、当該建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報を取得し、当該建材部品情報に基づき、各部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成することが記載されているといえる。

引用例1の記載(き)によれば、図面内容が確定すると「物件建材データベース」の内容が確定し、「部分詳細図に基づき作成された建材表および部品表」と、「各建材メーカの製造ラインのコンピュータ制御システムに直接入力可能な建材部品データ」が含まれている「建材メーカ販売代理店端末7への送信用データ」が自動生成されて、建材データベース資料提供メーカに送信されることが記載されているといえる。

引用例1の記載(く)によれば、作成された各図面が相互に連携していて、基本設計の部分で変更すると各図の部分が自動的に修正されること、建材部品に変更が発生した場合には、変更により更新された建材部品データが建材メーカ販売代理店端末7に自動送信されること、「建材メーカ販売代理店端末」に自動送信された後、「建材メーカ」が、変更に対して対応することが記載されているといえる。

引用例1の記載(け)によれば、「建材部品詳細の入力時に生成された建材部品管理データベース」と「姿図」に基づいて「建材表および部品表」が生成されること、「建材部品詳細の入力時に生成された建材部品管理データベース」に基づいて、「選択された物件の建材部品データ」がXMLデータ等の各建材メーカのコンピュータのデータ形式に合わせた形式で生成されることが記載されているといえる。

引用例1の記載(こ)には、建具を含む部材リストの入力を行うことが記載されているといえる。

引用例1の記載(さ)によれば、入力された部材リストから建具(のデータ)を作成して、「建物建材データベース」に保存すること、「建具コンテンツ」を利用して「建具画層」のデータから「建具の姿図」を作成して建具表作成時に表示することが記載されているといえる。

引用例1の記載(し)によれば、「設計段階(1)」においては、「設計事務所端末2(設計側コンピュータ端末)」によって図面が作成され、作成された図面が「設計事務所端末2の物件ホルダ101」に保存されると、「当該設計事務所端末1の通信ソフトウエア」が自動起動して、保存された図面データ(物件管理データ)を管理装置側の管理サーバ8に送信すること、
及び、管理サーバ8は設計事務所端末1から物件管理データを受信すると当該物件管理データが物件管理サーバ側ホルダ102に保持されている内容と比較して更新されているか否かを判別し、更新されている場合には、当該物件管理データが記憶保持されている管理サーバ側物件ホルダ102の内容を更新することが記載されているといえる。

引用例1の記載(す)によれば、「建材部品メーカの製造ラインに入力可能な建材部品データ」を「建材メーカ」に提供するようにしていること、そのため、建材部品の発注、製造、取付け作業を効率良く行なうことができることが記載されているといえる。

以上の、引用例1の記載(あ)?(す)から、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているといえる。
「システム管理装置18と、設計事務所に設置された設計事務所端末2とがイントラネット16を介して接続され、
システム管理装置18と、建材メーカー販売代理店の所に設置した建材メーカー販売代理店端末7とがイントラネットとインターネットを併用して接続された、
建築設計施工管理システムにおいて、
設計事務所端末2において、三次元のオブジェクト機能を備えたCADソフト(建築設計図作成用プログラム)を用いて、「建物の基本設計図」、「一般設計図」、「施工図」、「部分詳細図(平面、断面、姿図、部品表)」、「建材表、部品表、および建材および部品メーカーの製造ラインのコンピュータ制御システムに入力可能な建材部品製造に必要な建材部品製造データ」等が作成され、
設計事務所端末(設計側コンピュータ端末)によって作成された図面が設計事務所端末の物件ホルダに保存されると、当該設計事務所端末の通信ソフトウエアが自動起動して、保存された図面データ(物件管理データ)を管理装置側の管理サーバに送信し、
管理サーバは設計事務所端末から物件管理データを受信すると当該物件管理データが物件管理サーバ側ホルダに保持されている内容と比較して更新されているか否かを判別し、更新されている場合には、当該物件管理データが記憶保持されている管理サーバ側物件ホルダの内容を更新し、
また、部分詳細図の作成にあたっては、端末装置からインターネット17を経由して、予めインターネット上に公開されている各建材メーカーの建材データベース31を検索して、当該建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報を取得し、当該建材部品情報に基づき、各部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成し
図面内容が確定すると物件建材データベースの内容が確定し、部分詳細図に基づき作成された建材表および部品表と、各建材メーカの製造ラインのコンピュータ制御システムに直接入力可能な建材部品データが含まれている建材メーカ販売代理店端末7への送信用データが自動生成されて、建材データベース資料提供メーカに送信される
建築設計施工管理システム。」


