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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C25B
管理番号 1186940
審判番号 不服2005-22825  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-11-25 
確定日 2008-11-14 
事件の表示 平成 8年特許願第106379号「電解用電極及び水電解方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月14日出願公開、特開平 9-268395〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年4月2日の出願であって、その請求項1?3に係る発明は、平成19年11月26日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「電極基体、及び該電極基体表面に被覆した導電性ダイアモンド構造の電極物質とを含んで成り酸性水、アルカリ性水又はオゾン水を製造するために使用することを特徴とする電解用電極。」

2.当審の拒絶理由の概要
当審において通知した平成19年10月1日付け拒絶理由の1つは、要するところ、平成16年9月24日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1、2、4?11に記載された発明は、本願出願前に日本国内において頒布された刊行物である引用文献1?7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3.引用刊行物とその主な記載事項
上記拒絶理由に引用された特開平7-299467号公報(以下、「引用例1」という。)、特開昭48-98080号公報(以下、「引用例2」という。)、特開昭59-23890号公報(以下、「引用例3」という。)、特開平5-339769号公報(以下、「引用例4」という。)には、次の事項が記載されている。
〔1〕引用例1:特開平7-299467号公報
〔1a〕「【特許請求の範囲】
【請求項1】 その環境中への排出がさらに許容可能なものに溶液をするための、溶液中溶質の処理方法であって、前記溶液を、電導性結晶性ドーピング化ダイヤモンドを含む陽極を用いて電気分解して、それにより前記溶質を酸化することを含んでなる処理方法。」
〔1b〕「【0013】さらに、ダイヤモンド陽極は、本発明方法により処理された溶液中に有毒又は非回収性金属資源材料を排出しない。」
〔1c〕「【0014】
【実施態様】環境中への排出がさらに許容可能なものに溶液をするための、溶液中溶質を電気分解酸化する既知方法と、本発明方法の唯一の本質的差異は、本発明方法に用いる陽極の性質にある。実質的にすべての他の点では、本発明は、既知方法と同一又は類似であることができる。・・・
【0015】本発明方法に用いる陽極は、電源と直接接続した電導性結晶性ドーピング化ダイヤモンドの自立層もしくはフィルム(例えば、取りはずし可能な基板上にダイヤモンドを析出させ、続いて基板からそのダイヤモンドを分離することにより調製する)のみを含むことができるが、本発明陽極は、電導性基板上のドーピング化ダイヤモンドの層もしくはフィルムを含み、前記基板が電源と電気接続していることが好ましい。」
〔1d〕「【0022】基板の機能は、電極アセンブリ中を電流が流れやすくするための通路を提供し、そして薄いダイヤモンドフィルムのための機械的支持体を提供することである。・・・以下に述べる、基板の3つの特性が最も重要である。第一に、有用な電極の構成には基板の電導性が必須であり、ダイヤモンドフィルムについて先に述べたと同じファクターの多くが、基板の選択に適用される。・・・
【0023】基板の第二の特性及び第三の特性は密接に関連しており、ドーピング化ダイヤモンドを基板上に付着させるプロセスの結果としての界面形成が含まれる。・・・電気化学的用途のためには、この界面がダイヤモンドフィルムの基板への接着を促進し、そして基板とダイヤモンドフィルムの電気的接触を良好なものとすることができる。界面は一般に基板とフィルムを区別する物質であり、界面により基板とフィルムの接着が良好なものとなる。さらに、界面は電導性であるか又は極めて薄いので良好な電気的接触が達成され、界面形成の結果かなりの抵抗が生じることはない。・・・」

〔2〕引用例2:特開昭48-98080号公報
〔2a〕「本発明は・・・不溶性電極に関するものであり、その目的は塩化ナトリウム、塩化カリウム等のハロゲン化物水溶液の電解、マンガン等の金属製造、マグネシウム製造等の溶融塩電解、・・・、電池、有機電解反応等における電極として使用しうる不溶性電極を提供することにある。」(1頁左下欄10?17行)

〔3〕引用例3:特開昭59-23890号公報
〔3a〕「本発明は種々な分野において使用されうる不溶性電極に関する。本発明に係る電極は、中間層又は触媒担持層として特殊な多孔質層を有し、この多孔質層が目的や用途に応じた各種触媒に対し優れた密着性と担持性を有するものであって、電気メッキ、有機化合物の電解製造、過塩素酸塩や過ヨウ素酸塩の製造、アルカリ金属ハロゲン化物の電解、水電解、金属の電解採取、電気防食、水処理等各種の用途に使用できるものである。」(1頁右下欄16行?2頁左上欄4行)

