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審決分類 審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H02M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02M
管理番号 1186884
審判番号 不服2007-7047  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-08 
確定日 2008-10-30 
事件の表示 特願2004- 62316「電源平滑装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 9月15日出願公開、特開2005-253228〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成16年3月5日の出願であって、平成19年1月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月8日に拒絶査定不服の審判が請求されるとともに、同年4月9日に明細書についての補正がなされたものである。

2.平成19年4月9日付けの手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「交流電源出力を整流する整流器と、この整流器の出力を平滑する偶数個の電解コンデンサと、これらの電解コンデンサが接続される少なくも2枚の導電板とを具備し、前記偶数個の電解コンデンサのそれぞれは、対向する一対の酸化膜を有する電極箔と、内部に0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着された電解液を含むセパレータと、前記電極箔のそれぞれに接続され、前記円筒体端面封止部より一方向に導出された、外部より識別し得る一対のリード電極とを備え、前記電極箔を前記セパレータを介して卷回してなる円筒体構造であり、前記偶数個の電解コンデンサの少なくとも1対は同一構造、容量を持ち、前記少なくも2枚の導電板は、前記円筒体構造の電解コンデンサの直径にほぼ等しい長さの短辺および少なくも前記直径の2倍の長さを有する長辺からなる長方形であり、前記長辺が間隙を挟んで対向配置されるとともに、前記間隙を挟んで対向配置される長辺に沿った端部に前記電解コンデンサのリード電極が貫通する一対の透孔が形成され、前記少なくも2枚の導電板の一方には、前記少なくとも1対の電解コンデンサの一方のリード電極が前記透孔内に挿入され半田により溶接固定され、前記少なくとも2枚の導電板の他方には、前記少なくとも1対の無極性コンデンサの他方のリード電極が前記透孔内に挿入され半田により溶接固定され、前記各電解コンデンサの一対のリード電極の前記長方形の導電板との接続点は互いにほぼ等間隔を保ち、一対のコンデンサの電極より発する磁束が互いに打ち消すような幾何学的位置に半田により溶接されていることを特徴とする電源平滑装置。」
とする補正を含むものである。

(2)補正の目的の検討
本件補正後の請求項1と、本件補正前の請求項1(平成18年8月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1。以下、「補正前請求項1」という。)とを対比して、本件補正の目的の適否について検討する。

補正前請求項1は、次のとおりである。
「交流電源出力を整流する整流器と、この整流器の出力を平滑する偶数個の電解コンデンサとを具備し、前記偶数個の電解コンデンサのそれぞれは、対向する一対の酸化膜を有する電極箔と、内部に0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着された電解液を含むセパレータと、前記電極箔のそれぞれに接続され、円筒体端面封止部より一方向に導出された、外部より認知し得るリード電極とを備え、前記電極箔を前記セパレータを介して卷回してなる無極性円筒体構造であり、前記偶数個の電解コンデンサの少なくとも1対は同一構造、容量を持ち、前記リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の面積を持つ低抵抗、低インダクタンスの導電板又は、前記リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の断面積を有する棒状導電体により、それぞれの内部電極から発する磁束が互いに打ち消すような関係で並列又は直列接続されていることを特徴とする電源平滑装置。」
(なお、補正前請求項1に記載された「前記円筒体端面封止部」は「円筒体端面封止部」の誤記であることが明らかであるので、上記のとおり認定した。)

そこで、本件補正の前後の請求項1を対比すると、補正後の請求項1は、補正前請求項1に記載されていた、電解コンデンサの少なくとも1対は「リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の面積を持つ低抵抗、低インダクタンスの導電板又は、前記リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の断面積を有する棒状導電体により」接続されている構成が削除されている。
したがって、本件補正は、特許請求の範囲の減縮を目的としたものに当たらない。
また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明を目的としたものにも当たらないことは明らかである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「補正前請求項1」として認定した事項により特定されるとおりのものと認められる。