(2)引用例2
同じく、原査定の拒絶理由において引用文献4として引用した、特開2000-132598号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。

(せ)「(57)【要約】
【課題】 工程や部材の搬入、製作図承認、部材製作の進捗状況に関する最新情報が関係者間で共有できるようにする。
【解決手段】 複数の端末装置8-1?8-nと、データ管理サーバと、相互に接続する通信回線とを備えると共に、データ管理サーバは、建設工事の工程及び部材の受発注、製作図承認、検査、納期その他の管理情報を持つ管理データと該管理データを図表により展開出力するための図面データとを記憶する記憶手段1?3と、管理データ及び図面データを設定更新するデータ設定更新手段4と、管理データ及び図面データを複数の端末装置のそれぞれに出力する出力手段5とを備え、複数の端末装置8-1?8-nは、管理データ及び図面データの設定更新を行い、図表により展開出力して建設工事の工程及び部材の管理情報を日付と部材及びそれらの表示態様の組み合わせで提供する。」

(そ)「【0011】工程管理表は、例えば図5、6に示すように縦軸と横軸にそれぞれ工事種別と年月日を設定して、各工事種別毎に各工事階の予定や確定の情報、平面図などのリンク情報を端末装置の画面に表示するものであり、これらの表として展開するためのデータがデータ管理サーバの図面データファイル3に格納され、各工事種別毎に各工事階の予定や確定、図面の情報を持つデータがデータ管理サーバの工程管理データファイル1、部材管理データファイル2に格納される。そして、この端末装置の画面に表示した工程管理表において、工程の新たな設定や変更が行われると、端末装置は、その設定、更新データをデータ管理サーバに送信し、データ管理サーバの工程管理データファイル1、部材管理データファイル2に格納されたデータを設定、更新する。このことによりデータ管理サーバは、設定、更新したデータを他の端末装置に送信するので、他の端末装置も同じ画面で更新しそれぞれが最新の情報を共有することができる。したがって、異なる場所(端末装置)で入力(更新、設定)したデータを参照しながら、常に最新データを入力することができる。工程管理表の中の図面の欄は、平面図や立面図とリンクし、例えばバルコニーの11Fの図面を選択すると、展開表示される平面図の例を示したのが図7である。」

(た)「【0012】図7に示す11階バルコニーの平面図は、部材の取付位置に上下2枠の入力欄を配置したものであり、各部材の平面的な位置関係が一目でわかるように表示している。また、入力欄の上段は、搬入予定又は搬入確定の日付の記入欄であり、日付の記入、搬入予定か搬入確定かの指定があると、その日付を搬入予定か搬入確定か保留中かにより異なる色で表示する。このことにより、工場で製作される各部材の搬入日(予定、確定)、取付け日などを色により判断することができる。下段は、版名又は製品コードの記入欄であり、版名又は製品コードの記入と共に工場での製作状況(どの製作工程か、製作図は承認されたか、保留か、製品検査か)の指定があると、版名又は製品コードを工場での製作状況、進捗状況に応じて異なる色で表示する。このことにより、複数の工程を経て製作される部材の工場における製作の進捗状況が一目で認識することができる。また、立面図の場合にも、図8(柱・梁)に示すように進捗状況に応じて各部材を異なる色で表示することによりその状況を一目で認識することができる。」

上記引用例2の記載(せ)?(た)よれば、引用例2には、複数の端末装置と、データ管理サーバとが相互に通信回線で接続されたシステムであって、部材の工場での製作状況、進捗状況を関係者間で共有できる、建設工事の工程管理表システムの発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているといえる。


