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審決分類 審判 査定不服 産業上利用性 特許、登録しない。 G09B
管理番号 1186781
審判番号 不服2005-21066  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-01 
確定日 2008-10-31 
事件の表示 特願2005- 40956「コンピュータを利用した空欄問題形式の学習用プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月29日出願公開、特開2005-266796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成17年2月17日(優先日:平成16年2月20日、出願番号:特願2004-43814号)の特許出願であって、拒絶理由通知に応答して平成17年7月8日付けで手続補正がされたが、平成17年9月30日付けで拒絶査定がされ、これを不服として平成17年11月1日付けで審判請求がされたものである。

第2 本願特許請求の範囲請求項1に記載された事項
本願特許請求の範囲請求項1に記載された事項(以下、「本願請求項1」という。)は、平成17年7月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の記載からみて、その特許請求の範囲請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
初期表示では1個以上の空欄を含む画像を表示し、
初期表示後はそれぞれ空欄に該当する情報を表示する機能をコンピュータに実現させるためのプログラムであって、
利用者の単一の入力操作に応じて、
非表示の空欄の中の最初の空欄内に該当情報を表示することで、
予め記録された順序で、画像内の空欄に該当する情報を表示する機能、
を備えたことを特徴とするプログラム。」

第3 本願請求項1に対する原査定の拒絶の理由
本願請求項1に対する原査定の拒絶の理由は、本願請求項1は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではなく、特許法第29条第1項柱書きでいう「発明」に該当しないというものである。

第4 本願請求項1に対する当審の判断
本願請求項1には「1個以上の空欄を含む画像」及び「空欄に該当する情報」とあるが、どのような「画像」とするか、そして「画像」のどの部分を「空欄」とするか、あるいは何をもって「空欄に該当する情報」とするかについては、いずれも自然法則とは関係なく任意に定めることができるものであるから、上記「1個以上の空欄を含む画像」及び「空欄に該当する情報」は、いずれも人為的な取決めに基づいて定められる情報と解される。
してみれば、本願請求項1のうち、「初期表示では1個以上の空欄を含む画像を表示し、初期表示後はそれぞれ空欄に該当する情報を表示する」点、「利用者の単一の入力操作に応じて、非表示の空欄の中の最初の空欄内に該当情報を表示する」点、及び「予め記録された順序で、画像内の空欄に該当する情報を表示する」点は、いずれも人為的な取決めに基づいて定められる情報をどのように「表示する」か、すなわち表示の手順を特定したものといえる。
そして、本願請求項1のうち「初期表示では1個以上の空欄を含む画像を表示し、初期表示後はそれぞれ空欄に該当する情報を表示する」点は、「初期表示」及び「初期表示後」において、それぞれ人為的な取決めに基づいて定められる情報を表示するというだけの手順であるから、それ自体が人為的な取決めに属するものと解される。
また、本願請求項1のうち「予め記録された順序で、画像内の空欄に該当する情報を表示する」点は、人為的な取決めに基づいて定められる情報を「予め記録された順序で」、すなわち人為的な取決めに基づいて表示するという手順である。
さらに、本願請求項1のうち「利用者の単一の入力操作に応じて、非表示の空欄の中の最初の空欄内に該当情報を表示する」点は、「利用者の単一の入力操作」と「非表示の空欄の中の最初の空欄内に該当情報を表示する」という手順を対応づけたものであるが、当該対応づけは自然法則と関係なく人為的な取決めによって規定されるものである。
以上のことから、本願請求項1が実現しようとする「初期表示では1個以上の空欄を含む画像を表示し、初期表示後はそれぞれ空欄に該当する情報を表示する機能」及び「利用者の単一の入力操作に応じて、非表示の空欄の中の最初の空欄内に該当情報を表示することで、予め記録された順序で、画像内の空欄に該当する情報を表示する機能」は、全体として人為的取決めに属するものであって、自然法則を利用しているとはいえない。

ここで、本願請求項1は、特定の「機能」を「コンピュータに実現させる」ための「プログラム」に関するものであり、コンピュータ・ソフトウエア関連発明に特有の判断、取扱いが必要であると解される。
そして、コンピュータ・ソフトウエア関連発明が自然法則を利用した技術的思想の創作である「発明」といえるためには、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されている必要がある。
しかしながら、本願請求項1のうち「コンピュータに実現させる」との点は、ハードウエア資源として「コンピュータ」を用いることのみが特定されているにすぎない。そして、本願請求項1には他にハードウエア資源が具体的に記載されている箇所はなく、目的とする機能を実現するためにソフトウエアとハードウエア資源とが具体的にどのように協働しているのかまったく特定されていない。してみれば、本願請求項1において、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているといえないことは明らかである。
よって、本願請求項1は、総体としてみても、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとはいえず、「発明」に該当しない。

なお、審判請求書における請求人の主張の要部に関して、以下に付言しておく。
請求人は審判請求書において、本願請求項1に関して、
「コンピュータの単なる使用でなく、特段の効果があるようにコンピュータを使用する設計であるから、ハードウェア資源を用いて具体的に実現している。」(「【請求の理由】3.本願が特許されるべき理由 要点1について」参照)
と主張しているが、「特段の効果があるようにコンピュータを使用する設計である」か否かと、ソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているか否かとの間に直接の関連はないのであるから、「特段の効果があるようにコンピュータを使用する設計である」としても、「具体的に実現する内容」が明示されていなければ、直ちにソフトウエアによる情報処理がハードウエア資源を用いて具体的に実現されているとはいえない。
また、請求人は審判請求書において、
「本願発明の請求項1は、
・初期表示では空欄問題を表示し、初期表示後は利用者の例えば改行キーを押すような簡単な入力操作だけで、一つ一つ空欄内に正解を表示する
・画像内には複数の空欄問題を設定可能である
・画像内の空欄の正解表示順序はデータで設定可能
・画像内の空欄の正解は、文字だけでなく画像を正解として表示できる
ように構成することで、数学や物理の分野の知識の確認を、知識量が大量であっても、短時間で、簡単に確認できるようにしている。」(「【請求の理由】3.本願が特許されるべき理由 要点1について」参照)
点をもって特段の効果があると主張しているが、
例えば、本願出願前に頒布された刊行物である特開2002-62792号公報には、画像内に複数の問題を設定可能とする点(【0023】?【0033】、及び【図3】?【図6】等参照)、及び文字だけでなく画像を正解として表示する点(【0026】等参照)が、
同様に、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-305643号公報には、利用者の簡単な入力操作だけで、設定された表示順序で学習すべき情報を表示する点(【特許請求の範囲】等参照)が、
それぞれ記載されていることから、請求人が特段の効果と主張する上記の効果はそれぞれ本願出願前に知られており、それらを組み合わせても本願発明のみが奏する特段の効果ということはできない。

以上のように、本願請求項1は、自然法則を利用した技術的思想の創作とはいえないのであるから、「発明」に該当せず、特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しない。

第5 むすび
以上のとおり、本願請求項1は、特許法第29条第1項柱書きに規定されている「産業上利用することができる発明」に該当しないから、同項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-21 
結審通知日 2008-08-26 
審決日 2008-09-08 
出願番号 特願2005-40956(P2005-40956)
審決分類 P 1 8・ 14- Z (G09B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 昭彦  
特許庁審判長 酒井 進
特許庁審判官 坂田 誠
菅野 芳男
発明の名称 コンピュータを利用した空欄問題形式の学習用プログラム  

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