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-252742号公報(以下「引用例」という。)には、「電源用平滑装置」に関し、図面と共に次の事項が記載されている。

・「【特許請求の範囲】
【請求項1】 交流電源出力を整流する整流器と、この整流器出力を平滑する偶数個の電解コンデンサとを具備し、前記電解コンデンサは対向する1対の酸化膜を有する電極箔を内部に電解液を含むセパレータを介して捲回してなる無極性構造で、前記電極箔のそれぞれの電極は外部より認知し得る表示手段を持ち、同一構造、容量を有する前記電解コンデンサの少なくとも1組はそれぞれの内部電極より発生する磁束が互に打消すような関係で並列又は直列接続されることを特徴とする電源用平滑装置。
【請求項2】 電極箔セパレータにセパレータの重量に対して0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着されている無極性コンデンサを具備することを特徴とする請求項1記載の電源用平滑装置。」

・「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高度な電子装置に利用される低雑音電源用平滑装置に関する。」

・「【0009】
【実施例】本発明の実施例を図面によって説明すれば、図1に示すようなコンデンサにおいて、1対のアルミ箔よりなる電極箔31-1、31-2とその電極箔相互間に天然繊維を主成分とする例えばマニラ紙等よりなるイオン透過性のセパレータ32-1、32-2よりなり、これには駆動用電解液となるほう酸アンモン等の溶液が含浸されいる。なお前記の電極箔の双方の表面には酸化膜(図示せず)が設けられていて、電極箔を内部に電解液を含むセパレータ32-1、32-2を介して捲回して無極性電解コンデンサを構成している。それぞれの電極箔にはリード端子33-1、33-2が溶接等により取付けられ、通常それぞれの電極を表示するため、一方は長く、他は短い外部リード線が接続される。
【0010】・・・円筒状に捲回完成された電解コンデンサは図3に示す如く円筒容器51に密封されて、封止部52よりリード線53-1、53-2が外部に導出される。リード線は長さに応じ図示のようにl、sと表示できる。電極箔は同一寸法で無極性であるため常に一定方向に捲回して製造し、上側の箔にはリード線l、下側の箔にリード線sを接続すれば正しい箔の関係を認知できる。その結果2個の電解コンデンサのlとsを結線して並列接続すれば内部電極より発生する磁束を互に打消すような関係にすることができる。
【0011】図4、図5及び図6はそれぞれ本発明の実施例に係る電源用平滑装置回路である。図4はスイッチング電源装置に適するもので、信号源61の入力を変成器62を介して整流器63-1に加え、整流器出力を並列接続した1対の無極性電解コンデンサで、平滑して端子66、67に直流出力を生ぜしめる。この際本発明にあっては図3により説明したリード線l、sを図示のように回路に接続すればコンデンサの電気的特性は図8の曲線13、14に示すような理想曲線となるので表1の如くリップル・ノイズは消滅させることができる。」

・図3には、円筒容器51の端面の封止部52より、長さが異なり外部から認知し得るリード線53-1、53-2が、一方向に導出された円筒体構造の電解コンデンサが記載されている。

・また、図4において、1組の電解コンデンサ64-1と65-1とは、各端子が導体で接続されていることは明らかである。

これらの記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「交流電源出力を整流する整流器と、この整流器の出力を平滑する偶数個の電解コンデンサとを具備し、前記偶数個の電解コンデンサのそれぞれは、対向する1対の酸化膜を有する電極箔と、電解液を含み内部に0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着されたセパレータと、前記電極箔のそれぞれに接続され、円筒容器の端面の封止部より一方向に導出された、外部より認知し得るリード線とを備え、前記電極箔を前記セパレータを介して捲回してなる無極性円筒体構造であり、前記偶数個の電解コンデンサの少なくとも1組は同一構造、容量を有し、導体により、それぞれの内部電極より発生する磁束が互いに打消すような関係で並列又は直列接続された電源用平滑装置。」

