• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1186925
審判番号 不服2007-31191  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-11-19 
確定日 2008-10-15 
事件の表示 平成10年特許願第527774号「交換用ライナおよび分与方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月25日国際公開、WO98/26746、平成13年 5月22日国内公表、特表2001-506571〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1997年12月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年12月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年1月7日付けで手続補正がなされ、平成18年9月15日付けで拒絶理由が通知され、平成19年3月26日付けで手続補正がなされると共に意見書が提出され、平成19年8月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成19年11月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであり、その請求項1ないし80に係る発明は、上記平成19年3月26日付け手続補正により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし80に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項28に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「28.少なくとも一つの保管場所を有するキャビネットと、
物品を保持するための複数の区画に前記保管場所を分割する調節可能な複数の分離部材と、
前記区画内に保持されている物品のリストを保管するためのメモリと物品の取出し要求を入力するための入力装置とを有するプロセッサと、
選択された物品にユーザを案内するために前記区画の一つの少なくとも一部を照らすために前記プロセッサに接続される手段とを具備する分与システム。」

第2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表平6-511183号公報(以下、「引用文献」という。)には、図面と共に、次の事項が記載されている。

ア.「発明の技術分野
本発明は薬物投与装置、特に、プログラマブル薬物投与装置に関するものである。」(公報第3頁右下欄第3行?同頁同欄第5行)

イ.「図面の簡単な説明
後に記載の説明文および添付図面により本発明の他の目的および効果を明らかにする。
図1は本発明に係る代表的な医者用処方データ入カステーションの構成を示す概略斜視図であり、
図2は薬剤師用の一般的な投与データ入カステーションの構成を示す概略斜視図であり、
図3は本発明に係る代表的な薬物投与装置の構成を示す概略斜視図であり、
図4は本発明に係る一般的な薬物投与装置の主要部品を示す概略ブロック図であり、
図5は本発明に係る薬物投与装置のその他の代表的な実施例の構成を示す斜視図である。」(公報第5頁右下欄第20行?第6頁左上欄第8行)

ウ.「本発明のプログラマブル薬物投与装置13の一般的な実施態様を図3に示す。長方形のボックス状ハウジング19には引出し20と21が二つ設けられており、これらの引出しはハウジングの両側面に摺動自在に収納される。さらに、ハウジングの上側に折り畳みできるスクリーン29内蔵のヒンジ付きカバー22を前記ハウジングは備えている。ハウジングの前方底面型の一方のレセプタクル23には、図1で説明した方法にて医者のコンピュータ11で符号化された処方モジュール12を挿入できるようになっており、一方のレセプタクル24には図2で説明したように薬剤師が符号化した投与モジュール18を挿入する。ハウジング13の上側にはキーボード25が配設されており、投与装置の操作に必要な情報を入力する。あるいは、不図示のコンピュータを投与装置に接続して必要な情報を入力するようにしてもよい。この場合、処方モジュール12と投与モジュール18はコンピュータ用ディスケットに交換する。
図示のプログラマブル薬物投与装置の実施態様では、右手側引出し20(引出しI)には特定の時間スケジュールで服用すべき薬を収納し、取り出せるようになっている。また、左手側引出し21には必要に応じて服用する薬を収納し、取り出せるようになっている。」(公報第6頁右下欄第6行?第7頁左上欄第2行。なお、本文の「コンピューター」は「コンピュータ」の誤記。)

エ.「次に”投与”キー40を操作すると、第一列の区画までしか出ないよう引出し20を引き出す。適当な区画32の表示ライト33は点滅光を発する。さらに、スクリーン29には”(錠剤の個数と薬の名称)を服用せよ”といったコマンドプロンプトが強調表示され、低強調点滅表示の”投与中”、強調点滅プロンプトの”(薬の名称)確認)、低強調表示の”(薬の名称)未確認”といった表示と共に薬を服用する指示がでる。使用者は、示された区画32から所定個数の錠剤を取り出し、表示された指示通りにそれらを服用する。キー34を押して”確認”入力をした時(しさえすれば)、点滅中の表示ライト33は消える。全ての確認事項において、その入力に際しては適切な”確認”がない場合は、投与装置12の次の動作は行われず、引出し20を閉じようとするとアラーム36が作動する。確認要求を満足する上で必要な行動が表示スクリーン29に表示される。この”確認”入力用の要件は、スクリーン上の指示に従ったか、あるいは、必要な患者の反応を入力したかといった確認にも適用される。」(公報第8頁左上欄第6行?同頁同欄第23行)