(3)周知例
また、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開平7-262016号公報(以下、「周知例」という。)には、以下の記載がある。
(ち)「(57)【要約】
【目的】与えられた問題に対する最適な計画立案を高速に行なう計画立案装置を提供する。
【構成】並列動作が可能な複数の処理装置を有し、与えられた問題を表現する目的関数の値を最小又は最大にする計画を立案する計画立案装置100において、前記複数の処理装置11A?11Nが各々、同一時間経過に対し各々自律的に前記計画の最適化を図りながら自身の最適化進捗の状況を判断する計画評価手段113と、所定時間連続して前記計画に変化が無い場合は、他の処理装置によって生成されたより優れた計画案を自身に取り込む自立淘汰手段114とを備え、自律協調的に最適化を図ることを特徴とする。」
(つ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は各種分野における様々な計画立案、設計、制御における最適案を提供する計画立案方法及び装置に関し、特に、順列組合せの数が膨大な問題を簡易な構成で極めて高速に解決する計画立案方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、多種多様な分野(例えば、電子基板のプリントパタ-ン設計、製造プロセス、下水道配管設計、物流システム等)における、各種問題を対象とする計画立案問題において、最大、あるいは、最小とする項目を決め、該項目を、最大、あるいは、最小とする計画案である最適解を、現実的に許容しえる時間内に見つけ出すために各種の手法が提案されてきた。
【0003】例えば文献「「巡回セ-ルスマン問題」に画期的方法-カオス利用で驚異の高成績、科学朝日、1993-Feb.」、あるいは、特開平2-304587号公報「最短距離、最短時間または最低交通費算出装置」に記載されているように、相互結合型ニュ-ラルネットワ-ク、カオス等を応用して、各種分野における計画立案問題の最適化を、現実的に許容し得る時間内で行う手段を実現しようとするものであった。
【0004】また、文献「HANDBOOK OF GENETIC ALGORITHM(Van Nostrand Reinhold)」に記載されている様に生物の進化を模擬し、大域的に準最適解を求める、遺伝的アルゴリズムも有望な手段として注目されている。」
(て)「【0115】本実施例と同様な問題として、
(1)配送計画
(2)配車計画
(3)製鉄における圧延計画
(4)自動倉庫の入出庫計画
(5)材料取り計画
などがある。」

周知例の記載(ち)?(て)によれば、多種多様な分野(例えば、電子基板のプリントパタ-ン設計、製造プロセス、下水道配管設計、物流システム等)における、各種問題を対象とする計画立案問題において、最大、あるいは、最小とする項目を決め、該項目を、最大、あるいは、最小とする計画案である最適解を、現実的に許容しえる時間内に見つけ出すために各種の手法が従来から提案されてきたといえ、そのような問題の一つとして「材料取り計画」の問題があることがこの出願の出願前において周知の事項であったといえる。