(3)対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「1対の酸化膜」は前者の「一対の酸化膜」に相当する。
また、後者の「電解液を含み内部に0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着されたセパレータ」と、前者の「内部に0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着された電解液を含むセパレータ」とは、前者において、導電性微粒子が分散結着されているのは電解液ではなくセパレータであることは明らかであるから、両者は同義といえる。
また、後者の「円筒容器の端面の封止部」は、前者の「円筒体端面封止部」に相当し、以下同様に「リード線」は「リード電極」に、「捲回して」は「巻回して」に、「1組」は「1対」に、それぞれ相当している。
さらに、後者の「(偶数個の電解コンデンサの少なくとも1組は)導体により(接続された)」態様と、前者の「(偶数個の電解コンデンサの少なくとも1対は)リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の面積を持つ低抵抗、低インダクタンスの導電板又は、リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の断面積を有する棒状導電体により(接続されている)」態様とは、「(偶数個の電解コンデンサの少なくとも1対は)導電体により(接続される)」との概念で共通する。
また、後者の「それぞれの内部電極より発生する磁束」は前者の「それぞれの内部電極から発する磁束」に、「電源用平滑装置」は「電源平滑装置」にそれぞれ相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「交流電源出力を整流する整流器と、この整流器の出力を平滑する偶数個の電解コンデンサとを具備し、前記偶数個の電解コンデンサのそれぞれは、対向する一対の酸化膜を有する電極箔と、内部に0.5乃至7重量%の導電性微粒子が分散結着された電解液を含むセパレータと、前記電極箔のそれぞれに接続され、円筒体端面封止部より一方向に導出された、外部より認知し得るリード電極とを備え、前記電極箔を前記セパレータを介して巻回してなる無極性円筒体構造であり、前記偶数個の電解コンデンサの少なくとも1対は同一構造、容量を持ち、導電体により、それぞれの内部電極から発する磁束が互いに打ち消すような関係で並列又は直列接続されている電源平滑装置。」
である点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
偶数個の電解コンデンサを接続する導電体に関し、本願発明では、「リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の面積を持つ低抵抗、低インダクタンスの導電板又は、リード電極の断面積の少なくとも5倍以上の断面積を有する棒状導電体」であるのに対し、引用発明では、そのような特定はなされていない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
一般に、種々の回路素子からなる電気回路において、回路素子を接続する導体のインダクタンスを低減するために、導体の幅を広げる等して断面積の大きい導電体を用いることは、例えば、原査定で引用された特開平10-94256号公報(「【0004】・・・半導体素子とコンデンサとの間のインダクタンスを極力減らす必要から、・・・コンデンサのリード線を太くしたり板状の導体を用いたり・・などの対策がとられている。【0005】後者のインダクタンスを低減する方法には2つの方法が考えられている。その1つは導体の幅を広くするか或いは導体を複数化するなどにより導体の電流密度を下げ、主回路を構成する導体の経路を極力短くすることにより、主回路導体の自己インダクタンスを低減する方法であり、・・」等を参照。)に記載されるように、周知の技術である。
また、導電体の断面積を大きくすれば、抵抗も減少することは自明であり、断面積をどの程度大きくするかは、インピーダンス低減効果の他に回路素子の大きさや配置スペース等、種々の条件を勘案して適宜選択し得る設計事項に過ぎない。
したがって、低雑音電源用平滑装置を提供することを目的とした引用発明において、雑音低減のために、上記周知の技術を参酌して、複数のコンデンサを接続する導電体として、本願発明の上記相違点に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得るものである。

そして、本願発明の全体構成により奏される効果は、引用発明及び周知の技術から当業者が予測し得る範囲のものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-28 
結審通知日 2008-09-02 
審決日 2008-09-16 
出願番号 特願2004-62316(P2004-62316)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02M)
P 1 8・ 56- Z (H02M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松本 泰典  
特許庁審判長 大河原 裕
特許庁審判官 田中 秀夫
谷口 耕之助
発明の名称 電源平滑装置  
代理人 竹花 喜久男  

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