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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C |
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管理番号 | 1186799 |
審判番号 | 不服2007-6355 |
総通号数 | 108 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-12-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-01 |
確定日 | 2008-10-31 |
事件の表示 | 特願2001-379533「焼結含油軸受材」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 3日出願公開、特開2003-184882〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成13年12月13日の出願であって、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成18年4月25日付け及び平成18年10月20日付けの各手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項によって特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】銅被覆鉄粉を主材とし、しかも錫、鉛、黒鉛、二硫化モリブデン、BNの何れをも非含有の素材金属粉であって、該素材金属粉の成分に占める鉄の割合が、15?38(重量)%の範囲内にある素材金属粉を圧粉成形した軸受素材を焼結してなる焼結含油軸受材。」(以下「本願発明」という。) 2.引用刊行物とその記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平1-225749号公報(以下「刊行物」という。)には、「含油軸受用焼結材およびその製造法」に関して、図面第1図ないし第4図とともに次の事項が記載されている。 ア 「8.鉄粉に重量比で非鉄金属を18?50wt%被覆した粉粒体100重量部に更に非鉄金属粉11?240重量部を添加した原料粉を圧粉成形してから焼結し、サイジングすることを特徴とする含油軸受用焼結材の製造法。 …… 10.鉄粉に被覆される非鉄金属が……銅、……の何れか……による電気メッキ、溶融メッキ、無電解メッキ、溶射、ドライブレーティングの何れかである請求項7?9の何れか1つに記載の含油軸受用焼結材の製造法。」(第2ページ左上欄第4行?右上欄第2行) イ 「14.非鉄金属を被覆した鉄粉に対し更に添加される非鉄金属粉が……Cu、Sn、Pb、Zn、……の何れか、またはそれらの合金……をも含有した粉末である請求項7から13の何れか1つに記載の含油軸受用焼結材の製造法。 15.非鉄金属を被覆した鉄粉に対し更に添加される非鉄金属粉が銅と亜鉛を主体とした合金としての黄銅粉である請求項14に記載の含油軸受用焼結材の製造法。」(第2ページ右上欄第12行?左下欄第2行) 前記記載事項ア「8.」には、「鉄粉に重量比で非鉄金属を18?50wt%被覆した粉粒体」との記載があり、当該記載の粉粒体における鉄粉の重量比は、計算すると50?82wt%となる。また同じく、「粉粒体100重量部に更に非鉄金属粉11?240重量部を添加した原料粉」との記載があり、当該記載の原料粉の成分に占める鉄の割合は、計算すると14.7?73.9wt%となる。そして、前記記載事項ア「10.」には、鉄粉に被覆される非鉄金属が銅である旨が記載されており、当該銅である場合の前記記載事項ア「8.」の粉粒体は、「銅被覆鉄粉」といえるものである。 よって、刊行物には、 「銅被覆鉄粉を主材とした原料粉であって、該原料粉の成分に占める鉄の割合が、14.7?73.9wt%の範囲内にある原料粉を圧粉成形した軸受素材を焼結してなる含油軸受用焼結材。」 の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.発明の対比 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「原料粉」及び「含油軸受用焼結材」は、それぞれ、本願発明の「素材金属粉」及び「焼結含油軸受材」に相当する。また、素材金属粉の成分に占める鉄の割合に関し、引用発明の「14.7?73.9wt%」と本願発明の「15?38(重量)%」とは、「15?38(重量)%」の範囲で重複する。 よって、本願発明と引用発明とは、 [一致点] 「銅被覆鉄粉を主材とした素材金属粉であって、該素材金属粉の成分に占める鉄の割合が、15?38(重量)%の範囲内にある素材金属粉を圧粉成形した軸受素材を焼結してなる焼結含油軸受材。」 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点] 素材金属粉に関し、本願発明では、「しかも錫、鉛、黒鉛、二硫化モリブデン、BNの何れをも非含有の」素材金属粉と限定されるのに対して、引用発明では、素材金属粉に相当する原料粉が、「錫、鉛、黒鉛、二硫化モリブデン、BNの何れをも非含有」であるとは明示されていない点。 4.当審の判断 そこで、前記相違点について以下で検討する。 刊行物の記載事項イには、非鉄金属を被覆した鉄粉に対し更に添加される非鉄金属粉として、Cu、Sn、Pb、Zn、等の何れか、またはそれらの合金を含有した粉末があるところ、前記非鉄金属粉が、それらのうちの銅と亜鉛を主体とした合金としての黄銅粉である旨が記載されている。そして、前記銅と亜鉛を主体とした合金には、銅と亜鉛のみを成分とする合金も含まれるから、前記刊行物の記載事項イは、引用発明の原料粉が、錫及び鉛を含有しない場合があることを示すものといえる。 また、黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を添加すると、油類の粘度を高めてトルクロスを大ならしめ好ましい摩擦係数低減を得難い場合があることは、周知の事項である(例えば、特開平4-202637号公報の第2ページ左上欄第1?5行、参照)から、引用発明の原料粉が、固体潤滑剤である黒鉛、二硫化モリブデン、BNを含有しないようにすることは、当業者であれば、必要に応じて適宜なし得るものといえる。 そうすると、引用発明において、素材金属粉に相当する原料粉が、錫、鉛、黒鉛、二硫化モリブデン、BNの何れをも含有しないようにすることは、刊行物の記載事項イ及び前記周知の事項に基づいて、当業者であれば容易に想到することができたものである。 また、本願発明が奏する作用効果も、引用発明、刊行物の記載事項イ及び前記周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。 5.むすび したがって、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、刊行物に記載された発明及び前記周知の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の請求項2ないし5に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-08 |
結審通知日 | 2008-08-19 |
審決日 | 2008-09-01 |
出願番号 | 特願2001-379533(P2001-379533) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(F16C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 冨岡 和人 |
特許庁審判長 |
溝渕 良一 |
特許庁審判官 |
礒部 賢 村本 佳史 |
発明の名称 | 焼結含油軸受材 |
代理人 | 吉村 公一 |