3.対比
引用例1発明と本願発明とを対比する。
引用例1発明における、「三次元のオブジェクト機能を備えたCADソフト(建築設計図作成用プログラム)」は、コンピュータ上で実行されることで、CAD処理手段として機能することは明らかであり、また「建築設計図」作成用となっており、「住宅」は建築(建築物)に含まれることは明らかである。してみると、引用例1発明における、「三次元のオブジェクト機能を備えたCADソフト(建築設計図作成用プログラム)」と、本願発明における「住宅CAD処理手段」とは、「建築設計用のCAD処理手段」である点で共通する。
引用例1発明における、「設計事務所端末(設計側コンピュータ端末)」は、「三次元のオブジェクト機能を備えたCADソフト(建築設計図作成用プログラム)」を実行するコンピュータであるといえるから、「建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータ」である点で、本願発明における「住宅CADサーバー装置」と共通する。
引用例1発明における「建材」は、本願発明における「部材」に対応する。
引用例1発明における「イントラネット」及び「インターネット」は、本願発明における「ネットワーク」に相当する。
引用例1発明において、部分詳細図の作成の際に、端末装置からインターネット17を経由して検索する、「各建材メーカーの建材データベース31」は、記憶手段に建材のデータが保存されたものといえるから、引用例1発明における、「当該建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報」は、本願発明における「記憶手段に保存された住宅の部材データ」に相当する。
引用例1発明において、「CADソフト」で作成される図面に基づいて、「部品表」、「建材表」などが作成され、該「部品表」、「建材表」等が建材メーカーへの発注に用いられることから、該図面は、発注するための「建材」を抽出するために用いられるといえる。してみれば、引用例1発明における「図面」は、本願発明における「部材を抽出するためのCADデータ」に相当する。
引用例1発明における「管理サーバ」は、「建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータ」である「設計事務所端末(設計側コンピュータ端末)」から、CAD処理手段で作成された図面(CADデータ)を受信する側の「管理サーバ」である点で、本願発明における「住宅部材生産管理サーバ装置」に対応する。
引用例1発明における、「設計事務所端末(設計側コンピュータ端末)によって作成された図面が設計事務所端末の物件ホルダに保存されると、当該設計事務所端末の通信ソフトウエアが自動起動して、保存された図面データ(物件管理データ)を管理装置側の管理サーバに送信し、管理サーバは設計事務所端末から物件管理データを受信すると当該物件管理データが物件管理サーバ側ホルダに保持されている内容と比較して更新されているか否かを判別し、更新されている場合には、当該物件管理データが記憶保持されている管理サーバ側物件ホルダの内容を更新する」との処理は、設計事務所端末における図面の更新状態が、管理サーバ側物件ホルダに反映されるものといえるから、この処理は、本願発明における、「同期処理」に相当する。
そして、引用例1発明において、「設計事務所端末」、「管理サーバ」の双方にこの同期処理のための手段を備えていることは明らかであり、本願発明における「データ連携手段」に相当する。
引用例1発明における、「建材メーカー販売代理店の所に設置した建材メーカー販売代理店端末7」は、「管理サーバ」から「部分詳細図に基づき作成された建材表および部品表と、各建材メーカの製造ラインのコンピュータ制御システムに直接入力可能な建材部品データ」を受信するといえる。
引用例1の記載(す)から、建材メーカーは、該データに基づいて建材の製造を行うことは明らかである。してみれば、「建材メーカー販売代理店の所に設置した建材メーカー販売代理店端末7」が、「管理サーバ」から「部分詳細図に基づき作成された建材表および部品表と、各建材メーカの製造ラインのコンピュータ制御システムに直接入力可能な建材部品データ」を受信することは、建材を受注しているといえ、本願発明における「部材の受注」に相当する。

してみると、引用例1発明と本願発明とは、次の点で一致し、また、相違する。

(一致点)
「建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータと
管理サーバとが、
ネットワークに接続されているシステムであって、
建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータとサーバとに、データ連携処理手段を設けて、建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータのCADデータに生じたデータ更新状態をサーバのCADデータに反映させる同期処理を行わせる
ことを特徴とするシステム。」

(相違点1)
本願発明は、「住宅」に関するものであるのに対して、引用例1発明は、そのようになっていない点。

(相違点2)
建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータが、本願発明では「住宅CADサーバー装置」であるのに対して、引用例1発明は、そのようになっていない点。

(相違点3)
本願発明では、「住宅CADサーバー装置」が「記憶手段に保存された住宅の部材データ」を備えているのに対し、引用例1発明は、そのようになっていない点。

(相違点4)
「管理サーバ」について、本願発明では、「商品データベース、受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ、および受注可能な部材の部材データを記憶手段に保存し、部材の受注から生産管理までの処理を行う住宅部材生産管理手段を備えた住宅部材生産管理サーバー装置」であるのに対して、引用例1発明は、そのようになっていない点。

(相違点5)
本願発明では、「住宅部材生産管理サーバー装置の住宅部材生産管理手段」は、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう処理手段」を備えているのに対して、引用例1発明は、そのようになっていない点。