オ.「上述のように、薬物投与装置13の引出し22には必要になったままの薬(as-needed drugs)が格納されており、この薬のスケジュールは固定されておらず、および/または、その投薬量の変化もない。処方箋によって、一日当たりの最低間隔や最大累積投薬量といった変数が薬毎に規定されている。
必要な錠剤を使用者が服用しなくてはならない場合は、”要求”キー43を押す。すると、現在必要な薬(on-demand drugs)全てのリストが現れる。キー39で特定の薬へスクロールしたり、あるいは、キー38で選択すると適当な表示がスクリーン29に現れる。表示には具体的な情報が含まれている。例えば、最後に服用した時間、それからの経過時間、累積投薬量、残っている一日当たりの最大投薬量等である。
投与キー40を操作すると、引出し22が開く。この時から、現在必要な薬(on-demand drugs)は予定薬物のように取り扱われる。」(公報第8頁左下欄第18行?同頁右下欄第10行。なお、本文の「薬物投与装置12」は「薬物投与装置13」の誤記。)

カ.「図4には、一般的な投与装置の動作部品を示す概略ブロック図が示されている。図に示すように、投与装置は制御ユニット46を内蔵しており、この制御ユニットは従来の方法でプログラムされた従来のマイクロプロセッサを収容しており、モジュールリーダー47が処方モジュール12から読み出した情報や投与ユニット上部のキーを操作して入力した命令に従って上述の機能あるいはその他の機能を制御する。この制御ユニットは図3の引出し20、21用リリ一ス機構48、49およびこれらの引出し用の表示ライト制御ユニット50、51とそれぞれ相互に作用する。
また、制御ユニット46はキーボード25、スクリーン29、アラーム36、クロック30、例えば一または複数の携帯探知器と通信することが可能な遠隔通信ユニット52、電話インターフェースモデム、外部プリンター、赤外線制御ユニット等と相互に作用する。さらに、前記投与装置は、適当なメモリーユニット53や、例えば移動時または遠隔地における電力の低下時でも作動できるよう充電ユニット兼用電池を内蔵した電源54を具備している。」(公報第9頁左下欄第13行?同頁右下欄第6行。なお、本文の「遠隔通信ユニット51」、「メモリーユニット52」及び「電源53」、はそれぞれ「遠隔通信ユニット52」、「メモリーユニット53」及び「電源54」の誤記。)

(2)ここで、上記記載事項(1)ア.ないしカ.及び図面から、引用文献に記載されたものについて、次のことが分かる。

上記ア.の記載より、薬物投与装置、特に、プログラマブル薬物投与装置に関するものであることが分かる。

上記イ.、ウ.、エ.及び図3の記載より、プログラマブル薬剤投与装置13は、ボックス状ハウジング19が少なくとも一つの引出し20,21を有し、また、該引出し20,21は複数の分離部材によって薬を収納するための複数の区画32に分割されていることが分かる。

上記イ.、オ.及び図3の記載より、プログラマブル薬物投与装置13内には、区画32内に収納されている薬のリストが保管されていることが分かり、また、イ.、カ.及び図4の記載から、薬物投与装置13は、メモリーユニット53を具備した制御ユニット46を有していることが分かる。なお、情報をメモリーユニットに記憶させておくことは自明の事項である。

上記イ.、ウ.、エ.、カ.、図3及び図4の記載より、薬の取出し要求を入力するためのキーボード25を有する制御ユニット46を備えていることが分かる。

上記イ.、エ.及び図3の記載より、服用すべき薬を使用者に示すために区画32の一つの少なくとも一部に点滅光を発する表示ライト33を備えていることが分かる。また、イ.、カ.及び図4の記載から、表示ライト33を制御する表示ライト制御ユニット50、51が制御ユニット46に接続されていることが分かる。