〔4〕引用例4:特開平5-339769号公報
〔4a〕「【目的】 純水あるいは超純水を電気分解して、半導体製造分野等において求められている還元性の強い液を製造するのに適した電解槽を提供する。
【構成】 カソード電極を配置したカソード室と、アノード電極を配置したカソード室とを、並設した一対のイオン交換膜を間にして区分し、この一対のイオン交換膜の間にイオン交換樹脂を充填した中間室を設けて、DOの低い液を通水させながら純水の電気分解を行なう。これによってカソード室からDO濃度が極めて低く、還元性の強いカソード液を回収できる。」

4.当審の判断
4-1.引用例1記載の発明
引用例1には、摘示〔1a〕のとおりの、電導性結晶性ドーピング化ダイヤモンドを含む陽極を用いて溶液を電気分解すること等からなる溶液中溶質の処理方法が記載されているから、引用例1には、溶液中溶質の処理に用いる電解用陽極も記載されているといえる。
また、摘示〔1c〕の「陽極は、電導性基板上のドーピング化ダイヤモンドの層もしくはフィルムを含み、前記基板が電源と電気接続していることが好ましい」、摘示〔1d〕の「基板の機能は、電極アセンブリ中を電流が流れやすくするための通路を提供し、そして薄いダイヤモンドフィルムのための機械的支持体を提供することである。・・・ドーピング化ダイヤモンドを基板上に付着させる・・・」などの記載からみて、上記陽極は、電導性基板と、電導性基板表面に被覆したドーピング化ダイヤモンドの層もしくはフィルムを含んでいるといえる。
以上の事項を考慮し、摘示〔1a〕?〔1d〕の記載を整理すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。
引用例1発明:「電導性基板と、電導性基板表面に被覆した電導性結晶性ドーピング化ダイヤモンドの層もしくはフィルムを含み、溶液中溶質の処理に用いる電解用陽極。」

4-2.本願発明1と引用例1発明との対比
本願明細書の「【0020】・・・電極は、・・・陽極及び陰極のいずれとして使用することも可能であるが、・・・特に陽極として使用することが好ましい。」等の記載からみて、本願発明1は、「電極」が「陽極」である態様を包含するから、そのような態様の本願発明1と引用例1発明を対比すると、引用例1発明における「電導性基板」、「電導性結晶性ドーピング化ダイヤモンド」は、それぞれ、本願発明1における「電極基体」、「導電性ダイアモンド構造の電極物質」に相当するといえる。
そうすると、両者は、
「電極基体、及び該電極基体表面に被覆した導電性ダイアモンド構造の電極物質とを含んで成る電解用陽極。」である点で一致するが、次の点で相違する。
相違点:本願発明1の電解用陽極は、「酸性水、アルカリ性水又はオゾン水を製造するために使用する」ものであるのに対し、引用例1発明の電解用陽極は、「溶液中溶質の処理」に使用するものである点

4-3.相違点についての検討
引用例4には、カソード電極(すなわち、電解用陰極)とアノード電極(すなわち、電解用陽極)を配置した電解槽において、純水、超純水等を電気分解してカソード液を製造する旨が記載されているから、引用例4には、電解用電極乃至電解用陽極を使用して、カソード液(すなわち、アルカリ性水)を製造する旨が記載されているといえる。
また、本願明細書の段落【0003】?【0007】の記載からみても明らかなように、電解用電極乃至電解用陽極を使用した電解により、酸性水、アルカリ性水又はオゾン水を製造することは、本願出願前において周知の事項でもある。
しかも、引用例2の摘示〔2a〕、引用例3の摘示〔3a〕の記載にみられるように、電解用電極乃至電解用陽極を、水電解、水処理、有機電解反応などの電解を行う各種の用途に使用することは、本願出願前において周知の事項である。
してみれば、引用例1発明において、溶液中溶質の処理に使用する電解用陽極を、酸性水、アルカリ性水又はオゾン水の製造にも使用してみようとすることは、当業者が容易に想到し得た事項というべきである。
そして、本願発明1は、引用例1?4の記載や前示の周知事項から予測できないような格別に顕著な効果を奏するとは認められない。
よって、本願発明1は、引用例1?4に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-15 
結審通知日 2008-01-22 
審決日 2008-02-04 
出願番号 特願平8-106379
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小柳 健悟  
特許庁審判長 綿谷 晶廣
特許庁審判官 真々田 忠博
前田 仁志
発明の名称 電解用電極及び水電解方法  
代理人 森 浩之  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 中馬 典嗣  

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