4.判断
上記相違点1?5について、それぞれ判断する。

(相違点1について)
引用例1発明は、「建築」の設計施工管理システムとなっているが、「住宅」は、建築物の一つとして周知のものであり、引用例1発明を住宅に適用することに特段の阻害要因はないから、引用例1発明を「住宅」の設計施工管理に適用することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点2について)
建築設計用のCAD処理手段を備えたコンピュータについて、引用例1発明は、「設計事務所に設置された設計事務所端末」と記載されており、「サーバー装置」である点についての記載はない。しかし、「CAD処理手段」と「データ連携処理手段」を備えているという点で、機能上の実質的な差異はない。
そして、CADプログラムをサーバー装置上で動作させることはこの出願の出願前において普通に行われていることであるから、引用例1発明において、設計事務所端末を「サーバー装置」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点3について)
引用例1発明では、CADによる設計に用いる建材部品情報について、インターネット上においてインターネット上において予め用意されている建材データベースをウエブ検索するように構成されている点で、「住宅の部材データ」が「記憶手段に保存」されている本願発明と相違する。
しかし、設計に必要なデータをコンピュータ内の記憶手段に保持することは、この出願の出願前において通常行われていることであり、引用例1発明において、建材部品情報を設計事務所端末の記憶手段に保存するように構成することは、当業者が容易になし得たことである。

(相違点4について)
まず、相違点4のうち、「部材の受注から生産管理までの処理を行う住宅部材生産管理手段」について判断する。
引用例1発明の、「管理サーバ」には「部材の受注から生産管理までの処理を行う住宅部材生産管理手段」に相当する構成の記載はない。
一方、引用例1には、建材の発注情報が、「管理サーバ」から、「建材メーカ販売代理店端末」に送信され、建材の製造は、「建材メーカ」によって行われるように記載されている。そして、引用例1の記載(く)にあるように、図面データの変更が発生した場合、変更により更新された建材部品データが自動送信され、建材メーカでは更新データに基づき対応することが記載されている。
また、「建材メーカ販売代理店端末」用の送信データとして、「各建材メーカの製造ラインのコンピュータ制御システムに直接入力可能な建材部品データ」が含まれていることから、建材メーカにおいて製造ラインがコンピュータ制御されるものを含むことは明らかである。
また、業者間のコンピュータをネットワークを介して接続する事は引用文献1に記載されており、引用例1発明において「建材メーカ販売代理店」だけでなく「建材メーカ」をネットワークを介して接続するように構成することは、引用例1の記載から自明のことである。
また、部材の生産を管理することは、通常行われていることであり、そのような管理をコンピュータで行うことも、例えば引用文献2に記載されているように、周知のことである。
してみると、引用例1発明において、部材の受注から生産管理までの処理は、「建材メーカ販売代理店端末」や「建材メーカ」のコンピュータによって行われるものであるといえる。
また、引用例1発明において、図面データの変更が発生した場合、変更により更新された建材部品データが自動送信されていることから、管理サーバと建材メーカとの関係においてもCADデータの変更を反映させるという課題を有していることは明らかである。
そして、受発注の当事者をどのようにするかは、商習慣等に基づき必要に応じて適宜決定すべきものであるところ、メーカに直接発注することは、通常行われていることであるから、引用例1発明において、建材の発注を建材メーカに直接行うようにし、「設計事務所端末(設計側コンピュータ端末)によって作成された図面が設計事務所端末の物件ホルダに保存されると、当該設計事務所端末の通信ソフトウエアが自動起動して、保存された図面データ(物件管理データ)を管理装置側の管理サーバに送信し、管理サーバは設計事務所端末から物件管理データを受信すると当該物件管理データが物件管理サーバ側ホルダに保持されている内容と比較して更新されているか否かを判別し、更新されている場合には、当該物件管理データが記憶保持されている管理サーバ側物件ホルダの内容を更新する」という管理サーバの構成を、設計事務所と建材メーカ間のデータ更新に適用することは、当業者が容易になし得たことである。
次に、「商品データベース、受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ、および受注可能な部材の部材データを記憶手段に保存」する点について判断する。
「受注する部材を抽出するための住宅のCADデータ」は、同期処理によってやりとりされるものであるから、引用例1発明においても当然記憶手段に保存されているといえる。
「商品データベース」及び、「受注可能な部材の部材データ」について、引用例1のCADソフトには、「インターネット上において予め用意されている建材データベースをウエブ検索する建材データベース検索機能」と、「この建材データベース検索機能によって検索された該当建材部品の図形情報および属性情報を含む建材部品情報に基づき、各部屋毎の各部分の詳細納まり図を作成する詳細納まり図作成機能」を有することから、「建材部品情報」がインターネット上においてなんらかの主体によって検索可能に用意されているといえる。そして、建材部品情報の提供に関し、「建材メーカ」(あるいは販売代理店)が自社の製品の情報を提供することは、通常行われていることである。また、そのようにして情報提供される建材は、通常「受注可能」なものであると解される。
してみると、引用例1発明を設計事務所と建材メーカ間に適用した際に、「商品データベース」及び、「受注可能な部材の部材データ」を記憶手段に保存するように構成することは、当業者が必要に応じて適宜付加すべき程度のことである。