(3)引用文献記載の発明
上記記載事項(1)、(2)より、引用文献には次の発明が記載されていると認められる。
「少なくとも一つの引出し20,21を有するボックス状ハウジング19と、
薬を収納するための複数の区画32に前記引出し20,21を分割する複数の分離部材と、
前記区画32内に収納されている薬のリストを保管するためのメモリーユニット52と薬の取出し要求を入力するためのキーボード25とを有する制御ユニット46と、
服用すべき薬を使用者に示すために前記区画32の一つの少なくとも一部に点滅光を発するために前記制御ユニット46に接続される表示ライト制御ユニット50、51とを具備するプログラマブル薬物投与装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。)

第3.本願発明と引用文献記載の発明との対比
本願発明と引用文献記載の発明を対比すると、引用文献記載の発明における「引出し20,21」、「薬」、「収納」、「区画32」、「リスト」、「メモリーユニット53」、「キーボード25」、「制御ユニット46」、「服用すべき薬を使用者に示す」、「少なくとも一部に点滅光を発する」、「制御ユニット46に接続される表示ライト制御ユニット50、51」及び「プログラマブル薬物投与装置」は、本願発明における「保管場所」、「物品」、「保持」、「区画」、「リスト」、「メモリ」、「入力装置」、「プロセッサ」、「選択された物品にユーザーを案内する」、「少なくとも一部を照らす」、「プロセッサに接続される手段」及び「分与システム」にそれぞれ相当する。
また、引用文献記載の発明における「ボックス状ハウジング19」と本願発明の「キャビネット」とは、いずれも薬等の保管を行う装置であることから、両者は、「物品保管装置」の限りにおいて相当する。

してみると、本願発明と引用文献記載の発明とは、
「少なくとも一つの保管場所を有する物品保管装置と、
物品を保持するための複数の区画に前記保管場所を分割する複数の分離部材と、
前記区画内に保持されている物品のリストを保管するためのメモリと物品の取出し要求を入力するための入力装置とを有するプロセッサと、
選択された物品にユーザーを案内するために前記区画の一つの少なくとも一部を照らすために前記プロセッサに接続される手段とを具備する分与システム。」で一致し、次の点において相違している。

[相違点1]
「物品保管装置」に関して、本願発明においては、「キャビネット」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、「ボックス状ハウジング19」である点。

[相違点2]
「分離部材」に関して、本願発明においては、「調節可能」であるのに対し、引用文献記載の発明においては、その点明らかでない点。

第4.当審の判断
まず、上記[相違点1]について検討する。
薬等の「物品保管装置」において、「キャビネット」型のものは、従来周知の技術(例えば、米国特許第5292029号明細書、米国特許5014875号明細書等を参照されたい。以下、「周知技術1」という。)にすぎない。

したがって、上記引用文献記載の発明における「物品保管装置」として、上記周知技術1を考慮して、上記[相違点1]に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

次に、上記[相違点2]について検討する。
一般に、区画を調整可能な「分離部材」を有する収容装置は、従来周知の技術(例えば、実願昭61-151186号(実開昭63-57237号)のマイクロフィルム、米国特許第5242223号明細書等参照されたい。以下、「周知技術2」という。)であることから、引用文献記載の発明における「分離部材」によって区画を調整可能にすることは、物品の収容性を考慮して、当業者が適宜設計し得る事項にすぎない。

したがって、上記引用文献記載の発明における「分離部材」において、上記周知技術2を考慮して、上記[相違点2]に係る本願発明の構成とすることは、当業者が格別困難なく想到し得るものである。

なお、本願発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び上記周知技術1,2から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。

第5.むすび
したがって、本願発明は、引用文献記載の発明及び上記周知技術1,2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-14 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-02 
出願番号 特願平10-527774
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川上 益喜  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 西本 浩司
金澤 俊郎
発明の名称 交換用ライナおよび分与方法  
代理人 鶴田 準一  
代理人 石田 敬  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