(相違点5について)
相違点5のうち、「上記住宅CADサーバー装置の設計結果のCADデータと同期した自己のCADデータ」は、引用例1発明にもCADデータを同期する構成が記載されているからこの点では相違しない。
次に、「...CADデータを用いて、住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行なう」点について判断する。
引用文献1には、「建材および部品メーカーの製造ラインのコンピュータ制御システムに入力可能な建材部品製造に必要な建材部品製造データを作成する機能」を有することが記載されており、建材部品製造に関する情報を作成することが記載されている。
そして、建材や部品を製造する際に材料取りを考慮することは通常行われていることであり、その際に材料取りを最適化することは、当業者が追求すべき自明の課題である。
また、建材として木材を材料に用いることは通常行われていることである。
また、「材料取りの最適化」をコンピュータを用いて行うことは、周知例に記載されているように、この出願の出願前において周知のことである。
なお、本願発明における「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計」について、それがどのような処理であるのか、請求項には具体的な記載がなく、その内容が明確でないため、発明の詳細な説明を参酌すると、関連する記載として、段落0039に以下の記載がある。
「(3)図8(3)のフロー:
住宅部材生産管理サーバー装置21の住宅部材生産管理部24は、住宅部材の受発注データやCADデータ等の蓄積情報の分析から、住宅の部材から木材までの材料取りの全体最適解を計算し、仕掛品や素材のサイズや、木材の育林計画の参考情報を提供する。山林経営会社は、端末からこの情報にアクセスして、素材の生産計画を立てることができる。部材メーカーが、製品のサイズや需要数の情報等を山林経営会社などの関連会社と共有することにより、素材の規格の見直しを行うことも容易になり、歩留まりを考えて最適な素材の製造、木材の生産をすることができる。」
段落0039の上記記載箇所、及び、参照する図8(3)の記載からは、「住宅部材生産管理部」が「住宅部材の受発注データ」や「CADデータ」等を分析して、材料取りの全体最適解(材料取りの全体の最適設計に対応すると解される。)を計算すると解されるが、具体的にどのような分析や計算(情報処理)が行われるのかはなんら記載も示唆もされておらず、周知の手段を付加することを示唆する程度の記載であるから、発明の詳細な説明の記載を参酌しても「住宅部材から素材の木材までの材料取りの全体の最適設計を行う処理手段」を設けることが、周知の事項に対して格別の困難性を有するとはいえない。
してみると、引用例1発明において、「材料取りの全体の最適設計を行なう」構成を付加することは、当業者にとって自明の課題を解決するための周知の手段の付加という程度のことであり、当業者が容易になし得たことである。

また、本願発明の効果は引用例1,2及び周知の事項から当業者が予想可能な範囲内のものであり、格別のものではない。

してみれば、本願発明は、引用例1,2及び周知の事項に基づいてこの出願の出願前において当業者が容易に発明できたものであるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃び2に記載された発明及び周知の事項に基づいてこの出願の出願前において容易に発明できたものであるので特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-19 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-08 
出願番号 特願2002-267293(P2002-267293)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 572- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩間 直純  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 手島 聖治
菅原 浩二
発明の名称 住宅部材生産管理ネットワークシステム  
代理人 渡部 章彦  
代理人 長谷川 文廣  

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